Fallout4 Gunslinger of the Commonwealth   作:Ciels

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第二十九話 コンバットゾーン、乱戦

 

 

 

 

 通常ならばダイアモンドシティへの道のりはかなり険しい。当初俺たちはダイアモンドシティからグッドネイバーまでの道のりを最短経路で突っ切ってきたわけだが、その間にも沢山戦闘に巻き込まれたり目撃したりした。ニックを見つけてパイパーと合流し、弾薬の補充を済ませた俺とアルマは、帰りの経路に頭を悩ませる。できることなら早く、そして危険を回避できるルートが良かった。

 

「川沿いは見通しが良すぎるな……狙撃の的だぜ」

 

 地図を広げ、集まった全員でそれを囲って眺める。市街地に特化した狙撃手としてのマクレディの経験を俺は買っている。狙撃手の腕としてはアルマの方が何枚も上手ではあるが、彼女にはあまり市街地戦の経験はなかったりするのだ。それに、ここいらの厄介者達の情勢にも詳しいマクレディの知識は役に立つ。

 

「最近じゃ難破した船にレイダーが陣取ってるって話もあるくらいだ、賢い判断じゃないだろうな」

 

 いつもの赤いコートを着こなすパイパーが同意する。彼女が指差す難破船のポイントは川沿いの道路を見渡せる。聞けば大型の貨物船らしいから、高さもあるだろう。下手にビルに陣取るよりも狙撃がしやすいのは目に見えていた。

 ふむ、と俺とアルマは持てる知識を振り絞って経路を考える。ただでさえ市街地での隠密行動は難しい。人が増えたのであれば尚更だ。守りきれるとも限らない。

 

「川沿いよりも一本内側の道を行こう。ここなら狙撃の心配はない。道も入り組んでるからな」

 

「待ち伏せされたら?きっと崩落してる道もあるから、追い詰められたら厄介だよ」

 

 至極真っ当な意見を述べるアルマ。

 

「夜間に行動する。こっちには暗視装置もあるからいくらかアドバンテージもあるだろう。それに、土地勘のある三人もいる」

 

 多少危険でも優位点を確立しつつ行動すれば難しくはないだろう。いざ戦闘になっても、枝分かれした経路は逃走時に不利になることはなさそうだ。

 俺はペンを取り出して、行動する経路をなぞる。そして所々にチェックポイントを書き記した。

 

「もし戦闘になってはぐれた場合はチェックポイントで合流する。第一合流地点は州議事堂、第二はトリニティプラザ、第三は……ニック、ここって今はなんて呼ばれてるんだ?」

 

 俺が指差したポイントをニックが確認する。あぁ、と言ってから彼は鼻で笑って答えた。

 

「ハングマンズアリー。名前の通りなら碌な場所じゃない」

 

 参ったな、それは困る。俺の見立てではこのポイントは防御に容易そうなんだけども。うーんと俺は唸って、妥協点を探す。

 

「ならハングマンズアリーの西100メートルの場所にしよう。なお、1日経っても合流できない場合についてはダイアモンドシティへ移動しろ」

 

 全員が頷いたのを確認して俺は地図を仕舞う。同時にアルマとPip−boyのマップにマーカーを打ち込んだ。さて、いきなり銃撃戦になってはぐれなきゃいいけども。ここらはミュータントやレイダーで物騒だからな。早くサンクチュアリに帰りたい……ガービーの奴、ちゃんと仕事をしているだろうか。

 クレオの店の作業台を借りての作戦会議も終わり、なんだか彼女が邪魔くさそうな顔をしているのでいい加減立ち去ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やぁみんな、プレストン・ガービーだ。ミニットメンの副司令をしている。我々の活動は皆も知っていると思うが、改めて紹介しよう。

 我々ミニットメンは平和の使者だ。略奪者から弱き人々を救う事を目的として成り立ち、ここコモンウェルスではそれなりの知名度を誇っている。メンバーは志願制で、あくまで平和維持活動を目的としているために給与は少ない。だが、それ以上の名誉を我々は得ている。

 連邦は厳しく残酷だ。生きて明日を迎えられるかも怪しいこの世界の、唯一の希望。それが我々ミニットメンなのさ。最近では新しい将軍のおかげで治安維持だけではなく、商業や軍事アドバイザーの仕事も増えている。何にせよ、ミニットメンの将来は明るいのさ。

 

 さて、そんなミニットメンの副将軍であるこの俺だが。今現在不在である将軍から本拠地であるサンクチュアリシティの管理も任されている。こんな世の中になっても書類仕事はあるもので、元々一介の兵士だった俺には荷が重くもやりがいのあるものだ。

 ……目の前の紙の束が減らないどころか増えている事実に目を瞑れば、だが。

 

「副司令、先日の防衛戦に関する書類ができました。サインをお願いします」

 

「ああ、そこに置いておいてくれ」

 

「副町長、まぁた浄水器が一つ壊れましたわ。修理お願いします」

 

「技官の派遣をするから、書類の提出を頼む」

 

「ガ、ガービー、サンクチュアリの防衛強化の案を持ってきたよ」

 

「ああジュン、助かる。……おいちょっと待て、見積もりが30000キャップってどういうことだ?」

 

 来る日も来る日も書類に追われる。あれだけ安全な場所を求めて連邦を彷徨っていた日々が恋しくなってくる。少なくともあの時は、無人の建物があれば硬い地面であろうともぐっすり眠ることができた。今では夜遅くまで仕事をして、朝早くに起きてまた仕事。

 日々ミニットメンとサンクチュアリが発展拡大していくのは素晴らしい事だが、まさか俺自身こんなことになるとは思ってもいなかった。ああ将軍夫妻、頼むから早く息子を連れて帰ってきてくれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなデスクワークよりも現場が似合う将軍は、現在絶賛迷子中だった。

 迷子というのは誤りかもしれない。仲間とはぐれてしまったのだ。今隣にいるのは愛しい妻ではなく、赤いコートに記者キャップを着こなした麗しの新聞記者パイパー。ニックもマクレディも、妻と一緒にどこかへ行ってしまったのだ。

 真っ暗の中で暗視眼鏡を利用して周辺を確認する。敵はもういないようだった。

 

「クソ、みんなどこに行った……?」

 

 現在地はトリニティタワーの北100メートル。なんでこんな不甲斐ない状況になっているかといえば、そこはやはりレイダーやミュータントが絡んでいた。

 グッドネイバーを出発し、最初こそ順調に事が運んでいたのだが……俺たちの進行方向にレイダーの集団がたむろしていたのだ。回避しようとした時にはミュータントの連中が後方からなだれ込んでいて、仕方なく戦闘が始まり……三つ巴の乱戦が繰り広げられ、はぐれた。どうやらミュータントは俺たちではなく、前々からたむろしていたレイダー集団を狩ろうとしていたようで、俺たちは完全に巻き込まれた形となったのだ。

 

「ねぇブルー、もう数分で日が出てくるよ」

 

 後ろにいるパイパーが言ってきて、俺はPip-boyの時計を確認した。現在時0528。十一月ということもあり、まだ日は出ていないがあと十分もすれば明るくなる頃合いだった。

 俺はアルマ達を探しに行くべきか考え、しばらく考えに考えた。ダメだ、余計に合流できなくなるかもしれないし、助けに行かないとヤバイ状況かもしれない。

 

「とりあえずトリニティタワーが近いよ。そっちに行きましょ」

 

 妻のことになると周りが見えなくなる夫を、記者は冷静な判断でもって諭す。俺は渋々了承し、この街でも有数の高さを誇るトリニティタワーへと足を運ぶことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コンバットゾーンは、現在絶賛戦争状態だった。それはこの場所の本来の意味である、闘技場という事ではなく。

 スーパーミュータントと元からそこに居座っていたレイダー集団、全く無関係のレイダー集団と私たち。それらがごっちゃになって撃ち合いや殴り合いになっているのだ。

 

 元々シアターだった空間に、アクション映画以上の銃声と怒号が響き渡っている。ミュータントどもは少数ながらも血の気の多さに一切怯まず、気がつけばとんでもなく大きいサイズのミュータントも混じっている。なんであのデカブツはスワンボートを装着しているんだろう。

 

「怖いかニンゲン!ってなんだこのデカイの!こっちにクルナ!」

 

 デカイのは制御が効かないようで、敵味方を区別する事なく攻撃している。今もミュータントがその大きな拳によって文字通り粉砕され、その死体をレイダーに投げつけているところだ。

 

「マック!ちゃんと当てなさいっ!」

 

 レイダーから奪った10ミリのサブマシンガンで射撃をしながら弟子に檄を飛ばす。

 

「無茶言うなッ!狙撃って距離じゃないだろッ!」

 

「あんたら仲が良いのは分かったから口じゃなくて手を動かしてくれないか、人造人間の老人にこのシチュエーションは辛い」

 

 リボルバーに一発ずつ弾を込めながらニックが渋い声で言った。私が撃っているマシンガンの弾が切れるとそれを放り投げ、カウンターに隠れて背負っていたライフルを手繰り寄せる。

 まさか逃げた先がレイダーがいる劇場だとは誰が思うだろうか。それもこんな大乱闘が起こると、誰が予想するだろうか。泣きたくなるよりもイライラする。どうしてこうも波乱万丈の人生を歩みがちになるんだ私は。

 

「おい横!」

 

 不意に考え込んでいた私にマクレディが声を投げかけた。横を見てみれば、あの馬鹿でかいミュータントがカウンターの真横から頭を覗かせていたところだったのだ。あまりにもデカイ頭もそうだが、濁った瞳が私を捉える。下手なホラーよりもタチが悪い。

 

「見んな気持ち悪いッ!」

 

 散らばる割れた瓶をその目に突き刺す。ミュータントは悲鳴をあげて頭を引っ込めた。それからすぐに私はカウンターを乗り越えてナイフ片手にもがき苦しむデカブツに突っ込む。

 

「おいマジかよ!」

 

 勇敢な私の姿にマクレディが絶句した。そんな声も聞かずに私は両膝をついて顔面を抱えているデカブツの背中によじ昇る。勢いをつければ簡単に登れた。

 

「彼女を援護しろ!もう残りはベヒモスとレイダーだけだ!」

 

 ニックが支持すると、二人は遮蔽にしていた壁から身を乗り出してレイダーを攻撃する。当初私たちを追っていたミュータント達はもう全員死んでいたようだった。

 私はライフルをデカブツの後頭部にありったけ撃ち込むと、刃渡り20センチの大型ナイフで頚椎をぐちゃぐちゃにしようと後ろ首をガンガン斬りつける。

 

「死ねッ!死ねッ!」

 

 普段が冷静なせいで一度火がつくと止められないとは、夫の談。完全に頭に血が上っている私はひたすら刺したり切ったりしていく。どうやらめちゃくちゃ痛いらしく、時折背中に乗っている私を追い払おうとするが、その度に深くナイフを突き刺されるせいでこのデカブツに対処する余地は無かった。

 酷くデカイ断末魔が聞こえたかと思えば、デカブツが前のめりに倒れる。私はそれから飛び降り、まるでグロックナックの漫画のように片膝をついてヒーロー着地してみせた。

 

「私の勝ちね、デカイの!」

 

 ナイフの血を払って事切れたデカブツに決め台詞を投げかける。気がつけば、銃声はしていなかった。柵の方を見てみれば、倒れ臥すレイダー達の中で立ち尽くしながら呆けたようにこっちを見ているマクレディとニックがいた。私は鞘にナイフを納めて彼らの下へ歩く。

 

「どう?ざっとこんなもんよ」

 

「ああ、素晴らしいね。弟子として誇らしいよ」

 

「そうだな。俺にはベヒモスよりもよっぽどあんたの方が恐ろしい」

 

 賞賛と受け取り、私はスッキリした気分のまま柵の中へと視線をやる。そこにはキラキラと何かヒーローを目にしたような表情をした女の子と、株で有り金溶かしたような顔をしたグールがいたのだ。

 彼らに敵意はないことを理解した私は、拳銃に手をかけながら柵の中へ入る。念のためにマクレディとニックを外に残して。

 

「終わったか?レイダーよりタチが悪いなあんたら」

 

 スーツを着こなしなぜか髪がある(多分カツラだと思う)グールの男が悪態混じりに言った。

 

「へぇ、そうかな?最高のショーじゃない」

 

 対して赤毛の女の子は私の行いを褒めてくれたようだった。

 

「えっと、散々ぶち壊した後でなんだけど、ここって闘技場か何か?」

 

 そう質問すれば、グールの男は頷いた。

 

「ああそうさ。どっちみち廃業だろうがな」

 

 ちょっと悪いことをしたと思いつつも、彼らから事情を聞く。なんでもここは連邦最大のアリーナのようで、彼の隣にいる赤毛の女の子であるケイトはここの花形らしい。しかし最近は付近のレイダーが上り込んだせいで商売にもなっていなかったようだが。

 グール、名をトミーという。彼は最後に、あんたが顧客を皆殺しにする以前の話だ、と皮肉たっぷりに言い切った。

 

「あいつらがなんだってのよ。一休みすればまた客が寄り付くさ」

 

 楽観的に、ケイトは言ってみせた。

 

「薬とアドレナリンでハイにでもなってんのか?……いやいや、待てよ。これはある意味チャンスかもしれんぞ」

 

 キラリと野心を携えたトミーの瞳が光る。

 

「なぁあんた、ケイトと戦ってみないか?見たところあんたも相当な手練れみたいだからな……このリトルバードの才能を見てほしいんだ」

 

 え、と私は思わず聞き返した。

 

「ちょっと!その呼び名はやめなさいよ!」

 

「突っ込むとこ違くない?」

 

 それに、私の専門は狙撃だ。拳と拳でぶつかり合うのは趣味じゃない。

 

「なんでケイトと戦わなくちゃいけないのよ」

 

「ああ、そうだな。あんたが店をぶち壊してくれたせいで俺の資産だったケイトが負債になっちまったんだ。それは分かるだろう?俺がここを元に戻す間、あんたには契約を引き継いで、こいつを連れてってもらいたい。護衛にでもすればいい」

 

 はあ!?とケイトが楯突く。

 

「いいかケイト、お前の雇用主は俺だ。ここはしばらく休業になっちまうから、その間お前も暇になるだろ。それなら一旦誰かトラブルメーカーに預けてその戦いの才能を磨けばいい。いい刺激になるだろうさ」

 

 私はそこで質問を投げかけた。

 

「なんでそれが私と戦うことに結びつくのさ。まぁ、別に連れて行くのはいいけども」

 

「商品の売りどころを見せるのが商売だろう?」

 

 つまり、私にケイトが護衛をするに足る力があると分からせようとしているらしい。私は唐突な提案に不機嫌になりながらも、ここをめちゃくちゃにした後ろめたさから渋々頷いた。

 

「私あんまり格闘とか殴り合いは得意じゃないよ」

 

 外にいるマクレディがどの口が言うんだ、なんて言い出す。あったまきた。

 

「それじゃあ決まりだな。じゃあ支度をしな、銃や刃物はお互い無しだ。拳だけで戦う。ルールはそれだけだ」

 

 総合格闘技もびっくりなルール。最早ストリートファイトだ。

 むぅ、と私は唸りながら何故か喜ぶケイトを背に、楽屋らしき方へと向かう。もういいや、こうなったらケイトには憂さ晴らしのサンドバッグになってもらおう。

 

 




次回ケイト戦とトリニティタワー
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