IS 〜地中海の愚者〜   作:liris

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役者達は踊る。
――――――始まりは白と青。


ようやく代表決定戦までやってきました。
短く、と前回書いたのに結局いつも通りの長さになった……

また、アナウンスやマイクの声は≪≫で囲っています。
今後も肉声以外の声では≪≫を使っていきます。


Pagina Ⅹ 戦力観察

――――Side リーヤ―――― 

 

 いよいよ行われるオルコットさんと織斑さんとの試合。事前の取り決め通りオルコットさんと織斑さんの試合が行われる予定なのだが――――――

 

(……マズいな)

 

 そう、試合の開始時刻は既に迎えている。だというのに織斑さんに用意されている(という話の)専用機がまだ到着していない。静寐さんと神楽さん、そして織斑先生は順番の理由を知っているのでかなり苦い顔をしている。

 

(急遽決まった事だから仕方ないと言えば仕方ないが……)

 

 このままだと考えられる展開は二つ。一つは織斑さんに学園のISが貸し出される事。もう一つは……順番を入れ替えてオレが先に出る事。そして可能性は後者の方が高い。時間があればまだ前者の可能性もあったがもうその時間もない。

 

「……カテドラール、悪いがこれ以上延ばすことは出来ん。準備を――――――」

「お、織斑先生ーーーーーーっ‼」

 

 織斑先生がオレへ準備するよう言おうとして外から山田先生の声が響いてきた。

 

「た、たった今織斑君のISが到着しましたっ! 今ここに搬入してもらっていますっ!」

「間に合ったか。……織斑、すぐに準備しろ。時間が押しているからな」

「この程度の障害、男子たるもの軽く乗り越えてみせろ、一夏」

「え? え?」

「「「早く」」」

 

 どうやら織斑さんは『初期化(フォーマット)』も『最適化(フィッティング)』もせずに出されるようだ。……無謀にも程があるがわざわざ忠告する義理もないし、そもそもそれを行う時間もない。

 

「ISのハイパーセンサーは問題なく動いているな。一夏、気分は悪くないか?」

「大丈夫、千冬姉。いける」

「そうか」

 

 名字ではなく名前で問う織斑先生。声が微かに震えているからやはり心配なんだろう。

 

「リーヤ」

 

 ……? オレに何の用だ?

 

「勝ってくるぜっ!!」

 

 ……本気で言ってるのか能天気なんだか。彼の事だから両方なんだろうけど。

 

「……そう。それじゃ、戦果に期待していますよ」

「ああ、任せろっ!」

 

 ……やっぱり言葉の意味を判ってないか。戦果の意味が勝つ事じゃなくて『オルコットさんの()()()()()()()()』、なんていったらどんな顔をするやら。

 

「箒」

「な、なんだ」

「行ってくる」

「あ、ああっ! 勝ってこいっ!」

 

 そうして織斑さんはアリーナへ上がっていく。——————さて、お二人の手の内がどこまで見えるのやら。

 

 

――――Side 静寐――――

 

 

 織斑くんが上がって、残った私達はピットに備えてあるモニターで試合を見る。本当なら私と神楽も観客席なんだけど私と神楽はリーヤくんと親しいから付き添いというカタチでここに来る許可をもらえた。(ちなみに簪にも許可が出たが織斑くんがいるから、という理由で観客席に行った)

 モニターではオルコットさん優勢で織斑くんは避けるので精一杯という感じだ。

 

 ――――――なのに。

 

「『初期化(フォーマット)』も『最適化(フィッティング)』もなし……。まさか『一次移行(ファースト・シフト)』もなしでああも動けるのか……彼を見くびっていたな」

 

 リーヤくんは優勢のオルコットさんじゃなくて劣勢の織斑くんに目を向けていた。

 

「ねえ、リーヤくん。私には避けるのに精一杯に見えるんだけど……」

「ええ、織斑さんはオルコットさんの攻撃を避けるので精一杯です。……けど、()()()()()()()()()()()なんです」

「……どういうことですの?」

 

 あ、神楽も気になるんだ。

 

「……二人も見ていたでしょう? 織斑さんは装着してすぐ出ました。だからあのISはまだ『初期設定』のままの筈なんです」

「「あっ!!」」

 

 そう言われて私も神楽もそこに気づく。確か『初期設定』のままのISはすごく扱いにくいって聞いたことがあるっ!

 

「これで判ったでしょう、彼がどれだけ出鱈目なのか。この試合の脅威度は勿論オルコットさんが上ですが、彼にも目を向ける必要がありますね……」

 

 そう言ってリーヤくんはモニターに視線を戻す。……やっぱり凄い。私も神楽も試合そのものを見ていて、リーヤくんみたいに考えてはなかった。……たぶん、というか観客席で見ていたら絶対わからなかった。

 

「オルコットのみを見ていると思ったが意外とよく見ているな、カテドラール」

 

 織斑先生にとっても意外だったのだろう。モニターから目を逸らさずに織斑先生がリーヤくんに話しかけていた。

 

「当然です。足元を掬われるのは避けたいところですから。……はっきり言って、織斑さん程度の動きなら特に問題なく勝てるでしょう」

「……なんだと」

 

 うわぁ、言い切ったよ。篠ノ之さんが凄い目で見てるけど全然気にしてなさそうだし。

 

「……だからといって注意しない、というわけにはいきません。むしろ何をしてくるか判らない、という意味では織斑さんの方が注意すべきです。……そういう意味ではオルコットさんのほうがやり易い、と言えますね。彼女の方が強い事に変わりはありませんが」

「で、でも織斑くんもよくやっていますよっ⁉ 起動してまだ二回目なのにあれだけ健闘してるんですからっ!」

「ええ、確かにその『才能(センス)』は認めますよ。ですが()()()()ソレに技量(経験)が追い付いていません。だから勝てると言ったんです」

 

 ……意外、嫌ってそうに見えたけど見るところは見てるんだ。

 

「ほう、ではオルコットへの勝算もあるのか?」

「……ええ、オルコットさんの『ブルー・ティアーズ』の強みは四機のビットによる多方向からの攻撃。厄介ですが対処出来ない、というわけではありません。見ている限りオルコットさんとあのビットは同時に動けないようですし、多方向から攻撃してくるなら()()()()()()()()()()()だけです」

 

 まだ始まって15分ぐらいなのにそこまでわかったんだ。……なんか、へこむなぁ。

 

「はぁ…………」

「…………」

 

 

 もし、この時視線を向けていたのがリーヤだったなら静寐は気付いていただろう。……それとも()()だから気付けなかったのか、果たして――――――

 

 

――――Side リーヤ――――

 

 

(……27分か、よくもまぁあんな状態の機体でここまで持たせたな)

 

 腕時計で計っていた時間を見た率直な感想だ。おかげで両者のISや動きの特徴をじっくり見る事が出来た。……まぁ、オルコットさんは自身のISの事を勝手に話してくれたのだが。

 

≪では、閉幕(フィナーレ)と参りましょう≫

 

 ――――――決める気か。

ブルー・ティアーズのビット二機が織斑さんを襲うもソレはビットで削り切る為ではない。おそらく本命は―――――

 

≪左足、いただきますわ≫

 

 やはり、オルコットさん自身による狙撃。

 あれだけのダメージを負ってあのライフルの狙撃を貰うのは致命的だ。終わったな、と思ったが

 

≪ぜあああぁぁぁーーーっ!!≫

 

 織斑さんは無理矢理機体を加速させ、ライフルにぶつかる事で狙いを逸らした。……無茶だが距離を取っていれば間違いなく彼は撃墜(おと)されていた。あの行動は確かに彼の首を繋げた。

 そして、それを皮切りに彼の動きが変わり始めた。彼が攻めに転じたからだ。

 

(……気付いたか)

 

 織斑さんがビットを一機撃墜(おと)し、オルコットさんが驚愕して後退する中、織斑さんが更に二機目を撃墜(おと)し、ビットの弱点を看破する。そうして一気に距離を詰め残るビット二機も切り伏せ撃墜。あの距離ではライフルは間に合わないと思ったが――――――

 

≪かかりましたわ≫

 

 ブルー・ティアーズのスカート・アーマーが可変する――――――いや、アレは装甲じゃない……ビットっ⁉

 

≪おあいにく様、ブルー・ティアーズは六機あってよ!≫

 

 そしてそのビットから放たれたのはこれまでのようなレーザーではない、……ミサイル(実弾兵装)だ。

 

 ――――――ミサイルが直撃し、モニターの画面が鮮烈な爆炎一色に染まる。

 

「一夏っ……!」

 

 モニターの画面は黒煙で占められ、何も見えなくなっている。……あれはどう見ても直撃だった。決まったと思ったが――――――

 

「ふん、機体に救われたな馬鹿者め」

 

 ――――――煙が吹き払われる。そこにあったのはさっきまでとは異なる姿の織斑さんのISだ。

 

(……あのタイミングで『一次移行(ファースト・シフト)』が間に合ったのか)

 

 だがそれより気になるのがあのブレードだ。似たものをどこかで見た気がしてならない。

 

(……一体どこで見たんだ? 姉さんの遠征にサポートとして同行した時か?)

 

 眼や耳はモニターのやり取りに向いていても意識はその事を考えているからあまり入ってこない。判っているのは織斑さんが何かを言って、オルコットさんに突っ込んで行った事。

 だからだろう。≪試合終了。勝者———セシリア・オルコット≫「——————は?」なんて我ながら間抜けな声が出たのは。

 静寐さんと神楽さんだけでなく、篠ノ之さんと山田先生、そして当の本人達ですらオレと似たような表情(かお)をしている。

 織斑先生だけが、呆れたように苦笑していた――――――。

 

 

† † †

 

 

「さてカテドラール、次はお前の番だ。準備はいいな」

 

 あの後戻ってきた織斑さんは織斑先生から色々と言われていたが「お前の次の相手がいるからな。反省点を教えてやるのは試合が全て終わってからだ」とひとまず区切られたようだ。

 試合の方も補給等の関係で20分のインターバルを挟む事になっていた。その間にオレもISスーツに着替えたりと準備をしていた訳である。

 

「はい、問題なく」

 

 改めて自身のコンディションを把握する。うん、――――――どこも問題なし。

 そうして胸ポケットから一枚のカードを取り出し――――――

 

「出番だ、『ストレガ』」

 

 ――――――そうして、彼のISが展開した。

 淡い紫を帯びた装甲。鎧のように全身を装甲で纏った全身装甲型(フル・スキンタイプ)。だが何より目を引くのはその背にあるスラスターだ。肩部の非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)には鏃のような形、そして腰部からは鳥の翼を思わせる機体固定型のウイング・スラスターを備えている。機体そのものは淡い紫だが、この二対のスラスターだけが影のごとき黒を基調に血のような赤を纏っている。

 

「これがエルトリアのIS……」

「噂には聞いていましたが本当に独特な機体ですのね……」

 

 二人がそう言うのも仕方がないだろう。オレとしてもストレガは他のISと比べて独特な機体形状だと思う。初めて見た時は機体を設計した人の趣味なんじゃないかと思ったぐらいだ。

 

「頑張れよ、リーヤっ!」

「……そこの馬鹿よりは期待している」

「……ええ、期待に添えるとしましょう」

 

 織斑さんと篠ノ之さんから声をかけられるが適当に流す。出る前に話したいのはこの場ではあの二人だからだ。

 

「静寐さん、神楽さん。貴女達がオレを推薦してくれた事、正しかったと証明してきますね」

 

 そう言うと心配そうに見ていた二人に少しだけだが笑みが戻ってくれた。

 

「うん……うんっ!頑張って、リーヤくんっ!」

「私達のためではなくリーヤさん自身のために勝ってくださいましね?」

「ええ、見ていてください。少なくとも、さっきの試合よりも見応えがあるのは約束しますよ」

 

 さて、本当の意味で表舞台に上がる時が来た。オレにとってもエルトリア社にとっても賽は既に投げられている。だから――――――

 

「リーヤ・カテドラール、上がりますっ!」

 

 後は進むのみ――――――

 

 

 




とうとう彼が舞台に上がる。
『魔女』の名を冠する機体と共に。


次回ようやくオリ主vsセシリアです。
原作キャラ視点はもうやらないと言いつつも書いてしまいました。
ちなみに次は神楽視点を予定しています。
(初期設定云々は出荷時の本当に真っ新な状態だからという理由で納得して頂けると助かります……)

そろそろタグに静寐と神楽を付けるべきだろうか?
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