魔法使いの嫁〜AnotherStory〜   作:ケニーF

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エルダは何故弟子を取らないのか?
真相が明らかに、、、


第十話『魔法使いの弟子』

「エルダさんは弟子をとらないんですか?僕はてっきり貴方が…」

 

エルダさんの表情はあまりすぐれていない。

その質問が来るのはわかっていたらしいが来てほしくないみたいだ…

 

「え、ええ。私はとらない主義なの。今までも一回も弟子を取ったことはないわ。一緒に暮らすって気はないの。」

 

???僕の頭に疑問符が浮かぶ。

(なんで嘘つくんだ?別に”今はとってない”でいいじゃないか)

 

「嘘言わないでくださいよ。」

 

エルダさんがキッと僕を睨む

 

「嘘?そんなことなでしょ!そんな証拠ないでしょうに。それに…」

 

どうやらあんまり触れて欲しくなみたいだが、これ以上たらい回しはゴメンだ。

 

「僕が泊まったあの部屋。」

 

エルダさんはハッとした様子で開いた口を閉じた

 

「あそこにある物はよくよく見ると女物ばかりです。しかも若い人向けの化粧品もあった。古くほこりかぶってたのもあったけど、どう考えてもあなたの物じゃないんですよ。匂いも違うし。」

 

訝しげに僕の顔を除きながらエルダさんは

 

「匂い?」

 

と聞いた。

そういえば自分でもあまり意識してはいなかったが…

 

「いや、なんていうんでしょうか?感覚的なやつですよ。一番近い表現が匂いなんですよ。」

 

「まあいいわ。けど私に子供がいないとも限らないでしょう!」

 

思いの外『匂い』については深く言われなかった。

 

(感覚的な話は普通なのか、、、?だが今は!)

 

「子供?それこそありえないですよ。失礼ですが貴女、子供いないでしょう?妊娠してない。」

 

「それも匂い?」

 

「嘘の匂いですよ。もし居たとしても養子。だけどさっき人と一緒に暮らす気はないって言ったじゃないですか!もっとありえないですよね。」

 

ぐうの音も出ないようだ。やり過ぎた感はあるがまだ、、、

 

「匂いだけで思い込むのは困るわ!そ、そうよ。そんなの大した証拠にもならないわ!あの化粧品だって昔私が使ったものよ!」

 

反論をするエルダさんに余裕がないのは一目瞭然だ。

申し訳ないとは思っている。こう言うのが情けないし卑怯なのもわかってる。けど…

僕はゆっくりと腕を上げて暖炉の上の写真を指差す。

そこには2人の女性が写っていた。片方はエルダさんでもう一人はもう少し若い。2人には友人というよりは家族のような…そう言う雰囲気のある種の親密さがある。少なくとも僕には…そして

やはり、エルダさんに最後の一撃を与えたようだ。その表情は歪み、目が潤んでるようにも見える。

 

「その写真。気になってたんですよ。子供のいないあなたとまるで家族のように写るその女性…」

 

そこまで言うとエルダさんは手を上げ話を遮った。

 

「分かったわ。それ以上言わないで、、、私の負け。そう、その子は私の弟子だった子。そしてあの忌まわしい戦争で死んだわ。」

 

!!!

わかっていたはずだ。恐らく死んでいる。そんなことはわかっていたはずだ。けど、改めて彼女の口からそれを聞いたとき、僕の心は罪悪感で一杯になっていた。やはり僕は卑怯者だ。

 

「世界大戦ですね…」

 

「当時、魔法使いや魔術師を使った戦術も多かった。私の弟子もある作戦で魔術戦艦の機関室を担当することになったの。出発の日、私は出兵に大反対で、喧嘩腰で半ば追い出すようにしたわ。そしてそれっきり…終戦の直前、その子の上官が報告に来たわ。ドイツの特殊部隊との戦闘中に戦艦は轟沈、あの子は行方不明者になった。ってね。」

 

部屋にシーンとして冷たい空気が流れている、、、

僕の生まれる前のことだ。きっとこの人は後悔苦悩の日々を過ごしてきたのだろう。

 

「僕は。」

 

なんとか頭に浮かぶ言葉を口にする、、、

 

「僕は戦争を知らないで生まれ、育ちました。けど、、、大切な人がいなくなる悲しい気持ちは分かります。」

 

「何を、勝手に、、、分かる。なんて、そんな言葉で言えるものじゃないのよ!」

 

当然だろう。戦争で誰かが死ぬ気持ちなんか分からない。

だけど

 

「僕の両親は5年前、交通事故で突然死にました。はじめ爺やからその事を聞いたとき、何を言ってるのか分かりませんでした。今朝まで一緒だった人が、つい数時間前まで喋ってた人が、しかも実の親が、、、理解には随分かかりましたよ。」

 

「………」

 

エルダさんは無言でこちらを見ている。

不思議な表情だった、、、悲しみと憐れみと同情と怒りとが混ざったような、いやそれとも。

 

「それとこれとは違うわ。」

 

冷たく言い放った。どうしても僕を失望させたいらしい。

そうやって自然に出て行ってくれれば、自分も相手も苦しまないと思っている。そうに違いない、、、

 

「僕は、どこにも行きませんよ。」

 

「…!」

 

「ジャックは、僕が魔法を知りたいと言ったときに、真っ先に貴方を僕に紹介しました。弟子を取らない事知ってたのに。」

 

「あの子らしいわね…」

 

遠い目でエルダさんは返す。

 

「僕の目的は魔法をより知ることです。だから、あなたに教えてほしいんです。僕の生き方を!」

 

これ以上、これ以上

 

「僕はもうひとりはヤダ…わがままだけど、それでも僕はどこにも行きませんから!だから、、、ウッ…ウ…」

 

なんで泣いてるんだろうか、、、ただただ孤独が怖くなってくる。

 

「………あなたってズルイわね。これじゃあ、私は泣けないわ。」

 

「…えっ?」

 

腫れた顔を上げて目を見る。

 

「そんなに無理しなくていいのよ、、、私はあなたに道を示せるかは分からない。けど、もう一回だけ、一緒に弟子(ひと)、暮らすのも悪くないかもね…」

 

「じゃ、じゃあ…グスン」

 

エルダさんは僕の顔をに手をあてながら

 

「いいわ。貴方を私の弟子とします。だから…泣くのはもうよしなさい…」

 

そう言って涙を拭ってくれた。

ああ、あったかい…

「よろ…しくおねがいします。エルダ先生」

 

「こちらこそよろしく。えっと」

 

「セト。でいいです。」

 

「よろしくね。セト。」

 

その日の夜僕は泥のように眠った。

(まだ、ひとりじゃなかった。)

その喜びに浸りながら。




ちょっとゲスいセト君になっちゃいました、、、
子供っぽいのは、、、まぁ言わずもがなですね。

次回「新しい日々」
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