バカと千恋万花   作:京勇樹

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木乃伊取りが……

「うっし! ここら辺でいいだろ」

 

と言ったのは、廉太郎である

既に手元には、手頃な長さの竹が数本切ってある

廉太郎と明久は、その先に釣糸を結び着けていく

それを見た茉子が

 

「ずいぶんと手慣れてますね」

 

と感嘆していた

それに対して、明久と廉太郎は

 

「まあ、昔にやってたからね」

 

「慣れだわな」

 

と答えた

そして、糸を結び終わると

 

「えっと……この辺かな……っと」

 

と、少し大きめの石をひっくり返した

 

「お、見っけ」

 

そうして見つけた虫を、針に突き刺した

 

「あとは、垂らすだけだ」

 

「この川の魚、警戒心無いからね」

 

明久と廉太郎はそう言うと、竿をそれぞれ手渡した

芳乃は糸を振り子のようにしたが、レナは

 

「よいしゃー!」

 

と気合いと共に、竿を思い切り振りかぶった

だがその時、明久がレナの後ろを通っていた

その結果起きたのは

 

「のわぁ!?」

 

明久の服の裾に、レナが振った竿の針が引っ掛かり、明久の服が、一気に脱げた

 

「あれ……この服は……」

 

とレナは、川面に浮かんでいる服に気付いた

すると、明久が

 

「レナさーん……それ、僕の」

 

「はわぁ!? す、すいませんですよ!?」

 

明久が呼び掛けると、レナは慌てて釣竿を引いて、服を手元に引いた

 

「まあ、上着だけで良かったよ……最近の携帯も、防水性だしね」

 

明久はそう言って、近くの岩に服を乗せて乾かし始めた

そしてふと気付けば、茉子が居ないことに気付いた

 

「あれ……常陸さんは、何処だろう……」

 

明久はそう言いながら、周囲を見回した

だが、近くには居ない

 

(一応、探しに行こう)

 

明久はそう判断すると、芳乃に

 

「ちょっと、常陸さんを探してくるね」

 

と断った

すると芳乃は

 

「多分、山菜を探している筈ですから……あちらの方に行ってみてください」

 

と芳乃は、ある方向を指差した

 

「ん、わかった」

 

芳乃に頷いてから、明久はその方向に向かった

そして、ある程度進むと

 

「ん? これは……籠?」

 

なぜか、切り株の上に山菜が積まれている竹籠があった

それを不思議に思っていると、頭上から

 

「明久さーん……」

 

と明久を呼ぶ声が聞こえた

見上げると、樹上に茉子が居た

胸元に、猫を抱いて

 

「……何してるの?」

 

「山菜を取ってたら、降りられなくなった子猫が居たので登ったんですが……」

 

明久の問い掛けに、茉子はそこまで言うと、一拍置いて

 

「降りられなくなったんですー!? 私、高所恐怖症なんですから!?」

 

と叫んだ

それを聞いた明久は、少し呆れた様子で

 

「……木乃伊取りが木乃伊って諺、知ってる?」

 

と問い掛けた

すると茉子は

 

「知ってますよ! けど仕方ないじゃないですか! 猫が! 猫がぁ!!」

 

と言った

しかし、明久は

 

「わかったから、なんか降りる道具は無いの?」

 

と問い掛けた

すると茉子は

 

「はっ!? そう言えば、縄梯子が有りました!」

 

と言って、懷を探り始めた

そして

 

「縄梯子……縄梯子……縄梯子……!」

 

と言いながら、次々と道具を取り出した

丸太、クナイ、手裏剣、鉤爪、etc……

 

「機械猫か!?」

 

その光景に明久は、思わず突っ込みを入れてしまった

その時、膝の上に居た猫が動き始めて

 

「あ、ダメです! 動かないで!?」

 

茉子は猫が落ちないようにと、猫を抱き締めた

だがその拍子に、バランスを失い

 

「あ!?」

 

「常陸さん!?」

 

茉子が、居た枝から落下

それを見た明久は、一気に駆け出した

そして、スライディングで茉子の下にギリギリで割り込むことに成功

茉子を抱き留めることに成功した

 

「はぁ……良かった……」

 

と明久が安堵の溜め息を吐くと、猫は茉子の胸元から脱出

何処かに去った

だがそれより茉子は、明久にお姫様抱っこされていることに意識が向けられていた

 

(わっ!? わっ!? お、お姫様抱っこされてます!? 私の夢の一つだった、お姫様抱っこ!?)

 

茉子の隠された趣味の一つに、少女マンガの収集があり、それを読んでいくうちに、そういったことに憧れるようになったのだ

それが今まさに、明久によって行われていた

その後茉子は、罰としてお姫様抱っこされたまま芳乃達の元に帰ることになった

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