しかし、どう進むかは歩むもの次第。
今回は二話投稿です。
本来は一話にする予定でしたが長くなったので分割しました。
――――Side リーヤ――――
「では、クラス代表は織斑一夏くんに決まりました。一繋がりでいいですね!」
「「「わあぁぁぁぁぁっ!」」」
翌朝のSHR、そこでクラス代表は織斑さんになった事が山田先生から発表された。クラスメイトも一部を除いてかなり盛り上がっている。
……当の本人は口を開けて呆けているが。
「あの、山田先生。俺は昨日の試合で二人に負けたんですが、どうしてクラス代表になっているんですか?」
……織斑先生の話を聞いていなかったんだろうか、彼は。いやオルコットさんがならなかったのも意外だけど。
「それはですね――――――」
「――――――わたくしは辞退したからですわ」
山田先生の言葉に被せるカタチでオルコットさんが言う。あれだけ言っていたのにどういう心境の変化だろうか?
「数日前のわたくしの態度はクラス代表になる人間にあるまじきものでした。……特に日本の方には不快な思いをさせてしまい申し訳ありません……」
(へぇ……)
正直オルコットさんを見直した。
間違いは誰だってする。けど自分が正しいと思っていた事を間違いだと認め、謝罪する事は中々出来る事じゃない。それが時間の経った事なら尚更だ。
「なのでわたくしは辞退する事にしたのです。推薦されたならともかく、クラスの方達を侮辱した立候補で代表になるわけにはいきませんので」
オルコットさんはそう言うけど自身の間違いを認め、謝罪出来る人なら十分上に立つに足りるだろう。……本人が降りると決めた以上どうこう言うつもりもないが。
「じゃ、じゃあリーヤっ! なんでおまえじゃないんだよっ⁉」
……確定だ。やっぱり彼は織斑先生の話を聞いていなかったみたいだ。というか試合であれだけの人の事を認めないだの言ってくれたのに、自分がやりたくないから代表にさせようなんていい度胸だ。
「……自分も代表を辞退しました。自分は属している企業からの仕事がありますし、そちらの方が優先です。なので辞退させてもらいました。……そもそも、自分もオルコットさんも辞退出来るのは当然権利ですからアレコレ言われる筋合いはありません」
「な、なら俺だって――――――」
「お前に拒否権はないぞ、馬鹿者」
オレの言葉に自分もと言おうとした織斑さんだが、教室に入ってきた織斑先生に止められた。
「私は『勝者に選択権を与えるものとする』と言った筈だ。勝ち星を挙げたオルコットとカテドラールには選ぶ権利がある。そしてその二人が断った以上、代表は残ったお前になる。まだ何か文句があるか?」
「ありません……」
……流石織斑先生。織斑さんはまだ納得いってなさそうだがああ言われては反論は出来ないだろう。
「それとオルコット、時間がある時で構わん。織斑とカテドラールにISの事を教えてやれ」
「……あの織斑先生。わたくしは構わないのですが“一夏さん”はともかく……“リーヤさん”にわたくしがお教え出来ることは恥ずかしながらありませんわ……」
……ん? オルコットさんのオレ達への呼び方が変わった……?
「お前がそう思うなら織斑だけでも構わん。クラス代表として恥ずかしくない程度には指導しろ、いいな?」
「は、はい」
「ではこの話はこれで終わりだ。授業を始める」
――――――こうして、一悶着あったクラス代表はようやく決まった。オルコットさんの心境の変化は気になるけど実害はなさそうだし問題はないだろうが……織斑さんの方は距離を置くべきだろう。
……少なくとも、自分の都合が悪いから人に押し付けようとする人と深く関わりたくはないし。
† † †
授業が全て終わった放課後、オレは生徒会室に来ていた。更識会長に呼び出されたからである。コンコン、と扉を軽くノックをすると中から「どうぞ」と許可が出たので入室する。
中に入ると更識会長ともう一人、リボンの色から見て三年生と思われる生徒が彼女の傍に控えるように立っていた。
「わざわざ来てもらって悪いわね、リーヤくん?」
「いえ、呼ばれた事には心当たりがありますから大丈夫です」
このタイミングで呼ばれたなら用件は間違いなく以前の提案だろう。それ以外は少し思いつかない。が、『こちら側』の話をするのに人がいていいのだろうか。
「彼女は私の幼なじみで、更識がどういう家なのかも知っているわ」
オレの
「布仏 虚です。お嬢様には幼い頃からお仕えしています」
「ご存知とは思いますがリーヤ・カテドラールです」
なんというか秘書やメイド長を連想させる人だ。
「メンバーはもう一人いるんだけど、今日はいないから後日紹介するとして本題に入りましょうか。エルトリア社と手を結ぶかどうかの話だけど……私達更識は承諾するわ。ただし、二つ条件があるわ」
まぁ当然と言えば当然だろう。こちらから持ち掛けたのだから受ける側としては条件を付けやすい。
「……どんな条件でしょうか?」
――――――もっとも、それを顔を出すつもりはないが。
「条件といってもエルトリア社に対してじゃないわ。条件を出すのはあなたに対してよ?」
「自分にですか?」
「ええ、あなたには生徒会に入ってもらうわ。役職は……そうね、副会長でどうかしら?」
「……生徒会に、ですか?」
……意外だ。条件と言うからなにかしらの制約かと思ったけど。
「そうよ? あなたには生徒会でそれなりの役職になってもらわないと困るの。虚ちゃん、アレ持って来てくれる?」
「はい、お嬢様」
そうして目の前に置かれたのは教科書ぐらいある紙の束だった。
「……なんです、コレ?」
「あなたと織斑くんを部活に入れたい、っていう嘆願書よ。最初は数枚だったけど今はここまで増えているわ。生徒会の副会長に就いてほしいのはこれが理由よ。織斑くんはともかくエルトリア社との繋ぎ役になるあなたを部活に入れるわけにはいかないわ」
なる程。確かに副会長なら部活の勧誘を断るのに十分だろう。
「それに副会長なら私が呼び出したり、あなたが私のところに来ても不自然じゃないでしょう? あなたが私に師事した理由にそれがあったと思うけどそれなら副会長の立場の方が自然なはずよ?」
「……確かにそうですね」
オレが彼女に師事したのは
多少の仕事はする事になるだろうけど断る程のデメリットじゃなさそうだし。
……理由としてはもう一つありそうだけどわざわざ口にする必要はないか。
「判りました。それは受けましょう。……もう一つの条件は?」
「もう一つはあなた自身のISに関する経歴よ。数日前に聞かせてもらったものじゃなく、エルトリア社での
……やはりそう来たか。当然と言えば当然の事だが。
「……どういう事でしょうか? 自分は嘘等は言っていませんが」
「けど本当のことも言ってないでしょう? あなたのあの動きは数ヶ月で出来るようなものじゃないわ。あなたは
「…………」
更識会長の顔からこちらを射抜くような視線が向けられる。
確信を持たれている以上、これ以上はマイナスにしかならないか。
「……自分がISを初めて起動させたのは四年前です。本格的にISに関わり始めたのはそれから一年後ですが」
「「…………っ!」」
オレの言葉に二人の表情が強張る。流石にそこまで前とは予想していなかったのだろう。
「……その事をイタリア政府は知っているの?」
「知っているのはエルトリア社……更に言うならカテドラール家と近い一部だけです。秘匿するなら知らせないのが一番確実ですから」
知らないものは話しようがない、という事だ。
「詳しい内容は後でデータにして提出します。……
「なら――――――」
「ええ、契約成立です。詳しい内容は
緊急なら
「そうね……、なら三日後の17時。あちらの時間で午前9時はどうかしら?」
「判りました、ではその時間帯で伝えておきます」
「ええ、それでよければ同じクラスの本音ちゃんに伝えて。あの娘は虚ちゃんの妹で
布仏さんか。……何度か話した事があるけど更識の関係者だったのか、あの娘。
「判りました。では失礼します」
そう言って生徒会室から退室する。さて、夜にやる事も出来たしそれまでゆっくりするかな。
――――Side 楯無――――
「……お嬢様、本当によろしかったのですか?」
「ええ、これは必要なことよ」
リーヤくんが生徒会室から出るなり、側にいた虚ちゃんがそう言ってくるけど彼を副会長にしたのはもう一つ大きな理由があるのよね。
「彼を副会長にしたのは連絡役としてそばにいてもらう、というのもあるけどそれ以上に彼を監視する必要があったからよ。……もっとも、彼は生徒会に入って監視を受けることに気付いているでしょうね」
「……彼は、気付いた上で了承したということですか?」
「気付いていない素振りだったけどおそらくね」
たぶんだけど彼は連絡役として都合がいいというのが表向きで、本当は自分への監視だということに気付いてる。それをわかった上で引き受けたんだからいい度胸をしてるわ。
「本音ちゃんには一夏くんのことを見てもらってるし……リーヤくんとはあまり接点がないって言ってたから難しいでしょうね」
余談だが、一組の中でも特に人と打ち解けやすい本音がリーヤとあまり接点がないのは本音自身が一夏と接している事と、リーヤが静寐と神楽を除いて基本的にクラスメイトと距離を取っているからだ。(昼休みは三人で食堂に紛れ込み、放課後になるとすぐに教室から出て行っていたのも大きいが)
「だから私が彼に注意を向けるの。彼だって監視されてると判ってるならおかしな真似はしないでしょ」
「確かにそうかもしれませんが……」
「それにこの数日彼を見てきたけど彼自身は手綱をきちんと握っていれば問題はないわ。……私としては複雑だけど簪ちゃんとも上手くやっているみたいだし」
彼としても持ちかけた契約を自分から反故するつもりはないでしょうし、親しくしてる娘がいるから妙なことはしないでしょう。
「しかし――――――」
「大丈夫よ、虚ちゃん。もし彼が何かするようなら――――――その時は私が責任もって『処理』するわ」
……そう、彼が学園に何か仕掛けるというなら、その始末をするのは私の責任であり責務。それが彼を生徒会に入れた私の負うべき責任でしょうね。
「……わかりました。しかしお嬢様、彼への責任を負うのは
「虚ちゃん…………ありがとう、もしそうなったら頼りにさせてもらうわね?」
「もちろんです。私はお嬢様を支えるためにここにいるのですから」
なら、私はその『もし』が起きないよう彼に首輪をつけておかないとね。虚ちゃんはああ言ってくれたけど、そんな時は起きないに越したことはないんだから。
当作品のセシリアはあくまで見直した、という程度なので二人への恋愛感情は持っていません。あくまで友人と言う位置です。