IS 〜地中海の愚者〜   作:liris

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自身の理念を吠えた少年はクラスの中で浮き始める。――――――しかし、全員が彼と距離を置こうとしているわけではない。


オリ話です。コメディっぽくなってれば、と思います。
キャラ崩壊?してるかもしれません。


Pagina Ⅴ ランチタイム

 午前の授業が終わり、昼休憩の時間となった。クラス代表を決める時に色々とやってしまったせいか、その直後の休憩時間に話しかけてくる人は流石にいなかった。(話しかけてくる人がいなかっただけで、視線は向けられていたが)

 そうして昼休みになり、色々と一人で考えたい事があったので授業が終わったと同時に食堂に向かってこうして食堂の人ごみに紛れているわけである。IS学園は制服の改造が認められているし、女子でもスカートではなくズボンタイプの制服を着ている人も少数ながらいる。なので食堂の広さも相まり、席に座ってしまえばパッと見で特定の誰かを探すのは難しい。

 ……流石にオレもあんな事を言ってしまった以上、クラスの人達と一緒にお昼を食べるのは気まずい。少なくとも織斑さんとオルコットさん寄りの人は敵に回したも同然だし、そうでない人達にしても入学早々クラスで悪い意味で目を付けられるのは避けたいだろう。

 なのでこういう時は大勢の中に紛れてしまうのが一番なのだ。

 

 

「ねぇカテドラールくん、一緒に食べてもいいかな?」

 

 ……訂正、それでもなお声をかけてくる強者はいたみたいだ。それも他のクラスの人じゃない。自分だとはっきり判っているから1組の人だ。

 

「いいですよ、どうぞ」

 

 声をかけてきた人達を見て少し納得した。話しかけてきた二人は、クラス代表の時に自分を推薦してくれた二人だ。                 

 残念ながらまだ話していないから名前が判らないが。

 

「……すいません、名前を教えてもらってもいいですか? そちらは自分の事を知っているとは思いますが自分は貴女達の事をまだ知らないので……」

 

 本当ならあの時間の後、推薦してくれた二人に話しに行くべきだったろう。それぐらいはするべきだった。

 

「あ、そういえばそうだったね。私は鷹月 静寐。改めてよろしくね」

「私は四十院 神楽と申します。午前の授業中で言っておられた言葉、ご立派でしたわ」

「こちらこそ、よろしくお願いします。……それにしても、これだけの人がいるのによく自分が判りましたね? 我ながら上手く溶け込めたと思っていたんですけど」

 

 そう、教室と違って自分の近くには遠巻きに見ている人もいない。なのにどうして二人はオレが判ったんだろうか?

 

「あ、それは簡単だよ?」

「ええ、私達が見つけられたのは『真剣に探した』からですわ」

「……?」

 

 席に座りながらそう言う二人だが、オレは四十院さんの言葉が気になった。……真剣に探したから、って四十院さんは言うけどどう言う事だ?

 その疑問が顔に出ていたのか四十院さんは少し笑みを浮かべて説明する。

 

「私と静寐は貴方と話してみたかったのです。もちろん男性だからという興味本位ではありませんわ。だから真剣に貴方を探したのです。これだけの人がいれば興味本位だけの人はすぐに諦めると思いますが、本当に貴方と話したいと思っている私達のような者は多少の時間を使っても探しますわ」

 

 ……なるほど、それなら確かに大勢の中に紛れても意味はない。四十院さんは多少、と言っていたが間違いなく見つけるまで探す気だったろう。正直侮っていた。

 それと同時に嬉しいと思う。クラスの大半どころか全員を敵に回したと思っていたオレとしては予想外だったからだ。……覚悟していたとはいえ、やはり嬉しいものは嬉しいのだ。

 

「……それなら二人には申し訳ないですね。自分が言える事ではないですけど探すの、大変だったんじゃないですか?」

「それはカテドラールさんが気にする事ではありませんわ」

「うんうん、私達が勝手にやってたことだしカテドラールくんの気持ちもわかるしね」

「……そう言ってくれると助かります」

 

 こうも気遣われるとオレとしてはこう言うしかない。

 ……というか、一つ前の休憩で話しに行かなかった事に本気で後悔した。

 

「ところでカテドラールくん。カテドラールくんがよければなんだけど……この休憩の間、ここで一緒にお話ししない? ほら、教室だと落ち着いて話せないし」

「そうですわね。 静寐の言う通り、今は教室よりこちらの方が落ち着いて話せますわ」

 

 二人の方からそう言ってもらえるとありがたい。教室で話していると、二人が自分のとばっちりを受けるかもしれないからだ。

 

「それじゃあ、人が少なくなるまでここで話しましょうか。……とは言っても、自分の方からは何を話したものか判らなかったりするのですが」

 

 我ながらこれには苦笑いするしかない。実際、自分から『話しましょうか』なんて言っても何を話すか浮かばないのだ。

 

「あら、意外ですわね? こういったことには慣れておられると思いましたわ」

「四十院さんの言葉は半分正解ですね。エルトリア社のIS訓練で女性と話したりする事は慣れていますから。ただ、その内容も仕事やIS関係が中心だったのでこういうなんでもない話はあまりしていないんですよ」

「そうなんだ。あ、それなら一つ聞いてもいいかな?」

「質問の内容にもよりますけど……なんです?」

 

 なんだろう、鷹月さんの訊きたい事って。

 

「えっとね? カテドラールくんって本当に男の子なんだよね?」

 

 …………はい?

 

「……静寐? あまりの内容の酷さにカテドラールさんが固まっていますわ」

「あ、あはは……。……やっぱり? でも、その、カテドラールくんを見たときに『格好いい』っていうより『麗人』ってイメージが浮かんだんだよね」

「……それは……気持ちは分かりますが」

 

 ……麗人は女性に対しての褒め言葉なので素直に喜べない。貶されているんじゃなく褒められている(と思いたい)から余計フクザツだ。

 

「……他のクラスメイトにも訊かれましたが、自分は正真正銘男ですよ。身体の線が細いのは元々ですけど、胸は控えめを通り越して『ない』ですから。……なんなら触ってみます?」

「えっ!?」

「あら」

 

 ……あれ? 冗談のつもりだったのに予想外の反応。もしかしてマズった?

 

「わ、私はやめとくねっ!? さすがに、その、恥ずかしいし……」

「あら、なら私はお言葉に甘えさせてもらいますわ」

「神楽っ!?」

 

 ……意外だ。お嬢様っぽい四十院さんが乗ってくるとは思わなかった。(後日聞いたが四十院さんはお嬢様っぽいんじゃなく本当にお嬢様だった)とはいえ、自分から言い出した事だし胸ぐらいは別にいいか。

 

「いいですよ、四十院さん。どうぞ」

 

 そうして目を瞑り四十院さんに向けて胸を差し出す。……やっておいてなんだが机を挟んでいるから少し変な姿勢になってしまった。

 

「では、失礼させていただきますね?」

 

 そうして躊躇いなく手を伸ばす四十院さん。

 そして――――――

 

 

 ――――――ぐにっ――――――

 

 ……ん? なんだ? 今の擬音? 明らかに触られた音じゃない。そもそも胸の辺りから変な感じがするし。

 気になったので目を開けて視界に入ったのは――――――

 

「……何してるんです? 四十院さん?」

 

 オレの胸を触るどころか思いっきり揉んでいる四十院さんだった。

 ……いやホントに何してるの彼女!?

 

「あら、触っていい、と言われたので触らせてもらっているのですが?」

 

 え、女の子にとってコレ触るレベルなのっ!? 鷹月さんは『いいなぁ』て言って四十院さんを羨ましそうに見てるし。

 そこに、

 

「あら、静寐もすればいいじゃない」

 

 ――――――四十院さんが更に爆弾を投下してきた。

  四十院さん、貴女そういう人だったんですかっ!?

 

「えっと、それじゃあカテドラールくん。……いいかな……?」

「……どうぞ」

 

 そうして今度は鷹月さんに胸を差し出す。

 

……今後こういう事を言うのは控えよう……。

 

 

 

 ――――――余談だが、この光景を見ていた生徒の多くは三人の後ろで咲き誇る百合の花を幻視したとか……。

 

 

 

 

 † † †

 

 

 

「では、楽しいお話はここまでにして、真面目なお話をいたしましょうか」

 

 そうして話を切り替えてくれる四十院さん。ちなみに鷹月さんは四十院さんのように揉んだりはしなかったが、こっちが恥ずかしくなるぐらい真っ赤だった。それを見て楽しいお話というあたりイイ性格をしている。

 

「真面目な話、というと三日後の試合の事ですか?」

 

 他だと自分がなんでああいう事を言ったかだけど、それは一緒に言ったような気がするし。

 

「ええ、そうですわ。織斑さんはともかく、オルコットさんは専用機を持つ代表候補生。実力は私達よりずっと上ですわ。……勝ち目はあるのですか?」

「うん、私達にも話は聞こえてきたけどオルコットさんは実技試験で試験官に勝ってるんだよ?」

 

 確かにそれは気になるだろう。自分がISを動かせると発表されたのはつい最近だからだ。

 

「ええ、IS学園に来る前にエルトリア社で義姉にさんざん鍛えられましたから。義姉はイタリアの代表候補生、それも代表次席です。なのでそれなりには動けると思いますよ?」

 

 嘘は言っていない。いつから鍛えられていたかを言っていないだけである。

 

「カテドラールくんのお姉さんってそんなに強いの!?」

「ええ、相当強いですよ? ……イタリアの国家代表が現モンド・グロッソ優勝者(ブリュンヒルデ)なのは知っていますよね?」

 

 自分の言葉に頷いてくれる二人。自分の言葉にどんな反応をしてくれるのかちょっと楽しみだ。

 

「義姉はその代表相手に()()()4()()()()()()()

「「えっ!?」」

 

 自分の言葉に二人は驚きとともに固まるが仕方のない事だと思う。五分程ではないが決して軽視できない勝率だからだ。

 

「その義姉にさんざん絞られたおかげで格上相手は慣れているんです。なので勝算がないわけではありません」

 

 オルコットさんのデータがエルトリア社にあれば対策も立てられるだろうし。その辺りは報告ついでに要求しておこう。

 

「とは言ってもあくまで『ゼロ』じゃないだけですからね。このままオルコットさんがこっちを見くびってくれたら油断を突けるんですが」

「……勝つためなら見くびられていてもいいんですの?」

「少し違います。勝つために()()()()()()()()()()()()。自分も見くびられるのは気に障りますが、勝つために使えるなら使うべきですから」

 

 そう、たとえ自分の気に障る事であっても利用出来るなら利用し、成果を出す。……まぁ、それで成果を出せなければ腑抜けの誹りは避けられないが。

 

「……やっぱり、カテドラールくんは考え方が違うね。勝つため、というか結果を出すために自分が悪く言われたりしてもそれを利用するなんて普通考えないよ?」

「そうですわね。なんというか、私達とは考え方がだいぶ異なりますわ」

「……その辺りはどう言ったものか判らないですね。過程より結果を重要視する企業にいるからなのか、自分自身がズレてるのか……自分としてはその両方としか言えないですから」

 

 もっとも、失敗が許されず、汚れ仕事も行う情報部門にいると自然と『利用出来るものはなんであれ利用する』という考えになるのだが。

 

「話は逸れましたけど、そういう訳で何も出来ずに終わる事はありませんから安心してください。三日間ですが準備に使える時間もありますしね」

「そっか……。ねぇ、カテドラールくん。もしかして私達の心配って余計なお世話だった?」

「そんな事ないですよ。二人は心配してくれたからわざわざ探してまで来てくれたんでしょう? それなのに余計なお世話だなんて思えないですよ。

 それに、色々とやらかした自分としては一緒に過ごしてくれる人がいるってだけで嬉しいですから」

 

 鷹月さんと四十院さんは織斑さんのように『男だから』という理由で来たんじゃなく、オレという個人を見て来てくれた。だから嬉しいのだ。

 

「それを聞いて安心しましたわ。カテドラールさんは私と静寐が推薦しましたから気になっていましたの。静寐は話しかける直前まで『私達が推薦したから嫌われてたらどうしようっ!?』とずいぶん気にしていましたわ?」

「か、神楽っ!? なんでそれを言うのっ!?」

「ふふっ」

 

 二人のやり取りを聞いていてつい笑みが出てしまう。なんというか、見ていて少し楽しい。

 

「ふふ、ようやく笑ってくれましたわね」

 

 ……? 教室にいる間も笑みを浮かべるぐらいはしていたハズだけど。

 

「カテドラールくん、教室だと愛想笑いだけだったからね。ようやく笑顔を見れたかな。……ダシにされたからちょっと複雑だけど」

 

 あー、納得。確かに教室でこんな楽しいから笑うのはなかったし。

 

「そうですね。二人の話が面白いのでつい笑ってしまいました。教室で織斑さんと話しているより二人と話している方が楽しいですね、自分は」

 

 うん、というか二人と話していると地が出そうになる。(今でも少し出ている気がするが)

 

「あ、それならカテドラールくん。その、よかったら名前で呼んでほしいんだけど……どうかな?」

「そうですわね。折角仲良く出来たんですもの。いつまでも名字で呼び合うのは堅苦しいと思いますわ?」

「では、静寐さん、神楽さん。改めてよろしくお願いします。オレも、リーヤで構いませんから」

「うん、よろしくね、リーヤくんっ!」

「リーヤさん、よろしくお願いしますわ」

 

 

 それからオレ達は教室に戻る時間になるまで楽しく話し合い、教室に戻った。オレと親しげにしている二人を見て他のクラスメイトは驚いているようだったけど、二人はそんな事を全く気にしていなかった。自分には勿体ないぐらいいい人達と仲良くなれた事を喜びながら、午後の授業を迎えるのだった――――――。

 

 

 




彼は自身の在り方を見てくれたから彼女達を招き、彼女達は彼に自身にないものを見たから踏み出した。


オリ主に同じクラスの中にも一人か二人ぐらいは理解してくれる人がいるだろう、というコンセプトだったのにどうしてこうなったのか……
(特にオリ主と神楽。そして静寐はイジられキャラになりそう……)
男の娘のオリ主でも自分から胸を触らせる、というのはあまりいないんじゃなかろーか。
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