次の日の夜
芳乃の部屋の枕元に、欠片の入った巾着を置いて、芳乃は眠るようにした
出来るだけ、前と同じ条件にするためだ
部屋の前の廊下には、明久と茉子が待機している
そして、どれほど経ったかムラサメが
「芳乃が動き出したぞ」
と告げた
それを聞いた二人は、芳乃の後を追った
芳乃はフラフラと山を登っていく
その手の中には、欠片の入った巾着がある
すると、ムラサメが
「あの欠片から、何やら不思議な波動が出ている……」
と言った
それを聞いた明久は
「ムラサメちゃん、刀に入って……多分、来るだろうから」
と提案した
それを聞いたムラサメは、頷いてから刀に入った
すると、茉子が
「……周囲に、凄まじい数の気配が」
と緊張感を滲ませた声を漏らした
それを聞いた明久は
「だったら、ここまでだね!」
と言って、芳乃を抱き上げた
その直後、明久の右手側から一体のタタリが現れた
それを見た明久は、即座にバックステップ
一気に距離をとった
その判断は正しく、先ほどまで明久が居た場所にタタリの尻尾が振り下ろされていた
その時、芳乃の目に理性が戻り
「は、はれ……私……」
と周囲を確認
そして、明久にお姫様抱っこされていることに気づき
「え、ええ!? なんで私、吉井さんに!?」
と顔を真っ赤にした
だが、タタリの気配に気付いたらしく
「あああああ!! い、居ます! そこらに囲むように!」
と声を上げた
それに連動するように、周囲の草影から次々とタタリが姿を現した
その数は、優に10を越えている
「この数は……!」
「多分、近くの欠片が一斉にタタリに変異したんですね……」
その数を見て、明久と茉子はそう話した
だが、そこに
『いや、これだけではないぞ』
と明久の頭の中で、声がした
「え?」
『凄まじい数のタタリが、ここに集まってきている! 下手すれば、この山全ての欠片がタタリになった可能性がある!』
明久が首を傾げると、ムラサメはそう言った
それを聞いた明久は、思わず
「この山……全部の欠片が!?」
と驚いた
それを聞いた明久は、素早く思考した
今居るのは、山の中腹
足場は、悪い
数の差も、圧倒的
(地の理も数の理も相手にある……だったら!)
そこまで考えると、明久はその場から反転し
「移動するよ! せめて、足場がしっかりした場所に!!」
と言って、駆け出した
その意見に否は無かったらしく、茉子も明久の後に続いた
当然のことだが、タタリも追い掛けてくる
それを肩越しに見た明久は
「芳乃さん、刀を掲げて!」
と芳乃に言った
それを聞いて芳乃は、なんとか刀を抜刀
高々と掲げた
それを見た明久は
「ムラサメちゃん、閃光で目眩ましを!!」
と言った
その直後、凄まじい光が刀身から放たれた
それが理由らしく、タタリ達の動きが止まった
その間に、明久達は距離を離した
そして到着したのは、ある程度踏み固められた山道だった
「ここなら、足場もいいか……」
明久はそう言って、芳乃をゆっくり下ろした
そして刀を受けとると、ムラサメに
「力は、大丈夫?」
と問い掛けた
すると、ムラサメは
『大して消耗しておらん。問題ない』
と返答した
そして、明久と茉子が息を整えた
その時だった
木の影から、タタリが姿を現した
しかしその姿は、今まで見たのよりも巨体だった
「まさか……一つになった……?」
と言ったのは、芳乃である
どうやら予想外だったらしく、呆然としていた
だが、明久が
「はは……一体ずつ相手にするよりかは、遥かに簡単だ……こいつ一体を倒せば、終わるんだからね!!」
と言って、構えた
こうして、最終戦の幕が開く