「私は反対よ!そんなもの行くだけ無駄死にするだけだわ!」
女性の声が聞こえる、、、怒ってる?
「いつまでもそんなこと言ってられないんですよ。魔法使いが参加すれば戦争もすぐ終わります。この重苦しい生活も終わるんです。だから」
もう一人言い争う声が聞こえる。視界がだんだん明るくなってきた、、、ここは
(先生の家、、、?)
そうだ。ここは間違いなく先生の家だ。
しかも玄関、扉の前だ。だけど…
(なんか全部が少し違う…新しいのか?)
「先生これは…」
僕の先生への言葉は伝わっていなかった。分かる。存在が認知されていない。それに一向にこっちを向かない。
しかも、匂いも変だ。一部のものからは気配も魔力も感じない。まるで…そこに’無い’のに’有る’かのように。
そうこうしているうちにも二人の話は進んでいく。
先生の相手の女性には見覚えがあった。それと同時に確信した。
(あぁ、そうか。ここは記憶か。先生の)
眼の前にいる今まさに家から出ようとする女性。
あの写真の女性だ。先生の弟子だった。
説得は難航しているみたいだけど。
「私は人殺しのための魔法は教えた覚えは無いわ!」
「けど…ドイツはすでに魔術師や魔法使いを戦争に投入しています。ここままでは!」
「あの司令官の受け売りで、どうにかなるとでも?」
「けど、先生」
「もういい!」
アッ…
今なにか。変な感じがする。その先を言ってはいけない。そんな気がする。
「もう。私はあなたの先生じゃない。出ていきなさい。そして、二度とここへは来ないで!」
言ってしまった。それは止めることのできない。運命だった。
弟子である女性はショックと言うよりも、ただただ、悲しい顔をして扉を開けた。
いけない。それ以上進めば…その扉を開けてはいけない!
(きっと戻れない。)
だが届かない。僕の声も思いも。
「今までありがとうございました。」
それだけ言って、たったそれだけ言って女性は扉を開け、
進んでいった。外の光が入って目がくらむ。悲しい背中をしたまま彼女は光の中へ消えていった。
先生の方を見ようとしたが、何故か動けない。外の光はどんどん強くなり、視界がぼやけていく…
「光が…ひろがって…」
ーーーセー
誰かが呼んでいる。
ーーーセト!
そうか…先生の声だ…
「セト!」
目の前に木の天井が広がっている。
ぼやけた視界に先生の顔も映っている。
どうやら僕はベッドの上らしい。
先生は心配そうに見ている…
(そりゃあ、あんなことがあれば二度目はやだな…心配もするか。)
「先生…僕は?」
不思議と達観した感じだが、状況が理解できているわけではない。例の水晶持ってからの
「あなたの魔法が暴走をして、それを無理に止めさせてもらったわ。そうしなければあなたは今頃水晶の中よ。ごめんなさい。」
やはり…コントロールできたとは思えなかったし。
「謝らないでくださいよ…僕の力不足の結果ですから!」
ニコニコして返すとやっと先生の表情が明るくなった。
「そういってもらえると少し気が楽になるわ。だけど、流石に危険だった。そこは私のミスよ…」
そこまでヤバいのだろうか?
そんな僕の疑問はやっぱり顔にでたらしく。
「日本ではこう言うのを百聞は一見にしかずっていうんでしょ。立てる?」
そう言って手を差し伸べてくれた。
「フフッ。」
「ありがとうございます。」
先生の手を借りてベッドから起き上がった。温かい手からは優しいものが流れ込んでいた。ん?流れ込む?
!
「そういえば…実は。」
危うく伝え忘れるところだった。普通忘れるようなものではないんだが…
起き上がったまま。脇の椅子に座る先生を見る。
先生は再び心配そうな顔に戻っている。
「どうしたの?」
「眠っていた間のことだと思うんですけど…」
僕はその奇妙な夢の話をした。悲劇の記憶を。人の記憶を追った夢を。
本来の夢追い人ってのは妄想や夢ばかり見て現実から離れてしまっている人のことを指すようですね。魔法使いも一般人からみたら夢追い人なのかもしれない。