「う……あー……?」
「吉井さん! 目を覚ましたんですね?」
明久がうっすらと目を開くと、たまたま汗を拭きに来たらしい芳乃が居た
明久は、ゆっくりと首を動かして
「あれから……どうなったの……?」
と芳乃に問い掛けた
それを聞いた芳乃は、一つずつ教え始めた
まず、明久が倒したタタリは、山から降りてきたのではなく、あの診療所で産まれたこと
その詳しい話は後で、みづはがすると言った
そのみづはだが、軽度の打撲のみで問題なし
茉子も、軽度の打撲と頭に傷を負ったが、命に別状は無し
二日経った今日、既に何時も通りに行動しているらしい
問題は、明久だ
「吉井さんなら、もう気付いてると思いますが……」
「うん……右腕の肘から先、感覚が殆ど無いね……辛うじて、動く位だ」
芳乃の言葉に頷きながら、明久はそう言った
「みづはさんの診察では、重度の火傷に似た症状のようです……満足に動かせるようになるには……数日を要するだろうと」
芳乃は顔を俯かせながら、そう説明した
そして、涙を流しながら
「幾らなんでも、無茶し過ぎです! ムラサメ様の力を直接宿すだけでなく、力に守られてるとは言え、呪いの塊たるタタリに手を突き刺すなんて!! 今回は、それで済みました! ですが……二度と……しないでください……」
と懇願した
それを聞いた明久は、苦笑を浮かべて
「まあ……僕も、そう何回もしたくはないね」
と言った
「だけど……同じ状況になったら、僕はまたやるよ……」
明久がそう言うと、芳乃は
「何故ですか!?」
と明久に問い掛けた
すると明久は、笑みを浮かべて
「だって僕、形だけかもしれないけど……芳乃さんの婚約者なんだ……だったらさ、守らないといけないじゃない……その為なら僕は刀を執るし、自分の体を盾にするよ……だって僕は、男なんだからさ」
と言った
それを聞いた芳乃は、涙を流したまま、明久の胸元に顔を埋めた
そこに、襖が開いて
「意識が戻ったようだね、明久君……大丈夫かい?」
とみづはが入ってきた
「駒川先生……」
「芳乃様……?」
どうやら芳乃が泣いていることに、予想が出来ないらしい
みづはは、不思議そうにしていた
「まあ、ちょっと……駒川先生は、打撲と聞きましたが?」
「ああ。いきなり現れたタタリに、突き飛ばされてね。それだけさ」
明久の問い掛けに、みづははそう言いながら芳乃の隣に座った
そして、僅かに動くだけだった右腕を見て
「その腕に、かなりの呪いの力が流れたようでね。それで火傷みたいな状態になっている」
と語り、布団の中から右腕を出した
その右腕は、包帯がグルグルに巻かれている
その見た目は、完全に重傷患者のそれだ
「それに、ムラサメ様の力を体に宿したとも聞いた……全く、無理をする……全身に酷い負荷が掛かって、重度の筋肉痛や炎症みたいになっている……まあ、全治一週間ってところだね……暫くは、安静にすることだ」
「はい、わかりました……」
みづはの説明を聞いて、明久は頷いた
そして、みづはは
「さて、あのタタリだが……これから現れた」
と言って、あの水晶の欠片を明久に見せた
「その欠片から?」
「ああ……」
明久が不思議そうにすると、みづははその欠片を近くの机に乗せた
そして、明久を見て
「二日前、ようやく私はあの欠片を調べるために、色々と試そうとしてね……最初に成分を知ろうと、少し砕いたんだ……そうしたら、砕いた破片がくっついてね……タタリが現れたんだ」
と告げた
そうして明久は、この事件の根幹を知る