「つまり、朝起きたら芳乃様が明久さんの布団に入っていた……と」
「ソーナンス」
茉子の問い掛けに、明久はそう言いながら頷いた
すると、茉子は眠そうにしているムラサメに視線を向けて
「ムラサメ様?」
と呼び掛けた
すると、ムラサメは
「ああ、夜半に芳乃が来たのは本当じゃ」
と肯定した
それを聞いた芳乃は、顔を真っ赤にして
「いくら寝惚けていたとはいえ……っ」
と言って、顔を覆った
だが、ムラサメは首を振って
「いや、あれは……呼ばれたんじゃよ」
と言った
それを聞いた、明久、芳乃、茉子の三人は
『呼ばれた?』
と同時に言った
三人の言葉を聞いたムラサメは、頷いてから茉子に
「すまぬが、ご主人の部屋から欠片が入れられた巾着袋を持ってきてくれ」
と言った
それを聞いた茉子が、立ち上がると
「あ、僕が取りに行くよ?」
と明久が言った
すると、芳乃が
「吉井さんは、まだ怪我が治りきってないですから、大人しくしていてください」
と明久の頭を、軽く叩いた
大分治ってきているから、明久としてはリハビリも兼ねて動きたい処である
しかし、言われたら大人しくしていないと、芳乃に更に怒られる
それは避けたい明久は、大人しく座っていることにした
すると茉子が、あの欠片が入れられた巾着袋を持ってきた
欠片だが、何か起きても分かるようにと、ムラサメの近くに置かれることにしたのだ
その欠片が入れられた巾着袋を、茉子は机の上に置いた
それを見たムラサメが
「昨夜、この欠片から不思議な波動を感じてな。何かと思っていたら、芳乃がフラフラと現れたのだ。しかもその時は、耳が出ていた」
と語った
それを聞いた明久と茉子は、芳乃の頭を見た
今は、耳は出ていない
間違いなく、呪いにが関与しているだろう
「……使えるんじゃないかな?」
と言ったのは、明久である
明久の発言に、芳乃と茉子は視線を向けた
すると、明久は
「もしかしたらだけど、同類っていうか……近い存在を呼んでるんじゃないかな?」
と言った
それを聞いて、芳乃は
「まさか……」
と呟いた
「え、あの……どういうことですか?」
二人の考えが分からない茉子は、狼狽えた表情で二人を見た
すると、芳乃が
「つまり吉井さんは、タタリを一斉に呼んで、欠片を集める気なの」
と言った
それを聞いた茉子は、驚いた表情で明久を見た
「だって、元のサイズと分からなければ、割れた後の数も分からない……だったら、使える手は使わない手はないでしょ?」
明久がそう言うと、茉子が
「幾らなんでも、危険です! 何体のタタリが来るのか!?」
と反論した
確かに、欠片の数が分からないということは、現れるタタリの総数も分からないということだ
山という不安定な場所では、賭けの要素が強すぎる
「だけど、何回も戦うっていうリスクは避けられるよ……しかも、何時来るか分からないタイミングを避けられる……」
明久のその言葉に、茉子は押し黙った
今まで何回も戦ってきたが、中には負傷やタイミング悪く、一人で戦う場面も多々あった
それを考えると、確かに有効かもしれない
「どちらにしろ、ご主人は怪我の完治に努めよ」
「そうですね。吉井さんは、まだ怪我が治りきってないんですから」
ムラサメと芳乃のその言葉に、明久は頷くしかなかった
まだ治ってないのは、事実なのだから
しかしこれで、欠片を集めるという目標は終わりやすくなったのだ