ある日の朝、志村新八は 首領パッチ になっていた。
「 いや、なんで!? 」
新八が疑問に思うのは無理もない。彼は前日の夜、自宅の自分の部屋で布団を敷いて眠っていたにも関わらず、どういうわけか今現在、布団ごと草木のない不毛な荒野のど真ん中にいる。
「つーか、ここはどこ!? なにこの世紀末っぽい世界観は!? それに何このコンペイトウに手足が生えた生き物は!? つーか僕!? もしかしなくても僕なの!?」
今の己の姿と置かれている状況に頭を抱える新八。そこへ何者かがを砂塵を巻き上げながら爆走してきた。
「 うるせ──っ!! このハゲ──っ!!
今何時だと思ってやがる!? 」
そう叫びつつ、すれ違いざまに新八に強烈なビンタを喰らわせるアフロ頭の大男。寝起き直後なのかナイトキャップにパジャマ姿。片手には大きな熊のぬいぐるみを持っていた。
突如現れた男のビンタで吹き飛ばされ「あべし、ひでぶ」と二、三回地面に弾む新八。やがて勢いが弱まり止まるとその男は新八に向かって威厳のある声で厳かに告げる。
「首領パッチよ、オレの睡眠を妨げたその罪。死 でしか償うことができない」
「睡眠を妨げた程度で何でそこまで重罪になるんだよ!? つーかアンタがいた場所と此処、かなり距離あるよな!? それなのにうるさいって、どんだけ地獄耳してんだよアンタは!?」
はたかれた頬を片手で押さえながら不満を口にするが、大男は聞く耳はないと言わんばかりにヘッドフォンを装着し、その場で踊り始める。そんな見ず知らずの男に態度に額に青筋を立てると少女の声が耳に届く。
「あー、あんなとこにいた」
「おーい」と腕を大きく振って駆け寄ってくるピンク頭の少女。その後ろには灰色の髪の少年。ここまでは理解できる。その隣にいる水色の人型の物体に新八は眉をひそめ、一番後ろにいるトグロ状の被り物をかぶった人物に思わず叫ぶ。
「 なんか変なのがいるんですけど!? 」
「「 お前が言うな!!!! 」」
▼▼▼
荒野のど真ん中、首領パッチの姿をした新八を囲むようにして固まっている集団がいる。
「ふむ。つまりお前は外見こそ首領パッチだが中身は別人だと言いたいんだな?」
そのうちの一人、トグロ状の被り物をかぶったソフトンという人物が疑うような目付きで新八に視線を送る。
「疑うわけではないが、にわかに信じ難いな」
「お前の存在が一番にわかに信じ難いわ!! 何なんだ!? その被り物は!?」
「宗教上の理由で被っている。赦せ」
「どんな宗教だよ!? それに何でそんな格好なのにいい声なんだよ!?」
「格好と声は関係ない」
見た目に反してやたらといい声で喋るソフトンに調子を狂わされる新八。その二人の会話に青いゼリー状の身体を持った天の助が入ってくる。
「そいつの言ってることは本当のことだろう。信用していい」
天の助の言葉にさまざまな表情を見せる一同。彼らをよそに天の助は続ける。
「 ツッコミ がいつもと違う」
「なんだそりゃ!? そんなんで納得できんのかよ!?」
噛みつかんばかりの勢いで話す新八だが、しかし意に反して…
「先ほど感情の赴くままに殴ってしまって悪かったな、中の人」
「バビロンの使者としてあるまじき行為だった。赦せ」
「納得しちゃってるよ、この人たち!」
ボーボボとソフトンは新八に対して非を詫びていた。
そこへ今まで事の成り行きを見守っていた女の子──ビュティが深刻そうな青ざめた顔で疑問を口にした。
「首領パッチ君の中にいるのが新八さんなら……今、新八さんの中に入ってるのは首領パッチ君になるのかなー?」
「「 …………………… 」」
数瞬の沈黙の間にごくりと喉を鳴らす音が静かに響く。その空気に耐えられなかったのか灰色の髪の少年──ヘッポコ丸がボーボボに話しかける。
「ボーボボさん、それってヤバくないですか?」
「ヤバいっていうレベルで済まされる話じゃないぞヘッポコ丸。新八の今後の人生に多大な悪影響を及ぼすこと間違いなしだ。オレはそう信じている!」
「どんな信じ方だよ!? それに首領パッチってアンタらの仲間だよな!?」
「幸いこの手の現象は使い古された手法の一つ。本人が眠れば元に戻るのが相場だ」
「眠ればってそう簡単には…」
「 うらァっ! 死ねェェェ────っ!!!! 」
雄叫びとともに新八の腹部に蹴りを入れるボーボボ。これには堪らず「ぬぅわぁぁぁ!?」と叫び声を上げてしまう。
「殺す気か!? 眠る どころか 永眠 してしまうわ!!」
強烈な一撃を喰らったものの意識を狩り取るまでとはいかず、すぐさま起き上がる新八。
「ちぃっ、これではダメか……仕方ない。ヘッポコ丸、そいつが逃げられないように羽交い締めしろ」
「え? あっ、はい」
少々疑問に思うとこもあったろうが素直に言う通りに動くヘッポコ丸。無論、新八もタダで捕らわれるつもりはなかったのだが、先の一撃が思った以上にダメージが大きかったせいもあり、あっさりと捕まってしまう。二人がそうしてる間、ボーボボはなぜかサーフボードのようにソフトンを持っていた。
「またせたな……かくごはいいか…」
無言で一歩ずつ近寄ってくるボーボボ。手にしたソフトンの頭部をこちらに向けている。すなわち、トグロ状の被り物を新八に向けて…
「おい、まさか……いや、それはソフトクリームのチョコ味だよね? そうですよね? ボーボボさん?」
ひきつった笑顔を浮かべる新八にボーボボは淡々と「ああ、そうだ」と無表情で答え、さらに近寄る。
チョコ味のソフトクリームと言ったものの、新八の目に写るそれは到底ソフトクリームには見えなかった。
助けを求め周囲を見渡すが、揃いも揃って露骨に視線をそらす始末。
「今もこうしてる間に首領パッチがお前の体で好き勝手やっているんだ。わかってくれ…」
「 納得できるけど、納得できねぇ────っ!!!! 」
▼▼▼
「 やめろぉぉぉォォォ────っ!!!! 」
叫び声とともに半身を起こす新八。息が荒く、顔中も汗のせいで濡れて、ひどく疲れているように見える。
「なんだ、夢か…」
そう呟いて額の汗を拭うと「バタバタ」と慌ただしい複数の足音が聞こえてくる。新八の叫び声を聞いて駆けつけてきたのだろう。襖が勢いよく開かれる。
「シンパッチ、目覚めたのか!?」
「シンパッチか!? それとも首領パッチの方アルか!?」
襖を開け放って開口一番にそんなことを宣うのはいつもの万事屋のメンバー。
「シンパッチって何だよ!? 首領パッチの親戚みたいでイヤなんですけども!?」
ツッコミを入れながらも新八は悟った。「ああ、あれは夢じゃなかったんだ」「すでに手遅れ」と…
「落ち着け神楽! また空を飛んで逃げられたら厄介だぞ、ここは慎重~に、慎重~に動くんだ? いいな?」
「そうだね銀ちゃん、あとアイツにネギ持たせないようにしなくちゃアルよ。スーパーサイヤ人なってネギで鬼の副長とやりあったアルからね」
「 人の体で何をやったんだ
余談だがこの入れ替わりは一週間続いたという…
(´・ω・)にゃもし。
息抜きに書いた一品。
シンパッチと首領パッチって似てる気がして…