有力候補の中に部活にとって望ましい人はいない、それなら部員から候補を立てればいい。
すごく単純な解決法だ。だが、
「それよ、葉月!よし祐樹、立候補するのよ!」
「待て待て、何でそこで俺が出てくるんだよ。千里ががやればいいじゃないか、色々顔知られてるしさ!」
まあ、住吉と大島でこういう言い合いが起こると思ったわ。
「私が、祐樹がいいって言ってるの!聞きなさいよ!」
「大体、俺なんか出たって通るなんて無理だって!」
「無理なんかじゃない!」
「くそっ!!」
大島は混乱しきった様子でドアを開け駆け出してしまった。
また、生徒会長絡みの問題か。
「ちょっと美里、ゆうくんを追い詰めすぎよ!」
「だ、だって・・・。」
部室のドアに全員の視線が集まる。
「・・・・。すみません東雲先輩、少し抜けます。」
「ええ、頑張ってね~。」
「ちょっと、比企谷先生?」
「すまん、行ってくる。」
俺も半開きのドアを抜け、大島が駆けていったであろう方向へと足を向ける。
頼むからあんまり遠くには行ってくれるなよ・・・。そう願いながら走っていると、ちょっとした広場へ出た。
何か騒ぎが起こっている、現行生徒会長と・・・、大島か?あれは。
「可能性がない、と言い切るのはいささか早計じゃないでしょうか。」
「でも、俺になんて無理ですよ・・・。」
「ですが、ゼロではありません。少しでも可能性があるならそこにかけて見てはいかがですか?おおしま君。」
哀れおおしま君、どこかヒキタニと同じ香りを感じてしまうな。
「ええ、分かりました。その、ぶつかってしまってすみません。」
「もう大丈夫ですよ、では私はそろそろ行きますね。」
「ええ、ありがとうございました。」
「諦めない限り、未来は無限ですよ。おおしま君。」
会長は部下を連れ、後者の方へと戻っていく。
大島は、少し呆然としていた後に、トボトボとまた歩き始めた。
「おい、大島。」
「・・・比企谷先生ですか。」
「大島、ちょっと話いいか?」
「千里に説得でも頼まれたんですか?」
訝しげな様子でこちらに問いかけてくるが。
「いや、俺の独断だ。それに説得する気だってサラサラ無い。」
「じゃあ、一体何のために。」
「まあ、お前は色々考えすぎだ。ほら、甘いものでも飲め。」
カバンからマッ缶を取り出し放ってやる。
「あっと、なんですかコレ。なんですかこのミツバチみたいな飲み物。」
「マッ缶、知らないのか?うまいぞ。」
「じゃあ、頂きます。・・・・、甘っ!」
「その甘さが癖になるんだろ、もう10年は飲み続けてるぞ。」
「先生、糖尿になっても知りませんよ。」
そんなくだらない会話をしながら、ちびちびとマッ缶を傾ける。
「さっき会長と何話してたんだ?」
「聞いてたんですか。」
「一応な。可能性とかなんとかってところからな。」
「ええ、まあ。駆け出してぶつかって、そのまま相談に乗ってもらっちゃいました。」
「ああ、それなんだがな。」
大島に向き合い、姿勢を正す。
「お前は、どうしたい。ショッケンを守りたいのか。」
「ええ、それはそうですよ。」
「なら、明日冷静になって部員に打ち明けてみろ。お前の思いをそのままな。」
「は、はい・・・。」
「当たり前だと思ったか?」
「え、あ。いやそれは。」
顔に出てるぞ、大島。
「今のお前は少し頭に血が登ってたからな。これを伝えて落ち着いてほしかっただけだ。お前が候補になるのかどうかは俺がどうにかできる問題じゃないからな。」
「わ、分かりました。その、追いかけてもらってありがとうございます。」
「別に礼を言われるようなことはしてねぇよ。あと、コレは個人的な考えなんだがな。」
飲み終わったマッ缶をくるくる回しながら、言葉を紡ぐ。
「俺は、適任だと思うぞ。生徒会長。じゃあな。」
空き缶をそこらにあるゴミ箱に捨てて、校門の方へと向かう。
ここから先は、俺が介入する問題じゃない。部員でなんとかするべきことだ。
日はすっかり傾き、空を橙に染めている。
これでイントロ部分は終了です。
次回からはヒロイン別に物語を分けていきます。