翌日、朝五時
その日芳乃は、何時もより早く起きて巫女としての練習を終えて待っていた
その時、一緒に隠れていた茉子が
「来ましたよ、芳乃様」
と言ってきた
確かに、玄関から明久が現れた
その服装は、制服姿である
そして明久の後には、ムラサメも浮いている
そして明久は、軽く準備体操すると、一気に走り出した
それを見た茉子は
「追いかけますよ、芳乃様!」
と言って、駆け出した
それに僅かに遅れて、芳乃も走り出した
二人が走る先を、明久は姿勢を低く、上半身を大きく前に倒して走っている
その速さは、忍者である茉子ですらギリギリ離されない程度
芳乃も運動神経は鈍くないが、完全に遅れていた
だが芳乃は、明久の行き先が分かっていた
「この先は……学院ね……」
芳乃が到着したのは、走り出して数分後だった
茉子は、近くの生け垣に隠れていた
「芳乃様、こっちです」
小声で茉子に呼ばれて、芳乃はそこに向かった
そして、茉子は
「ここから、そっと見てください」
と学院の方を指差した
そこで見えたのは、激しく木刀を交わらせている明久と玄十郎の二人だった
「太刀筋が鈍くなっているぞ、明久!!」
玄十郎はそう言いながら、木刀を右から横凪ぎに振るった
「しいっ!」
明久はそう気合いの声を洩らしながら、横回転になるように跳躍
その直後に、玄十郎に向けて木刀を突き出した
しかし玄十郎は、その一撃を木刀を当てて防御
明久が着地するタイミングを狙い、木刀を振り下ろした
だがその一撃を、明久は木刀を横にして防御
木刀同士がぶつかる音が、離れている二人にも聞こえた
余りにも激しい訓練に、芳乃は言葉を失っていた
すると茉子は
「やはり、鵜茅流剣術……」
と呟いた
それを聞いた芳乃は
「鵜茅流剣術って、確か穂織の……」
と茉子に視線を向けた
すると茉子は、頷いてから
「はい。穂織に伝わる古流剣術です。以前に明久さんが呟いてた技の名前……陽炎と斬月……両方とも、鵜茅流でも上位に位置する技です」
と説明した
その時、木刀が落ちる音が聞こえた
二人が見ると、明久が両手両膝を突いて、激しく呼吸していた
「あれほどの動きですから、仕方ないのかしら……」
「どうも、それだけじゃないような気がします……」
芳乃の言葉に、茉子がそう言った
すると、玄十郎が
「深呼吸しろ、明久! ここはあの現場ではない! 落ち着くんじゃ!」
と言いながら、明久の肩を叩いた
「何が起きてるの?」
「まさか……PTSD?」
芳乃が疑問の声を洩らすと、茉子がそう言った
すると芳乃が
「PTSDって……トラウマ?」
と茉子に問い掛けた
すると茉子が
「はい……あの様子ですと、恐らく刀にトラウマがあるのかと」
と言った
それを聞いた芳乃は、玄十郎に肩を叩かれている明久を見た
すると、茉子が
「芳乃様、そろそろ戻りましょう。朝食を作ることも考えたらギリギリです」
と言った
それを聞いた芳乃は
「判ったわ、戻りましょう」
と頷いたのだった