インフィニット・ストラトス -我ハ魔ヲ断ツ剣也-   作:クラッチペダル

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馬鹿者
真面目な奴ほど馬鹿をみる。
馬鹿な奴ほど馬鹿を見る。
同じ馬鹿なら、どっちを見たい?


14 Fool

気が付けば、自分の体はある場所を目指して駆け出していた。

 

その際にはある一つの事しか頭に浮かんでこない。

 

--……一夏!!

 

『あれ』がアリーナのバリアを突き破り、侵入してきたときに箒がまず思った事は、一夏が無事であるかどうかと言うことだ。

まぁ、直後に他でもない一夏自身が荒々しい避難勧告という形で無事だと言うことは確認できたのだが。

 

そして、避難し始める人の波に流されながら、戦いだした一夏を見て、自身にも何かできることはないかと箒は考え出す。

その際に視界に入ったのは、既にもぬけの殻となった放送室。

 

--自分は戦えない。

--だが、激励することぐらいは出来る。

 

そこまで考えがいたれば、後はどうでもいい。

そうと言わんばかりに、彼女は人の波に逆らい駆け出した。

この時彼女は純粋に自身に出来ることをしようとしていただけなのだ。

 

……セシリアに言われた言葉など、既に彼女は忘れ去ってしまっていた。

 

 

※ ※ ※

 

 

放送室からの大音量の激励。

普段であればそれほどの力を込められた激励、応えぬ訳にはいかぬと心が奮うだろう。

しかし、今この状況において、箒のその行動は最悪の一手と言っても過言ではなかった。

ガタノトーアは箒の声に反応し、その貌を箒へと向けていた。

そして、箒の居る放送室に向け、その腕を突き出した。

 

「ちぃ! させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

すぐさま一夏はガタノトーアに二挺拳銃を連射。

しかし、ガタノトーアの動きは止まらない。

 

弾丸は確かにガタノトーアに当たっている。

そのどれもが、ガタノトーアを止めるにはあまりにも弱すぎたのだ。

それでも、一夏はガタノトーアに向かって引き金を引くことを止めず、それでも止まらないと見るやすぐさまバルザイの偃月刀を取り出し、偃月刀を大きく広げる。

そのままガタノトーアと箒の間に割り入り……

 

瞬間、ガタノトーアの腕からの光の奔流が一夏を襲った。

 

一夏は自身の盾にするようにバルザイの偃月刀を構え、さらにその前にエルダーサインを展開する。

最早なりふりは構っていられない。

ここで魔術がばれようとも、防ぎきってみせる。

 

エルダーサインは光の奔流をせきとめようと、その輝きを強める。

しかし、徐々に、徐々にだがその光の障壁には亀裂が入っていく。

 

そして……割れた。

 

「ぐ……がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ついで奔流はバルザイの偃月刀へと当たる。

だが、それでも防ぎきれない。

バルザイの偃月刀も徐々にひび割れていく。

ならばと体を広げ、己が身を盾とした。

そこで、ようやく光の奔流はその姿を消した。

 

エルダーサインが殆どの威力を殺していたのだろう。

光の奔流が背後の放送室に届くことは無かった。

 

光が消えたその後には、まさに満身創痍と言った体のアイオーンの姿。

装甲にはひびが入り、それどころか一部欠け落ち、一夏の生身が見えている部分もある。

鋼の翼も折れ砕け、むしろ今こうして空に浮かんで入れることが奇跡といえよう。

 

「……く……そ……がぁ……!」

 

そして、一夏も生きている。

その目は、ガタノトーアをまっすぐに射抜いている。

しかし、体はボロボロ、ISもボロボロだ。

 

一夏は、自身の体たらくに歯噛みする。

討つべき外道が、邪神が目の前にいるというのに、体は動こうとしない。

その事が、一夏は情けなく思えた。

 

もはやビームを撃つまでも無いと判断したのか、ガタノトーアはその巨体を浮かせ、一夏の元へと飛んでくる。

そして、一夏の顔に、自身の顔を近づけた。

……装甲に覆われ表情など無いその顔。

しかし一夏には嘲笑が浮かんでいるように見えた。

 

その巨腕が振り上げられ、そして一夏に振り下ろされる。

 

「がっ!?」

 

なす術もない一夏はそのままアリーナの地面に叩きつけられる、

その際、腹部に熱が生まれた感覚。

かつて不死の魔術師の肋骨を突き刺されたときのような、痛みを越えた熱。

叩き付けられた際に、恐らく砕けたアイオーンの装甲が突き刺さったのだろう。

 

痛みにもだえつつも立ち上がろうと足掻き……頭上から落下してきた……降りてきたのではなく、まさに落下してきたガタノトーアに再び地面に叩きつけられる。

 

「ぐふぁっ!? ……て、めぇ……好き勝手……やりやが……」

 

地面でもがく一夏の首持って、一夏を持ち上げる。

そのまま、徐々に首を掴む力を強めていった。

 

「が……はっ……あ、あぁぁぁぁぁぁ……っ」

 

喉を締め付けられているため、かすれた声しかでない。

そんな一夏の様子を楽しむように、ガタノトーアはあくまでゆっくりと力を込める。

それはまさに、真綿で首を絞めるかのような所業。

 

そして、ついにガタノトーアが一夏の首を手折ろうとしたまさにその時。

 

ガタノトーアの腕を、一筋の光が貫いた。

それは、傍から見ればそれほど威力があるようには見えない一撃。

だが、不意をうって放たれたそれはガタノトーアの腕の力を一瞬でもゆるめることには成功した。

 

その一瞬があれば、その男は動けるのだ。

 

自らの首にかかっていた力が緩んだと見るや、一夏はすぐさま左手に一丁だけ拳銃を呼び出す。

既に彼自身の意思ではなく戦闘本能によって突き動かされた体は、銃口を自身が先ほどつけた装甲の切れ目に突きつける。

 

そして、引鉄が六回引かれた。

 

自身の本体を撃ちぬかれたことによりガタノトーアは痛みにもだえ、暴れまわり、それにより一夏が放り投げられる形となる。

空中で弧を描く一夏は、そのまま高所からアリーナの地面に……

 

「やっぱり、貴方はいつでもこう無茶をして!!」

 

あわや衝突と言うそのタイミングで横から飛んできたセシリアに受け止められた。

先ほどガタノトーアの腕への一撃を加えたのは、アリーナ内部へと何とか進入できたセシリアだったのだ。

 

セシリアに礼を言おうとするが、しかし口は意味のある言葉を発することが出来ず、ただ無意味に開き、閉じを繰り返すだけとなる。

 

「無理はしないでください。ひどい怪我なのですから」

 

一夏にそういうと、セシリアは一夏をアリーナの壁に寄りかからせるように、ゆっくりと地面に下ろす。

その隣には、一夏を助けに入る前に運んでおいた鈴音もいる。

そしてセシリアは、ガタノトーアを睨みつけた。

 

瞬間、魂を氷の手で握り締められたかのような感覚がセシリアを襲う。

その冷たさは、徐々に彼女を侵し、犯し……

 

「……それが、何だといいますの?」

 

しかし、侵しきることが出来なかった。

無論、未だに彼女は己の根幹に冷たさを感じる。

 

だが、それがどうした?

 

このような世界で、織斑一夏……大十字九郎は戦ってきていたのだ。

魔術師だからと言って、瘴気を完全に防ぎきれるかと言うとそれは違う。

瘴気に侵されながら、恐怖に足をすくわれながらも、それでも心を奮わせ、外道の法にて外道と戦っていたのだ。

 

ならば、真にこの場で戦う為に必要な要素とは何か?

 

「……それは、正しき怒り」

 

理不尽に奪われまいと、奪われてなるものかという、守るための正しき怒り。

今、セシリアの心は正しき怒りに満ちている。

そして、彼女に手にはISというちっぽけな、だけども戦うための力がある。

 

今ここに、人間でありながらも魔と戦う権利を得た人間が誕生した。

 

さぁ祝おう。

新たな怪異狩人(ホラーハンター)の誕生を。

 

セシリアがスターライトを呼び出し、それをしっかりと握る。

そのまま宙に浮かび上がると、宙を舞いながらガタノトーアへと一撃一撃確実に射撃を当てていく。

もちろんガタノトーアも黙ってみているわけも無く、まとわり付く小蝿を払うかのように

その腕を振るう。

しかし、巨体ゆえの動きの重鈍さのせいで、セシリアには攻撃が当たらない。

 

しかし、セシリアの一撃もまた相手を揺らがせることは出来なかった。

ならばとセシリアはブルー・ティーアーズを一基分離させ、手数を増やす。

未だに全部のティアーズ移動しながら一度に操作は出来ずとも、一基二基なら移動しながらの操作は出来る。

 

しかし、ブルー・ティアーズ一基増やしてもまだ足りない。

ならば二基めと増やすが、しかし足りない。

 

「……ええい! 厄介ですわね!!」

 

もとより、ブルー・ティアーズというISはBT兵器の評価試験用のISと言う側面が強い。

故に、ブルー・ティアーズの強みは、武装の多さでもなく、武装の威力の高さでもなく、ブルー・ティアーズという武装が使えることのみなのである。

そしてブルー・ティアーズという武装自体も、それほど高威力を持っているわけではない。

 

つまり、彼女は重装甲、高火力のガタノトーアとは、相性が非常に悪かったのだ。

 

 

※ ※ ※

 

 

目の前でちらつく光のせいで、視界が制限されている。

体は、まるでさび付いた鉄で出来ているかのように軋み、ロクに動こうとしない。

まるで穴の開いた浮き輪のように、すった空気はどこかへと抜け出ていくようにも感じる。

腹部の熱は既に無く、感じるのはそこから何かが少しずつ流れ出ていく感覚と、そこから襲ってくる冷たさ。

 

それでも、そんな状態の体でも、一夏は鞭を打ってどうにか顔を挙げ、その目を見開いた。

 

視界に映るのは、宙を舞い、黒い巨体と戦っている青い光。

しかし、青い光の攻撃でも巨体は揺るがない。

 

--……足りない。

 

一夏の脳裏に、その言葉が去来する。

 

--足りない。足り無すぎる。

--あのクソ神をぶっ殺すにはあまりにも弱すぎる。

 

--ならば、どうすればいい?

 

「……決まってんだろ……」

 

果たして、果たして自分は女にだけ戦わせて後ろで休んでるような奴だったか織斑一夏、否、大十字九郎!

 

お前は、お前はもっと馬鹿だったはずだ!

実力も無いのに、後味が悪いなんて理由で前に出て戦うような、大馬鹿者だったはずだ!

だというのに、今の自分は何だ?

 

あぁ、確かに、この状態じゃまともに戦えないだろう。

そして、そんな状態で無茶をすれば、下手をすれば命が無いだろう。

ならば、こうして黙っているのは実に正しい判断だ。

 

……しかし、その判断はあまりにも『賢すぎる』判断ではないだろうか?

こんなの、明らかに自分ではない。

だったら、今自分はどうすればいい?

どうすれば自分らしくなれる?

 

「それも……決まってんだろうがぁぁぁっ!!」

 

軋む体を無理やり起こし、立ち上がる。

そして立ち上がると同時に、咆哮。

そう、それはまさに獣の咆哮。

手負いの獣の最後の一吠え。

 

だが、その咆哮に、セシリアも、ガタノトーアも動きを止め、一夏へと視線を向けていた。

 

手負いと侮る事無かれ。

獣とは、手負いが一番危険なのだ。

 

今の一夏は、まさに獣だった。

 

一頻り吠えた一夏は、ゆっくりと大地を踏みしめ、前へと進む。

その体はふらつき、歩みもおぼつかない。

その様はまるで幽鬼のよう。

 

それでも確実に前へ、ガタノトーアの元へと進んでいく。

 

セシリアが何かを叫んでいる。

聞こえない。

 

ガタノトーアがその顔面に開いた穴に光を宿し、ビームをばら撒く。

それに当たり、地面に倒れこむ。

しかし、起き上がり再び歩く。

 

やはりセシリアが何かを叫んでいる。

だが聞こえない。

 

ガタノトーアは相変わらずビームをばら撒く。

やはりそれに当たり、地面に倒れこむ。

腕に熱。

どうやら先ほどの攻撃で砕けた装甲が腕に刺さったようだ。

気にしない。

ただ前へ進む。

 

一夏の脳内に浮かぶのは唯一つ。

 

--このクソ神をぶっ殺すっ!

 

その思いで体を動かし、前へと進む。

 

ビームでは埒が明かないと判断したのか、ガタノトーアは近づいてきていた一夏に自ら近づき、その巨腕を振るう。

どうやら、小口径ビーム砲では威力が足りない、されど腕部のビームを使うまでも無い。

そう判断したのだろう。

今の一夏には耐え切れるはずもない、巨大な質量を以っての一撃が、一夏に襲い掛かる。

 

「っ! 大十字さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

セシリアの悲痛な叫びが響く。

巨腕が徐々に近づく。

 

「てめぇは……ぜってぇここで……ぶっ飛ばす!!」

 

『……やれやれ、なんと言う体たらくだ』

 

ふと、声が聞こえる。

それは常頃一夏が求めて止まない少女の声。

自分の唯一無二の伴侶の……

 

『汝は妾の主だぞ!? あまり情けない様を見せるな! たかがこやつ如きに負ける汝ではないだろう!?』

 

『……だから、耐えろよ、九郎!!』

 

--操縦者とISのシンクロ係数 90%オーバー

--単一仕様『アルハザードのランプ』使用可能

--武装ロック、コアからの要請にて一時的に解除

--使用可能武装、『対霊狙撃砲』

 

--アルハザードのランプ 燃焼




九郎ちゃんが何かに圧倒的に有利に勝つって、ウェスト相手以外じゃ思いつかない。
傷つき、血反吐はいて、それでも立ち上がって勝利を得るというのが自分の中の九郎ちゃん。

と言うわけで血反吐はいてもらいました。
ええ、ぼろぼろです。
でも覚醒しました。
なんか覚醒しちゃいけない単一仕様も覚醒しちゃいましたけど。
ついでに姫リアさん覚醒。
何年も怪異相手にしてたんなら、戦う権利ぐらいあってもいいよねとおもったので。
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