……それはそうと不定期更新はどこにいった、という突っ込みはまだなしの方向でお願いします。
「なあ、ちょっといいか?」
「いいですよ。なんでしょう?」
1限目が終わり、次の授業が始まるまでの休憩時間。クラスの人達の名前を覚えようと思い、近くにいるクラスメイトに声をかけようと思っていたら
「いや、男って俺達二人しかいないだろ? だから仲良くやっていこうぜっ!」
「ええ、よろしくお願いします、織斑さん」
「一夏でいいって。水臭いぜ?」
「……申し訳ないですが人を名前、それも呼び捨てにするのは好きじゃないんです。そちらが自分をどう呼ぶのかは好きにしてもらって構いませんので」
「あ、ああ。よろしくな、リーヤ」
……正直、初対面の人にいきなり呼び捨てにされるのも好きではないがこのあたりで妥協するべきだろう。―――――――今はまだ。
「いやー、それにしても男がもう一人いてくれてホント助かったよ! 一人だけだったらどんなに心細かったかっ!」
「そうですね、そうなっていたら確かに少し同情しますね。……自分はエルトリア社で慣れたので今はもうクラスに男一人だったとしても平気ですけど」
「げ、マジかよ。この中に一人でいて平気ってうらやましいな」
他愛のない話をしながらもやはりまだ注目されているのは感じる。個人的には他の人達とも話しておきたいところだけどそれをするには織斑さんの話を何処かで切り上げなくてはならない。どうしたものか、と考えていると―――――――
「……すまない、少しいいか?」
―――――――先ほどから話しかけるタイミングを窺っていたクラスメイトが話しかけてきた。
凛としたを雰囲気を纏い、黒髪を後ろで結ったロングポニーテールの刀を思わせる女生徒。本社の資料で見た覚えのある彼女は確か―――――――
「箒?」
「あぁ、久しぶりだな」
「六年ぶりか? すぐ箒だってわかったぞ!」
「そ、そうか」
「リーヤ、紹介するぜ。俺の幼馴染の―――――――」
「篠ノ之 箒だ。それと一夏、自己紹介ぐらい自分で出来る」
やはり、篠ノ之 箒さんか。あの篠ノ之博士の妹で確か……重要人物保護プログラムで日本各地を転々していた、とあったな。保護プログラムを受けているのに本名なのは、織斑さんがいるから偽名だと不審に思われるからか。
「それでその……すまないが一夏を借りてもいいだろうか?」
「ええ、構いませんよ。織斑さんの言う通りなら六年ぶりなんでしょう?自分に構わずどうぞ」
「……ありがとうございます。ではいくぞ、一夏。ここではなんだからな、外で話したい」
「あ、あぁ。じゃあリーヤ、またあとでなっ!」
そう言って二人は教室の外に出て行ったが、次の授業まではまだ時間がある。オレもクラスの人達と話しておこうかな。
……そうして近くにいたクラスメイトと話していたが、自己紹介をしても『本当に男の子なの?』と訊かれるのは
慣れていても何とも言えない気分になる。いつもの事だから諦めるしかないのだが。
そして完全に余談だが、織斑さんと篠ノ之さんは休憩時間内に戻ってこなかったため二人揃って織斑先生からの一撃が落とされた。
……篠ノ之さんはともかく、織斑さん、さっきあんなに叩かれていたんですから学習しましょうよ……
「――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ――」
休憩時間が終わり、再び授業が始まったけど、この辺りの内容は既に教わっているので問題ない。自分にとっては復習を兼ねた確認のようなものだ。
が、織斑さんは落ち着かない様子できょろきょろと周囲を見ている。その織斑さんの様子は教壇の山田先生も気付いたらしく、
「織斑君、今までの範囲でわからない所ありますか?」
「え、えーっと……」
「私は先生ですから、わからないところが遠慮なく訊いてくださいね?」
山田先生はにっこりと微笑んで織斑さんに言葉の続きを促す。それに織斑さんは―――――――
「全部わかりません!」
と言い切った。いや、待った。ほとんど判らないってどういう事? 入学前に渡された参考書の最初の数ページの内容だから、少しでも目を通していたら判ると思うんだけど……
「え、……その、ぜ、全部、です、か……?」
織斑さんの言葉に笑みが引き攣る山田先生。確かに判らないところがある、といってもまさか全部とは思わないだろう。
「えっと……、他にわからない人はいますか……?」
涙目になりかけた山田先生がクラス全員に訊くが自分を含め、挙手する人はいない。当然だろう。自分達のようなイレギュラーを除き、IS学園に正規の方法で入学した人達は一般の大学とは比較にならない程の狭き門を突破した人達だ。このレベルで躓く人はそもそもここにいないだろう。
「あ、リ、リーヤ、おまえはどうなんだよっ!? わからないなら強がらずに素直に訊いといたほうがいいぜっ!?」
……いや、自分が判らないなら
「……織斑さん、貴方には悪いですがオレはこのぐらいの内容なら判ります。自分が判らないからといってオレの方も判っていないだろう、なんて考えは押し付けないで下さい。そもそも特例で入った自分達は他の人達よりも勉強をしないといけない義務と責任がある、少なくとも自分はそう考えています」
「……なんだよ、俺たちの義務と責任って」
「説明しても構いませんが今は授業中です。自分達の都合でこれ以上授業の流れを中断するのは良くないでしょう」
ただでさえ、自分達のやり取りで時間を使っているのにこれ以上時間を使うわけにはいかないだろう。だが―――――――
「構わんぞ、カテドラール。私が許可してやる。お前の言う義務と責任とやらがなんなのか説明しろ」
このクラスの最大権力者である織斑先生はどうやら此方の考えに興味を持ったようで説明を促してくる。……正直、余計な事を言ったかもしれない。
「……いいんですか? 少し時間を使わせてもらう事になりますが……」
「構わんからやれと言っている」
有無を言わせない発言に呆れつつも機会を貰った以上はきちんとやるとしましょうか―――――――
「では、言わせて貰います。―――――――そもそもIS学園に入学する為の倍率は一般の大学や名門大学よりも厳しい倍率です。それは自分よりもそこを勝ち抜いてきた皆さんの方がよく知っていると思います。年度毎の定員があるからIS学園の倍率は高いものになるわけですから。
そしてここからが本題ですが、今年は自分と織斑さんがイレギュラーとして入学しました。なら、自分と織斑さんの席は
ざわり、と教室の空気が一変する。それはそうだろう。ここにいる人達なら今の言葉がどういう意味なのか判ってしまう。
だというのに、
「なあ、それってどういうことなんだ? 二人しか増えてないんだから単に席を増やせばいいだけだろ?」
……呆れを通り越して頭が痛くなってくる。まさかとは思っていたが、本当にそんな風に考えていたとは。
「そんな訳はないでしょう。学園の設備には限りがあるからこそ定員があるんですから。
……判っていないようなので答えを言いますがね、自分達が入学する事になった為に押し退けられた人達がいる、という事です。恐らくですが時期的に見て一度は合格の通知を受けた後にそれが取り消しになったんでしょう。それも自分の実力不足や学園側のミスではなく、他に入学させる人間が見つかったから、という理由でです。そして、自分の代わりに入学した人間が努力を怠っていて納得出来るでしょうか? 自分は出来ないと思います。
だからこそ、自分は押し退けた側として最低限の義務と責任―――――――押し退けられた人の分まで努力しないといけないですし、結果を出さないといけないと考えています」
「……そんなこと言われても、俺は別に自分の意志でここに来たわけじゃないし……」
「黙れ織斑。カテドラールの言う通り、確かにお前達が入学したことで人生に大きな影響を受けた者がいる。今のお前の言葉はその者達への侮辱でしかない。自分がそこにいる理由をもう少し考えろ」
「……はい」
なお異論ありげな織斑さんだったが織斑先生の言葉で引き下がった。……納得したから引き下がったのか、それとも織斑先生に言われたから引き下がったのか。……あの様子を見ると後者のようだが。
「さて、話を聞いていたお前達にも言っておく。織斑とカテドラールはレアケースだが周りを押し退けてここにいる、という意味ではお前達も同じだ。カテドラールの言った義務と責任はお前達も忘れてはならないものだ。そのことを忘れないように。いいなっ!」
「「「は、はいっ!!」」」
最後に織斑先生が締め、クラスの人達も声を返したが当然の事ながらオレの考えに同意してくれる人、出来ない人は間違いなく出てくるだろう。けれど、自分の考えをきちんと伝えられたのだから後悔はない。
さて、これがこの先どう出るかな―――――――
二人の違いは少しずつ、しかし確実に表面化する。
IS学園のような学園でイレギュラーとはいえ何の問題もなく入学出来るとは思えなかったので、この作品では押し退けられた人がいる、という設定にしています。