ソードアート・オンライン ~幻影の騎士~   作:ELS@花園メルン

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気が付けばもう3年も経っていた件…

SAOですら2年でクリアされたのに、この小説はまだ...


鍛冶少女との鉱石探し

2024年1月8日 アインクラッド第38層 主街区

 

 

SIDE シキ

 

 

「鉱石が欲しいぃ?」

 

 

俺はいつも通りにほぼほぼ専属になっている鍛冶師のリズベットの元で武器のメンテナンスを行って、それが終わって雑談していると、そんな頼み事を彼女から持ち掛けられた。

 

 

「そうなのよ!いや、アンタやアスナにはいつも素材を分けて貰ってるわよ?でも、そういうのは飽くまで研磨剤や強化用のブースト素材とかじゃない?もうそろそろ自分の店を買う資金も貯まるし、ここらでレア鉱石を使った看板武器みたいなのを作って鍛冶師としての箔を付けときたいのよ!」

 

「お前のお得意さんには最前線で戦う閃光様がいるじゃんか。閃光様お得意の鍛冶師ってだけでも充分、足りると思うんだが?」

 

 

今も最前線で攻略してるであろう≪攻略の鬼≫≪閃光≫の異名で呼ばれているアスナは攻略組やそうでない中層プレイヤーや女性プレイヤーからも憧れの的として見られている。

まぁ、普段のアイツを見てる俺たちからしたら、鬼って言葉は似合わないんだが。

 

そんな俺の疑問にリズベットはうーんと唸りながら返す。

 

 

「確かに、アスナの名前は今や殆どのプレイヤーが知ってるくらいに有名よ?でも、友達を自分の名声を上げるために使いたくないっていうか…」

 

「ふーん、ま、リズベットがダチ思いの良い奴ってのは分かったよ。それで、鉱石に宛てはあるのか?」

 

 

俺がそう聞くと、リズベットはとある層のマップデータを開きながら、俺に説明し始めた。

 

 

「そこら辺のリサーチはバッチリよ!アルゴから聞いたんだけどね、30層の山型のダンジョンにハイスミス以上のプレイヤーが行くと出現するボスがいるらしいのよ」

 

「ハイスミスってことは、鍛冶系のスキル2つ以上持っててかつ、鍛冶スキルが600越えだったか…?」

 

「そう!私がこの間、600超えたから発生条件は達成してるのよ。でも、いくら下の方の層とはいえ、ボスモンスターを一人で相手にするのは厳しいわけよ!」

 

「―――で、最前線で戦ってる俺を呼んだと?」

 

「まぁ、そういうわけよ」

 

 

現在、最前線は52層で、その安全マージンは階層数+10だ。俺やキリトはソロかコンビだから安全マージン以上にレベルを上げて攻略している。

少なくとも、目的の30層に出てくるボスよりも30はレベルが上ってことだ。

 

 

「私も一応、50くらいまでレベルは上げてあるけど、やっぱり2人だとキツイかしら?」

 

「いや、大丈夫だ。守りながら戦うってなると負担が大きいかもしれないけど、リズベット自身も結構マージンを稼げてるなら、問題ない」

 

「ホント!?それじゃあ。早速行きましょ!!」

 

 

探索が決まったや否や、リズベットは店の閉店準備を行い、アイテムの確認を始めた。

 

 

「あ、店閉めるんなら、アスナに連絡しとけよ?お前、この前もレベリングしに行っててアスナに心配されたんだろ?」

 

「は!そうだったわ!―――って、なんでシキが知ってんのよ!?」

 

「そりゃ、心配性なお前の友人が話してくれたからだよ」

 

「ア~ス~ナぁ…」

 

 

閉店作業が終わり、アスナにリズベットがメッセを飛ばし、俺たちは目的地の30層に向かった。

30層は中央を大きな河が走り、そこを境に荒野と山脈地帯が広がっているマップだ。

主街区は荒野側にあって、河を渡る手段を持つNPCを雇って、向こう岸に渡る必要がある。

 

 

 

「案内はここまでになるよ。後は頑張ってくれ、剣士様!」

 

「ああ、ありがとう」

 

「助かりました!」

 

 

船乗りNPCに礼を言って、俺とリズベットは山脈地帯に足を踏み入れた。

俺は熟練度上げを目的として、≪槍≫カテゴリ武器の≪スコーピオンテイル≫というサソリ型のボスからのドロップ品を装備した。

 

 

「そろそろ安全地帯を抜けるから、戦闘にいつでも入れるようにしとけよ?」

 

「分かったわ!アンタ、今日は槍を使うのね」

 

「ん?まぁ、熟練度上げだよ。こないだ片手剣が上がりづらくなったから、そろそろ武器を変えようと思ってな」

 

「ホント、出鱈目よね、アンタのスキル。今、熟練度はどのくらい上がってるんだったかしら?」

 

「一番初めに使い始めた≪短剣≫スキルはコンプリートしてるし、隠蔽もカンストしてるな。後は武器スキルの高い順だと片手剣、曲刀、槍、刀だったかな――――なんだよ、そのジト目は?」

 

 

スキル熟練度について聞いてきた等の本人がジト目で俺のことを見ていた。

 

 

「アンタって…もっと、他の生活系スキルとか無いのかしら?」

 

「あ?俺≪料理≫スキル取ってるぞ?」

 

「はぁ!?アンタが料理!?」

 

 

そんなに俺が≪料理≫スキルを持っていることが意外だったのか、リズベットは驚いていた。

 

 

「最前線で籠ってると野宿なんてザラだから飯の問題もあるんだよ。基本はキリトとコンビを組んでるからキリトがキャンプ用の≪サバイバル≫スキル、俺が料理担当って訳だ。熟練度はそんなに高くないけどな」

 

「意外過ぎてなんて返したらいいか分かんないわ。サバイバルスキルってどんなスキルなのよ?」

 

「≪索敵≫の派生ってこともあって、森の中での索敵向上とか、スキル所持者が行った焚火が焚かれている間は、レベルが下のmobが沸かないとかだな」

 

「へぇ、中々便利ね。しかも、アンタの相棒って当然だけどトップレベルよね?てことは、殆どモンスターが寄ってこないんじゃない?」

 

「まあ、そうだな」

 

 

スキルに関しての話を時々しながら、山道を登っていき、俺たちは目的のダンジョンにたどり着いた。

 

 

「ここね。確か、ここの奥まで行くんじゃなくて、途中でボスが沸くのよ。頑張りましょ、シキ!」

 

「ああ、気を付けろよ、リズベット」

 

 

そして、俺たちはダンジョンに足を踏み入れた。

30層の山脈エリアには下層で出てくるコウモリ型のモンスターが出てくるので、ダンジョンの中を飛んでいたり、何もいないように見えても、天井からぶら下がっていたりする。

 

 

「リズベット、戦闘準備!」

 

「了解!」

 

 

天井をぶら下がっているコウモリに安物のピックを投げつけ、こちらに注意を向けさせ、≪槍≫ソードスキルの≪フェイタルスラスト≫を放つ。

スキルによって俺は槍の突進でコウモリたちに突っ込み、飛行を邪魔されたコウモリたちが地面に落下していく。

落ちたコウモリたちをリズベットが一体ずつ確実に止めを刺していき、難なく戦闘を終えた。

 

 

「ナイス、リズベットも中々に動けるじゃんか」

 

「当然よ!伊達に一年間SAOに潜ってるんじゃないですからね!」

 

「その調子で頼むぞ」

 

 

正直、安全マージンを充分に確保してるから、苦戦することは無く、俺たちは目的のエリアへとやってきた。

 

 

「すご…」

 

「綺麗…」

 

 

やってきたそこは、天井部分を水晶が覆っていて、その上から日の光が差してカラフルなスポットライトに照らされているようなエリアだった。

フラグが発生している今だからこんな感じに光ってんのかな?攻略でやってきたときは、こんなスポットじゃなかったし。

 

 

「シキが前に来た時もこんなんだったの?」

 

「いや、多分、ボスが沸くフラグが立った時だけ、こういう感じになるんだろうな」

 

「って、ことは、アレがそのボスってことでいいのよね?」

 

 

リズベットの見る先には如何にも鉱石をドロップしそうな感じの大型の蜘蛛がエリア内を歩いていた。

その蜘蛛の腰から下部分は鉱石を食べて育ったという設定があるからだろうか、体から周りにある水晶と同じ感じの鉱石が生えていた。

 

 

「さて、ボス戦開始だ。攻撃は基本俺が対応するから、その隙にリズベットが懐でそのメイスを叩き込んでくれ」

 

「まっかせなさい!!」

 

 

俺は槍を構え、ステータスに任せたスピードでブーストしたスキル≪ソニックチャージ≫を開幕、水晶蜘蛛に叩き込んだ。

攻撃を受け、少しよろめいた蜘蛛が俺たちとの戦闘態勢に入って、HPバーと名前が表示された。

名前は、グラトニータランチュラ、暴食の蜘蛛ってところか。その名前通りにバクバク水晶を食って回ってんだろうな。

 

 

「■■■■■!!」

 

 

水晶蜘蛛はその脚を俺に振り下ろして攻撃してくるが、俺はそれに当たることなく余裕をもって躱す。

振り下ろした脚はダンジョンの床に当たると、ダンジョンの床の方が砕けていた。

 

 

「気を付けろ、こいつの脚は鉱石を食べたことで、強度がかなり増してるみたいだ!」

 

「わ、分かったわ!ええーい!!」

 

 

ガキィィィィン!!

リズベットの振り下ろしたメイスが蜘蛛の頭部に当たるが、金属同士をぶつけ合ったみたいな甲高い音が響き、蜘蛛の方の皮膚部分が少し傷ついただけだった。

 

 

「武器だけじゃなくて、防具にも気を使ってんのか。贅沢な蜘蛛だな、オイ!」

 

 

水晶を食べ成長しているであろう蜘蛛は、その体の殆どが硬質化していて、かなりの防御力を誇っていた。

 

 

「ど、どうするの、シキ?」

 

「硬いけど、全くダメージが入ってないわけじゃない。多分、斬撃や刺突系の攻撃だと相性が悪いかもしれないけど、リズベットは打撃武器だ。

時間はかかるが、少しずつ削っていくぞ!二人しかいないから結晶アイテムもヤバいと思ったら、すぐに使ってくれ!」

 

「う、うん!」

 

 

相性の悪いフロアボスなんかはこれまでも散々戦ってきた。

けれど、そういう時はレイドを組んでいたから、敵への相性によって、適宜アスナや他の攻略班が最適な攻撃を行える奴を選抜して、ボス戦を行っていた。

今だって、俺と奴の相性は悪いが、リズベットが攻撃に適している。

なら、俺のやることはリズベットが存分に攻撃できるように守るだけだ!

 

俺が守り、リズベットが攻める。

これを繰り返すことで、ボスのHPを少しずつだけど削れていた。

そして、ボスのHPゲージが最後の段に達したとき、ボスの様子が突如、変化した。

 

 

「行動パターン、変わるぞ!リズベット、一旦下がれ!」

 

「何が起こるっての!?」

 

 

蜘蛛が雄たけびを上げると、天井から水晶が落下してきて俺たちの上に降り注いできた。

 

 

「リズ!上方警戒!水晶が落ちてくるからバックラーで防げ!!」

 

「ひゃぁぁぁぁ!ヤバすぎるでしょぉぉぉ!!」

 

 

降り注ぐ水晶をリズベットはバックラーで防ぎ、俺はリズベットの方にも意識を向けながら、水晶を躱し、当たりそうになる物だけ武器で払ったりして、何とかしのいだ。

ボスの方は、水晶落下攻撃を行っている間は、向こうも攻撃してくるそぶりは見せないようで、水晶の落下が止まると同時に再び動き出していた。

 

 

「残りゲージ一本!気張れよ、リズ!!」

 

「こんのぉぉぉ!!その体にため込んでる鉱石、全部吐き出してもらうわよ!!」

 

 

再び、ボスへの攻撃を再開した俺たちだったが、さっきまでの攻撃パターンに加え、水晶落下の範囲攻撃も加わったことにより、時間がかなり掛かったが、残り僅かまで追い詰めることができた。

 

 

「残り数ドット!リズ、フルアタックで止めを刺すぞ!」

 

「了解!!」

 

 

俺は回転と突きの連続コンボの≪ダンシングスピア≫を叩き込み、リズベットもメイスの6連撃ソードスキルを叩き込み、ボスのHPを削り切った。

 

パリィィィン!!

 

と、ボスの体が砕け散り、俺たちの前にCongratulationの文字と共に、経験値やアイテムが表示されていく。

 

 

「「や、やったぁぁぁぁ!!」」

 

 

俺たちはガッツポーズをし、その後ハイタッチを交した。

 

 

「私、ボス戦ってあんまり経験ないからか分からないけど、こんなにキツイのね…。アンタら攻略組を尊敬するわよ…」

 

「まぁ、今回の場合、相性の問題や人数の問題もあったし、結構苦労したかな。けど、それに見合った報酬も出たんじゃないか?」

 

「ハッ!そうだ、鉱石鉱石!!―――やったわ!ラストアタックボーナスでレア鉱石出てるし、ドロップ品でも鉱石がたくさん!!ボス戦ってこんなに貰えちゃうのね」

 

 

喜ぶリズベットを見てから、俺も自分のウィンドウを確認すると、経験値やコル、ドロップ品が表示されていた。

 

 

「ほら、ついでにこれも持ってけ。鉱石系だとどうせ俺はお前に渡すだけだしな」

 

「え、いいの!?やったぁ!これでいっぱい装備を作れちゃう!」

 

 

かなりの時間が経過して、疲れたこともあって、俺たちは帰りは転移結晶を使って、38階層に戻った。

 

そして、レア鉱石を使ったことで翡翠色の綺麗な片手剣を作ることができ、大変ご満悦になったリズベットだったが、この剣に関して、悲鳴を上げることになるとは、この時の俺もリズベットもまだ知らなかった。




「そういえば、シキ?アンタ、戦闘中にリズって呼んでたわよね?」

「そうだったか?悪いな、戦闘中だとやっぱり略称の方が呼びやすいんだよ」

「そういうことなら、これからもリズって呼んでいいわよ!今までもずっとプレイヤーネームで呼んでたし、私とアンタの仲じゃない!」

「俺らもなんだかんだ付き合い長いからなぁ。リズがそういうんだったら分かったよ」
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