バーダーさんの紹介で僕の前に出てきた少年少女3人組。お互いに少し見やった後
一番左端に立つ、おそらく日本人と思われる少年が口を開いた。
「俺は、マサト・カキザキ(雅人 柿崎)あんたの見ている通り日本人だ、、、おっと!なんでそんなこと考えてるのかって顔してるな。えへへ、俺ってさ”視える”んだよ。いろいろと」
! 彼は僕のように他人の心が感じ取れるのか?
だが、まだ慌てる時間じゃない。心を隠す術は先生から早々に学んだ。
心の香りを感じてかぎ分けられるならそれを防ぐ策も知っておくべきだということだったが、まさかこんな所で出番になろうとは、、、
フーっと小さく息を吐き、心を自分の少しだけ内側に隠す。
最初のころは感覚がわからず、先生に性癖まで暴露されるという拷問のような目にも遭った、、、
今となっては懐かしい思い出。まだ数か月しか経っていないはずなのに、時間の流れは不思議なものだ
「よろしく。柿崎君!」
そうこう”思い”ながら手を出し、彼の顔を窺うと、突然”視え”なくなってしまったことに少し困惑気味なようだ。眉間にしわが寄っている。
「はいはい!次はあたし!」
怪訝な顔のままの柿崎をぎゅぎゅっと押して僕の前に現れたのはおそらくこの中で一番年下であろう少女だった。
金髪で白い肌。雰囲気も明るく、活発な雰囲気の子だ。
「私はアエラ・ホーキンス。15歳よ。あなた小さいけどいくつなの?」
「小さいとは失敬な、、、19だよ。これでも」
ムスッとして返すとアエラは驚いた顔をやたらとオーバにして見せた。
「へえ~!私より4つもお兄ちゃんなわけだ!あとね、私甘いものときれいなものが好きなの。うーんと、、、自己紹介ってこんなだよね。うん。よし!えーっと。まあ、うん。よろしく!」
「んん、、、?あぁ。よろしく」
妙に締まりのない会話だった、、、
アエラの番が終わり最後に来たのは、ずっとフードを深くかぶってバーダーさんの後ろに隠れていた少女だ。
「ほら。エニル!君も自己紹介なさい。」
バーダーさんに背を無理やり押されていやいや前に現れた少女は、ゆっくりとフードをとった。
、、、、!!!
艶のある長い黒髪。深い蒼い目。すっとした顔立ち。白い肌。
細く目を開け横目に僕を見る彼女は筆舌に尽くし難いほど美しかった。
僕より背も小さいし、おそらく年下だろう。だがそんなことは関係ない。
この感覚は、ルキアと会ったときに感じたのとは違う。確かに美しい。だがこの言葉だけでは言い表せないなにか、内から湧き上がる何かがある!
「エニル、、、エニル・マーシェン。」
彼女はそれだけ言ってまたフードを被ってしまった。
「エ、エニルさん。よろしく!」
そういって手を出したがプイっとそっぽを向いたと思ったらサッとバーダーさんの後ろにまた隠れてしまった。
「すまんね。セト君。エニルは少々人見知りが強くてね、、、」
バーダーさんは申し訳なさそうにして言った。
「あぁ、、、いや。かまいませんよ。」
めっちゃかまうんですけどね!!
初手から嫌われちゃかなわない。きっとこの感情は、、、
「さあ、挨拶はすんだわね。そろそろいいかしら?」
後ろで僕の醜態をみていた先生がたまらずこの微妙な空気に入ってきた。
まあ確かに、自己紹介だけのために僕らを呼びつけたわけじゃあるまいし。
バーダーさんがピシッとした表情になった
「あぁ。そうだな。では簡潔に話そう。セト君。君は鱗騒動の時に闇市で幻獣の脱走騒ぎに関わっていたろ。」
あー そういえばそんなこともあったなぁ。あのめんどくさい男の商売道具が山のように逃げ出した一件か。
結局僕が全部買い叩いて脱走した彼らをまとめて連れて行ったことでけりがついたはずだったが、、、
「あの販売の元締めがそれを知ってな、、、セト君、君をご指名だ。騒ぎについて”話し合おう”ってさ。」
あぁ、、、誕生日間近だってのに何てついてないんだ、、、
どう考えても厄介ごとだ。僕は過去の自分をとりあえずぶん殴りたくなった、、、
柿崎君ですが、カタカナだと長くなるので漢字で書かせていただきます。