魔法使いの嫁〜AnotherStory〜   作:ケニーF

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そろそろこの谷ともお別れか


第三十三話『スランプ』

「えっ!杖を作りたい?」

 

「おやおや、随分と元気のよい卵よの。」

 

 

ネヴィンのもとを去った僕らは大急ぎで先生たちのもとへ走っていた。

 

「そうなんですよ!杖さえあれば魔法も安定するんですよね?」

 

杖さえ。その言葉を聞いた途端先生は不満そうな表情をした。

なにかマズイことを言っただろうか?

 

「まるで、杖がないと魔法が安定しないといわんばかりね。確かに杖はより高等な魔法を使うとあれば必需品となっていくわ。けど今セトに教えているものはそんなハイレベルな魔法ではない。問題はあなた自身にある。ルキアと契約して以降しばらくは調子が良かったけど、突然伸び悩んだ。自分は才ある身であるはずなのに。大方そんなところでしょう?」

 

うっ、、、

見事に看破されていた。

 

「ハハハ!相変わらず自他に厳しいやつよの。若い”芽”をいじめてやるな。」

 

リンデルさんはにこやかに僕らを眺めている。口ではああいってるが、仲介する気は毛頭ないようだ。匂いから察するに、他人のことには干渉しないタイプのようだ。

 

「リンデル。少し黙ってて。」

 

さすがわが師匠、躊躇ねぇ、、、

先生は僕に向き直ると再び話し出した。ルキアもビビッてて棒立ち状態。あきらめて話を聞くかぁ

 

「誰にでも軽いスランプはある、それは魔法使いも例外じゃないわ。まだ若い子に起こりがちなんだけど、魔法をたくさん学んで、今までの何倍も魔力を使うようになると、コントロールの感覚が狂いだすことがあるの。ものすごい緻密な徹底管理でもされてない限り、大なり小なり起きることよ。」

 

 

「それじゃあ、今僕はそのスランプなんですか?」

 

「えぇ、その中でも比較的浅めのね。」

 

得意な分野以外ほぼ安定しない今の状態で浅めなのか、、、

 

「ひと月。おおまかなスランプの時期は一か月よ。そこを超えたらまた安定してくるわ。」

 

なんだ。それだけのことだったのか。それなら初めからそうだって言ってくれれば、、、

 

「それならなんでセトにそのこと言ってあげなかったのよ。」

 

ここぞとばかりにルキアが口を開いた。パートナーの僕のスランプには人一倍心配してくれていた。彼女の気持ちももっともだ。

 

「簡単よ。スランプという状況に甘んじて抜け出す努力をしなくなるからよ。私は無理をさせるのは嫌いだけど、努力もせずできないできないっていうのはもっと嫌いなの。」

 

ごもっとも。やはり僕のことを思っての行動だったのか、、、

 

「先生。目が覚めました。努力なくして結果は得られない。危うく逃げてばかりの人間へと落ちて行くところでした。」

 

厳しい目つきが緩み、優しいを帯び始めた。

 

「そこまで、自分を責めなくてもいいわよ。あなたの努力は私、、、いやルキアが一番知ってるもの。」

 

エッヘンと言わんばかりに胸をそらせまくってる彼女のほうを見ながら先生は言った。

 

「まあ、あなたの言う通り必要になったら杖をもらいに行きましょう。スランプを乗り切ったら。ね?」

 

「はい!」

 

話をずっと無言で聞いていたリンデルが口を開いた

 

「そうかそうか。また来るか。それではその間にめぼしいものを見繕っておこう。」

 

「ありがとうございます。リンデルさん。」

 

三十代前半のように見えるこのフードの男性。本当のところどう思っているのかはわからないが、このやさしさには甘んじてもいいのだろう。

杖は少し遠ざかったが、この出会いは素晴らしいものを生み出すに違いない。

肌を刺す寒さが少し和らいだように感じた。




はやくチセを出したい、、、
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