原作に入っていきます。
Pagina I 入学したイレギュラー
―――――――珍獣にでもなったみたいだ。
それが教室に入って感じたことだった。
……というより
もっとも、同じ男でも注目の度合いはオレより彼の方が上だろう。オレの方は男か女か迷ってる人が多いようだが、彼は一目で男と判る。注目を集めるのは当然だろう。
……自分の容姿で不審に思われない、ではなく注目されないことに感謝するとは思わなかったが。
そんな事を考えているうちに始業を知らせる鐘が鳴り、それと同時に一人の女性が入ってきた。
「皆さん揃ってますねー。それじゃあSHRはじめますよ―」
黒板の前でにっこりと微笑む女性。身長自体は平均より少し低い程度だと思うが服のサイズが大きいのか小柄に見える。……正直、服に着られているという感じだ。
「このクラスの副担任を務めさせて頂く山田真耶です。皆さん、一年間よろしくお願いしますね」
「「「………………」」」
会釈程度に礼をしたが、教室の中はおかしな緊張感とこちらに向けられる好奇心が相まって自分以外に反応を返した人はいなかったようだ。それもあってか教室の空気はますますおかしなものになっていく。
「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」
「は、はい。出席番号一番、相川清香です―――――――」
涙ぐんだ目で副担任の山田先生が促し、自己紹介が進んでようやくさっきまでの空気が薄れていく。
オレは意識の半分をクラスメイトの自己紹介に向け、もう半分を未だに落ち着かない様子の織斑一夏に向ける。が、彼は窓際の方を見て何故か落ち込んでいる。そのせいか彼は自分の順番が回ってきた事に気付いておらず、さっきまで順調に進んでいた自己紹介が止まり、再び教室の空気がおかしくなっていく。
そして―――――――
「……えっと、織斑くんっ。 織斑一夏くんっ!」
「は、はいっ!」
「だ、大丈夫? び、びっくりさせてごめんね。お、怒ってる? 怒ってるのかな? ゴメンね、ゴメンね!? あのね自己紹介『あ』から始まって今『お』なんだよね。だからね、じ、自己紹介、してくれるかな?」
「い、いえ、山田先生、大丈夫ですから頭を上げてください。ちゃんとしますから」
止まりかけた空気を山田先生が彼に呼びかけて何とかしてくれた。が、この人本当に教師なんだろうか? 生徒に下手に出過ぎている気がするが。
そしてあの二人、いつの間にか手を取り合っているから教室内の注目を集めている。
……いい加減、先に進んでくれないだろうか? このままだとクラスメイトになった人達に、話すたびに名前を訊かないといけなくなる。と、いうか時間内に全員の自己紹介は本当に終わるんだろう?
「えーと・・・織斑一夏です。一年間よろしくお願いします」
と、益体もない事を考えていると彼が自己紹介を(ようやく)してくれていた。
が、
「・・・以上です!」
ガタタッ! ガッシャーンッ!!
周りにいる人達が一気に席から崩れた。
……うん、気持ちは判る。幾らなんでも今のは簡潔過ぎるというか手を抜き過ぎではないだろうか? 何もないならさっさと終わらせた方がまだよかった気がするが。
「あ」
バキーン!
彼がそう言った瞬間、教室の後ろから入ってきた女性が彼の頭に黒いファイル(のようなもの)を叩き付けていた。 ……その女性はIS関係者なら誰もが知っている人物であり、無視出来ない人物だ。
「げぇ、スパルタクス!?」
バキーン!!
再度黒いファイル状のものが彼の頭に振り落とされた。
「だれが古代ローマの叛逆者だ、馬鹿者。自己紹介すらまともにできんのか」
ごもっともだ。そもそも自分の姉をかの叛逆の英雄呼ばわりするとはどうかと思う。
「千冬姉!? どうしてこk」
バキーン!!
ファイルアタック3回目。というか、人の頭を叩いても歪むどころか皺ひとつ入らないなんてあのファイルは一体何で出来ているのだろうか? そもそもどうやったら人の頭を叩いてあんな音が出せるのか正直謎だ。
「織斑先生と呼べ」
「・・・はい。織斑先生」
そう、この女性こそが織斑千冬。第一回モンドグロッソで総合優勝を果たし、
「織斑先生、会議のほうは終わったのですか」
「ああ、一人で任せてすまなかった。山田先生」
そう言い織斑先生は教壇に立ち生徒たちに言い放った。
「諸君、私が織斑千冬だ。お前達新人をこれから一年で使い物になるよう徹底的に鍛えるのが私の仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。分からないことがあれば遠慮なく質問しろ、分からないのに黙っていて後悔するのはお前達だ。
それと、逆らってもいいがそれ相応の理由と実力、そして覚悟が要ることを理解しておけ。いいな」
……なんという独裁発言。まるで私が
―――――――なのだが、
「「「キャアアアアアアアアアアア!!!」」」
「千冬様!本物の千冬様よ!!」
「ずっと前からファンなんですっ!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!アメリカから!」
「あの千冬様にご指導いただけるなんて幸せです!」
「千冬様のためなら死ねます!!」
独裁者のような暴言に対し歓喜の返事が音響兵器のレベルで殺到した。耳を塞がなかった事を本気で後悔するレベルである。
「……まったく毎年毎年よくもこれだけ馬鹿者が集まる。それとも私のクラスにだけ馬鹿を集めているのか?」
生徒達の返事を聞いた織斑先生が呆れたように言ったにも関わらず帰ってくる言葉はますます熱を帯びていく。
「きゃあああああっ!お姉様、もっと叱って!罵って!」
「でも時には優しくして!」
「そしてつけあがらないように躾をして~!」
……うん、前言撤回。毎年こんな感じだというならさぞ大変だろう。少しだけ織斑先生に同情する。特に最後の三人は思わず引いてしまうほどだ。
「で? 自己紹介すらまともにできんのか、お前は」
「いや、千冬姉、俺は―――――――」
バキーン!!
4回目となるファイルアタック。ついさっき『織斑先生』と呼ぶよう注意されていたのに彼はもう忘れたのだろうか?
「織斑先生、だ」
「……はい……」
「え? 織斑くんってあの千冬様の弟……?」
「それじゃあ男なのにISを使えるっていうのも、それが関係してるの?」
「えぇ? でもこのクラスいるっいう二人目はどうなの? そもそもその人ってどこの席にいるの?」
先ほどと似たようなやり取りをする織斑先生と織斑君。そしてさっきは織斑先生に気を取られて彼が織斑先生の弟だと気付かなかった人達も二人の関係に気付いたみたいだ。
……最後の人の自分が男だと思われていない発言はスルー。初対面の人に男だと認識されないのはもう慣れたし。
「はぁ、まあいい。時間も押しているからな、次の者でこの時間は終わりだ。他の者たちは休憩時間に各自で行え。……カテドラール、自己紹介をしろ」
……一応考えていたとはいえ、本当にこの状況でするのか。出来ればもう少しまともな状況でやりたかったけど仕方がない。取り敢えず彼よりはまともな紹介をしましょうか―――――――。
「リーヤ・カテドラールです。イタリア出身でエルトリア社に所属しています。よく女性と間違えられますが男です。専用機を持ってはいますが、自分の場合はテスターとしてなので代表候補生の方達とは与えられている理由が少々異なります。これからよろしくお願いします」
「よし、ではこれでSHRは終わりだ。あまり時間が無いので残りの者たちは各自で自己紹介をするように。それと諸君らにはこれからISの基礎知識と基本動作を約一ヶ月をで覚えてもらう。いいな、いいなら返事をしろ。文句があっても返事をしろ、私の言葉には絶対に返事をしろ。いいな?」
「「「「「はい!」」」」」
自分の自己紹介の後、再び横暴とも言える発言をする織斑先生。それにクラスメイト達は即、大声で返事を返す。
……オレ自身は返事をする事はしなかった。オレにとって優先すべきはエルトリア社の社命であり、
だからこそ、クラスの人達とどう接していくかはよく考えないといけないだろう。―――――――優先する価値感が違うが故に。
エルトリアの少年は自身の立ち位置を述べる。そして、クラスメイトとのズレを感じ取る。
……スパルタクスは完全にネタです。作者がISの話を書くなら絶対やろうと思っていました(笑)