ソードアート・オンライン ~幻影の騎士~   作:ELS@花園メルン

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騎士と共に過ごす一日

2023年5月 デスゲームが始まって半年近くが過ぎた。俺たちプレイヤーは100層もある塔の約3分の1をクリアしていた。

 

今日も今日とて俺は迷宮区の攻略を行っていた。でも、今日はいつもと顔触れが違う。普段はキリトという全身真っ黒装備の奴とコンビを組んで攻略をしてるが、キリトは今、中層で用事があるからと一旦攻略を中断しており、代わりと言ってはなんだが、白を基調とし、赤いラインの入った鎧と白のロングマントを装備している片手剣使い【ノーチラス】と攻略していた。ノーチラスは第25層から≪攻略組≫と呼ばれる最前線で攻略を行う団体に参加してきた≪血盟騎士団≫と呼ばれるギルドの一員で、その新入りだった。第25層からの快進撃の後、血盟騎士団団長の【ヒースクリフ】からスカウトされ、ノーチラスは血盟騎士団入りを決意したらしい。

だけど、最前線で戦うということはそれだけハードで、要求されるレベルも相当なものだった。だからなのか、ノーチラスは年齢が近いということで、コンビで攻略組に参加している俺こと【シキ】にレベリングの手伝いを頼んできた。で、俺とノーチラスは≪クォーターポイント≫と呼ばれる他の層よりもレベルの高い25層の迷宮区を攻略していた。

 

 

「スイッチ!」

「ああ!!」

 

 

俺がMobの攻撃を跳ね上げ、それで作られた隙にノーチラスが片手剣4連撃ソードスキル≪バーチカル・スクエア≫を発動し、MobのHPを削り切った。Mobを構成していたポリゴンの爆散と共に、俺とノーチラスの目の前にウィンドウが表示され、更にお互いのレベルが上がったことも表示された。これで俺のレベルは43、ノーチラスのレベルは35になった。俺たちのいる迷宮区タワーの16階には安全地帯があったので、そこへ向かって休息をとることにした。

安全地帯へ着いた俺たちは二人での攻略ということで周囲全体へ気を配りながらの攻略に少し疲れたので、戦闘用の装備を外してラフな格好に装備を変えた。

 

 

「ふぅ、お疲れノーチラス」

「ああ、シキも付き合わせちゃってごめん」

「いいって。レベル上げするつもりだったから。それにソロで潜るよりかはコンビとかパーティーの方が効率もいいから」

「そういや、いつもの黒づくめの彼はいないんだね?」

「アイツ?ああ、なんか中層で出会ったギルドの育成をしたいっていうから置いてきた!」

「そ、そうなんだ。でさ、僕の動きどうだった?やっぱり、一軍には程遠いかな?」

「まあ、そうだな。同じ戦闘スタイルのヒースクリフと比べるとやっぱり、まだ怖がってる節はあるかもな」

「て、団長と比べられたら僕なんて雲泥の差だよ!?」

「でも、さっきもだけどスイッチの連携とかは取れてたから、パーティー攻略でなら充分、一軍の連中とも渡り合えると思うぞ」

「ほ、本当か!?」

「だけど、もう少しレベルは上げといた方が良いかもな。多分、安全マージンに届くまでは攻略には入れないだろうし」

「やっぱりか…。後、5は最低上げないとダメって事か」

「とりあえず、これからこのフロアの未踏領域を探索したら今日は帰ろうぜ。お前には待ってる奴がいるんだろ?」

 

 

俺が今後の方針と揶揄いの意味を込めた言葉をノーチラスへ贈ると、ノーチラスは顔を赤面させて俺に、

 

 

「ご、誤解だって!ユナと僕はそんなんじゃ——!」

「へぇ、ユナって子が待ってるのか~。これ、情報屋へ売りつけたらいい値しそうだな~」

「は、謀ったな!?シキ!」

「ははは、冗談だって!流石に人様の恋愛事情を公にはしないから…多分」

「多分って言ったな!?いいな?絶対、言うなよ!!」

 

 

と、言われたので仕方なく、俺はその情報は秘密にしておくことにした。

 

 

「じゃあ、休憩がてら飯でも食べるか。この前、良いもんがドロップしたからな。これ、飲もうぜ」

 

 

そう言って、俺はコルク栓がされた500ミリペットボトルくらいの大きさの瓶を取り出した。

 

 

「それって、≪ルビー・イコール≫だよね!?敏捷値が上がるっていう飲み物の!貴重じゃないのかい!?」

「そりゃ、貴重だろ。でも、別にだから取っておいたところでステータス上昇値が上がるわけでも無いんだぜ?それなら、友達と飲んでお互いが強くなる方が俺は良いけどな」

「…友達って思ってくれてるんだ。よし!なら僕もその飲み物に合う食べ物を出すよ!!」

 

 

そう言って、ノーチラスが取り出したのは重箱サイズのバスケットで、それを開くと様々な具材のサンドウィッチが敷き詰められていた。

 

 

「うぉ!?すげぇ旨そうだな!」

「もう、バレてしまったからね。実はユナに作ってもらったんだよ。今日、二人で攻略に出るって言ったら、この前ドロップしたA級アイテムを使って作ったサンドウィッチだよって持たされたんだよね」

「A級!?俺の飲み物なんかより全然いい奴じゃないか!?ってか、これだけ綺麗に作れるってことは、そのユナって子は≪料理≫スキル結構上げてんじゃないか?」

「確か、600くらいって言ってたかな。でも、副団長も確か料理スキル上げてるって言ってたし、そう珍しくも無いんじゃないかな?」

「あぁ、そう言えばアスナも上げてたな……。スキル上げにキリトと付き合わされたのを思い出すぜ…」

「僕もユナに色々と食べさせられたよ…。ま、まあ、食べようよ!絶対、美味しいからさ!」

「そ、そうだな!」

 

 

俺とノーチラスはかつての思い出を振り返り、少しトラウマになりかけていた料理スキル上げの手伝いを思い出していたが、その思い出を払いのけ、目の前のサンドウィッチを食べだした。まずは、卵から貰うか。そう決めた俺は卵のサンドウィッチを一口かじった。

 

 

「美味っ!?凄いな、これ!下手なNPCレストランなんかとは比べ物にならない旨さだぞ!」

「あぁ、やっぱりユナの料理は美味しいなぁ」

 

 

ノーチラスはユナの料理を食べて、身を震わせていた。それほどなのかっ!?まあ、俺もあまりの旨さに驚いて声を荒げてしまったから人の事言えないが。

そのまま、俺たちは≪ルビー・イコール≫とサンドウィッチを平らげ、攻略を再開した。今度は往路の時とは別にノーチラスが前衛で敵の攻撃を弾く役割、俺がスイッチで攻撃を行う役割で攻略を行っていた。

未踏領域には未だ開錠されていない宝箱がある程度残っていた。専用の≪鍵≫アイテムが無いと開かない宝箱がいくつかあったが、こういった時の為に俺は少し値は張るが、NPCショップで≪鍵≫を購入してあるので、次々と宝箱を開けていく。

 

 

「お!転移結晶が3つ!ほら、ノーチラス、2つやるよ」

「え、いいのかい?」

「俺はストックが残ってるから別に構わねぇよ。ほら」

「あ、ありがとう」

「さってと、次は何かな―――って、これなんだ?竪琴?」

「だね」

「生憎、俺は≪吟唱≫スキル上げてないから使えないな」

「あ、じゃあ、僕が貰ってもいいかい?ユナが実は≪吟唱≫スキル持ちなんだよ」

「珍しいな。≪吟唱≫スキルはバフ専門のスキルだけど、一定時間、歌わないとバフが発動しないから、結構使おうとする奴がいないって有名なスキルなんだよな。解放条件もまだ未知らしいし」

「まあ、ユナ自身は歌うことが好きだからあのスキルを取れて喜んでたよ」

「じゃあ、街へ帰ったらトレードでそっちへ渡すよ」

 

 

俺とノーチラスは竪琴を見つけると引き返し、迷宮区を降りようと決めた。

しかし、その途中に隠し扉があり、その扉が開かれた。

 

 

「隠し扉だな。しかも、まだ誰も手を付けてない奴だ」

「どうするのさ。宝箱があるのは見えるけど、≪モンスターハウス≫かもしれないよ?」

「それもそうだな…。よし、じゃあ、また今度機会があれば探索しに来よう。俺らも攻略しっぱなしで装備の耐久も減ってきてるしな」

「分かったよ。じゃあ、帰ろうか」

「おう」

 

 

俺とノーチラスは部屋の探索を断念し、そのまま戻ることにした。

 

 

「早速、敵だね、シキ」

「ああ。じゃあ、行くぞ!」

 

 

俺とノーチラスは俺たちより少しばかり背の高いトカゲ姿のMob≪ワイルド・リザードソルジャー≫との戦いを開始した。ノーチラスが剣を盾に打ち付け、敵の注意を引き付ける盾スキル≪シールド・ハウリング≫を発動し、トカゲソルジャーの攻撃を誘発し、それを盾で防ぎ、一気に盾スキルの攻撃技≪シールドバッシュ≫で押し返し、無防備な状態を作った。

 

 

「シキ!スイッチ!!」

「ああ!行くぜ!」

 

 

俺はノーチラスと入れ替わり、短剣12連撃スキル≪アクセル・レイド≫を発動し、一気に敵のHPを削った。更にノーチラスが追い打ちをかけ、片手剣重突進技≪ヴォーパル・ストライク≫を放ち、残った敵のHPを削り切った。

 

 

「よし、ナイススキル!」

「そっちもね!」

 

 

俺たちはその後もトカゲソルジャーたちを相手にしつつ、迷宮区を抜け、25層主街区≪ギルトシュタイン≫へ帰ってきた。俺とノーチラスはトレード画面を開き、お互いに利の有るように今日の戦利品を分けていく。≪リザードソルジャーの鱗≫や≪リザードソルジャーの骨≫などの倒したMobの素材が大半で、後は未踏領域で発見した結晶アイテム、ポーション類、指輪や腕輪の装備アイテムが残り少しだった。それと、途中で見つけた竪琴もノーチラスへ渡し、俺とノーチラスはトレードを終了した。

 

 

「はぁ、結構、動いたなぁ!お疲れ、ノーチラス。レベルも今日だけである程度上がったんじゃないか?」

「そうだね。33から帰りの狩りのお陰で、37まで上がったよ。にしても、やっぱり≪クォーターポイント≫の敵は強いんだね」

「そうだな。その分、経験値とコルもウマいけどな。じゃあ、俺は武器のメンテに行ってくるわ」

「メンテなら僕も行くよ?この層のNPCスミスでしょ?」

「あー、いや、行きつけのプレイヤー鍛冶師がいるからそこに行くんだよ。今度、機会があればお前も来るか?」

「そうだね、機会があったらお邪魔させてもらうよ」

 

 

俺は18層の主街区へと転移し、≪レンタルショップ≫と呼ばれる低価格で一定期間だけ店を借りることができる場所へ行き、そこで鍛冶屋を開いている≪1層≫からの腐れ縁の店へ向かった。ドアを開くと、ドアに付いていたベルがカランカランと鳴り、店内に響き渡る。すると、奥から以前は茶色だった髪をピンクに染めて、鍛冶屋とは思えないフリルエプロンの店主【リズベット】が顔を出してきた。

 

 

「いらっしゃ―――って、シキか、攻略どうだったの?」

「いや、今日は行ってないから。知り合いのレベル上げに付き合ってたんだよ」

「ふ~ん、それって女の子じゃないでしょうね?」

「いや、男だから」

「まあ、そうよね~!アンタに女の友達なんてできる訳無いもんね~!あ、とりあえず奥、来なさいよ!アスナもいるから!」

「は?いや、俺メンテに来ただけなんだけど」

「いいからいいから!」

 

 

俺はリズベットに引っ張られるがまま、奥へと連れていかれた。奥には白い装束に赤いラインの服に赤い短めのスカートを履いた女性プレイヤー、一層からキリトと共に行動していた【アスナ】がいた。

 

 

「よぉ、副団長様」

「もう、シキ君、その呼び方はやめてよ!」

「ん~気が向いたらな。で、なんで俺を連れてきたんだよ、リズベット」

「別に理由は無いわよ。強いて言うなら、アンタが今日、攻略したときの話でも聞こうって思っただけ」

「だから、俺は今日最前線は行ってなかったって!アスナなら知ってるだろうけど、血盟騎士団のノーチラスって奴と一緒に25層の迷宮区に潜ってたんだよ」

「ノーチラス君て先月、ギルドに入ったあの?」

「そうだよ。キリトとは別行動なんだよ。残念だったな、アスナ」

「もう!揶揄わないでよ!」

「ちょっとちょっと!二人してそのキリトって奴の話で盛り上がんないでよ!私、キリトって奴の事名前しか知らないんだから!」

 

 

と、そのまま三人で会話した後、アスナはギルドの方へ戻るからと、血盟騎士団本部へと向かった。

 

 

「じゃあ、これ今日の分な。素材と装備アイテムが少しあるから、資金の足しにしたり、自分で使ってくれ」

「毎度~!いや、悪いわね!店建てる手伝いさせちゃって!まあ、もうちょいで目標までは貯まるけど」

「俺の方だって、代わりにメンテをただでしてもらってるしお互い様だろう。それじゃあ、俺も帰るわ」

「はーい、またよろしくね!」

 

 

俺もリズベットのレンタルホームから出て、そのまま最前線の狩場へ向かった。

今、最前線の33層は広大な砂漠が舞台となっている。この層はプレイヤーへのデバフが常に発動しており、素肌を晒しているとじわじわとHPが削られていってしまう。なので、俺は濃い緑色のフードマントの装備≪スカラベ・ロングコート≫を装備して、そのデバフを最大限無効にしている。武器は一層から扱っていた≪ウィンドダガー≫を三層のクエストで発生したインスタントマップのダークエルフの鍛冶屋でインゴットに変え、≪シャープネスダガー≫へと打ち直してもらい、それがまたレアな装備で、インゴットへ変えると次に作成する武器の強化試行回数が最大解放されているという能力持ちだった。で、今使っているのがそれを更にインゴットにして武器へと打ち直した≪サイドワインドナイフ≫という、長い刃の下にもう一枚刃がついているナイフだ。この武器は攻撃がクリティカルで相手にヒットした場合、半分の威力でもう一撃攻撃が通るという、なんともレアな武器だった。そもそも、ウィンドダガーの時点で既にレアだった武器を更に打ち直してどんどん強化してるので、それくらいの性能は発揮してもらわないと、俺が困る。キリトに頼んで素材集めに一日中付き合わせたから、流石に申し訳ないなとは思っているから。

 

で、俺はそれらの装備を纏い、広大な砂漠にいる巨大なアリの群れを相手に戦っている訳だが、このアリ、厄介なことに群れで行動しているから一度に大量の敵が襲ってくるのだ。対するこちらは一人。経験値の独占はできるものの、一回の戦闘で中々に精神的疲労と武器の耐久値の減少が大きく、長時間の戦闘は難しい。

 

 

「あー、しんどっ!どれだけアリばっか倒しゃいいんだよ…!……はぁ、もう帰るか」

 

 

俺は武器を納刀し、来た道を引き返す―――つもりだったが、

 

 

「嘘だろ、砂嵐とか勘弁してくれよ…」

 

 

砂漠フィールド特有の砂嵐により、帰る道を見失ってしまった。しかも、マップを確認しようにも、砂嵐中はマップにジャミングが入り、マップが表示されないのだ。

引き際を見誤った俺のミスでもあるが、この砂嵐、不幸なことに一日にランダムで数回起こるのだ。故に攻略も難しく、準備を念入りに行っているんだが…。

しょうがない、と腹をくくり、俺はちょうど近くにあった洞窟へ入り、そこで砂嵐が止むのを待つことにした。

 




今回、オーディナル・スケールで登場したエイジことノーチラス君がでてきました!
一応、主人公とは友人の関係です。

さて、これから先、どうなることでしょう!
次回は主人公のソロ攻略になります
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