以前投稿した内容ですが、次話の関係で投稿し直しました。
楯無視点が中心ですが、最後にオリ主の視点での一日の終わりにしています。
原作キャラ視点でのテストに近いので駄文注意報発令です。
――――Side 楯無――――
「……さて、わざわざ察して一人になってあげたんです。いい加減出てきたらどうですか?」
そうして、彼は隠れている私に声をかけてきた。見破られるとは思ってたけど、まさか気付いた上で無視していたのかしら?
「……驚いたわ。いつから気付いていたのかしら?」
「……驚いた、なんてよく言いますね。わざわざ同業にしか判らないような気配の消し方をしていたでしょう。自分がそちら側の人間だと知っていたんでしょう?」
そう言って彼は笑みを浮かべて私に訊いてくる。……その姿は銀色の長い髪と紅い眼が合わさり、空想でしかない筈の魔女のようだった。
「さて、自分になんの用でしょうか生徒会長? ……それとも、自分を尾けていたのは更識の人間としてですか?」
「っ!!」
やっぱり侮れないわね、この子。尾けていたことだけじゃなくて、私の立場を知った上での意図を訊いてきてるわ。
「そんなに驚く事ではないでしょう? 貴女がこちらを調べていたように、こちらも貴女の事を事前に調べていただけです。自分達にとってそれは当然の事でしょう?」
「あら、女の子の事を勝手に調べるなんておねーさん感心しないわよ?」
口ではそう言うものの、楯無は内心で冷や汗をかいていた。自分の方から相手を調べたことは何度もあるが、彼のように自分の事を調べて対峙してくる相手、というのはいなかったからだ。
目の前の少年は『暗部として自分より格上かもしれない』という思いが楯無の中に渦巻いてきていた。
――――――しかし、楯無の考えはある意味では正しく、そして間違っている。
楯無もリーヤも裏に関わる家の人間として育てられているので物心ついた頃から相応の修練を積んでいる。しかし、二人には大きな違いがある。それは組織の当主として育てられたか、手足として育てられたか、という違いである。
楯無も更識家の当主としてそれなりの修羅場をくぐってきたが、リーヤは実働部隊の人間として
――――――もっとも、楯無がこの事を知るのはもう少し先の話になるのだが。
「……まぁ、いいです。自分もこんな探り合いをする為に呼びかけたわけではありませんから」
「……? おねーさんに何か用事があるのかしら?」
尾けられるのが嫌だから声をかけてきたと思ってたけど、違うのかしら?
「ええ、二つほど。まず一つ目ですが……更識生徒会長、自分を鍛えてもらえませんか?」
「……あなたを?」
「ええ、技量を向上させるには自分より優れた人に師事するのが確実ですので」
「……それなら、私である必要はないんじゃないかしら? あなたが求めているのは『自分よりISの技術が高い人』でしょう?」
さて、彼はどう出てくるのかしら?
「そうですね。確かに貴女の言う通り、鍛えてくれる人が貴女である必要はありません。しかし、それとは別に貴女でなければならない理由がこちらにはあるんです」
「熱いお誘いね。私じゃないといけない理由はなに?」
「……率直に言いましょう。エルトリア社情報部門と更識家で手を結びたいのです」
「……それ、本気で言っているのかしら?」
エルトリア社と手を結ぶ、ですって?
「本気です。そちらと手を結ぶ事が出来れば我々は日本での諜報活動のレベルが大幅に向上し、そちらは色々ときな臭い欧州の情報を早く、そして正確に入手出来るようになります。お互いにとっても悪くない話だと思いますが?」
彼の言う通り確かに悪くない。いえ、『更識』としては十分メリットがある。エルトリア社の情報網を活用出来るなら、ヨーロッパでの情報収集は格段にやりやすくなる。
……そうなると問題はお互いにどこまで情報を開示するか、ね。
「仮に受けたとして、お互いどの程度情報を開示し合うのかしら? まさか、持っている情報の全てというわけじゃないでしょう?」
「それは当然ですね。ただ……その質問には自分では答えられませんね。それは自分ではなく、上が決める事ですから。どこまで開示するかは上と貴女の交渉次第、というところでしょうか」
まぁ、そうよね。流石にそこまでの裁量はないか。それは現場の人間の判断を超えているし。
だから、そうね――――――
「悪いけどこの話、少し考えさせてもらってもいいかしら? 私としても即断出来る内容ではないわ」
「構いません。即断出来る内容ではないと承知していますから。ただ、出来れば自分を鍛えてくれるかどうかは即断願いたいところですが」
やけに食い下がるわね。一組はクラス代表を決めるのにISの試合をするそうだけど、それに関係があるのかしら?
「鍛えてあげる事にずいぶん急ぐのね。急ぎの用があるの?」
「……三日後に自分のクラス代表を決める為、ISでの試合を行いますがその為です。より正確にいうなら鍛えてくれたのが貴女なら納得してくれる人も多いでしょうから」
「納得って……何に対しての納得?」
「勿論、代表候補生相手に拮抗、又は勝つ事です」
ずいぶん大きく出たわね。そこまで強気になれる理由は何かしら?
「……言っておくけど、簡単に勝てるほど代表候補生は弱くないわよ? そう言い切る自信は?」
「代表候補生が実力者なのは知っています。自分の姉も代表候補生ですから。自信の根拠は……ここに来るまで自分は姉から鍛えられました。そのおかげで訓練終盤で何度かイタリアの代表候補生に勝てるところまではこれました。それが自分の根拠です」
代表候補生相手に勝った事があるですってっ⁉︎ イタリアの代表候補生のレベルは世界でもトップクラス。それが本当なら実力は十分過ぎるわ。
「それなら尚更、私が鍛えてあげる必要はないわね。いえ、それだけの実力があるなら十分だと思うわ」
「……自分としては、面倒な事にしたくないんです。独力で勝った、と数日とはいえロシアの国家代表に教えを受けた、では後者の方が納得する人は多いでしょう? それに代表候補生が初心者に負けたとあっては余計な査問が来る可能性もあります。そうなると自分の事が調べられる可能性も十分ありますからそれは避けたいんです」
確かにそうね。ISを動かして数ヶ月の初心者が代表候補生に勝てば話題になるのは十分だし、彼の事を調べる国や企業も出てくるでしょうね。
……あのエルトリア社の内部情報をそう簡単に調べられるとは思わないけど。
「いいわ、そういう事なら協力してあげる。ただし条件付きよ?」
「……その条件の内容は?」
「本格的に鍛えてあげるのは試合で君の実力を見てからよ。だから三日後の試合までにしてあげられるのは実戦的な戦術ぐらいよ」
そもそも技術面のアドバイスをしても三日(実質には二日だけど)で役には立たない。むしろそれに気を取られるから戦術等の選択肢を広げた方がいいでしょうね。
「十分です、ありがとうございます。お礼とは言ってはなんですが、エルトリア社と手を結ぶかどうかの判断材料を一つ提供しましょう。……フランスのデュノア社で不穏な動きがあります。何をしようとしているかはまだ調査中ですが」
……これだけでもエルトリア社の情報収集のレベルがわかるわね。火のないところに煙は立たない、というけど彼らは
「……そう、参考にさせてもらうわ」
「では、自分はこれで失礼します」
「待ちなさい。最後に私からもあなたに訊いておきたいことがあるわ」
「……なんでしょうか?」
楯無の訊きたいこと、それは更識の人間としてではなく楯無個人のものだ。それは――――――
「……簪ちゃんに話しかけたのは……私への牽制なの……?」
彼は私が尾けていることに気づいていた。そしてエルトリア社の能力なら簪ちゃんが私の妹だと調べていても不思議じゃない。もし簪ちゃんを交渉に使うなら、その時は――――――
「それは違います。自分は簪さんが貴女の妹だとは知りませんでした。……上の方は知っているとは思いますけどね。今回の話は協力関係を築く為のものです。威圧や脅しをしては軋轢を生みます。――――――だから彼女を利用する気はありません。彼女と会ったのはただの偶然ですから」
「……そう、ならいいわ。けど忘れないで。簪ちゃんになにかするようなら容赦しないわ」
「ええ、覚えておきます」
そう言って彼は楯無の前から去っていく。それは裏側の人間とは思えないほどの警戒のない自然さだった。
「……興味半分だったけど予想外のものが出てきたわね」
エルトリア社との提携と情報収集のレベルの高さ。ほんの数分の話だったのに大きな影響を呼ぶ内容だったわ。本家の人達とも相談はしないといけないけど、エルトリア社とは手を結んだ方がいいでしょうね。そうなったら彼の手綱を握らないといけないんだけど……どうしたものかしらね?
そう言う楯無の表情は困り顔ではあったが、口元は楽しむように小さく笑っていた――――――
† † †
――――Side リーヤ――――
更識生徒会長との話が終わり、オレは寮の食堂に向かっていた。途中で静寐さんと神楽さんに誘われたのでそのまま一緒に食べる事になった。
色々と話しながら夕食を摂っていたがいたが、話題はやはり試合の事……ではなく
「それじゃあリーヤくん、まだルームメイトと会ってないんだ?」
「ええ、部屋の確認ついでに自分の荷物を固めてすぐ整備室に行きましたから」
部屋割りを始めとしたちょっとした雑談だった。が、静寐さんと神楽さんはオレのルームメイトが誰なのか気になるらしい。
「もしかしたらリーヤさんのルームメイトは他のクラスの生徒なのかもしれませんわね」
神楽さんの話ではルームメイトは同じクラス同士の生徒が多い(現に二人もそうなっている)らしい……のだが、オレのルームメイトになったという話はまだ聞いてないからそう考えたそうだ。
「日中やらかした身としてはそっちの方が気が楽かな。他のクラスの人でも経緯は知ってるだろうけど、やっぱり一組の人からは距離を置かれてる気がするしね」
こうしてオレに接してくれるのは静寐さんや神楽さんぐらいだ。……もっとも、他のクラスや学年の人達はそもそもオレに気付いていなさそうだが。
「……と、そろそろ片付けましょうか。食べないのに長居するのもアレですし」
「そうですわね。リーヤさんはもう部屋にお戻りに?」
「ええ、いい加減荷物を開けないといけないですし」
「そうなんだ。私と神楽は談話室でもう少し話してるからまた明日ね」
そうしてオレは談話室の前で静寐さん達と別れ、部屋に戻る。当然の事ながら廊下には他の生徒もいるが一組の人は(幸いにも)おらず、面倒な事が起きる事なく部屋に着けた。
……少し離れたところが騒がしかったが、面倒事に首を突っ込みたくはないからもう部屋に戻るか。
「……ルームメイトになる人、もういるかな?」
自室にはなるが、一応ノックする。
「ルームメイトのリーヤ・カテドラールですけど入っても大丈夫ですか?」
「……どうぞ」
……あれ? もしかしてルームメイトって
「ルームメイトは簪さんだったんだ。自分の荷物、邪魔じゃありませんでした?」
「……大丈夫、部屋の隅に固めてあったから気にならなかった。……リーヤは、今から荷物を開けるの?」
「ええ、少しうるさいかもしれないですが……大丈夫です?」
「大丈夫……。……その、手伝う、よ……?」
それは助かる。大した量はないけど一人でやるより二人の方が早いし。
「自分としては助かりますけど……いいんですか?」
「うん……エルトリア社の装備を見せてくれた……お礼……」
お礼をされるほどの事じゃないんだけど……簪さんがそういうならいいか。お礼と言ってるから断る方が失礼だし。
「ではお願いします。と、その前に改めてよろしくお願いしますね、簪さん」
「うん……よろしく、リーヤ」
そうしてオレのIS学園での生活は始まった。親しくなった人、反発した人と初日から色々とあった(というかやらかした)けど……うん、悪くはなかった、かな?
裏の二人はお互いを知る。果たしてこの二人はお互いをどう見るか――――――
原作キャラ視点は難しいですね。前書きではテストと書きましたが、たぶんもうやらないと思います。
(そしてこっそりオリ主の容姿の一部を楯無Sideに加えました)
少し無理やりですが、一日目が終わりました。出来れば十話(遅くても十一話)にはセシリア戦に持っていければと思います。