GGO:最強の幸運値を持つ異世界転生者がLUKガン使いになりました 作:四季山
「はぁ」
近くのベンチに座りながら、溜め息を吐く。
「俺の幸運が高いって絶対ウソだろ」
曰く、始まりの街で出会った仲間が全員ポンコツ。
曰く、大物賞金首を倒したら国家予算並みの借金を背負う。
曰く、窃盗スキルを女性に使えば必ずパンツを盗む。
まあ、最後のは武器とさて使うこともあるのだが。
しかし、今回は洒落にならない。
俺は向かいのビルに映る自分の顔を見る。
鬱陶しいほどに可愛い美少女だ。
「あああああぁぁぁぁ!!」
軽く悲鳴に近い声をあげながら再び頭を抱える。
そんな俺に周りを歩く人達はおかしなものを見るような目線を向けて歩き去っていく。
この目線はいつもアクセルの奴らがアクアを見ているような目..........。
「あの、どうかしましたか?」
歩いていく人々の中から、少年が一人話しかけてきた。
迷彩柄の服に身を固め、顔は優しそうな少年という感じだ。
「装備を見た感じ、初心者ですよね?何か悩みとかありますか?」
少年が口に微笑みを浮かべて話しかけてくる。
俺はようやく愚痴を話す相手が見つかったので、全て話す。
「まあ、悩みというかなんというか。ゲームの中でのアバターが完全な女の子だったらそりゃノイローゼにでもなるだろ?そりゃあさ現実では男っぽくないし、小さいころは女の子に間違えられたこともあったよ。でもさ、ゲームの中でぐらい屈強な男戦士みたいな体になりたいじゃん。このゲームでは戦士は無理だけど、せめて荒野のカーボーイみたいなかっこいいイケメンになりたいじゃん!なんで、なんでこんな女アバターなんだよ!F型?超レア?運が良かった?そんなもん知るか!レアだろうが、運が良かろうが自分がなりたかったアバターとはほど遠いアバターになるなんて、それなら現実の方がマシだわ!こんなクソゲー知るか!やめてやるよ!」
早口でまくしあげる俺。
その雰囲気の変わりように思わずギョッとする少年。
「ははは、それは災難でしたね.....」
苦笑いをしながらそう話す。
普通の人なら、もう関わりたくないため立ち去ろうとするはずだが、その少年は立ち去らずにきちんと慰めてくれた。
「まあ、アバターが女型なんて言うのは災難でしたけど、それとこのゲームがクソゲーっていうのは別ですよ。このゲームの良さは銃での戦闘です。それを体感しないでクソゲーだと言うのは間違ってますよ。だから、一度ゲームをきちんとプレイしてから、それでもクソゲーだと思うのならやめればいいと思います」
慰めるというよりは、授業をボイコットした生徒を諭すような感じに近い。
それを聞いた俺は先ほどのアバター騒動で完全に潰えたゲームへの楽しみが少し湧いた。
「へえ、それならプレイしてみるか」
「その意気ですよ。自分かなり古参ですので少し序盤のコツでもレクチャーしましょうか?」
手を差し伸べてくれる少年。
俺はその手を取って、立ち上がる。
「ああ、よろしく。俺の名前はカズマ、始めたばかりだからまだ何もわからない」
「僕はシュピーゲル。どうぞよろしく」
これが後にGGOで語り継がれる最強コンビの出会いだった。
「おー!」
あまりの銃の多さに驚く。
ここはGGOの首都<SBCグロッケン>にある大型ショッピングモール。
ただし、売られているのは日用品などではなく黒々とした銃やその他の装備系アイテムである。
その中で俺達は対モンスター用の光学銃のコーナーに来ている。
「ここに置いてあるのは全てモンスター用で、対人用の方が多いらしいからもっと多いよ」
えっへんとばかりに自慢気に胸を張るシュピーゲル。
「そういえば、対人用と対モンスター用って何が違うんだ?」
気になって尋ねる。
現実では人用と戦車用の銃があると聞いたが、ここにあるのはそれとは似ても似つかない、昭和の怪獣映画で使われているような近未来の銃。
とてもじゃないが、戦車を爆破させれるとは思えない。
「そうだね。簡単に言えば能力の違いかな?」
「能力?」
「うん。対人用は文字通り人を殺すために作られた銃。大半は現実に実在する銃がモデルになっていて、威力もかなり高い。スナイパーライフルとかだったら一撃死もあり得るぐらいにね」
「威力が高いならそれ使えばいいんじゃないか?」
実際、超高威力の爆裂魔法は建物にもモンスターにも邪神にも結界にも通用する。
それを間近で見ている身としてはもうそれでいい気もしてくるのだが。
そんな俺に帰ってきたのは驚くべき返事だった。
「いや、対人用の銃はモンスター相手にはちょっと分が悪いかな?」
聞くところによると、対人用の銃は銃だけあって銃弾を使わなければならない。
ボスモンスターのHPはかなり高いため、対人用だと弾薬の費用がかなりかかるようだ。
そのため、光学銃がモンスター用には当たり前の風潮らしい。
「まあ、GGOのプレイヤーは基本ガンマニアだから実弾銃を愛用してるんだけどね」
頬をかきながら答えるシュピーゲル。
「でも、対人用は分が悪いだけだけど、対モンスター用の銃はプレイヤーにはほとんど無効化される」
「は?」
え、なにそれ?今度は燃費が安いぶんだけ攻撃力ゴミとか?
俺がきょとんとした顔をしていると、シュピーゲル先生はきちんと説明してくれた。
「プレイヤーの多くは『対光学銃防護フィールド展開機』ってものをつけててね」
なんだその無駄に長いものは。アクアとかだったら十回言っても覚えらんねえぞ。
「これをつけていると、光学銃の弾は無効化されるんだ」
「マジか」
「ああ。まあ、実弾銃に比べて光学銃は弾の費用がかからないぶん安上がりなんだけどね」
「なるほどな。どちらにも利点と欠点があるのか」
ふむふむ、と納得する。
しかし、本題はここからだ。
「まあ、今の話を聞いてればわかるけど、銃は相手によって使い分ける必要があるんだ。そして、強い銃はモンスターからしかドロップしない」
「鍛冶屋とかは無いのか?」
「あるにはあるけど、作れるのは銃弾ぐらいかな。噂では剣も作れるって聞いたけど」
「銃ゲーで剣使う奴いるのかよ」
「ははは、いないと思うよ」
近づいたら蜂の巣だろうからねと、笑いながらいうシュピーゲル。
今までの話からなぜここに来たのかを理解した俺はシュピーゲルに問いかける。
「光学銃ってどんなのがいいんだ?」
「そうだね。まあ、これからのステフリを考えてからの方がいいと思うよ」
ステフリ。様々なゲームで見かけるシステムの一つ。
レベルが上がるごとにポイントが貰え、そのポイントを振り分けて自分好みのキャラを作るシステムだ。
このGGOにもそれがあり、選べるステータスはSTR、AGI、VIT、DEXなど合わせて六種類。
重い銃火器を使うのならSTR優先にしたり、速射を重視するのならAGI優先にしたりと、プレイスタイルを決める作業の一つでもある。
「ステフリか。あんまり考えてなかったな」
「僕の場合はAGIに全フリしているけど、カズマは初心者だからやってから決めたほうがいいんじゃないかな?」
シュピーゲルの提案に乗ろうと思っていると、俺はあるものを見つけた。
「なぁ、これってなんだ?」
「ん?あ、それは幸運だね。上げることは無理だけど隠しステータスの一つに分類されてるかな」
「幸運ねぇ」
俺はあることを思いついた。
「なあ、シュピーゲル。この幸運が生かせる銃ってないか?」
「えっ?あるにはあるけど」
と言って、シュピーゲルが取ってきたのは一丁の小銃。
大きさは俺の相棒ちゅんちゅん丸が二つ分ぐらいで、少し重そうだ。
「これは数少ない種類のLUKガン。文字通り幸運によって威力が変わる銃で、拳銃ぐらいの時もあれば対物狙撃銃ぐらいの威力の時もあるんだ」
「へぇ、そうか」
「でもオススメはしないよ。かなりシビアだって聞いたこともあるし、メインアームに使うのには向いてはないよ」
「大丈夫だって。俺の運を信じろ」
シュピーゲルから小銃を受け取る。
見た目どおり、ずっしりとした重みのある銃は天井の照明を反射して黒光りしている。
「買うにはどうしたらいいんだ?」
「そこの棚の決算ボタンを押せばいいよ」
シュピーゲルが指さす方には、これと同じ銃が飾られてありその横にはタッチパネルがあった。
タッチパネルを操作して決算する。
「よし、今日からお前が相棒だ」
俺は期待に胸を膨らませて決算ボタンを押す。
そして、出てきたのは、黒光りする銃、
「カズマ、お金が足りないよ」
ではなく、所持金不足の文字だった。