IS 〜地中海の愚者〜   作:liris

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両者、青との試合を終えた。残す試合は淡紫と白――――――男性操縦者(イレギュラー)同士の試合を残すばかり。


前話と次話のすり合わせ回です。あまり中身がないかもです……


Pagina XII 試合前後の間奏曲(インタールード)

 ――――――オルコットさんとの試合はオレの負けだった。最後に起きたカートリッジの排莢不良(ジャム)。原因はやはりというか『重装加速(フラクタル・ブースト)』だった。

 といっても原因はルシフェリオンではなく、カートリッジ本体の方だ。ルシフェリオンは様々な耐久試験を行っているので一度や二度の『重装加速(フラクタル・ブースト)』でトラブルが発生するほどヤワな造りではない。……けど、カートリッジ自体はそうではなかった。加速Gに耐えられずに薬莢部が変形(マガジン内の残りカートリッジも幾つか変形していた)し、変形したカートリッジを排出した事でルシフェリオンのカートリッジ排莢孔が歪み、次のカートリッジ排出で排莢不良(ジャム)が起きてしまった。

 ……カートリッジが暴発しなかったのが幸いだったといえるだろう。

 

「しかし勝負に『もしも』、なんてないけどオルコットさんが諦めていたら結果は変わっていたかもなぁ……」

「?? リーヤくん、それどういうこと?」

 

 ピットに戻り補給とメンテナンスをしながら思わず出た言葉に静寐さんがなぜ?と訊いてきた。

 

「オルコットさんが勝負を投げていたら別装備を出してそれで倒せたかもしれないから。……こういう言い方はオルコットさんに失礼だとは思うけど、ね……」

 

 そう、もしあの時オルコットさんが勝負を諦めていたらどちらが勝つか判らなかった。オルコットさんが諦めなかったからこそあの結果になったのだとオレは思う。

 

「……リーヤさん? 内容の割にはあまり悔しくなさそうに見えますけど?」

「……まぁ、悔しくないわけじゃないけどお互いに持てる手を打ち合った結果だからね。オルコットさんの勝ちに懸ける想いが天秤を傾けた。……負けではあったけど悔いはないよ、この結果は」

 

 時折いるのだ、確実に勝ったと思える時でもそれを覆してくる人というのは。勝ちへの執着、というと言い方は悪いが『想い』の差が勝負の明暗を分ける事は確かにある。

 今回の試合ではオルコットさんのソレがあの結果を呼んだ。だから悔しくはあるけど悔いはない。

 

「そうなんだ。色々としてたみたいだからもっと気にしてるかと思ったけど……それはないんだ?」

「全くないってわけじゃないですけどね。あれだけの熱を向けられたら負けを気にするより『次』は負けないって思いの方が強いかな」

「……それは……戦った当事者でないとわかりませんわね」

 

 神楽さんの言う通り、コレは当事者以外の人には判りにくいと思う。そして改めて試合というカタチで『次』を経験出来る事のありがたさが判る。オレはまだIS関係で経験出来ているが、エルトリア社情報部門の人間(オレ達)には『次』がない事だってあるのだから。

 

「……ところでリーヤさん、故障した装備の整備はしなくていいのですか?」

「ええ、このルシフェリオンは本社に引き取ってもらいますから」

「えっ? でもそれ、故障部分を直せば次の試合でも使えるんじゃないの?」

「使えますよ? けど一応トラブルが起きたら本社に送るよう言われているんです。今回の原因自体はカートリッジですけど装備の方で対策が出来るかもしれませんからね。さっき使っていたものは出来るだけ現状維持で引き渡したいんです。なのでこれは本社の人に渡すまで『拡張領域(バススロット)』で保管ですね」

 

 このルシフェリオンは本社仕様なので社の規定で輸送出来ない。なので改修キットを受け取る際に本社の担当者へ引き渡す。面倒ではあるけど輸送中に強奪されないようにする為の措置だ。(ちなみに引き渡す担当者もISの『拡張領域(バススロット)』に格納して持ち帰る)

 

「なので次の試合は送られていた予備のルシフェリオンを持っていきます。少し使い勝手が悪くなりますけどね」

 

 ピットには既に以前送られた予備のルシフェリオンを運んでもらっている。が、こっちは社外向け(カートリッジシステム未装備)のままなので運用が本社仕様とは異なる。その為戦い方を変える必要がある。

 

「幸い織斑さんは見る限り近接特化型。戦術を変えても対応出来るでしょう」

 

 不安要素があるのは織斑さんのあのブレード。織斑さんの試合はあの装備が何か判る前にいきなり終わった。だからアレの正体が未知数のままだ。

 

「オレはアレに見覚えがあるんですが……どこで見たのか思い出せないんですよ」

 

 そう、織斑さんが使っていた光刃を展開するあのブレード。どこで見たのかどうしても思い出せない。ここまで思い出せないという事は直接見たモノじゃないのか?

 

「……確かに織斑さんのあの武器は私もどこかで見た気がしますわ。……どこで見たのでしょうか……?」

 

 神楽さんも見覚えがあるのか。そうなるといよいよ直接見たって線はなさそうだ。

 

「ねぇ、リーヤくん。織斑くんのあのブレードって……織斑先生が現役の時に使ってた『雪片』じゃないかな?」

 

「「えっ⁉」」

 

 静寐さんの言葉にオレと神楽さんの言葉が重なる。織斑先生が使っていたモノと同じっ⁉

 

「……静寐、それは本当に?」

「たぶん……そうだと思う。織斑先生の試合映像で見たことがあるし……それにさっきの試合で織斑くん『千冬姉と同じ力で』っていってたし……リーヤくん聞いてなかったの?」

 

 ……そんな重要な事を聞いてなかったのか、オレは。不覚にも程があるだろう。

 ――――――って待った。

 

「……まさか、あのブレードは『唯一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)』も再現してるのか?」

 

 突拍子もない考え。だがもしそうなら厄介だ。

 

「……それはありえませんわ。『唯一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)』はISと操縦者の相性が最高の状態になってようやく発現するものです。第一形態で、それも今日初めて乗ったISで発現するなんて……」

 

神楽さんの言っている事は正しい。本来ならそれはありえないからだ。

 

「でも神楽、そうじゃないのに織斑くんあんなこと言う? ……私はそう思えないんだけど」

「それは……」

 

 静寐さんの意見にはオレも賛成だ。……この数日で見た程度だが、彼はそんな腹芸が出来るような性格ではない。どちらかと言うと直情的だ。

 

「……どちらにしろ彼が織斑先生の『唯一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)』を使える、という前提で行った方がいいでしょうね。……彼のISは未知数過ぎる」

 

 用心し過ぎる、という事はない。ストレガのような全身装甲型(フル・スキンタイプ)にも通用してくるのかは判らないが受けないに越した事はないだろう。

 

「でもリーヤくん……大丈夫なの? もし本当に織斑先生と同じ能力なら――――――」

「大丈夫ですよ、静寐さん。織斑さんの実力はオレには及びません。油断せず、()()()()()躱すか防げばいいだけですから」

 

 そう、相手の切り札が不明なら――――――それを受けなければいいだけの事。格上相手なら難しいだろうが織斑さんなら……まぁ、問題ないだろう。

 

「……そろそろ時間ですね、今度は勝ってきます。同じ立場の相手には負けられませんしね」

 

 少し冗談めかした言葉で再びアリーナに上がる事を二人に告げる。――――――さて、公式一人目(二人目)のお手並み拝見だ。

 

 

 




相手が誰であろうと油断はしない。その危険を彼は知るからだ。


ようやく次で一夏戦です。プロットでは5~6話ぐらいでここに来る予定でしたがだいぶ伸びてしまいました。
ここから先は投稿が更に遅れるかもしれませんがご容赦を……
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