バカと千恋万花   作:京勇樹

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剣鬼

芳乃が明久に注意喚起した直後、また触手が襲い掛かってきた

明久はその一撃を、柄尻で弾いて防御

そのまま、前に出た

その直後、草影からソレが現れた

まるで、子供が粘土で作ったかのような見た目の存在

タタリ

そのタタリは、動物のような身のこなしで、明久を飛び越えて、芳乃に向かった

 

「芳乃様!」

 

「くっ!」

 

茉子が呼ぶと同時に、芳乃はサイドステップでタタリの体当たりを回避

しかしタタリは、芳乃の背後にあった木の幹に着地して強引に方向転換

その勢いのまま、芳乃に向かった

芳乃は回避しようとしたが、完全には回避出来ずに僅かに命中

バランスを失った

 

「芳乃様!」

 

だがそこに、茉子がフォローに入った

茉子は、クナイを投擲

タタリはそのクナイを回避

次は茉子に狙いを定めた

だが

 

「おい……僕を忘れるな」

 

と明久が、まるでロケットのように左手で突きを放っていた

タタリはその一撃を回避したが、明久は足運びで停止した

そこは、芳乃の前だった

明久は油断なく刀を構えながら

 

「芳乃さん……大丈夫?」

 

と問い掛けた

すると芳乃は、立ち上がり

 

「はい……大丈夫です」

 

と答えて、鉾鈴を構えた

数の利では、完全に明久達に軍配が上がっている

しかし、地の利ではタタリに軍配が上がっている

山というのは、不整地だ

そして不整地では、四脚のタタリに分があった

だから、戦いは膠着状態になっていた

しかし、芳乃は気付いていた

明久の呼吸が荒く、尋常じゃない汗を掻いていることに

 

「吉井さん……どうしたんですか?」

 

「大……丈夫……」

 

芳乃が問い掛けるが、明久はそう返した

しかし、どう見ても大丈夫には見えなかった

それが気になり、芳乃は明久の腕を掴もうとした

だがそれより早くに、明久が動いた

実は、明久は焦っていた

 

(早く、勝負を決めないと……持たない!)

 

今も、意識をタタリに向けることで、辛うじて気絶しないように保っていた

だが、何事にも限界はある

だから明久は、短期決戦を選択

突撃したのだ

その速さは、芳乃からしたら、別格

残像しか見えない

茉子は

 

(この速さは……古流剣術の縮地!?)

 

明久の速さの秘訣に気付いた

そして明久は、タタリの触手を速さで回避

そして、跳んだ

だが、それは悪手としか言いようがない

何故ならば、人というのは、空中では一切身動きが取れなくなるからだ

それを狙い、タタリは触手を放った

しかも、真上から叩き付けるように

本数は、増えて三本

それを見た茉子は、懐からクナイを数本取り出して投擲した

そのクナイにより、三本の内二本は切断された

だが、一本だけ残った

 

「明久さん!」

 

「吉井さん!」

 

それを見た茉子と芳乃は、思わず叫んだ

長い間戦ってきた二人だから、タタリの一撃の重さを理解していた

直撃を受けたら、無事ではすまない

だが、次の瞬間

 

「……流剣術、斬の型……陽炎」

 

明久がそう呟いた直後、残っていた触手が切り刻まれた

そして明久は、鞘に刀を納刀し

 

「居合の型……斬月」

 

目にも止まらぬ早さで、タタリを一刀両断したのだった

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