バカと千恋万花   作:京勇樹

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激闘

「な、なんなのですか、あれは!?」

 

タタリを見たレナは、驚いた表情でそう言った

どうやら、タタリも見えるらしい

その直後

 

「危ない!」

 

そのレナを、明久は抱き締めるようにして、横に跳んだ

その瞬間、先程までレナが居た場所にタタリの尻尾が振り下ろされた

その一撃は、その後ろにあった本棚を粉砕

当たったら、無事では済まなかっただろう

明久はすぐにレナを、ドア向こうに押して

 

「そこに居て!」

 

と言った

そして、顔を上に向けて

 

「ムラサメちゃん!」

 

とムラサメを呼んだ

すると、明久の近くにムラサメが現れて

 

「うむ!」

 

と頷いた

しかし、刀が無い

ムラサメは近くに有れば手元に呼べるらしいが、その範囲は非常に狭い

試したら、最高で約100mといったところだった

今は、優に1km以上離れている

刀を呼ぶのは、不可能だ

 

「ムラサメちゃん、僕に力を渡せないの!?」

 

「無茶だ! 前例が無い訳ではないか、代償が!」

 

「明久さん!」

 

ムラサメと明久が会話していると、その前に茉子がクナイを両手に滑り込んだ

その直後、タタリの尻尾が繰り出された

その一撃を、茉子はクナイで弾いた

そこに

 

「はあ!」

 

茉子から渡されたのだろう、クナイを両手で持った芳乃が飛び掛かった

しかし、タタリは跳躍して回避

壁を蹴って、芳乃に襲い掛かった

それを芳乃は、しゃがんで回避した

するとタタリは、もう一度壁を蹴って、今度は茉子に突撃した

その攻撃を茉子は、横に跳んで避けた

だが、その瞬間

 

「あぐっ!?」

 

その茉子に、瓦礫が当たった

どうやら、タタリが尻尾で投げつけたらしい

その隙を突かれ、茉子は尻尾の一撃で本棚に叩き付けられ、倒れた本棚の下敷きになった

 

「茉子!」

 

「ムラサメちゃん!」

 

それを見た芳乃は茉子の名前を呼び、明久はムラサメの名前を強く呼んだ

すると、ムラサメは

 

「ええい、仕方ない! しかし、耐えろよ! ご主人!!」

 

と言って、明久と唇を重ねた

その直後、刀と融合するようにムラサメの姿が消えた

すると代わりに、明久の体が光り始めた

それは、ムラサメの力が明久に宿った証拠だ

それを証明するように、明久の脳内に

 

『ご主人! 短時間で終わらせるようにしろ! 体が持たないぞ!!』

 

とムラサメの声が響いた

それを聞いた明久は、一気に駆け出した

ムラサメの言う通り、今の時点で既に明久の体を痛みが襲っている

確かに、長くは持たなそうだった

 

「ああぁぁぁぁっ!!」

 

それを紛らわすように、明久は声を上げながらタタリに突撃した

その明久を迎撃するために、タタリは尻尾を繰り出した

その一撃を、明久は横に跳んで回避

その直後、足を一気に振り上げた

その一撃で、タタリの尻尾は蹴り上げられた

そして明久は、次に右手を首目掛けて振り下ろした

だが、それをタタリは後ろに跳んで回避

直ぐに、後ろの壁を蹴って、明久に突撃してきた

しかし明久は、それを避けなかった

否、避けられなかった

明久はペース配分を考えず、ムラサメの力を全開に使っていた

既に明久の体は、限界に来ていたのだ

その証拠に、明久の口の端から血が流れている

だから明久は、短期決戦

カウンターを決めるつもりだった

その明久に、タタリが体当り

その勢いのまま、壁に激突した

そのダメージで、明久は血を吐き出した

だが壁に激突する直前に、明久は右手をタタリに突き込んでいた

そして

 

「ああぁぁぁぁっ!!」

 

と血を吐きながら、右手を振り上げて、タタリの首を落とした

その直後、タタリは消滅

明久も、両膝を突いた

すると、明久の前にムラサメが現れて

 

「気を確り持て、ご主人! いいか、気を失うでないぞ!!」

 

と明久に声を掛けた

だが、明久はそれに答えることなく、倒れ伏したのだった


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