GGO:最強の幸運値を持つ異世界転生者がLUKガン使いになりました 作:四季山
テレポートの時のような少しの目眩のような感覚とともに、五感が機能し始める。
嗅覚にはオイルの特有の臭いと、ほんのり感じる火薬と硝煙の臭い。
聴覚には異世界ではあまり聞くことのない機械の音。
そして、視覚には荒廃した近未来都市の光景が送られてきた。
初期スポーン地点のカプセルホールの周りには、様々な服装のプレイヤー達がいた。
どのプレイヤーも、背中には凹凸の多い暗い色の銃や、レーザーガンのような物を背負い、あまり派手ではない服装をしている。
日本や俺が行った異世界とはまるで違う光景に、俺はこう言った。
「本当に異世界みたいだなぁ」
俺が少しの間感傷にひたっていると、
「そこの姉ちゃんちょっといいかい?」
男が話しかけてきた。
最初は自分のことを言っているんだとわからなかったが、その男は明らかにこっちを見ている。
「えっ、俺?」
周りを見ても誰もいない。
それでも、理解ができずに誰かいるのかと探す。
その時、俺はカプセルホールのガラスの壁に目がいった。
「誰だ...これ?」
ガラスに映っているのは艶やかな茶髪に、くりくりとした丸い茶眼。明らかに女の顔だった。
それを見た俺は話しかけてきた男に聞く。
「俺の顔って女みたいに見える?」
「ああ、見えるぞ」
それを聞いた俺はその場に崩れさった。
いや、男の娘ってなんだよ!あれか、クリスのことを影で男みたいとか思ってたからか!
「あれ、ひょっとして姉ちゃん男?」
俺の様子を見て察した男。
しかし、なぜか先ほど以上に喜ぶ。
「兄ちゃん運がいいねえ。まさかF型のアバター引き当てちまうなんて」
「F型?」
「ああ、F型のアバターはせ性別は男性ながらも見た目は完全に女性の超レアアバターで、このGGOにも数えられるほどしかいないんだよ。運がいいなぁ」
なぜか感心する男。
いや、運がいいってなんだよ。俺に女装趣味は無いんだが。
「で、いい話があるんだがな」
男が手をすりながら言ってくる。
「そのアバターを俺に売ってくれねえか?」
「は?」
このおじさん、女装趣味でもあんのか。
俺の汚物を見るような視線に、男は否定をする。
「いや、俺がそんなアバターを使うんじゃなくてな。そのアバターは売ったら高いんだよ」
「なるほど。それでいくらで買ってくれるんですか?」
俺は即承諾する。
だって、こんな女アバターよりも工事現場の親方みたいなゴツゴツとした男のアバターが良かったんだから。
男は少し考えて、額を出す。
「じゃあ十万円でどうだ!」
十万円。
日本だったら、学生(ニート)の俺には十分すぎる金。しかし、日本の百円はあっちでの百エリス。
十万円なんて、あっちの世界ではジャイアントトードのクエストを完了すれば簡単に手に入る。
というか、魔王を倒したおれには既にその何千倍以上の富がある。
俺はその額に対して迷わずに、
「安い!」
と返した。
その反応に男は予想外だったようで、口を空けてフリーズしている。
数秒後、ようやく我に帰った男は、
「なら、十五万だ、十五万!」
さらに上乗せしてきた。
しかし、まだそれも安い。
しばらく男と俺の押し問答が続き、三十万で男がようやく諦めた。
「これでも安いなんて、兄ちゃんどんだけ金持ってんだよ」
「うーん、百億ぐらいかな?」
「ひゃ百億!」
あまりの額に再び固まる男。
「いや、屋敷の分も入れたらあと二十億ぐらい追加かも」
「合計百二十億って兄ちゃん何の仕事してんだよ」
「うーん、問題児の面倒見たり、悪い奴ら倒したり、王女様の遊び相手したりとかだな」
「なんの仕事だよ。ごめんな兄ちゃん、これで商談終わりだ。このゲームを楽しんでくれ」
もう魂が抜けたような顔で去っていく男。
それを苦笑いで見送りながら、俺はあることを思い出した。
「あああああぁぁぁぁ!!!このアバター売れば良かったあああ!!」
後悔しても後の祭り。
その後、あの男を探すも見つからずに途方にくれるカズマであった。