俺がフェルトになっていた 作:YAYOI@小説書き始めました
ピピピッ、ピピピッ。
鳴り響く目覚ましを寝ぼけ眼に止める。
「ふぁあぁぁぁ...」
自分の体から自分とは程遠い声が聞こえる。
そう、今の俺の体は元の俺の体ではなく、フェルトの体だ。
布団を退け、起き上がる。
「ん?」
布団を退けた際、退けるのに使った右腕に、何かが当たる。
「...!?」
驚きを隠せず、その場で固まってしまった。
何故固まったかというと。
「zzzzz......」
「な、なんで俺の体がここにあるんだよ...!?」
俺の布団に一緒に寝ていたのは、なんと俺の体だった。
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ええと、とりあえず今の現状を整理しよう。
俺は、一昨日までは男の、自分の体で生活をしていた。
だが昨日の朝、目が覚めたらRe:ゼロから始める異世界生活の貧民街の少女「フェルト」に姿が変わっていた。
これは、幻想でもなんでも無い。
実際に外に出て見たが、やはり「可愛い」と言われたり、ヤンキーに性の対象にされるなど、絶対にあり得ないことが起きたためである。
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そして今日だ。
どういうことだ?俺の体はフェルトのままで、ベッドの横に俺の体がある、この状況は!?
ちょっとよくわからない。
だが、俺自身は気持ちよくぐっすりと寝ているようだった。
起こしてはいけないと思い、そのままベッドに寝かせておくことにした。
だが、この事実を知ったところで、俺がこの体の原因はわからないわけで。
とりあえずは今日もこの姿で過ごしてみよう。
今日は何をしようか...
そう思ってた矢先。
ピロリン♪
スマホのメール着信音が鳴った。
フェルトの慣れない小さな手を使ってスマホを確認する。
[よう!お前、仕事休んでんだろ?久しぶりに会おうぜ!]
そのメールは同僚からのメールだった。
だが、今のこの状態で普通なら会う気にはなれないはず。
だが、俺はメールでこう返信した。
[いいぜー、場所はマクドナルドでいいな?]
会うことを決めたのだ。
[おう、いいぜ、じゃあ昼間の3時集合な!]
との返事だった。
そして集合の予定時刻まで時間があるので、試しに、殴る動作や蹴る動作を試してみた。
ビュン!
「な、なんだこれ...」
フェルトの華奢な体から打ち出されるパンチとキックは、風を切る音が聞こえるほどに素早いものだった。
これで、正真正銘自分の体では無いことが証明された。
というか、こんなパンチやらキックやらがすごかったら、大体負けなくね?と思ってしまったのである。
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そして、時間に間に合うよう、家を出た。
そしていつも通り電車に乗ったのだが、予期せぬことが起きた。
なんと、俺のお尻を触ってくる痴漢が居たのだ。
男の俺が痴漢に会う日がくるなんて...でもやっぱり俺の見た目はフェルトだっていうことだ。
痴漢の手をガッと掴み、痴漢の顔を見る。
痴漢の顔は喜びに歪んでいた。
どうせ、上から目線で睨んでいることが相手が嬉しくなる行動だったのだろう。
その後、握っていた痴漢の手を思いっきり強く握った。
「痛い痛い痛い!!!!」
痴漢は痛そうな顔で声を発した。
周りからの目線を向けられる痴漢。
そこから、その男は俺の体を触ってくることはなくなった。
でも、ちょっと痴漢の体験ができてよかったかもと、変な感情を持つのであった。
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待ち合わせのマクドナルドについた。同僚が待っている。
ちなみに同僚もラノベやアニメがすごく好きで、リゼロのラノベやアニメなどをしっかり見たり読んだりしていた。
なので、この見た目を見たら気づくかもしれない。
とりあえずあいつに顔合わせをする。
「よお、待ったか?」
話しかけたが、こっちを見たその瞬間、形容しがたい顔になっていた。
「は?なんでリゼロのフェルトがここにおるん?しかもあんた誰!?」
まぁ、そうなるよな。
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事情を話した。
「なるほど、そんなあり得ないことが...」
「ああ、少しあり得なさすぎる。朝起きたらフェルトになってて次の日の朝に自分の体がベッドにあるんだからな...」
「そりゃびっくりするよな...俺たちが愛してやまないリゼロの、しかも登場人物の女子がなぁ...」
二人で納得する。
「しかしお前、マジで見た目フェルトなんだな。男のシンボルとか無いのか?」
興味津々で聞いてくる。そりゃそうなるだろうな。
「そりゃ無いに決まってるだろ?ちゃんとフェルトは貧乳だけど胸もあるし、今履いてる下着も女物だよ」
「流石に女物履くの抵抗あるんじゃねぇか?」
「そりゃな、元男ですから。定期的に下着を買いに行かなきゃいけないし、いずれ慣れるでしょ」
「いや、慣れたら慣れたでそれは問題な気が...」
「それだったらトイレもじゃねぇか?トイレするたびにちょっと変な気持ちとかにならねぇか?」
「まぁ、そう聞かれましたら、そうだけど...」
「じゃあ、ちゃんとアレもしてるって言うのか?」
「いや、それはまだ...そこまでの勇気がまだ出ない」
「早くしろよ!!!そんでもって俺に感想教えてくれ!!」
「うるせぇ!こんなとこでする話かそれ!!!!」
そんな会話を二人で交わした。
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「そういや俺さ、明日休みなんだけど、お前の家に泊まってもいいか?」
「ん?いいけど」
「よっしゃー!!!やったぜ!!!」
「おいおい、そこまで喜ぶ必要か?」
「だって、幾ら同じ男だからとはいえ俺の愛してるラノベの登場キャラが目の前にいるんよ?そりゃテンション上がって当然だろ」
「しかもフェルトの入った風呂の残り湯に浸かれるとか最高かよ!」
「いや、それは流石に引くわー。」
こいつ、予想以上の変態だったらしい。
「ま、そんな冗談は置いといて、まじで今日は泊まっていいんだよな?」
「ああ、いいぞ。明日でちゃんと帰ってくれるって言うんだったらな」
「わかってるって!明日でちゃんと帰るよ!」
「わかった。それじゃあ俺の家に行くぞ」
「はいよ!」
同僚を連れ、家路へと着くのだった。