「お姉ちゃーん!朝ごはん出来てるよー!」
「もう少し寝かせてー……」
「もう学校行くからもう起こさないからねー!朝ごはん冷たくなってても知らないよー!」
「んー。分かったー。」
話しているうちに目が覚めた私は、ベッドの上で背伸びをしながら返事をした。のんが階段を降りていく音が聞こえる。ベッドから降りて一階のダイニングに向かおうとした時、急におなかが痛くなった。
「……今日もだ。」
スプドリでひびきさんに負けてから、朝起きるといつものようにおなかが痛くなる。
チクチクと刺すような痛みに耐えながら一階に降りると、ママがお店の準備をしていた。
「おはよう、らぁら。」
「うん。ママおはよう。」
「今日は大丈夫そう?」
「ううん。おなか痛い。」
私がそう言うと、ママは少し悲しい顔をした。
「……そう。分かった。学校には
ママが電話しておくから、朝ごはん食べたら部屋でゆっくり休んでね。」
「うん。」
今日で学校を休んで3週間が経つ。仮病なんかじゃなくて、本当におなかが痛くなる。
私が朝ごはんを食べた後、部屋に戻るとママが学校に電話している声が聞こえてきた。
「すみません。真中らぁらの母です。今日も腹痛で学校に行かないそうです。」
それを聞いて、私はママに行かないんじゃなくて本当に行けないんだって言いたくなった。
私の状態をママが理解してくれなくて悔しいからなのか、最近学校を休んでばかりで申し訳ないからなのか分からない涙がこぼれそうになる。
私は、涙を裾で拭いながらベッドに横になった。すると、また眠気が襲ってきた。私は、その眠気に従うように目を閉じた。
*
次に目が覚めたのは昼の12時過ぎ頃だった。ベッドから降りると、机の上にお弁当が置いてあるのに気がついた。
私は、先に洗面所に行って顔を洗ってから机に置いてあったお弁当を開ける。ママが学校に行った時のために作ったんだと思うと胸が苦しくなった。
ママは、私に学校に行ってほしいって思っているのは分かってる。私も何回かおなかが痛いのを我慢して行こうとしてみたけど、途中からあたまも痛くなったり、ひどい時は気分も悪くなった。
学校でみんなと会いたい。だけどあの時、火事場の馬鹿力を私が出せなかったせいで負けたから、みんなに何か言われそうで怖い。私はもうどうしたらいいのか分からなくなった。
「……天才には、いくら努力しても勝てない」
あの時、天才チームに負けた直後に聞こえてきた言葉。
「らぁらちゃん達、負けちゃったねー」
「やっぱり、天才チームにはいくら努力しても勝てるわけなかったんだよ」
「最近、らぁらちゃん人気が出てきたからって少し調子に乗ってたしねー。努力チームが負けてよかったー」
あの時の言葉が、次々に蘇る。まるで、耳元でずっと言われているような感覚。
「もうやめて!」
私はうずくまり、耳を塞いで叫んだ。
「らぁらどうしたの!?」
急いで階段を上ってきたみたいで、はぁはぁと息を切らせながらママが入ってきた。ママは机のすぐ側でうずくまっている私を見つけると駆け寄ってぎゅっと抱きしめてくれた。
「大丈夫。ママがいるからね。」
私は涙が溢れて止まらなかった。
「負けたのはらぁらのせいじゃない。らぁらはよく頑張ったわ。」
「ママ……」
ママがやさしく私の頭を撫でる。
「らぁら、いつ言おうか迷ってたんだけどね?」
「うん?なに?」
私は涙を拭いながら聞き返した。
「実は、引っ越しをしないかってパパと相談してたの。」
「引っ越し?」
「そう。この前、大神田校長先生が来た時に聞いたの。校長先生の従姉妹が別の学校の校長先生をしてるって。そこに行ってみない?」
「……うん。分かった。そうする。」
私は委員長やそふぃ達と会わなくてすむようになるならそれでいいと思った。ママは私が返事をすると少し嬉しそうな顔をした。やっぱりママは私を学校に行かせたかったみたいだ。
「それじゃあ、のんにも帰ってきたら話してみるわね。」
そう言ってママは部屋から出て行った。時計を見ると時間は14時を過ぎていた。お昼ご飯にしては少し遅いけど、私は机の上のお弁当を食べる事にした。
今日のお弁当の味はいつもの味とは全然違った。