長らく間が空いてしまい申し訳ありません。
また少しずつでもペースを戻せるよう頑張ります!
更識会長と簪さんが仲直りして数日、IS学園生徒会にも変化があった。
「簪さん。そっちの書類はどうですか?」
「こっちは……もうすぐ終わる」
――――――簪さんが生徒会のメンバーに加わったのだ。
元々生徒会のメンバーは自分を除いて更識会長の関係者で固められていた。そこに会長と仲直りした簪さんが加わるのは不思議な事じゃない。
そして簪さんが生徒会に入った事は意外なところで助けになっていた。
「しかし簪さんが生徒会に入ってくれたおかげで会長が仕事をサボらなくなったので仕事が捗りますね」
「そうですね。お嬢様がきちんと仕事をするようになってから私とカテドラール君も早く帰れるようになりましたから」
暗に『仕事をサボらないでください』と言う虚先輩だけど実際更識会長がサボらなければ割と早く終える事が出来るのだ。
――――――リーヤと虚がこれまで楯無が仕事をサボっても本腰を入れて探したりしなかったのは大半の内容は二人で処理出来たからだったりする。リーヤも虚も楯無を探すことに時間を使うより仕事を薦めた方がいいと判断していたのである。
「……お姉ちゃん。いつもリーヤと虚さんにこれだけの仕事を押し付けてたの?」
そう言う簪さんの目は全く笑ってない。むしろ氷点下と言っていい冷たさだ。……更識会長にはいい薬だろう。
「い、いやねぇ簪ちゃん。お姉ちゃんいつもサボってるわけじゃ――――――」
「「サボって(おられ)ますね」」
自分と虚先輩の肯定にますます冷ややかな目で見る簪さん。この仲直りした二人の力関係は簪さんの方が圧倒的に上みたいである。
「……うぅ。虚ちゃんもリーヤくんも少しぐらいかばってくれてもいいじゃない……」
「お嬢様の自業自得ですから」
「仕事をサボっているのをかばえ、というのは無理があるかと」
むしろサボり続けてきた上でかばって、という更識会長の図々しさに驚きだ。
そもそも更識会長はやろうと思えば一人でも捌けるのにやらないからどんどん溜まっているのだが。
「……リーヤ。そろそろ時間」
「……と、もうか。虚先輩。申し訳ないんですが自分と簪さんはここで切り上げていいですか?」
「大丈夫ですよ。なにか用事が?」
「ええ。少し友達と勉強会を」
言うまでもなく希望したのは静寐さんと神楽さんの二人。この二人の向上心は本当に凄い。自分と簪さんがいない時は山田先生からも教わっているというからものすごい勢いで追ってきてる。
だからその勉強会の目的も、オレと簪さんが企業の所属や代表候補生として教わった中で役立ちそうな事を教えるというモノ。
……一学期が終わる頃には学年でもかなり上にいくだろうな、あの二人。
「あらリーヤくん、クラスに友達いたの?」
「…………」
もしかしなくても喧嘩を売られてるんだろうか、オレは。
「……虚先輩。更識会長に仕事の残りを渡してもらえますか?」
「そうですね。まだまだ余裕があるようなのでお嬢様の分をもう少し増やしても大丈夫そうですね」
「ちょ、ちょっと二人ともっ!?」
オレ達の仕事増やす発言に慌てる更識会長だけど少しは自重するという事を覚えていただきたい。これはそのためのペナルティであり、決して仕返しではない。
「では虚先輩、後をお願いしていいですか?」
「ええ。仕事の残りは私とお嬢様でしておくのでお二人は切り上げて大丈夫ですよ。……それとお嬢様? 今日は目を放すつもりはないので」
言葉だけ聞いていると主従が逆になってるようにしか聞こえないけどそれは仕方ない。書類関係の仕事に関しては虚先輩が生徒会のトップだし。
「それじゃ失礼します。……会長きちんと仕事してくださいね。マジメにやれば片付くんですから」
「……わかってるわよ。というか私ってそんなに信用ないの?」
「え? 信用あると思ってたんですか?」
「ヒドくないっ!?」
そう言われたくないなら普段からマジメに仕事をしてほしい。本当に。
† † †
「二人ともお待たせしました」
「……待った?」
生徒会室を出て二人が待っている図書室に行くと、静寐さんと神楽さんは教科書や参考書を広げて待って……ないな。この二人もう始めてるし。
「あ、二人とも生徒会の仕事はもういいの?」
ちなみにだが、静寐さんと神楽さんにはオレと簪さんが生徒会に入った事を話してる。他の人達にはまだ秘密なので二人にも生徒会から発表するまでは離さないよう口止めしているけど。
「ええ。一区切りついたので残りは会長に放り投げてきました。課題の方はもう終わらせたところだったりしますか?」
「ううん、まだ途中。でももう少しで終わるかな」
静寐さんの言う通り二人の課題はもう終わりが見えてる。
これなら課題を進めるよりも二人に今日教えるところの準備を――――――
「……二人に訊きたいことがあるんだけど、いい?」
――――――進めようとして簪さんの声に手が止まった。
「あら、私達からではなく簪から私達に、というのは珍しいですわね」
確かに珍しい。基本的に簪さんは訊かれたら答えるというスタンスだから今日みたいに簪さんの方から二人に、というのは初めてかもしれない。
「……二人はどうしてそんなに熱心にやってるの? 二人とも、内容がわからないわけじゃないんだよね……?」
ふむ。簪さんの疑問はもっとも……というかオレとしても疑問に思っていた。
どこかの誰かさんと違って二人は基礎もしっかりしてるし、予習や復習を疎かにしてる訳でもない。このままでも十分出来ていると思うけど。
「んー。今はまだ秘密にしといていい? 言いたくないわけじゃないんだけどきちんと形になってから言いたいというか……」
「私も今は秘密ですわ。」
と、そこなにかが布の中で振動する独特の音が聞こえる。音源は……簪さんか。
制服のポケットから端末を出して画面を確認すると席を立った。
「……ごめん。少し、出てきていい?」
「うん、いいよー」
そう言って一旦図書室の外にでた簪さんだけど本当にすぐ戻ってきた。
……深刻そうな表情からなにかあったのは明らかだ。
「簪さん?どうしたんですか?」
「今の……鈴からの電話で……やちゃった、って……」
それで凰さんなにがあったのかここにいる面子はだいたい判ってしまった。
……仕方ない、予定変更。勉強会は切り上げだ。
「神楽さん、静寐さん。悪いんですが――――――」
「うん、大丈夫。多分私達も同じことを考えてるから。でしょ、神楽?」
「そうですわね。勉強を見てもらうのはまた別の日でも大丈夫ですわ。それより今は鈴さんの方が大事ですわ」
「……とりあえず鈴には私達の部屋で聞く、って言ったから部屋に戻らないと……」
部屋に戻る途中、階段に座り込むカタチでオレ達を待つ凰さんがいた。
……その、見るからに消沈しているのが判る。
「……鈴さん? まさかここで待っていたのですか……?」
神楽さんの問いこくり、と頷く凰さん。それを見て相当な事を『やらかした』かなと思うけどそれを聞くのは取り敢えず後回し。
「とにかく中に入りましょう。こんなところで話すわけにもいきませんし」
座り込んでいる凰さんを促して全員で部屋に入る。
取り敢えず全員分のお茶とコーヒーを用意して凰さんの話を聞く用意を整える。
「それで……何があったんですか? 簪さんからは『やっちゃった』、としか聞いてないのでアドバイスするにも内容が――――――」
「…………のよ」
凰さんの声は呟きのようで聞き取れない。
なんていったのか訊こうとして――――――それよりも先に凰さんが溜め込んでいた怒りを爆発させた。
「だから! つい頭に血が昇っちゃってまた喧嘩しちゃったのっ!!」
「「「……はい?」」」
オレと静寐さん、神楽さんの三人は凰さんの“やらかした”内容に思わず呆れ混じりの声が出る。
いや、凰さん。貴女前に自分から『歩み寄ってみる』って言ってたのになんでそんな事に?
「そりゃあたしだってやっちゃったって思ったわよ。……けどあいつあたしのこと貧乳って言ったのよっ!? あたしがそのこと気にしてるって知ってるくせにっ!」
……あー、それはどう考えても織斑さんが悪い。
知らなかったならまだ救いはあるけど知ってて言ったならどう考えてもアウトだ。
「うわ織斑くんそんなこと言ったんだ。……リーヤくん、同じ男の子から見てどう?」
「――――――
オレも自分の容姿でずいぶんと言われたから凰さんの気持ちは少しなら判る。
自分の身体で、しかも気にしてる事を悪口に使われるのはハッキリ言って気分が悪い。織斑さんの言った事はこの場にいる全員で満場一致の有罪だった。
「……凰さん。凰さんがよければですけど対抗戦までに手伝える事があれば手伝いますけど」
「え? そりゃ嬉しいけど……いいの?」
「いくら同じクラスでもこの話を聞いたら織斑さんに協力する気なんて湧きませんよ」
うんうんと頷いてくれる他三人。四組の簪さんはともかく、静寐さんと神楽さんも優勝賞品のフリーパスよりも凰さんの味方を取ったみたいだ。
(というよりこれで織斑さんの味方をするならちょっと付き合い方を考えていたが)
「それじゃリーヤ、あたしと戦ってくれない?」
「自分とですか? 大丈夫ですが……自分程度の技量じゃ代表候補生の相手は役不足だと思うんですが」
「「「いや、どの口でそんなこと言うの(よ、ですか?)」」」
……三人揃って即答で返さなくてもいいんじゃないだろうか。
オレとしても自覚はあるから言い返せないところだが。
「あんたの実力は知ってるわ。こっちに来てからクラスの子から代表候補生に肉薄したやつがいるって。最初は一夏かと思ってたけど試合の映像を見てリーヤの方だってすぐにわかったわ。……というかあんた最後のトラブルさえなけりゃ勝ってたでしょ」
……確かにあの時カートリッジ
「それにアリーナの使用申請が通っても肝心のISが貸し出しで使うことになってんだから戦えるのは専用機持ちしかいないでしょ」
「それは確かに」
この辺りは絶対数が少ないISの避けられない問題だろう。生徒が自主練をしようにもそもそもの数が足りないし、使える時間も限られるから課題も見えにくい。
……こうして考えると専用機持ちになる事がどれだけ恵まれているか改めて判る。
「で、どうなのよ。してくれるの?」
「……受けましょう。個人的にも凰さんには勝ってもらいたいので」
元々織斑さんと仲良くする気があまりないから痛むモノがないというのも大きい。他のクラスメイトからも距離を置かれるだろうけどそれも些細な事。凰さんの頼みを断る程のデメリットには成り得ない。
「それじゃ早速明日からいい? アリーナの申請はあたしの方でやっとくから」
「ええ。……あぁ、申請するなら他に誰が使用するのかもチェックしておいた方がいいですよ。織斑さんと被ったら面倒な事になる気がするので」
気がする、というより間違いなく面倒な事になるのは目に見えてるのでそこはしっかり忠告しておく。
……凰さん自身にもだけどオレにも絡んできそうだし。
「あ、ならわたし達も二人の模擬戦見学していい? 学年別のトーナメントがあるでしょ? それに向けて立ち回りを近くで見ておきたいんだけど」
まだ先の予定であるトーナメントに目を向けてるのは流石というべきだろう。
実習がまだなのにこの意欲は見習わないといけない。……うかうかしてると追いつかれかねないな、これは。
「簪さんはどうしますか? 私も静寐と一緒に二人の模擬戦を見学させてもらおうと思っていますが」
「……私も手伝う。私も、彼の言葉は許せない……!」
……もしかするとこの中(凰さんは除く)で一番気合が入っているのは簪さんなんじゃないだろうか。
物静かな簪さんがこうも感情を露わにするのは珍しい。余程織斑さんの言葉が気に入らなかったらしい。
ともあれ、ここにいる全員の考えは凰さんの味方をする事で決まった。織斑さんにとって簪さんを除いたオレ達三人は獅子身中の虫になったわけだけどそれは彼の自業自得だろう。
「……まぁ織斑さんじゃ獅子にはほど遠いけど」
「……? リーヤ、今なにか言った?」
「ただの独り言です。……それと、一応訊いておきますが簪さんはともかく二人は本当にいいんですか? もしかするとクラスの大半を敵に回すかもしれませんが」
オレに関してはもう既にやってしまった後だし、元々性格的に織斑さんと仲良くするのはハッキリ言って避けたかったから別にいい。
けど静寐さんと神楽さんは違う。オレ寄りではあるけどまだ“戻れる”。そう思って訊いたんだが――――――
「今更それ訊く? ここまで聞いて降りるなんてしないよ、わたし達」
「静寐の言う通りですわ。その程度の事で降りるなんてあり得ません」
キッパリと断言する二人に余計なお世話だったと反省するしかない。当の本人達がこう言ってるからこれ以上言うのは野暮というものだろう。
「それじゃ決まりですね。――――――凰さん、オレ達は貴女が織斑さんに勝つ為に出来る限りの事をしますよ」
「よろしく頼むわ。……ぜっったい一夏のやつに勝つから」
口は災いの元
特に人の身体を悪く言うのはダメ、ぜったい