まあ密輸とかしてる時点でろくなやつではないんですけどね。
意外な展開
僕の頭の中で先生が無事であるという選択肢は存在してなかった。だが、よく考えればわかること。キレた僕ごときに手も足も出ない連中が先生をどうこうできるはずがない。
だが今はそんなことを考えるより、先生の無事に安堵するばかりだ
「先生!ご無事で、、、」
パチーンッ!
部屋に響き渡るほどの音
駆け寄った僕の頬を先生が勢い良く叩いた。
先生の目は怒っている。てか見なくても、にじみ出るその雰囲気からわかる
「先生!な、何を、、、」
かなり痛かった。涙目の僕に先生はグイっと顔を近づけた
「自分が何したかわかってる?」
「だって僕は先生が!」
「確証は?妄想でしかなかったわけでしょ。」
ウッ...
そういわれるとぐうの音も出ない
「魔法が感情に左右されやすいこと、そういった時の魔法がいかに危険か、魔法で他人を傷つけてはいけないこと、今までずっと話してきたことよね。」
「ハイ...」
「ま、とはいえ、、、」
そういって先生はいまだ苦しみ悶えている女のもとによりスッとその顔を撫でた。
すると今までのこの世のものとは思えないうめき声が嘘のように止まり、女は気絶してしまった。
むしろ眠っているに近いかな。どこか安らぎが香ってくる。
「ここまでやれば勘違いもするか。」
そうしてやっと先生はフリントのほうを見た。僕に殴られる寸前にまでなったこの男は哀れにもまだ震えは止まらず、なんとまあ高そうな椅子の上で今にもチビッテしまいそうだ。そういえばすっかり忘れていたがネズミはどこにいった?たしかフリントのわきに縮こまってたような、、、
「久しぶりね。フリント。」
「や、、やあ、エエエルダ。げ、元気そうじゃないか。」
どうやら二人は面識があるらしい
「一体絶対どうやってこの部屋に?許可を与えないと開かないはずじゃ、、、」
「あんな中途半端な魔術で隔たりを作っている気でいるなら新しい魔術師を雇ったほうがいいわね。」
先生圧倒的優位。なんでか知らないがフリントは先生にいい思い出がないようだ。あからさまにビビっている。
「それにしても、ずいぶんとろくでもないことを企んでいたようね。私のふりをした女を近づかせ、薬なりなんなりで人質としてセトをとり、護衛の一件の協力をさせようっていうんだからね。ま、今回はあんたがセトを甘く見すぎてたようだけどね。」
「ぐ、、、」
やっと会話の切れ目が見えた。
完全に置いてけぼりなバーダーさんがやっと口を開いた
「エルダくん、来てくれて助かった。私はフリントに余計な借りがあるもんだからね。お弟子さんを危ない目に合わせるところだった。」
「まあ、こうなることは薄々、、ね。」
「さ、帰りましょう!」
先生は僕らを連れて部屋に背を向けた。
「ま、待ってくれ!わ、悪かった。俺が悪かった。バーダーの件もチャラにする。君たちに危害を加えたりはしない。約束する。だから話だけでも聞いてくれ。頼む!」
どうしてか、この男から伝わるのはすさまじい必死さだった。それこそ命を懸けてでもといった具合だ。人間そうコロコロ感情を切り替えれるほど便利にできてはいない。
今までとは違って嘘のにおいもしない。
先生も異様なまでに必死なフリントに思わず振り向いた。
「あんたがこんなに必死になるのなんて、私に命乞いした時以来かしらね。少なくとも必死さは伝わった。まあ確かにセトがあの時はしゃぎすぎたのも事実。いいわ。聞くだけ聞いたげる。そもそも話にあったオークションで死人が出るのはもう60年以上前の話。あんたたちみたいな連中も世代交代して今じゃいざこざすら珍しいくらいじゃない。それが何でまた魔法使い二人と魔術師一人っていうコストに見合わない護衛を欲しているのか…」
結構そういう世界にも先生は詳しいのか、、、
しょせんおぼっちゃま君だった僕はそういう世界には縁などなかったし、興味もなかった。だが今は違う、落ち着いてこの部屋を見てみれば、面白いものが飾ってある。魔力を秘めた代物がごろごろと。もしフリントたちの言っているオークションとやらでそれらが手に入るのであればぜひ見てみたい。何か僕を引き付けるものがそれにはあった。
先生が話をしながらこっちを見てくる。なんだろうって思っていたら耳元でささやき声が聞こえた。
「今セトが考えてることエルダはお見通しみたいよ。フフフ…あんなに怒ってたはずなのにもう別のことに熱中してる。私何でも興味をもつあなたのそういうところ好きよ」
姿は見せずとも僕の影から僕だけに届く言葉。キルアが真実を伝えてくれた。
「なんだかんだでセトは興味持つと突っ込むタイプだからね。エルダも止めるのはあきらめ気味。だけど効能のわからない薬をいきなり指ですくって舐めちゃうような弟子をほっとくほど、放任主義じゃないわ。実質決定よ。行くこと自体は。ただ、エルダ自身もこの一件は不自然に感じてる。どう考えても回りくどいしね。」
そうこうしてるうちにフリントは重い口を開けた。
「あんたとは、正直言って仲良しこよしでできるとは思ってなかった。だからこその人質のはずだった。バーダーには貸しがあったし、それをうまく使えばいいって。」
「だから、私が聞きたいのはなぜそこまでして私たちを呼びたかったのかってことよ。」
「うぅ、、、それは。あまり外で話すなよ。いいな、、、、よし。実は先日このオークションに参加することが決まった数日後のことだ。私のもとに手紙が来た。文通やるような仲のやつはいないし。かといって俺は仕事の連絡に手紙は使わん。不信ではあるが開けてみたら封の中から紫色の煙が出てきてその煙が顔のような形になってこっちを見て言ってくるんだ。『貴様の幸福を競りの夜更けに取りにいこう』って。それだけ言ったら消えちまってさ。もっかい封の中確認したら写真が入ってたんだよ。」
そういってフリントは少し震える手で懐から写真を出した。
三人一緒に覗き込んだそれには、さっき僕をだました女が子供を抱いて笑っている姿が映っていた。
「俺の妻と子供だ。」
「「えっ!?」」
先生とバーダーさんは信じられない!みたいな目でフリントを見つめている。
「い、いいだろ。俺だって人並みの幸せだって欲しい。」
まあその幸せを密輸で得てるんだからなんとも、、、
「な、わかったろ。競りは当然オークションのことだろうな。それでこの写真。狙われてるんだよ、二人の命が」
まあ憎めない子悪党くらいにまではランクアップさせてやりたいですね。いつの日か