魔法使いの嫁〜AnotherStory〜   作:ケニーF

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セト君の随分前の設定が息を吹き返しましたw


第二十一話『天鱗』

「なあ、あんた。そうあんただよ。ちょっと見てかねぇかい?」

 

薄汚れた身なりの男が突然脇から手を伸ばしてきた。

ちらっと目をやると、こりゃまあみごとに呪いの品々が揃っていやがる。

 

「ん?私?悪いけど先急いでるから。」

 

そう言って振り払おうとしたら、むりやり腕を掴もうとしてきた!

しかも見かけのわりに素早い。しかも馬鹿力だ。

 

(なっ!こいつ!)

 

「なんだ、ずいぶんたけぇ声の兄ちゃんだな。なぁに大したもんじゃないけどさ。見てってくれよ。後悔はさせねぇぜ。」

 

こういう場で声を出して目立つのは自殺行為だ。

だが男はなんとしても僕の手を商品に触れさせようとしてる。

 

(まずい!なんの呪いだか知んねぇが。触れるのはまずい!振り払わなくては!)

 

バシッ!

「のわっ!」

 

あわやといったところで

何故か弾かれたように男が吹っ飛んで行った。

いや、自分から後ろへ飛んだのか?ただふっとばされたなら腕を離すとは限らない。なんで自分から…って

その理由は自分の手を見れば一目瞭然だった。

 

シューッ シューッ

 

僕の手が蛇になってる…いや、蛇に見える。

感覚は普通の手だが、見た目は腕の太さはある大蛇が袖からのぞいているという感じになってる。

さっすが先生の魔法だ。なぁに別に確認するまでもない。この感覚は先生の魔法だ。

腕を外套の下に隠すと元通りになっていた。

そのまま脇の先生の方へスッと寄ってまた歩き始めた。

 

「セト。離れないって約束でしょ。気をつけて。」

 

小声で先生が忠告する。

 

「すいません。迂闊でした…」

 

「今日は上手く行けば手に入るかもしれないんだから。」

 

そう、先生がピリピリしてるのも当然だ。

さっきから結構道を進んでいるが、昨日に比べて客の反応がおかしい…小さな声でドラゴン。とか鱗って喋ってるし焦っている匂いもする。これは当たりかもしれない。

騒いでる連中は1つの露店に集まっている。見た目はほかと変わりないものだ。

離れているせいで肝心のモノは見えないが、商品を置く布には字が書き込んである。ルーン文字か?

 

「なるほど。セト。あなたが見つけられないのも無理ないわ。あの布は魔力を遮断する魔術が組み込まれている。これで包んで運べば誰にも気づかれないって魂胆ね。」

 

なるほど。頭を使われたわけだ。だが!

 

「けど、あの布の匂いは覚えましたよ。」

 

「えっ!?」

 

「中身の魔力を覚えるのは大変ですけど、外見の布なら…魔術がかかってますからよけいに。」

 

ちょっとだけ偉そうに行ってしまった。まあいっか。先生はびっくりして目を見開いてるし、すこーし自慢気にしてもバチは当たんないだろう。

 

「布の方か…確かにアリね。持ち主はここにいる?」

 

「あたりを探っているんですけど、同じ匂いのやつはいません。おそらく今売ってる男は雇われか、仲間か…まあまだどっかに別のやつがいるのは確実です。」

 

話しながら露店に近づくいてみると、間違いない。虹色に輝く1枚の鱗。魔力封じの透明なケースに入っていてもわかるこの感覚。

 

「これね…」

 

「これですね…」

 

ドラゴンの天鱗…どういったところから取れるかは知らないが、とっても貴重らしい。自身の魔力のみが頼りの魔術師たちにとっては喉から手が出るほど欲しい代物だとか。

 

「なあ…君たちも他のと一緒で見てるだけかい?そんなら買うやつのためにどいてほしいんだが…」

 

売ってる男は比較的若い感じの痩せ気味で小綺麗な感じのやつだ。闇商売(ココ)では多少浮く部類だ。

 

「いくらで売ってくれるんだ?」

 

「えっ!ちょとセト!」

 

見つけてからのことは先生とあんまり話していなかった。最初は出ないだろうって思ってたんだからまあしょうがないね。まあそれもあって勝手に事を進めようとする僕にさすがの先生もけっこう慌ててる。

 

「ん?買う気があるのかい?」

 

「こういう商売で御託はいらんだろう。値段を聞きたい。」

 

「フッ…面白いね!値段は560,300ポンドだ。あんたに買えるようなもんじゃないとお」

 

日本円にして八千万…まあ必要経費だ。

 

「よし買った。支払いは小切手でいいな。」

 

「そうそう。大人しく諦めなさ…はっ?」

 

「えっ!セト?いま買うって?」

 

「もっかい言おっか?買うよ五十六万三百ポンド。小切手でいいかい?」

 

周りも売りても先生もみんなこれには驚いている。そりゃあそうだろう。まだ二十になるかならないかの子供があっさり五十万ポンド以上を出したんだから。こればっかしは両親とショウ兄さんのおかげだ。

 

「あのガキ…買いやがった!本物かもわかんねぇのに!」

 

いや、ほんものだよ

 

「どうすんだ?それ以上出すか?」

 

やめとけ破産するぜ

 

「けどあの余裕の顔見ろよ!いくらまで出せるんだ?」

 

まだ倍は行けるな

 

「どっかの金持ちの御曹司かなんかかよ!?」

 

まあ間違っちゃいないかも

 

これだけ注目を浴びれば…目的の連中もそのうち。

店主に向き直る。まだ少し腰を抜かし気味だが

 

「よ、よし!男は言った事は必ず守るもんだ。売ってやる。小切手は確かに受け取った。いいか?もし騙したらそれなりの報復があるだろうってのだけは覚悟しとけよ。」

 

男は静かに、だが鋭く忠告をした。

 

「無論だ。しかしわかっているな?小切手を偽装したりしてみろ。私は君たちを地の果てまで追い回す。そして…」

 

「わかった、わかった、それも約束しよう。ほら。これが【ドラゴンの天鱗】だ。」

 

例の箱ごと横してきた。まあ、中身が中身なだけあって重くはないがけっこう持ちにくい…

 

「ああ、ありがとう。それじゃ行きましょう。」

 

唖然としてる先生を少し無理矢理連れて店を離れた。

見物客も僕に寄ろうとするものはいなかった。みんな一步二歩と後ずさっていく。

 

「あなた…そんなにお金あったのね。」

 

先生そこ感心しちゃ駄目なとこです。その言い方だとなんか僕が金づるっぽいです…

 

「まあ、いつもあんなバカみたいに使うことは無いんですけどね。先生の役に立つならどうってことないですよ。」

 

だが先生の顔は曇ったままだ…

 

「けど状況は悪くなったかもしれない。」

 

「いや。逆に進展したと思いますよ。明日もう一回ここに来れば、おそらく奴らが出てくるでしょう。」

 

向こうから来てくれるってんなら万々歳だ。

 

「まあそうだけどね…はじめは売れ残ったところを付けようと思ったんだけど…逃げられる可能性も大きかったからよしとしましょう。」

 

僕らはいつもよりは緊張した面持ちで宿へ戻っていった。




次回は怒涛の展開に3日目!その1です!
なおはじめにセトくんに声をかけた男のイメージは当初はジョジョの奇妙な冒険第3部のJ・ガイルでしたが。それじゃああんまりにも不気味なので。ワンピースのヒグマぐらいの薄汚さってことになってます。まあ本編には関係ないですけどねw
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