魔法使いの嫁〜AnotherStory〜   作:ケニーF

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セト君…君は一体どこまではっちゃけるつもりだい?


第二十四話『ハメルーンの笛吹き』

やはり嫌なところだ…

3日目。あの通りを先生とともに歩く。陰湿な雰囲気なのは変わらないが、人の視線は違っている。みんながこっちを見る、噂をする。別にそれはいいのだが…

 

「おい!なんであいつら生きてるんだよ!サーポパードはどうした?!確かに部屋は合ってたんだろうな?」

 

「部屋はあってました!あんな獰猛な奴が殺せないなんて…」

 

お ま え ら か

 

端で小声で話す男たちを見やる。フードの下の顔は見えないが、そんなに年が行った感じではない。とりあえずマークはしておこう。

 

「セト、例の布の匂いはする?」

 

先生はこういうのは得意じゃないらしい。こんなに頼ってもらえるなんてちょっと感動なのだが

 

「いませんね…しかも視線やら敵意を向けられすぎてどれが本命かも見当もつかないです。ただピュティアを放したやつは見つけました。」

 

「彼らへは最低限のマークでいいわ。あんまり見てるとまずいからね。」

 

「えぇ。それで今日はどうし…」

 

不意に目の前に人が飛び出してきた。

 

「なあ、あんたよぉ!竜の鱗買ったんだろう?そこでさ~見せてくんねぇか?それをよ〜ちょっとでいいから。」

 

前置き全部省いて吐いたセリフがコレ。

よく見ると昨日の呪具を売りつけようとした男…

呆れたやつだ…

昨日の出来事で誰もあえて近づいていなかったのに。これでまわりの奴らの[僕がボロを出すまで待つ]作戦は頓挫しちまったわけだ。

 

「断る。消えろ。」

 

こんなやつに構っている暇はない。男の後ろには[殺処分行き]と書いてある紙が貼っつけてある檻がいくつか見える。中には牙の生えた鳥やら羽の生えたうさぎ

やら普通なら見かけることのない珍獣が揃ってる。

こんな命を侮辱するような下衆野郎と話す舌は持ち合わせていない。避けていこうとすると先を通せんぼする。今回は先生も対象らしい。相変わらず身なりの割にけっこう軽快だ。

 

「なあよぉ!聞いてんのか?!」

 

またしても腕を掴んできた。さすがに二回目は蛇のあれは聞かないだろうし……ん?蛇?

 

「セト、下がって。私が…」

 

「鱗が見たいんだな?じいさん。こん中だよ。開けてみ。」

 

バンッ!と地面にトランクを置く。先生も察してくれたらしい。下手に魔法使って大騒ぎにするよりも、知り合ったばっかりの番猫(蛇かも)の力を借りたほうが良いだろう。

 

「おぉ!いいね。話がわかるじゃないか!それじゃ」

 

ガチャッ…トランクの金具が外れ蓋が空いていく。

 

シャーーッ!!

 

細長い影が飛び出してきた。

 

「うぁぁ!何だコイツ!」

 

ピュティアはこの男が嫌いらしい。出てきて早々噛み付いてきた。あっ…毒あったの忘れてた。まいっか

 

男は影の正体を理解すると途端に顔を真っ青にして

 

「コレはサーポパードじゃねぇか!なんてもんけしかけるんだ!」

 

大騒ぎだ…これじゃあんまり意味無かったか…

 

「じゃあ取引と行こう。解毒はしてやるから、二度と私たちに近寄るな。鱗も諦めろ。」

 

「わかった!わかったから助けてくれ!サーポパードの毒は十分もしないで死んじまうんだよ!」

 

男は泣きそうな顔で懇願する

 

「解毒薬はこれだ。ほら」

 

ポイッと茶色の小瓶を投げてよこすと男は大急ぎで薬を摂った。これを見て驚いていたのは、ピュティアを放った奴らだ。自分たちのけしかけたサーポパードが手懐けられてた挙句、解毒薬も盗まれ、踏んだり蹴ったりだろう。

薬は若い方の男のローブのポケットに入っていたのでちょっと拝借した。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…ビビらせやがって」

 

解毒も済んで再び男は立ち上がった。

 

「約束は約束だぞ。」

 

「ああ!わかってるよ!寄らなきゃいんだ・ろ!」

 

バシッ!

 

不機嫌そうな男は八つ当たりで自分の売り物の牛のようなやつの背中を叩いた…あっ、この牛って…シャイアだ…

 

「おいお前!そいつは【ズラトロク】だぞ!背中なんか叩いたら!」

 

ブモ゛ォォォ!

 

遅かった。ズラトロクは普段は大人しく友好的なのだが、背をたかれるとシャイアのもともとの力の何十倍もの怪力で暴れだすのだ。

流石の先生も色を失っている。

男も大慌てでなだめようとしてるがあとの祭り。蹴り飛ばされてしまっていた。

ズラトロクは他の生物の檻に体当たりをかまして破壊してから通りに土煙を上げて走っていった。おかげで中にいた”殺処分”たちがの後を追うように逃げ出してしまった…

 

「チクショ!なんなんだ今日は!ったくとんだ厄日だ!あぁ…どうすんだよこれ。」

 

ブツブツ言いながら男が起き上がる。顔は真っ青だが無事なようだ。

 

なんで無事なんだ?バカみたいに頑丈だな…

 

「おわりだ…おわった…殺される…」

 

随分と悲壮なこといってるが…

 

「先生?あいつ流石に落ち込みすぎですよね〜ハハハ!」

 

笑い飛ばそうとした僕とは対象的に先生の顔色はすぐれない。

 

「いい?セト。こういう商売には元締めがいるのよ。販売するのはその下っ端。もし下っ端が騒ぎを起こしたら元締めはどう思うでしょうか?ってところよ。」

 

ああ。そう言う…ボスに目つけられたら明日には海の底。

イギリスにだってヤクザ見たいのはいる。

 

「なあ、あいつら捕まえてこようか?」

 

やっぱり我ながら甘い。まあちょっと気の毒には思う。自業自得だけどね…それに彼らを手に入れられるチャンスだ。

 

「あぁ…?できるわけねぇ!あいつらはどうやっても言うこと聞かない凶暴なのだ。それをお前みたいなひょろい奴が捕まえれるわけない!」

 

ひどい言われようだな…

 

「んじゃ、いいか?もしもだぞ。私が捕まえたら、彼らを譲ってくれ。どうせ殺処分なら費用も浮くだろ?」

 

「……………だが、結局おれがやらかしたことは変わんねぇ。飲めないな。」

 

「ん?そりゃあおかしいな。彼らは購入者の私の手元から逃げてしまったはずだが。ねぇ?先生。そうですよね?」

 

「はぁ…あなたってほんとに…えぇ、そうよ。まさか受け取ってすぐに…馬鹿なことしたわねセト。」

 

なんか僕ただの馬鹿になってませんかー!先生ー!

 

「ほ、ほんとにあの面倒なの引き取ってくれんのか?!」

 

男は疑いながらも賭けに出ている。

ここで僕のミスのせいにして、処分品も押し付けられれば自分は助かる。だけど僕がしくじれば終わり。

 

「ああ!やってやるぜ。いいよな?」

 

「ああ。任せる。捕まえたらあとは好きにしてくれ。もう店じまいだ!」

 

そう言って男はとんでもない速さで店を畳んで逃げるように路地へ消えた。

じゃあ、僕も

 

「先生。約束破ってごめんなさい…でも僕彼らを助けてやりたいんです。」

 

「十五分で無理だったら帰ってきなさい。いいわね?」

 

「はい!それじゃいってきます!」

 

まだ土煙は舞っている。魔力を辿ればすぐだろう。僕は急いであとを追いかけた。

 

ーーーーーーーー

 

セトは勢いよく走って土煙の中に消えた。最近自分の甘さが身にしみるように思える。エルダは苦笑しながら。見送っていた。

気づいたら後ろに老人の姿をした男が立っている。

 

「昨日のあれがあったのに行かせてしまってよかったのかい?」

 

一応年寄り口調だが、エルダからすればマヌケなものだ。

 

「いいのよ。私の弟子だもの。」

 

「随分と信頼しているようだが?」

 

「今回の依頼は教会からのものと思っていたけど学院(そっち)のものだったのね。アドルフ。」

 

「えっ!どうしてわかったんですか?今回はちゃんとした変装だったのに…」

 

老人の変装をした男アドルフ・ストラウドは驚きを隠せなかった。

 

「わかりやすいのよ。ただそれだけ。それより学院のあなたが何故?」

 

アドルフは取り直してエルダの方を見る。

 

「今回の一件は特殊なものでして…教会経由にしてもらったんです。」

 

「おおかた、レンフレッドの辺り”魔法使いだけじゃ信用ならない”とか言ってあなた達も駆り出されたわけね。」

 

「御名答…私達は少し魔術師のグループを雇って裏で調査と監視を任されていました。それで、なんとか首謀者もわかったんですが、コレです」

 

そう言ってアドルフは1枚のA4ほどの紙をエルダ渡した。

 

「いいの?」

 

「ここまで来たら協力しましょう。我々は裏からお手伝い致します。…それにしても彼大丈夫ですかね?」

 

「協力ありがとう。ついでにセトの心配もね。けど…ホラ!帰ってきたわ。」

 

見た目はまだ少年といった感じのセトは一輪のアネモネの花を手に歩いてきた。後ろには先程逃げた動物達が隊をなしている。あれだけ怒っていたズラトロクものんきに歩いている。

 

「先生〜!おまたせしました〜!」

 

「まるでハーメルンの笛吹き…」

 

「そんな物騒なものには見えないわよ。あの笛吹男と一緒にされちゃ困るわ。それで、他にある?」

 

アドルフは苦笑いしながら向き直り

 

「余計なお世話でしたね。ご迷惑おかけしました。それじゃ、お互いに頑張りましょう。」

 

変装を整えてアドルフはいそいそと路地へ消えた。

 

ーーーーーーーー

 

「先生!今の誰です?」

 

先生は見知らぬ老人のフリをした男と一緒にいた。

 

「古い知り合いよ。それより、わかったわよ。首謀者の顔。」

 

「こっちも居場所がわかりました。追っかけてる途中でやっと匂いを見つけたんです。街の外れの森の方です」

 

トランクにさっきの商人の男の落としていったものと動物たちを詰めながら、話す。どうやら先生はあの老人風の男に情報を受け取ったようだ。

 

「わかったわ!準備できた?行くわよ。」

 

「は、はい!」

 

街の外れの黒い森。向かう先は光をも飲み込む暗い森。




念の為の確認ですが、このお話は本編の一年前ですからね!
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