IS 〜地中海の愚者〜   作:liris

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幼馴染みの二人はお互いに譲れない想いをその刃に籠める
“重み”を持つのは、果たして――――――





……オリ主と鈴の模擬戦を期待された方には申し訳ありませんがその辺りはカットして対抗戦当日へ
リクエストがあれば頑張らせていただきます


Pagina XXI 猛火咆哮

――――Side リーヤ――――

 

「ねぇリーヤくん。鈴ちゃんと織斑くん……どっちが勝つと思う?」

「8:2で凰さんの勝ちですね。技量と経験、双方で凰さんの方が上ですから」

 

 あっさり言いきったオレの言葉に周りからの視線が集まる。

 視線の種類は一組の人からは織斑さんが負けると断言した事に対する非難。それ以外の人からはおそらく興味だろう。

 

「……では、逆に織斑さんの勝ち目の二割はなんなのですか?」

「凰さんが油断するか手加減をしてソレを突けたら、ですね。普通に戦って凰さんが負ける要素はないでしょう」

「でも織斑くんには『零落白夜』があるけど……」

「確かにアレは決まれば一撃で勝負を決しますが、当たらなければどうとした事はないですよ」

 

 一組の人達からだけじゃなく織斑先生のファンからも非難の混じった視線が向けられるけど無視。

 実際使い手より格上の技量があれば封殺出来る能力であり、織斑先生レベルならともかく織斑さんレベルなら問題ない。

 そして何度か模擬戦をしたから判るけど凰さんの実力は織斑さんより上。だからこそ凰さんが勝つと言い切れる。

 

≪それでは両者、試合を開始してください≫

 

 始まりのブザーが鳴り終えると同時に、ガキンと金属同士の打ち合う音がアリーナに響く。それと同時に凰さんが距離を詰め、中華系独特の形状をした長柄武器『双天牙月』を連結した状態で振り抜く。かろうじて織斑さんは防いだけど凰さんが追撃で放った不可視の砲撃で叩きつけられていた。

 

「やっぱり織斑さんじゃ初見であの『衝撃砲』を躱すのは無理でしたね」

 

 凰さんのIS『甲龍(シェンロン)』の第三世代兵器である『衝撃砲』は空間そのものに圧力をかけて砲身にし、余剰で生まれる衝撃自体を砲弾として撃ちだすというモノ。コレが厄介なのは砲弾はおろか砲身も視えないから射線が読めないというところだ。一応ハイパーセンサーで感知出来なくもないがハッキリ言って間に合わないから意味がない。

 接近戦――――――それも初見で対処するにはなかなか骨が折れる武装だ。

 

「そういえばリーヤくんとの勝負で鈴はあまり使ってなかったよね?」

「衝撃砲はストレガとの相性が悪いですからね」

「「相性?」」

 

 衝撃砲がストレガとの相性が悪いという言葉に疑問を浮かべる二人。砲身も砲弾も不可視の武装に相性の悪さがありのかと言いたげだ。

 

「……二人とも、ストレガの特徴を思い出したらわかる」

「ストレガの特徴ってあのアタマおかしいレベルの機動性でしょ?」

 

 ……静寐さん。そういう事は思ってても本人の前で言わないでくれません? 地味に傷付くんですが。

 

「それもだけどもう一つ。ストレガは他のISより重装甲。……たぶんだけど装甲から操縦者までの間にも衝撃を軽減する仕組みがあると思う」

「正解です。付け加えるならどういうものか判れば躱せなくても備えられますからね。そうすればいざ来ても耐えられますし」

「「えー……」」

「……脳筋」

 

 ……三人ともその反応はヒドくないですか? 特に簪さん、脳筋はないでしょう、脳筋は。

 

「でも改めて考えるとリーヤくんのストレガってかなり戦闘向きだよね」

「それは否定しませんけど……なんでまたそんな事を?」

「ん? だってストレガって火力はあるしスピードも速い。その上防御力も高いじゃん。……乗り手は確かに選ぶかもしれないけど」

「まぁ、そうですね。ピーキーなので静寐さんの言う通りかなりのじゃじゃ馬ですけど」

 

 ――――――表情(かお)には出さないけど背中を冷汗が伝う。静寐さんの所感はストレガの設計思想、その核心を突いている。対IS。それも競技ではなく()()()使()()()()()()()()()()()事は今はまだ知られる訳にはいかない。

 

「エルトリア社に来たら扱うISも自然とストレガになりますよ。ついでに言うとIS部門から他の部門に移る事も出来るので進路としてはアリだと思いますよ?」

「え、もしかしてわたし達勧誘されてる?」

「簪さんは日本の代表候補生なのでエルトリア社(ウチ)に来るには色々と手を回さないといけませんが、静寐さんと神楽さんは特に問題なく来れると思いますよ?」

 

 話を逸らしつつ三人を勧誘する。入学して間もないから実績がないのが難点といえば難点だけど、今の時点から学年別トーナメントを見据えてるなら好成績を残せると思う。そして残した後だと他の企業も目をつけるだろうから()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なので三人ともエルトリア社に興味があればいつでも言ってください。……特に簪さん。エルトリア社に来てくれるなら必要な手続きや交渉は社の方でやってくれるハズなので」

「……一応、考えておく」

 

 軽くではあるが勧誘し、三人の進路にエルトリア社を意識してもらったところで試合の方に目を向ける。

 ――――――凰さんと織斑さん。二人の試合も動こうとしていた。

 

 

――――Side Out――――

 

 

 試合の流れはリーヤが言ったように鈴にあった。当人同士も対称的で一夏が肩で息をしているのに対し、鈴は余裕そうにしている。

 とは言っても油断しているわけではない。一夏が動けばその瞬間に四肢に力を籠め、即座に動けるようにしている。鈴は相手が自分より格下だと感じても侮るつもりはない。むしろ自分が上だからこそ相手は起死回生の一手を打ってくると、代表候補生になるまでの道のりで身をもって知っていた。

 ――――――故に、彼女は加減はすれど油断する事はない。

 

「少しはやるじゃない。もっと早くへばるかと思ってたけど」

「お前相手にそんなだらしのないところは見せられないだろ」

「そ。じゃ、こっからギアを上げてくわよ」

 

 そう言って鈴は先ほどよりも巧みに双天牙月を操るだけでなく、そこに衝撃砲を組み合わせて猛然と攻める。これまで鈴は双天牙月と衝撃砲をそれぞれ分けて使っていた。しかし今は両方を組み合わせ、隙のない苛烈な攻めに入る。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 双天牙月で護りを崩し、衝撃砲を撃ち込む。撃ち込まれた一夏はたたらを踏むもなんとか持ちこたえ、自分の間合いに入るべく再び吶喊する。

 

「うおぉぉぉぉぉっ!」

「甘いわよ!」

 

 しかし最後の一歩を踏み出す直前、鈴は意図的に威力を落とした衝撃砲を撃って一夏の体勢を崩し――――――

 

「もらったぁぁぁっ!」

 

 ――――――ガラ空きとなった身体に双天牙月が振り抜かれた。

 

「ぐぁっ!?」

 

 衝撃砲ではなく双天牙月を通し、甲龍の膂力を直接受けた一夏はバットで打たれたボールのように飛ばされる。隙を作られて受けた一撃に辛うじて空中で体勢を整えるも、今の一撃はシールドエネルギーを大きく削り痛みもシールドバリアを貫通して身体に届いていた。

 

(くそっ、モロにくらった。今のみたいなのを何度もくらったらヤバいっ!)

 

 セシリアの時はまだ彼女に慢心があった。が、鈴にはそれがない上に鈴の得意とする間合いも一夏と同じ近接戦。更に言うなら戦技においては鈴が遥かに上回る。

 リーヤの予想通り、試合の流れは鈴にあった。

 

(……こんなもんなの?)

 

 焦る一夏とは対照的に、鈴はあからさまではないものの物足りなさを感じていた。

 確かに一夏の技量はISに乗り始めてまだ一か月程度という事を考えれば高いだろう。が、代表候補生と同じ土俵で戦うには明らかに技量不足だ。逆転するためになにか手を打ってくると期待していたが今のところその気配はない。

 

(……リーヤの方とやり合ってた方が試合としては楽しかったわね。比べるようで悪いけど一夏はワンパターンだし)

 

 三日だけだったがリーヤとの模擬戦は鈴にとっても楽しかった。接近戦で自分とマトモに打ち合えたというのもあるが、リーヤの場合は武装の性質もあって様々な手を打つからやり合っていて飽きなかったからだ。

 

(……こっちから決めにいこうかしら?)

 

 一夏がなにかしてくると期待して鈴はここまで加減をしてきたが、あまりにワンパターンな攻め手にそろそろ自分から動くことを視野に入れ始めていた。

 

「鈴」

 

 唐突に呼んできた一夏の声に思考を打ち切る。真剣に見てくるその視線に鈴は思わず笑みがこぼれる。

 

(……ようやくその気になったのかしら?)

 

 内心でようやく、という思いとともにこれで全力で叩き伏せれるという高揚感が沸きあがってくる。

 

「なによ」

「本気で行くからな」

 

 が、そう言う一夏の言葉に鈴は盛大にため息をついて呆れる。――――――いや、落胆したと言った方がいいかもしれない。

 

「……なんだよ。そんなため息ついて」

「……そりゃつきたくなるわよ。そんなこと言うってことは、今まで本気でやってなかったってことでしょ? ……あたしをナメてんの?」

 

 ――――――訂正。鈴の心に去来したのは呆れでも落胆でもなく、そんな事を言う目の前の相手に対する怒りだった。

 

「ちょ、ちょっと待てよっ!? 俺はそんな意味で言ったんじゃ――――――」

「いいからさっさと来なさいよ。……叩きのめしてやるから」

 

 一夏の言葉は幼馴染みに対する想いがあったのだろう。だがそれは鈴にとっては侮辱でしかなく、触れなくていい逆鱗に触れてしまった。

 

「……っ! うぉぉぉぉっ!」

 

 自分の言葉が悪い意味で伝わってしまい、半ばヤケ気味に『零落白夜』を起動させて『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』で勝負を決めにかかる一夏。

 これまでの吶喊を遥かに上回る速度で鈴に肉薄する一夏は、内心でこれなら届くと期待を抱く。確かに白式はISの中でも早い部類。その白式が『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』で吶喊すればその突撃速度は目を見張るものがあるから一夏の考えはそう間違ってはいない。

 

 

 

 ――――――だが、

 

 

 

「なっ!?」

 

 この試合で最速ともいえる速度で踏み込み、振られた雪片。しかしそれを鈴は完璧なタイミングで打ち合わせ、その刃を真正面から受け切った。

 

「はっ、悪いわね一夏っ! あんたがを『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』使ってくるとは思わなかったけど――――――」

 

 受け止めた雪片を双天牙月で絡め捕った上で弾き――――――

 

「――――――リーヤはのやつはもっと速かったわよっ!」

 

 ――――――その無防備となった胴にこれまでにない力と速さを以って双天牙月を叩き込んだ。

 

「が、は……っ!?」

 

 フルスイングで放たれた一撃に、一夏は強制的に肺の空気を吐き出さされる。身体の芯まで届くような痛みに雪片を構える事すら忘れ、地に手を付けて倒れかける。

 そんな一夏を見つめる鈴の視線に戦い始めた時ほどの熱はなくなっていた。

 

(……わざわざなにかするって言わなければ当てれたかもしれなかったのにね)

 

 酸素を得る為に呼吸を整える事で精一杯の一夏は鈴の視線に気付かない。――――――気付く余裕がない。鈴の自分を見る目が変わりつつある事に。

 

「それじゃ、そろそろ勝負を決めましょうか」

 

 呼吸を整える一夏の前に鈴は立ち塞がる。今の一夏にとって、双天牙月を上段に構えた鈴は処刑台(ギロチン)そのものだ。

 未だ立ち直っていない一夏にこれから振り落とされる一撃を避ける術はない。鈴が振り落とそうと腕に力を籠めた瞬間、

 

 ズドォォォォンっ!

 

 ――――――アリーナ全体を揺さぶる衝撃と轟音が(はし)る。二人が発生源である天井を見上げると、中央近くに穴が開いて外が見える。……アリーナの遮断シールドを貫通したのは明白であり、その下、立ち込める砂煙の中からその“異形”は姿を現した。




決着がつこうとしたその瞬間、水を差すようにソレは現れた
幼馴染み同士の戦いに決着はつかず、二人は対応を迫られる。


……鈴強化のタグをつけるべきか迷う
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