仕事が夜勤に変わってから一番執筆に集中出来る夜が仕事で使えないから少しづつ作っていたからビックリするぐらい時間がかかってしまいました
……原作だと数ページの話が呆れる程長くなるまで肉付けするから自業自得でもあるのですが
そしていつも誤字報告してくださる皆様、本当にありがとうございます
デュノアさんの一件から数日、週も明けて月曜となったがオレは彼女に対して何もアクションを起こす事はなく過ごしていた。というより既にこの一件はオレの手を離れ、上の人達がどう収拾するかというレベルになっている。だからオレ自身はあの時言ったように彼女にこれ以上関わるつもりはない。
が、織斑さんとデュノアさんの方はそれを信じなかったらしい。織斑さんは神楽さん達だけじゃなく他のクラスメイトの人達にも判るほどあからさまにオレを見る目がキツくなったし、デュノアさんはオレに対してビクビクするようになった。
……まぁ、おかげで織斑さんの方から近づいて来る事はなくなったからその点はプラスだが。
「リーヤくん。ホントにデュノアくん達をほっといていいの?」
生徒会室での仕事が一段落し、布仏先輩の淹れてくれたお茶で休憩していると更識会長からそんなどうでもいい事を訊かれる。いつもの持っている扇子に『疑問』の文字が出てるけどアレ、どうやってるんだろうか?
「構いませんよ。あの二人は害にすらなりません。そもそも自分が何かしてもしなくても結果は変わらないので無駄な労力を使いたくないんですよ」
……この一件についてはもうオレの手を離れ、上の人達の意向次第。だからオレ個人としては正直どうでもいい、というのが正直なところ。彼女が煮られようが焼かれようが興味はない。
「……すごい言いようですね。リーヤ君はもう彼女達に関心はないと?」
「ええ。関心がない、というよりデュノアさん……デュノア社をどう転がすかはもう上の人達の仕事ですから。ま、かなり毟り取られる事は間違いないですね」
「毟り取るって……まさかエルトリア社はデュノア社を潰すつもりなの?」
「あくまで私見ですが潰しはしないと思います。施設も人員も揃ってるのにデュノア社を潰してまた一から人を集めるのは効率が悪いでしょう? 一般の社員や技術者はそのまま雇い続けると思います」
が、女性権利団体と繋がっている人間は別だ。エルトリア社は女性権利団体にあらゆる面で協力する事はないと公言している。だから一般社員でも全員調べて繋がりがある人は解雇するだろう。
「そもそもデュノア社を潰してもエルトリア社にメリットがありません。 表立って潰したらフランスでのエルトリア社の評判が下がるだけですし。それよりも残して利益を産んでもらった方がいいでしょう?」
エルトリア社にとってデュノア社はいわば金の卵を産む雌鶏。今は業績が下がっているがきちんと手を入れれば文字通り、金の卵を生んでくれる。それをむざむざ殺すのは勿体ない。
さっき毟り取ると言ったのは比喩でもなんでもない。殺して潰してしまったらデュノア社が生む利益を得られなくなる。だから搾れるものがあるうちは潰さない。デュノア社を潰すのは資産や技術を全て押さえ、社員も全て引き抜いて搾るものがなくなってからになるだろう。
……とはいってもソレを素直に言うつもりはないので黙っているが。
「前から思っていたのですが、エルトリア社の方々はあまりラテン系の印象がありませんね。」
布仏先輩の言葉の意味を察して思わず苦笑する。
確かにラテン系と聞いて思い浮かべるのは陽気で、細かい事を気にしないというイメージだろう。確かにエルトリア社の人間はそのイメージから外れてるだろう。とはいえ情報を扱う人間が大雑把というのは問題があり過ぎるし、そもそもオレは
「ラテン系の全員が全員イメージ通りの人間ではないですよ。日本人だって真面目で勤勉なイメージですがサボったりする人はいるでしょう?」
「それはそうですね」
「……(じーっ)」
そう話しながらお互いの手元にある書類を処理していると、更識会長がやたらジトっとした視線を向けてくる。そんなに気に障るような事を言った覚えはないのだが。
「どうかしたんですか、更識会長。なにか言いたげな視線ですが」
むくれたように更識会長が不満の混じった様子で訊いてくる。
……何かおかしな事でも言ったか? 心当たりが全くないのだが。
「……リーヤくんと虚ちゃんって仲いいわよね」
ああ、そういう事。幼馴染みの従者が自分よりオレと話が弾んでいるのが気になると。
ただコレに関しては更識会長にも責任がある。なにせ――――――
「生徒会では会長より布仏先輩との方が一緒に仕事をしていますから。特にデスクワークに関しては自分と布仏先輩が主にしていますからね。……まぁ、そうなっている理由はただ一つ」
言葉を区切り、布仏先輩へアイコンタクトをすると向こうもこっちの意図が判ったのか、小さく頷いてくれた。
そうしてお互いのタイミングを揃え――――――
「「更識会長(お嬢様)がサボるからです」」
仕事を頻繁にサボってくれる生徒会長に言葉と非難の視線を揃えて糾弾する。オレと布仏先輩から息を揃えて言われた会長はというとよよよ、とわざとらしく泣き崩れる。
……決断すべき時に決断出来というのが上に立つ素養の一つ。が、ソレはソレとして仕事をサボるのはいただけない。
「……布仏先輩。主への躾がなっていないと思うのですが」
「残念ながらそのようです。お嬢様にはきちんと反省するよう後で躾けておきます」
「ふ、二人とも目がちょっとこわくない……?」
冗談めかして言う布仏先輩だけど目が本気だ。やはり布仏先輩としても会長がああも頻繁にサボるのは思うところがあるらしい。
オレとしてもああも仕事をサボられるのは困るから、この件において味方をするのは布仏先輩の方になる。
「会長、大人しく受けた方が身の為かと」
「え゛」
「お嬢様。お嬢様が生徒会の仕事をサボっても私が何も思わないと?」
「そもそも会長がサボって溜まった書類を誰が処理してると思ってるんですか?」
更識会長への圧を更に強くする布仏先輩。ソレに便乗してオレの方からの不満を上乗せする。
真面目にやってくれればオレも布仏先輩もこんな小言を言わなくて済むのだが。
「わ、わかったわ。ちゃんと仕事をするから許してっ!?」
布仏先輩から発する気配に押されたのか抵抗する事なく謝る更識会長。
それでも懲りずに二、三日したらまたサボる気がするが。
「はぁ……。折角お礼を言おうと思っていたのに一気に言う気がなくなりましたね」
「あら。おねーさんにお礼なら遠慮せずに言っていいのよ?」
……さっきまで布仏先輩に怒られていたのにコレだ。現に布仏先輩はこめかみに手を当てて呆れたように溜息を吐いている。
「……隣で布仏先輩が頭を抱えているのによくそんな事言えますね。その辺りは感心しますよ」
勿論、これは皮肉だ。本当に感心してる部分もあるが比率的には二割の感心と八割の呆れといったところ。
「まぁその辺りは後で纏めて布仏先輩に絞ってもらうとして……今朝、HR前に放送で自分達男子生徒の行動の邪魔をしないよう言ってくれたでしょう。アレのおかげで実習のように着替えないといけない時に無駄な時間を取られなくなりましたから」
教室から移動する時に起きる騒ぎ。アレをどうにか出来ないか楯無会長と布仏先輩に相談したら今朝には各教室に通達され、行った生徒には罰則(校庭20周)が課されるためパッタリと止んだ。追っかけをされた側が遅刻に追い込まれるのは教員の人達から見ても問題があったし。
おかげで教室移動のたびに鬼ごっこをする事がなくなり、余裕を持って動けるようになった。昨日の今日で手を回してくれたお二人には感謝しかない。
「欲を言えばもう少しキツく言っても大丈夫な気はしましたが」
それでも会長の通告を無視して追っかけてきた人達はいた。
とはいえその人達には罰則+織斑先生による説教があったから今後はしないだろうし、その様子を皆見てたから真似する人もいないだろう。
「……私も少し侮ってたわ。でも織斑先生直々のお説教もあったから破ったらああなる、っていい見本になったでしょ」
「ま、そうですね。流石にアレを見てなおやろうという莫迦はいないでしょう」
もしいたらその人達はある意味では尊敬する。
……勿論、後先考えない大莫迦という意味でだが。
「それにしてもタッグトーナメントですか。……あの無人機や
今は取り掛かっている書類に記載された例年行われる学年別トーナメント。いつもなら個人戦のソレは、今年はタッグで実施する旨が書かれていた。
「ええ。代表戦の時みたいにいつまた侵入者が来るかわからないもの。周りと連携することを訓練するのは大事だもの」
「……下手に戦う事を覚えると『逃げる』事が選択肢から消えませんか?」
オレとしては傲りという根拠のない自信を付けられるよりも、手に負えないと判断したらすぐ逃げてくれる方が助かるのだが。
「格上から逃げるのは相応の地力も必要になるし、学園の性質上一人で戦う事になる方が稀でしょ? だからタッグにしたの」
確かに更識会長の言葉にも道理はある。
IS学園は一人でいる事が禁止されているわけじゃないけど、進んで一人でいる人は少ない。例外はボーデヴィッヒさんや会った当初の簪さんぐらいだろう。
「……一年の間で自分達目当ての騒ぎが起きそうですね」
具体的にはオレと織斑さん……ああ、デュノアさんの事をバラしてないから彼女にも向かうか。
出来ればあの二人に集中してくれると助かるが。
「ずいぶん余裕そうね。もう少し焦るかと思ったんだけど」
「騒ぎが起こるのはもう確定事項として半分諦めてますから」
こういう時はもう『そういうものなんだ』と考えてしまった方が気が楽になる。学園に来てまだ二ヶ月程度だけどその手の騒ぎが起きるのには悲しい事にもう慣れてしまった。
「ならカテドラール君、今日の仕事はお嬢様にしてもらうので今日はもう上がっていいですよ」
「「えっ?」」
予想してなかった布仏先輩の言葉に思わず間抜けな返事になる。
「他の生徒への公式発表は明日ですが、今日決めておけば明日起こる騒ぎが早く鎮まるでしょう?」
「自分としてもそれは嬉しいのですが……いいんですか?」
学年別トーナメントがタッグ形式になるならそれなりに仕事が増えるから上がるのは気が引けるのだが……
「ええ、今日はお嬢様に仕事をしてもらいますので。なので今日はパートナー選びに時間を使ってください」
そういう事ならここは布仏先輩の厚意に甘えさせてもらおう。
とはいってもパートナーに選ぶ人はある程度決まってる。言うまでもなく簪さん、神楽さん、静寐さんの三人だ。正直あの三人以外で組みたい相手となるとオルコットさんと凰さんぐらいだけど、オレとしては組むならやはり気心の知れている彼女達がいい。
「ではお言葉に甘えさせてもらいますね?」
「ええ。パートナー選び、頑張ってください」
布仏先輩に促されて生徒会室を後にする。……アリアロド統括からも伝言を預かってるから丁度いい――――――。
「さてお嬢様。仕事の前にこの数日どうして仕事をサボっていたのか、トーナメントをタッグにした事以外の説明をお願いします」
「う、虚ちゃん? ちょっと目が怖いんだけど……」
……うん。後ろから聞こえるお二人の話は聞かないようにしよう。世の中、知らない方がいい事もあるのだ。
† † †
「失礼します」
「あ、来たね」
「珍しく早いですわね」
「……なにか、あったの?」
図書室では既に神楽さん達が集まって図書室にある教本を広げていた。
「今日は早上がりしていいと言われたんです。皆に話したい事もありましたし」
「話したい事……私達がエルトリア社に希望出した事でしょうか?」
実は週末に昨日談話室で集まっていた時、静寐さんと神楽さんからはエルトリア社を受けるという返事を持ってきていた。エルトリア社は彼女達から見れば海外の企業で親と話し合うにしてももう少し時間がかかると思っていただけに意外だった。
『随分と答えを出すのが早かったですね。重要な進路ですからもう少し時間をかけても大丈夫ですよ?』
『それには及びません。私達はよく考えた上での選択ですわ』
『うんうん。家族とも話したけどエルトリア社みたいな大企業なら、って賛成してくれたんだ』
日本にも支社があるのもそれも大きかったと思う、と言う静寐さんからは家族と揉めたようには見えない。それは神楽さんも同様だ。
そうなると気になるのは――――――
『……私の方は、まだ。私自身の立場もあってまだ決められない』
そう。静寐さんと神楽さんと違って簪さんは日本の代表候補生。加えて更識会長の妹なら家の関係上、海外の企業に行く事を簡単に許すとは思えない。
『だから……もう少しだけ待って。お姉ちゃんと話して……それから家の方にも話をつける』
『待つのは大丈夫なんですけど……』
そう話していたのが数日前。簪さんがどう話をつけるのかは気になるけど彼女が望まない限り深入りするのは良くないだろう。
「社の方から連絡がありまして。アリアロド統括……エルトリア社のIS部門統括から面接をしたいと返事が来ましたよ」
「ほんとにっ!?」
興奮気味の静寐さんのリアクションに思わず苦笑する。
本来こういった面接は人事の人間が担当する。が、今回は元々の来訪予定もあってアリアロド統括が直々に来る。静寐さんの興奮は当然といえば当然だった。
「元々今度の学年別トーナメントを見にくる予定だからそのついでに、と。それと今回は簡単な面接だから履歴書とかそういった書類は用意しなくていいそうです。採用の合否を決めるものじゃなく貴女達がどんな人なのか会ってみよう、という事らしいので」
「あの……? 本当にそれでよろしいのですか?」
「ええ。統括も『トーナメントへの準備をしながらその手のものを用意するのは大変だろうからいい。……その代わりトーナメントでの活躍を楽しみにしてる』と言ってましたけどね」
そもそもまだ入学して二か月程しか経ってない。その状態で履歴書等の書類を用意しろ、というのは無理がある。だからアリアロド統括からすればトーナメントで実力を十分に発揮してもらう事の方が大事なんだろう。
「それってトーナメントの結果が履歴書の代わりになるってこと?」
「少し違います。統括が見るのはトーナメントの戦績ではなくその内容……どんな戦い方をしたかですね」
推薦したのはエルトリアの社員としてだけど、個人的にも彼女達にはアリアロド統括の眼鏡にかなってほしい。
自分の上司に友人が認められるというのはそれだけで嬉しく思うし。
「それとそれに関係してもう一件。今年の学年別トーナメントは個人戦ではなくタッグ形式で行われます」
「「「え?」」」
やはりトーナメントの形式が急に変更になった事に三人から驚きと戸惑いの混じった声が漏れる。
……気持ちはよく判ります。オレもこの件聞いたのはついさっきですから。
「リーヤさん。それは本当ですか?」
「こんな事で嘘をついたりはしませんよ。自分もこの事を聞いたのはついさっきですから」
「……もしかして、いつもより早かったのは……パートナー選びのため?」
「正解です」
例年の個人戦からタッグになった理由は少し暈して説明し、生徒会室からすぐに此処に来たのは組むなら貴女達がいい、と率直に言うと三人は顔を見合わせてこっちを見てくる。
「それで……どうします? 実績という面からみれば自分と簪さんで分かれて組んだ方がいいと思いますが」
ただ勝つ事を考えるなら代表候補生である簪さん一択だ。けどそれは神楽さんと静寐にとっても同じ筈。だからオレが専用機持ちなのも加味するとオレと簪さんが分かれて組むのが妥当な――――――
「なら私は静寐と組みますわ」
「――――――は?」
本当に僅かな間、それこそ即答に近い神楽さんの言葉に思わず間抜けな声が出る。
いや、驚いてるのはオレだけじゃない。簪さんも呆気に取られてるし、神楽さんに指名された静寐さんにいたっては言葉が出ないのか唖然としている。
「……神楽さん。即断が悪いとは言わないですけどせめて静寐さんに声をかけた方が……」
「そ、そうだよっ! いきなりなに言ってんの神楽っ!?」
再起動した静寐さんが神楽さんに物凄い剣幕で詰め寄る。静寐さんもまさか自分が指名されるとは思っていなかったんだろう。それだけ神楽さんが静寐さんを選んだのは衝撃的だった
「落ち着きなさいな、静寐」
「いきなり指名されて落ち着けるわけないでしょっ!?」
さっきとは別の意味で声を荒らげる静寐さんとは対照的に神楽さんはいつも通りだ。
「私と静寐で組んで勝ち進んだ方が印象に残るでしょう?」
「それは、そうだけど……」
神楽さんの言う事には一理ある。確かに一般生徒である二人が組んで勝ち残れば外部から来る人達も印象に残る。けどそれは勝ち進めればの話。途中どころか一回戦で負けたりしたら目も当てられない結果になる。
神楽さんの考えはハイリターンではあるけどそれ以上にリスクが高い……高過ぎる。
「神楽……それ、かなり危険な賭け……」
「簪さんの言う通りです。神楽さんの考えはリスクが高過ぎます」
「承知の上ですわ」
そう言い切られるとこれ以上は言えない。そんな神楽さんの揺るがない考えに根負けしたのか、さっきまで『理解は出来るが納得はしてない』という
「……わかった。いいよ、神楽。その賭けにわたしも乗るよ」
「ありがとう、静寐」
静寐さんが根負けしたような形ではあるけど二人がペアを組む事が決まった。
なら自分が組むのは――――――
「では簪さん。自分とペアを組んでもらえませんか?」
「……私で、いいの?」
「勿論。神楽さんと静寐さんが組んだ以上、自分が組むのは簪さん以外あり得ません。――――――さっきも言ったでしょう? ペアを組むなら貴女達がいい、と」
そう言うと簪さんは顔を赤らめ、神楽さんと静寐さんは『うわぁ』と言いたげなジト目でオレの方を見てくる。
……少し言葉を間違えたな。今のはなんというか……口説いたようにしか聞こえない。
「……リーヤ。今の言葉、私達以外に言っちゃ……ダメ……」
「判ってます。今のは自分でも不味かった自覚はありますから」
さらっと『私達以外には』と言う簪。暗に自分達には言ってほしいという言葉に思わず苦笑する。個人的にはこういう事を言うのはいいけど、下手に言うと神楽さん一人が愉しむという事になりかねない。……勿論、言ったオレと言われた方を揶揄って遊ぶという意味で。
「ねぇリーヤくん。ペアも決まったし今日はもうこれからフリーなんだよね?」
「ええ。後はこの用紙に必要事項を書いてもらえればフリーですね」
「それじゃ今日は久しぶりに四人で勉強しない? ほら、リーヤくんは最近生徒会室にいる事が多かったし」
……ふむ。確かに最近の放課後はデュノアさんの事もあって生徒会室に行っていたから皆との勉強会に出てなかった。
――――――決まりだな。
「では久しぶりに参加させてもらいますね。今日はどんな内容をするつもりだったんですか?」
「それなのですが……もしよろしければエルトリア社の事を詳しく教えていただけませんか? 私達はエルトリア社がISだけでなく、様々な分野に手を伸ばしているのは知っていますが具体的なところは詳しくないので。二人もそれでいい?」
「異議なーし」
「賛成」
エルトリア社について、か。確かに言われてみれば詳しい説明はした事がなかったな。神楽さんと静寐さんが目指すのは確定。簪さんも希望してくる可能性は高い。
――――――なら、今日は社の事について教えていこう。
「それじゃ、まずはエルトリアが手掛けている分野から説明していきますね。まずエルトリア社が手掛けている分野ですけど――――――」
流石にオレが属している情報部門等の暗部に関しては伏せる。だからそんなに時間はかからないと思っていたけど、思いのほか彼女達からの質問が多くて何回も話が脱線して時間がかかってしまった。まさか図書室の閉館時間までいる事になるとは思わなかった。
司書の先生から少しジト目で見られたけど代わりに彼女達にエルトリア社……というよりヨーロッパ系企業の事を知ってもらえたからそれぐらいは必要経費だろう。
磨けば必ず素晴らしい宝石となる原石が未来の同僚になるかもしれないのだから。
おまけ ヨーロッパの休暇事情
エルトリア社について話す中での何度目かの脱線。――――――休暇の取りやすさについて話すとかなり驚かれた。
「そんなに取りやすいの?」
「バカンスシーズンだと十日や二十日。長い人だと一月丸々休みますよ。むしろ自分からしたら日本の人達はなんであんなにも休みを取りたがらないのか不思議ですよ」
「……たぶんみんな、体調を崩したりした時のために取ってるんだと思う」
「あー、そういう事ですか。ならエルトリア社に入ったらその心配はありませんね」
基本的にヨーロッパの企業では体調不良や子どもの病気には有給休暇や公休以外に“健康上の理由で休む”場合に使える休みが保健の中に含まれている。*1。だから病気等で自分の有給を使うにとは殆どいない。
この事を言うと三人は『信じられない』と言いたそうな顔をしていた。
「ついでに言っておきますと向こうでは残業は非推奨……というよりするとマイナス評価になります。残業が多いと時間の使い方が悪いと見られるんですよ。*2
「……やはり、日本とは全然考え方が違うんですね」
「向こうでは休みを使うのは当然の権利ですからね。たとえそれで仕事が滞ってもそれはお互い様でそれで文句を言う人はいませんよ」
そして休みを取る事が権利ならその間に溜まった仕事を片付けるには義務である。義務を果たさずして権利を行使する事は出来ないのだ。
彼女達は進む。自身の未来へ挑戦する為に。そして少しでも彼の見ている景色み近づく為に
次話でトーナメント前の話はお終い。その次からはいよいよタッグトーナメントに入ります