ソードアート・オンライン ~幻影の騎士~   作:ELS@花園メルン

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今回は前回最後に少しだけ出ましたけど、原作2巻、アニメ3話の赤鼻のトナカイ編です。
といっても、ある程度の話は出てたから、ボス戦の話になるんですけど。

オリ主がキリトに喝を入れて、だいぶん改変がありましたが、それからどんな風にクリスマスボスと戦うのか、といった感じです


赤鼻のトナカイ

2023年12月22日 アインクラッド第48層主街区≪リンダ―ス≫

 

 

俺とキリト、それに個室でのやり取りゆえに、普段の装備では無く、黄色のセーターに装備を変えている≪鼠≫のアルゴは、食事兼情報交換を行っていた。

 

 

「≪還魂の聖晶石≫?それが蘇生アイテムの名前か?」

「あア。35層、迷いの森に存在するヒイラギの樹の下に25日の0時にプレイヤーが訪れていると、そこにはクリスマス限定のボスモンスターがやって来るそうダ。この情報はまだ知ってるのはオネーサンくらいダ。だけど、迷いの森は広大なうえに時間ごとにマップの配置が変わるってのは、既に知ってるだロ?で、そのヒイラギの樹へと確実に到達するためのキークエストが今日から45層で開始されるそうなんダ」

「いいのか?そんな情報を俺たちに先売りして、まぁ、買うんだけどな」

「毎度、シキ坊。まぁ、確定してない情報を売るっていうのは、あんまりオネーサンの性分じゃないから、値段は安くしておいたヨ。それに、シキ坊には最前線の装備の余ったのを分けてもらってるからナ」

 

 

ニシシと言いながら、アルゴは情報についてのメッセージを俺に送ってきた。

 

 

「だけど、無茶はするなよナ?キー坊なんていっつも無茶しかしてないのをオネーサンは知ってるんだゾ?」

「…ん、ん、ぷはぁ。分かってるよ。レイドまでは行かなくても、パーティーを組んで戦うようにするさ」

「本当だナ?シキ坊、頼んだゾ?キー坊のことだからフレンドが少ないのは分かってるから、シキ坊が先導しないとパーティプレイなんてやらないんだからナ」

「パ、パーディーは組んでるさ!俺の場合、パーティーはむしろ邪魔になることの方が多いっていうか……」

「…前にシキ坊以外でパーティーを組んだのは…?」

「———階層ボス攻略の時に、割り振られたパーティー…。ちなみに、シキとしか会話して無かった」

「ダメだロ!?この引きこもり!ボッチ!黒づくめ!!」

「な!?お前だって、どうせ一人で鼠のように攻略してんだろ!?」

「いや、それは違うぞ、キリト。アルゴは普段はマントで姿を隠してるけど、オフの時は別装備で他のプレイヤーたちと狩りや攻略してるっぽいぞ」

「なん……だと!?」

「いや~、中層の情報を手に入れるにはやっぱり、中層プレイヤーから聞くのが手っ取り早いからナ~。もちろん、フレンドだってかなりの数がいるヨ。お得意様も含めると結構いるんじゃないカ?」

 

 

と、自慢げにアルゴがしゃべると、キリトはうなだれる。

 

 

「う、嘘だ…。こいつにだけは負けてないと思ってたのに…」

「シキ坊だって、固定パーティー組んでるのがいるんだろ?血盟騎士団の人間や鍛冶師の子、あと≪吟唱≫スキル持ちの子なんかと」

「まあな。と言っても、ノーチラス繋がりでの交流だけど。こいつよりかはフレンドは断然多いさ」

「お、俺だって、その気になれば、フレンドくらい…」

 

 

と、ぼやくキリトを笑いながら、机の上の料理を食べ、アルゴがキリトへ尋ねた。

 

 

「…キー坊。お前はまだ引きずってんのカ?忘れろ、なんて野暮は言わないけどサ——「これは、ある種のけじめみたいなものだよ。あの日、シキにボコられてからも俺の中では黒猫団の皆の事が頭に残ってる。だからこそ、俺はせめて前を向いて歩けるように、新たにスタートを切りたいんだよ」——そっか、キー坊のけじめ、か。よし!私も手伝ってやるよ!」

 

 

と、キリトの決意を聞き、アルゴはそれまでと話し方を変え、そうキリトに話した。

 

 

「手伝う?ってか、アルゴ、お前の喋り方…!」

「別にいいじゃんか。さっきまでのは商売モード、今は商売なんてするつもりも無いし、オフモードなんだから素で話したっていいだろ?」

「…いや、俺、さっきまでのも素なんだなぁって思ってた」

「俺も」

「はぁ!?お前ら、私を何だと思ってるんだよ!?ここはゲームなんだし、キャラ作ったって別にいいだろ!!」

「悪かった、悪かったって。…ありがとう、アルゴ。手伝ってくれるって言ってくれて俺、嬉しかったよ」

「い、いや、別に…。ま、まあ!お得意様が困ってるんだったら助けてやらないとなって思ってたんだよ!寛大だなぁ、私って」

 

 

と、少し顔を赤らめながらアルゴはそう言っていた。…照れてるなアレ。

その後、お開きとなり、キリトとアルゴはそのまま45層のクエスト攻略に向かった。

一方、俺は当日のボス攻略に参加してもらえるよう、心辺りを当たっていた。声掛けはしたものの、ほとんどの人がクリスマスということでフィールドへ出るつもりは無いらしく、結果、パーティを組むことができるという返事をくれたのは、ノーチラス、ユナ、それとエギルだった。エギルはともかく、ノーチラスたちは幼馴染でクリスマスを過ごすものだと思ってたんだが、当日も普通に中層フィールドへ向かう予定だったみたいで、中層ボスなら、ということでボス攻略に参加してくれた。エギルは単純にクリスマスボスのドロップアイテムで一儲けしようとする考えらしい。流石、商売人だ。

 

 

それから二日が経ち、12月24日。

キリトとアルゴとは35層の主街区で待ち合わせをしており、エギルたちと共に35層へと向かった。35層の転移門広場へ着くとキリト、アルゴが耐雪装備に変更して待っていた。

 

 

「エギル…それに血盟騎士団のノーチラスに、えっと、確かユナ…だったか?」

「よう、キリト!今日のボス戦、よろしく頼むぜ」

「うん!ノー君のパートナーのユナだよ!君の事はシキ君から聞いてるから知ってるよ。にしても、ホント真っ黒な装備だねぇ。ノー君とは正反対だね!」

「よろしく、黒の剣士。それと、改めて、40層では助けてくれてありがとう」

「…みんな、今日は集まってくれてありがとう。これはある種、俺のわがままみたいなものだけど、それでも付き合ってくれるか?」

 

 

キリトの問いかけに、俺たちは全員が了承の意を示した。

それから俺たちは35層の≪迷いの森≫へ向かい、イベントボスの現れる区画へと事前にキリトとアルゴが入手したルートを用い、進んでいった。道中で戦闘することが何度かあったが、ソロで攻略組に参加しているプレイヤー、攻略組屈指のタンクプレイヤー、攻略組に匹敵する実力を持つ≪情報屋≫、攻略組内最強ギルドの一員、エクストラスキル≪吟唱≫の使い手と、最前線でも十二分に通用するプレイヤーが揃っているということもあり、難なく倒すことができた。

そして、イベントボスの現れるモミの樹がある区画へたどり着き、小休憩を取りつつボスの現れる時刻の五分前に俺たちはモミの樹の前に辿り着いた。巨大なモミの樹の脇から見える夜空は雪は降っておらず、星々のイルミネーションに彩られていた。街と違い、余計な明かりが無いこの森だからこそ、こんな風に星が見えるんだな、と俺は思う。

 

 

「ノー君、すごいね!!」

「うん、そうだね。リアルでもこんなきれいな星空、見たことないよ」

「こりゃいい景色だな。これだけでも来たかいがあるってもんだ」

「ここはある意味、絶好の天体観測ポイントだナ。まぁ、フィールドで天体観測なんてしゃれこんでたら、モンスターに囲まれてしまうんだろうけどナ」

「……キリト、そろそろ」

「ああ、時間だ」

 

 

視界の左端に表示されている時間が≪0:00≫になると同時に一帯に鈴の音が響き、空で何かが動くのが見えた。その動く何かは鈴の音が大きくなると共にこちらへ近づいてきている。そして、何かは一定の高さで止まり、一気に俺たちの前に飛び降りてきた。…うわぁ、なんかゾンビ顔のサンタクロースなんだけど、気持ちわるっ!?

 

 

「おいおい、クリスマスだからサンタってか?子供が泣くような見た目だなぁ!」

「そんなこと言うなってエギル。ま、オネーサンも同感だけド」

「あれが≪背教者ニコラス≫。……う、なんかあの目、不気味」

「ユナ、大丈夫?」

 

 

ボスの見た目にそれぞれコメントしてから、俺たちは武器を構え、それぞれの役割を全うすべく、行動しだした。

俺とキリトが攻撃役を担い、エギルが防御、アルゴがサポートへ回り、≪吟唱≫によるバフをユナが掛け、ノーチラスがその護衛を勤める。俺はスキル上げを行っていた片手剣では無く、主武装である≪短剣≫を持ち、≪敏捷値≫を頼りに一気に駆け抜け、斧を持つニコラスの右手を短剣ソードスキル≪ラピッドバイト≫で切り抜け、すぐさま距離を取った。今の俺の武器はダンジョンボスドロップの≪ソードブレイカー≫だ。その形状から≪武器破壊≫を行う際に有利な上、≪出血≫デバフを相手に付与することができる。最も、ボスモンスター相手に武器破壊を行うのは至難の業ゆえに、あまり行うことはできないんだが…。

俺が切り抜け、サンタが一瞬、よろめいたところをキリトが片手剣重突進ソードスキル≪ヴォーパル・ストライク≫で腹部へ突撃し、そのまま≪体術≫スキルの≪閃打≫を打ち込み、追加でダメージを与えた。サンタはキリトへ攻撃を行おうと斧を振りかぶるが、振り下ろす斧へエギルがそれを弾くようにソードスキルをぶつけ、相殺してキリトが抜け出す時間を作った。ユナのスキルにより、俺たちは今ソードスキル発動後のスキル硬直時間が短縮されており、一つ一つのスキルを発動させる時間が縮まっている。≪吟唱≫スキル持ちがいるパーティーならではの動きができるため、より速い攻撃が行える。

 

 

「■■■■■!!」

 

 

と、サンタが叫ぶと、その叫び声でサンタを運んでいたソリを引っ張っていたMob≪ホワイトレインディア≫が戦場に参戦し、後方で吟唱スキルを発動しているユナを狙い、突進攻撃を行う。

 

 

「うぉぉ!!」

 

 

盾による防御で白トナカイの突進を弾き、よろめいたところへのノーチラスがソードスキルを叩き込んでいた。

 

 

「ユナは僕が今度こそ守って見せる!」

 

 

と、意気込み、盾に武器を打ち付ける≪シールド・ハウリング≫で、白トナカイの注意を引き付けていた。

アルゴも持ち前の敏捷値と≪軽業≫スキルで軽やかに動きながら、投擲武器のナイフを活かし、サンタの注意を引き付け、俺たちの攻撃の隙を作ってくれた。1パーティに満たない人数でもそれぞれが別の役割を担っていることで、スムーズな戦闘運びをすることができた。

 

 

「キリト!スイッチ!」

「ああ!せぁ!!」

 

 

幾度となく攻防を繰り広げ、かれこれ30分は経っただろうか。

エギルの武器弾きに合わせ、キリトが片手剣4連撃スキル≪ホリゾンタル・スクエア≫を発動させ、サンタの身体を水平に4度切り抜け、正方形を形作る。それに続き、俺は≪クイックチェンジ≫を発動させ、あらかじめセットしていた片手剣に素早く装備変更し、片手剣三連撃スキル≪サベージ・フルクラム≫を発動させ、更にHPを削った。この時点で、サンタのHPバーは既にレッドゾーンの終盤に差し掛かっており、高威力のソードスキルなら削り切れるほどにまで減っていた。アルゴがサンタの眼に≪盲目≫のデバフ効果を与える≪煙玉≫を投げつけ、大きな隙を作った。

 

 

「やっちまいな!キー坊!」

「やれ!キリト!」

「もう少しだよ、頑張って!」

「行け!」

「とどめはお前が持っていけ!!」

 

 

キリトにLAを取らせるべく、俺たちはキリトにそう声を飛ばした。

 

 

「うぁぁぁぁ!!」

 

 

その声に後押しされてか、キリトは片手剣奥義スキル≪ノヴァ・アセンション≫を発動させ、サンタの残ったHPを削り切った。ボスは動きを止め、その身体をポリゴン体へと変質させ、爆散した。キラキラと舞うポリゴン体が消失し終えると同時に、本来、ボス討伐を終えると≪Congratulations≫と空中に表示されるのだが、今回はファンファーレと共に≪Merry Christmas≫という文字が現れて、何ともクリスマス感の溢れる演出だった。

目の前にウィンドウが現れ、経験値、コルが俺たちの元に割り振られた。そして、キリトには俺たちとは別にドロップアイテムが表示されていたらしく、それをオブジェクト化し、ドサッと雪の上に落とした。

 

 

「こりゃまた、でっけぇ頭陀袋だな」

「サンタ故のドロップアイテムって訳カ」

「キリト、開けてみろよ」

「ああ」

 

 

キリトが頭陀袋を開くと、中からは色んな武具、防具、換金用の宝石、クリスタル類の貴重なアイテム、レア度の高い食材など、色んなものがごった返していた。そして、最後にコロッと転がり出てきた装飾された結晶のアイテム、それをキリトが拾い上げ、そのアイテムの説明ウィンドウを可視化した。

【還魂の聖晶石】

本アイテムは、プレイヤーを蘇生させることのできるアイテムです。使用するにはポップアップメニューから選ぶ又はオブジェクト化し、『蘇生:プレイヤー名』の順で唱えると、そのプレイヤーを蘇生させることが可能です。しかし、蘇生させることが可能な時間は、プレイヤーの死亡時の効果光の完全消滅(10秒)以内とします。

テキストを読み終えたキリトはポツリポツリと話し出した。

 

 

「…分かってはいたんだ。本当はもう既に遅いってことは。でも、もしかしたら?って思っててさ。…だけど、踏ん切りがついたよ。サチや黒猫団の皆はもう帰って来ない。だったら、俺は彼らの分まで生き延びて、絶対にこの世界をクリアしてみせる。彼らが生き抜いたってことを忘れない様に生き抜いてみせる」

「なら、俺がお前のことをサポートしてやるよ!」

「オネーサンだって、同じ気持ちだヨ、キー坊!」

「僕も、何か手伝えるなら協力するよ」

「私だって!歌う事なら任せてよね!」

「とことん、付き合ってやるさ、相棒」

 

 

俺はそう言いながら、相棒の肩をたたいた。

 

 

「ありがとう。今日のお礼って訳じゃないけど、これらのアイテムはみんなで分けてくれ。俺はこれだけでいいからさ」

「ま、食材なんて貰ってもお前、料理できないし売るしか無いもんな?」

「べ、別にいいだろ。料理スキルを取らなくたって別に生きていけるんだから」

「とか言って、この前、≪釣り≫スキル取ったって言ってたよな?最初の頃、生産系のスキルなんて攻略に必要ないとか言ってたのに」

「ぐ……、それを言われると…」

 

 

と、俺とキリトはアイテム分配をしてる最中に、そうバカ騒ぎをしていた。俺は食材と鉱石、結晶アイテムを少しずつ貰った。それでもまだアイテムはたくさん余っており、アルゴは自分で使う分のアイテム類、ノーチラスたちは食材とアクセサリーを、残りは全部エギルに渡し、自分の店で売ってもらおうってことで分配の話は終了した。

その晩、キリトと共に宿へ帰って少し話をしていると、キリト宛てにメッセージと録音結晶が届き、送り主の名前を聞き俺は部屋を出た。

 

 

「…あいつにとって最高のクリスマスプレゼントだろうな」

 

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