華やかな花畑の中、リップルとヴァレンティナは互いの武器を交える。
しかしリップルは相手がヴァレンティナだからか、切ることが出来ずただ攻撃を防ぐだけで魔法も使わない。
だがヴァレンティナを助けるには倒さなくてはならない、どうすればいいのかと頭を悩ます。
対するヴァレンティナは未だに表情を変えず、ただ剣を振るうだけ。リップルか何度も声をかけるが反応すらみせない。
(どうすればいい…どうすれば……奥の手はあるけど、まだ早い…それに私にはヴァレンティナを攻撃できない…甘く見てたか…)
すると、ヴァレンティナが剣先を向けてリップルに向かってくる。刀で弾こうとするが一発一発が早すぎてみえず、いくつかの攻撃が腹部に刺さる。
深く刺さったからか、先程までのかすり傷よりも激痛が走る。痛みに耐えきれずその場でしゃがみこむリップル。
ヴァレンティナは隙を逃さず剣を振るう。横に避けて交わそうとするが、先程のダメージのせいか反応が遅れ、足にかする。
利き足に傷が入ったからかうまく立ち上がれない。するとヴァレンティナは剣ではなく武術での攻撃を始めた。
先程までとは違い、一発一発をガードしていく。しかし拳だけを意識していたせいか足技を食らう。その怯んだ隙をついてリップルの腹部に蹴りを入れる。
先程剣が刺さった場所を蹴られさらに激痛が走る。蹴りを食らった時に大きくはね飛ばされ、ヴァレンティナとの距離が離れる。リップルは痛みに耐えながら立ち上がろうとする。
そんな時に、リップルの懐に閉まっていたマジカルフォンが鳴り出した。しかし開いている余裕もないので、そのままの状態で通話を聞く
「なんの用……くそっ」
『ちょっと大丈夫っ今結界前にいるけど、どうしたのよ?声が辛そうじゃない…』
「大丈夫じゃない……ウワサだからって舐めてた。ヴァレンティナに攻撃できるわけない…」
リップルはそう言いながら先にいるヴァレンティナをみる。未だに無表情のあの顔を見て、自分への怒りと約束を守れなかった悔しさが溢れる。それを考えるだけで舌打ちをしてしまう。
『さっきイストワールから情報を貰ったわ。ウワサだから舐めてたのは私も同じ…でもね、今そこにいるのは本物のヴァレンティナじゃない、あんたがヴァレンティナに攻撃できないのを分かってたから姿をかえただけの偽物よ!』
「偽物!?…じゃあヴァレンティナはどこに…」
『偽物って言ってもヴァレンティナがウワサと融合してるのは確かよ。あの里見灯花って子が言ってたでしょ?上下関係でいえばウワサの方が上だって、ヴァレンティナの中にウワサがいるんじゃいの。ウワサの中にヴァレンティナがいるのよ…つまり、分かるわよね?』
「あぁ…っ…着ぐるみってことでしょ?」
リップルはリュドミラからいわれたウワサの正体を聞いて、もう防いでるだけじゃなくていいということと勝機が見えたことにより笑みをもらしながら立ち上がる。
『そういうこと。なにか強い衝撃を与えれば、ウワサみずからが回避するために分離するはずよ』
「ありがと…絶対そっちに帰るから…二人で」
マジカルフォンの通話を1度切り、ウワサに向き直る。そして腰に付けていた″四次元袋″に手をかける。この四次元袋は元々はヴァレンティナが持っていたものだが、彼女の部屋にあったものをやちよが持ってきて、それを借りたものだった。
リップルは、四次元袋から拳銃をウワサに見えないように取り出す。空いたもう片方の手でクナイを持ち、ウワサに向かい走り出す。ウワサは剣を構え攻撃の体勢をとる。
そして再び刃が交わる音が花畑に響く。ウワサは先程までとは何かが違うことに気づいた。さっきまではこちらが押していたのに、今では押されていることに。今の状態ではクナイを弾くことができない、するとリップルはもう片方の手に持った拳銃をウワサの腹部に向け、三発発砲した。
リップルはその場から離れるように飛び、拳銃を構える。
ウワサは撃たれたところを押さえながらリップルを睨む。リップルは魔法を使って残りの三発を撃つが剣で弾かれる。弾切れになった拳銃を投げ捨て走り出す。
トップスピードから預かったマントをウワサに覆い被せる。視界を遮るようにマントをかけられたウワサはリップルがいるであろう方向に剣を振るう。
刺さりはしなかったが、左目に掠った。左側に熱を感じ手で触ればその手は赤く染っていた。よく見れば左側の視界が赤いことに気づき舌打ちをする。そして、四次元袋から手榴弾を取り出しピンを抜き押し込むようにウワサに向ける。このままだとリップル自身も巻き込まれる可能性があるが、今はそんなことまで気にしている場合ではない。爆発が起こった瞬間、リップルは強い衝撃を受けた。
爆発の衝撃で意識を失っていたリップルは目を覚ます。意識が朦朧とするなか聞き覚えのある声が聞こえる。
『………ル……聞………ね…!』
何を言ってるのかは分からないが、リュドミラの声だということは分かる。しかし腕に力が入らないためマジカルフォンを取ることができない。ウワサがどうなったのかを確認したくても足が動かない。しかし出血は多くないため、手榴弾の爆発の衝撃で動かないだけ。無理に立ち上がろうとするリップルの目の前に人影が映る。
「だ……れ…」
| 私はウワサ、万年桜のウワサ…人々に幸せを与えるために作られた最初のウワサ |
「ウワサ……」
| 主を脅かしたウワサは倒された…ありがとう。しかし今、主は危険な状態にある…お前のおかげで怪我はしていないがウワサのせいで昏睡状態にある。主を助けるために、頼みたいことがある… |
やっと足に力が入り、ふらつきながらも立ち上がるリップル。立ち上がったことにより、目の前にいるウワサがどんな姿なのかが分かる。髪色も服装も桜色。まるで桜を擬人化したようなウワサだった。
| 私の代わりに…主のことを守ってほしい… |
「…どういうこと?」
| 私は、主を助けるために主の中へと融合して生命維持装置として生きていく…そうすれば私はこの世界からは消滅する。先程も言ったように私は最初に作られたウワサ…しかし、ほかのウワサとは違い守る噂がないオリジナル…不思議なことにマギウス達は私の存在を知らない。だから私は今日まで主を見守ってきた…その役目をお前に任せたい…頼める? |
万年桜のウワサの話を聞いて、先程のお願いがどういうことのかは理解したリップル。するとリップルは今の話を聞いて疑問に思ったことを万年桜のウワサに問いかける。
「じゃあ…小乃花と融合したあのウワサは?」
| やつはマギウスが作ったオリジナル。マギウスの二人が主を思って作られたウワサだが、マギウス達のせいなのかは分からないが主がやつを扱うのはとても危険なこと。それに私以外のウワサは主を慕っている訳では無い、人間よりも強いという強さの現れが融合するがわの人間を上回る場合飲み込まれてしまう…これが今回主がああなった原因 |
万年桜のウワサは、遠くにあるウワサの残骸を目にする。自身と同じ人型だからかそれともヴァレンティナに化けていたせいかは分からないが血液が大量に流れ、遠くからみても分かるくらい原型をとどめていなかった。
| しかし私は主を慕い、人間と敵対する意思もない。生命維持装置として主と融合しても意思を持つのは主。生命維持装置としての機能に成功すれば主は病気のことを気にせず楽に生活ができ、魔法少女としての力も強くなる…しかしウワサの力を使いこなすには時間がかかる、最初のうちは誰かが傍にいないと暴走したときなどは危険。だから最初も、その後からも支えていくものが必要になる。最後にもう一度聞く。頼める? |
「分かった……小乃花とも、そう約束したから…」
| ありがとう。それでは融合を始めよう… |
そう言って万年桜のウワサは花に囲まれながら眠っているヴァレンティナへと近づく。
そのあとについて行くように歩くリップル。
万年桜のウワサはヴァレンティナの頭に抑えるように両手をあて、目を瞑る。そして次の瞬間万年桜のウワサは光り輝く。
| 融合が始まってる。もうまもなく私は消えるがお前はそのまま主そばを離れないでいてほしい………最後にもうひとつ頼みたい |
「…なに?」
| 状況が落ち着き、春を迎えたら…主を花見に連れて行ってくれ…いつか友達ができたら行きたいと言っていた |
万年桜のウワサの頼み事を聞いたリップルはそれを了承するかのように頷いた。その反応をみた万年桜のウワサは安心したように笑みをもらした。その直後に万年桜のウワサは先程までよりも強く光り輝き、姿が見えなくなった。
集まった光は粒のように小さくなり、ヴァレンティナの中へと入っていく。先程まで万年桜のウワサがいた所にはもう彼女の姿はなかった
ヴァレンティナに視線を移せば、瞼がゆっくりと上がろうとしていた。生命維持装置としての機能は成功したことになる。よくみれば先程の光のあとからヴァレンティナの魔法少女衣装が違うことに気づく。これも融合したからなのだろうと理解した。
「…華乃?」
「小乃花……よかった…」
意識を取り戻したのか、リップルをみて名前を呼ぶヴァレンティナ。戻ってきたんだと分かり安心したのか涙目になるリップル。無理に起き上がろうとするヴァレンティナに肩を貸し立ち上がらせる。ヴァレンティナは辺りを見回して、左側が赤く染ったリップルをみて涙を流す。
「私……みふゆさん達を、みんなを助けたかっただけなのに…ごめん、私のせいだよね…」
「そんなことない……もう約束、忘れた?」
そうヴァレンティナに問いかけるリップル。ヴァレンティナは目元を擦りながら首を横に振る。
「なら…私は気にしてない。それに私、強くなれた気がするから…」
「うん……ありがとう…華乃…」
ウワサのいなくなった結界で再会を喜ぶ二人。笑みを浮かべる二人を、結界内に咲く花…そして万年桜のウワサによって作られた季節外れの満開の桜の木が見守っていた。
Next time the lastround