# 故に輝星は花に惹かれる
# プロローグ
「咲っっ!」
バーンと麻雀卓を叩く音が静寂の中響いた。その場にいる4人のうち卓を叩いた本人以外は突然の出来事に固まって身動きも取れない。
「どういうつもり!こんなことされて、私が嬉しいって言うとでも思ってるの!!」
声を荒らげたせいで息が上がりそれ以上何も言えず、それでも声をあげた本人である宮永照は妹である宮永咲を睨みつける。
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咲はうまく回ってくれない頭で必死に状況を考えようとしていた。
(えっと、ついさっきまではお父さんとお母さんとお姉ちゃんと麻雀をいつも通りにしてたはず…)
咲には、麻雀の才能があった。それこそ先に麻雀をはじめた姉の努力など軽々と追い抜いてしまうくらいの才能が。
麻雀をやりはじめた最初は勝って喜ぶ、そんな当たり前の麻雀がうてた。しかし、次第に姉が不機嫌になってしまうようになっていった。
咲は心優しい女の子だった。自分の幸せよりも大好きな姉の幸せを優先させることができる、そんな心優しい女の子だった。
故に咲は勝つことをやめた。そして、その後の咲は負け続けた。初めこそ咲に勝てて喜んだ姉も自分が手加減され、勝たされている事が解ると再び不機嫌になった。
だから、咲は勝つことも負ける事もやめた。場を読み、点数をプラマイゼロになる様に調整し、自然な形で姉に花を持たせようとした。
今度もはじめは上手くいった。だが、またしても姉は自分が手加減されている事に気づいてしまった。
姉はもう我慢の限界だった。妹よりも先に麻雀をはじめた自分が、手加減してもらえないと勝てないという事実に。幼い妹に気を遣わせてしまっている事実に。
未だ混乱していた咲は姉の次の言葉で完全に心を砕かれた。今まで大好きだった姉のために自分がしてきた努力と一緒に。
「もう咲と麻雀なんてやりたくない!咲の麻雀は大嫌いだ!!」
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ハッと姉の最後の大声をきいて目が覚めた。
「この夢見るのは久々だな…
今日からお姉ちゃんの通ってた高校に行くから余計な事考えちゃったのかな…」
空はまだ白みはじめたばかりで、普段咲が起きる時間とは程遠い。だが咲は苦笑しながら体を起こした。
「結構汗かいちゃった…
学校行く前にシャワー浴びよう。
何事も最初が肝心って言うし、高校最初の日は失敗したくないもん。」
咲はシャワーを浴びると、朝食の用意をはじめた。母親が仕事で朝には家にいない事が多い宮永家では朝食の支度は咲の仕事だ。
自分でつくった朝食を食べた後姉と父の分にラップをかけておく。
「さて、そろそろ学校に行かないと遅刻しちゃう。流石に初日から遅刻は不味いよね」
通学路の小道の横を流れる小川の水面はキラキラと太陽の光を反射して輝き、その横に佇む桜の木からは薄紅色の花びらがひらひらと舞い落ちていて幻想的な風景を構成していた。まるでその風景が咲の入学を祝うかのように。
だが、今朝みた夢のせいだろうか。咲の心のもやもやは晴れないままだった。
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21世紀において世界の麻雀人口は一億人を突破し、日本も例外ではなく多くの高校生が大規模な全国大会でしのぎを削りあっていた。
そんな高校生から最も高い知名度を誇るのは東京都西東京地区に属する白糸台高校である。白糸台高校は牌に愛された子である宮永照の入学とともにIH全国優勝を成し遂げた。その照が卒業した後も同じく牌に愛された子である大星淡によって、前人未踏の領域である史上初のIH4連覇を達成しており、白糸台に入学する生徒の多くは麻雀を白糸台で打つことを目的にして入学して来ているのである。
咲はその白糸台高校の校門前に立っていた。白糸台高校の制服を着て。
「お姉ちゃんは毎日ここに通ってたんだね…」
とついついつぶやいてしまう。そんな自分の横をこれからの高校生活に期待したキラキラした目の真新しい制服に身を包んだ生徒達が通り過ぎていった。
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#淡咲SS
#淡咲SS/故に輝星は花に惹かれる