IS 〜地中海の愚者〜   作:liris

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―――――――これが、愚者となった始まりの原風景。





prologo
Pagina Zero エルトリアから来る者


 ―――――――そこは、赤と黒しかなかった。

 

 

 

 

 

 ―――――――燃え上がる赤と焼けていく黒。目に映るのはそれだけで、それがとても怖かった。

 

 

 

 

 

 ―――――――だから、必死に逃げまわった。

 

 

 

 

 

 ―――――――けれど逃げ道なんてどこにもなくて、気が付いたら立っていられなくなった。

 

 

 

 

 

 

 ―――――――そうして倒れて、あっという間に目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 † † †

 

 

 

 ―――――――旧い夢。

 ()()()()()()()自分でも未だに嫌悪感のある最悪の夢だった。

 

「……最悪」

 

 時差ボケを防ぐために眠っていたが、代わりに視たくないモノを視てしまった。これからの先行きを暗示しているようで正直、気が滅入る。

 

(IS学園、か……)

 

 そうして、数日前に告げられた時の事を思い出した。

 

 

 

 † † †

 

 

 

「IS学園に入学?」

 

 それがオレ、リーヤ・カテドラールに言い渡された任務だった。

 

「理由は……日本の織斑一夏ですか?」

 

 と、いうか理由はこれしかないだろう。それ以外の理由は考え付かない。

 

「そうだ。その様子だともう既にある程度は知っているみたいだな」

 

 そう言うのはオレの義父であり、上司であるベルゼー・カテドラール。エルトリア社の情報部門統括だ。

 

 ―――――――エルトリア社。

 イタリアに本社を置く企業で、ISに関してもコアを国から供給されるほどの技術を持ったイタリア有数の企業だ。

 が、それは表向きの話。実際はイタリアの国内外を問わず諜報活動を行うために数代前のカテドラール家当主が興した企業だ。はっきり言ってIS部門も含めエルトリアの企業活動は情報部門が活動するためのカムフラージュ兼資金源といってもいい。そして情報部門、特に調査課は必要ならマフィア並みの手段も辞さない部署でもある。そしてオレはその調査課に属しているので、そういった裏側についてもよく知っている。

 ……調査課に属する以上、知らざるをえなかった、とも言うが。

 

 

「連日ニュースに出ていましたから。それで、自分はIS学園に入学して何を行うのですか? まさか彼の護衛が任務、というわけではありませんよね?」

「当然だ。むしろお前には彼のデータを入手してもらうのが当面の任務となる。異なる男性操縦者のデータが手に入れば男でもISを動かせる要因が解析出来るかもしれんからな」

 

 そう言われてオレがIS学園に派遣される理由に一応納得がいった。公式か非公式の違いはあるが同じ男性操縦者だ。加えて国籍どころか人種も違うならデータ解析のサンプルとしては申し分ないだろう。

 

「それと今回の任務は()()()()()()()()()()()()()()()()()()、入学してもらう。それに伴いお前の所属も表向きはIS部門へ異動となる。もちろん正式な異動は発表後になるが、な」

「……は……?」

 

 ―――――――今、なんて言われた……?

 

「あの……、聞き間違いでなければ男性操縦者として、と言われました……?」

「ああ、これは私だけでなく他の者たちも承知している。その上で公表すると決定した」

「……初耳、なんですが……」

 

 反対、というほどではないが事前通告ぐらいはしてほしい。言われていればあんな間の抜けた返事なんてせずに済んだのだが。

 

「お前のIS学園への転入は以前から度々議題に挙がっていた。が、これまではわざわざお前を派遣する必要性がなかった。だが―――――――」

「自分以外の男性操縦者が入学するとなると話は別、という事ですか?」

「その通りだ。そしてこれこそがお前を男性操縦者として公表する理由だ。織斑一夏のデータやサンプルを手に入れるなら同性の方がやりやすいだろうというのが理由の一つだ」

 

 ……確かに男が二人しかいない状況なら行動を共にしていても自然だしデータのコピー等も容易い。生体データに関しては多少強行手段になるがそこまで難しいことではない。

 だが、それは調査課の人間(オレ達)なら十分出来る任務だ。単に難度が上がるか下がるかの違いでしかない。なのになぜわざわざ痕跡を残すような方法を採るのか……?

 

「色々考えているようだが最後まで聞け。データやサンプルの入手はあくまで理由の一つだ。最大の目的は日本の更識家との提携とIS学園で()()()()()()()()の調査だ」

 

 ……??

 これから起きる事の調査、とはどういう事だろうか? 前者はともかく後者の意図はオレにはよく判らない。

 

「腑に落ちない、という顔だな」

「それはそうです。更識家への打診はともかくこれから起きる事の調査、と言われたら困惑します。無駄骨になったらどうするんですか?」

「それはないだろう。逆に訊くが希少な男の操縦者が入学するのに手を打ってくるところがゼロだと思うか?」

「……確かに、ないですね。自分だって何かしらの手を打ちますし」

 

 そこまで説明されてようやく自分がIS学園へ入学までして潜入する理由に気付く。

 それは―――――――

 

「自分が入学する本当の目的は……干渉してくる国や企業への交渉カードを手に入れること、ですか?」

 

 そう答えると義父さんは口元を緩め笑みを浮かべる。……どうやら予想は当たったみたいだ。

 

「話は以上だ。何か訊いておきたい事はあるか?」

「そうですね……自分の判断で動けるのはどこまでですか?勿論緊急時は自分の判断で動きます。が、見込みがありそうな人のスカウトや向こうでの協力者をどうするか、等は独断で行うわけにはいかないでしょう」

「それに関してだが、今回お前にはかなりの権限が与えられている。協力者が組織に属しているなら手を組むかどうかはこちらの指示に従ってもらう。が、人材のスカウト等はお前の判断に任せる。

 ―――――――つまり、お前がこちらからの指示が必要だと判断したら連絡しろ。そうでないならお前に判断を任せる。今回の任務はお前の判断力を鍛えるいい機会になるだろう」

 

 確かに今回の任務は自分の判断力を鍛えられるいい機会だ。自分の判断力がどの程度まで育っているのかも図ることが出来る。

 ……もっとも、自身を試す事と独断で動く事を履き違えてはいけないが。

 

「判りました。期待に応えられるよう、注力します」

「ああ。上司として、そして義父として期待しているぞ」

 

 

 

―――――――これが数日前、オレがIS学園に入学することになった経緯であり、オレが表舞台に立つ事になった始まりだった。

 

 

 




少年は表舞台に立つ。
―――――――様々な思惑とともに。


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