0:そして比企谷八幡は、再び守りたい場所を知る
この高校に赴任してから数ヶ月経った。
何年ぶりだろうか、青春特有のガヤガヤとした空気を抜け教室へ向かう。
まさか自分がこの雰囲気の中に一人でいた頃には、自分がこんな道を選ぶとは微塵も思わなかっただろう。
まさか、自分がこんなに変わるなんてのは。
「そうだ新人くん、あなた顧問になった部活は無いわよね?」
どこかの超強化骨格美人令嬢に似た先輩教師が声をかけてくる。
「あ、ええ。まあまだないですね。」
「ちょうど良かった!授業が終わったらちょっと付いてきてほしいところがあるんだけど。」
「あ、え、放課後ですか?ええ、何も用事はないですからいいですけど、何のようですか?」
先輩教師は意味ありげな笑みを浮かべながらくすぐるような声で言ってくる。
「君には少し知って欲しいところがあるんだよね。」
だから女性の皆さんはこういった意味ありげな言動や行動をやめてくださいと何度行ったら分かるんですかね。
「わ、わきゃりました。」
噛んだ、埋まりたい。
「そうこなくっちゃね、じゃあ放課後職員室で待ってるから。」
「はい、分かりました。」
そんな話をしてるうちにもう一限目が始まる。
学生の頃は面白くない授業なんてのは相当つまらなく睡魔を誘うだけのものだったっが、いざ教鞭を執る立場になるとまた違った苦痛を味わうことになる。
初めての定期テストでは、問題の作成も採点も時間が足りずマジで地獄を見た。
その時に、救いの手を差し伸べてくれたのがあの先輩教師だった。
マジで高性能なところとかも「あの人」に似てるよな。
私立高藤学園、それが俺の初めての赴任先だ。
マンモス、と言うよりメガトン級の高校、それこそ俺の母校、総武高校なんてこの学校に比べたらハムスターかインコみたいなものだ。
財務部とか治安部とか総務部とかマジで高校にだとは思えねえ。
そして、この学校の大きく異質なところ。それは生徒会選挙だ。
大沢事件、ここ最近で大きく賑わった事件だ。
ここではそれぞれの部署が政党のような力を持っている。そして、その中には派閥だってある。
治安部の生徒会長、毛利八雲の派閥と相対していた大沢が起こした、独裁的な行動。そしてそれに伴った治安部の次回選挙の自粛。
もうすぐ、生徒会長の立候補が始まる。注目されているのは、財務部のどことなく見覚えのあるような女子生徒と、総務部の胡散臭い男子生徒の二人だ。
普通高校とは全く相手にならないほどの権限を与えられる生徒会長、一体どんなマニフェストを出してくるのだろうか。
少し、本当に少しだけ高校時代の依頼を思い出す。一人の、目立ちすぎてあざとすぎて、いつの間にか生徒会長にされかけていた。いや、俺のせいで生徒会長に祭り上げられた一人の後輩を。
くだらないことを考えながら授業をして、あっという間に放課後になった。ほんと仕事に不真面目だな、俺は。
少し職員室で待っていると、先輩教師がやってきた。
「よ~し、待っててくれたわね。じゃあちょっと付いてきて?」
「ええ、分かりました。」
職員室から部室の並ぶ特別棟に行き、一つのドアの前に立つ。
「さあ、ここが私の持ってる部活よ。中に入って。」
「部活?何の部活なんですか?」
「あ~、まあ良いから入って入って!」
「いや、俺が良くないんですが。」
文句をたれつつ、騒がしい音の響くドアを開く。
中には数人の生徒と、机の上にコレでもかと並べられた駄菓子やジュース。
マジで何の部活だよコレ。
そう思いながらも、どことなく見覚えのある雰囲気の部屋、そして再び依頼に巻き込むこの生徒たちに向かって口を開いた。
「ども、比企谷八幡です。」
処女作うへえ