結局僕らはそこにいた。フリントの護衛?として件のオークションに。
当日までわずか3日と短かったために準備にはそこそこ苦労した。
まあ主にバーダーさんが自分の弟子たちとの折り合いをつけるのに苦労していた感じだったが、結局三人とも一緒に来ることになった。まあ、マーシェンさんと一緒にいれるってのはラッキーだ。
思えばもうすぐ20の誕生日、、、なんだか波乱の誕生月だ。
護衛とは言えオークションが始まらなきゃそれまでは自室に籠るフリントとその家族を見守るだけ。
一応招待客全員にホテルの一室が与えられている。VIP待遇ってほどじゃないが”いい客”の枠内ではあるようだ。
「どうかしたのか?」
隣に立つ男、レンフレッドさんが僕に声をかける。彼はバーダーさんが連れてきた学院の友人らしい。
当日になって顔を合わせたが、先生とも知り合いのようだ。
オークションと悪徳商売。そんなものが絡む一件に友人を巻き込むとはバーダーさんも大概だな、、、
「いや、何でもないです。ま、嫌な匂いばっかりだなぁって。」
「あぁ、そういえば君はバーダーの弟子たちと同じ竜舌蘭の花だったな。魔力や感情を匂いで感じれるって」
わざわざなぜそんなことを確認したのか。その理由はおそらく、、、
「私は、あなたの匂い嫌いじゃないですよ。ちょっと嘘くさいけど根はしっかりしてるし、大切な人もいるみたいだし。そういうの好きですよ私。」
レンフレッドさんは自分の思っていた以上に心を読まれたようで少し驚いた顔をしたがすぐに興味が無いかのように平静を装った。
「しかし、君のようなまだ若い魔法使いをこのような場所に行かせるとは、、、エルダのやつも随分大胆なことをするな。」
本人がいなければ何言ってもいいわけじゃないと思うが、、、先生は今外でバーダーさんと今後の動きについて別室で話し合っている。バーダーさんの弟子3人は僕らと一緒の部屋で駄弁ってる。
どうもレンフレッドさんは自分の意見というか我が強いタイプでそれを他人に押し付けやすいようだ。
「もしも、君が今の生活に、、、」
その先は予想できる。僕はさっと手を挙げ遮った
「僕は今の生活が幸せです。素晴らしい先生のもとで魔法を学び、志を共にする友人もいる。あなたの手を借りるつもりはないですよ。」
「、、、フッ そうか。すまなかった。余計なことだったな。だがもし何か困ったことがあれば、私も頼ってくれて構わない。ここに来てくれれば話し相手くらいにはなる。」
そう言ってレンフレッドさんは名刺くらいの紙をくれた。そこにはロンドンのどっかの住所が書いてあった。
「ありがとうございます。いずれお邪魔しますね。」
こんな駄弁りを続けていたら先生たちが戻ってきた。
「レンフレッド、すまないわね。うちの弟子が迷惑かけてないかしら?」
「いや、素晴らしい弟子を持ったなエルダ。ところで話のほうはまとまったのか?」
二人の会話に割り込むようにバーダーさんが入ってきた
「そこからは私が話そう。今の時刻だが午後の7時半。オークションは9時に始まる。実際オークション自身は代理人を立てて参加するので無視でいい。それより問題なのは、、、」
みんなの視線が部屋にいるフリントの”家族”に行った。
母親はともかく問題は娘。名はエリザ、15にしてすさまじいわがままな上に乱暴者。なのにフリントは親ばかで何でも与えてしまう。それで余計わがままに拍車をかけている。見た目こそ青い髪に白い肌と美人なのだが、、、
「彼女がオークション見学をご所望なのだ、、、フリント自身はほかの客と話があるらしくてこの部屋にはいられない。当然付き人として母親の彼女もついていく。すると当然エリザ嬢は別行動になる。んで、フリントは極力彼女の要求をかなえてくれとのことだ。」
勘弁してくれ、、、部屋にいる全員がどよーんとした空気を匂わせる。
先生が続ける
「だけど、そうなれば危険は倍増。フリントの護衛もしなきゃいけないわけだし。それで、まとまったのはオークション開始前の出品物の鑑賞にお嬢さんを連れて行って、実際始まったらこの部屋に缶詰めって作戦。というよりこれが妥協点ね。女の子ってのもあるからお嬢さんにつけるのは、アエラさんとマーシェンさん。そしてそれを遠巻きにセトと柿崎君と、、、レンフレッド。頼むわよ」
「当然だ。任せておけ。」
「フリントと奥さんの護衛は私とバーダーでするわ。」
「各々質問はあるかな?とりあえず予告通りならオークション前後が一番危険な時間だくれぐれも気を抜かないように。特に子供たちは正直ってこんなことの巻き添えにはさせたくなかったほどだ。何かあればすぐ我々大人を頼ってくれ。」
バーダーさんのお願いは非常に重かった。それは当然だろう、自分の弟子になったばっかりにこんな危険なところに連れ込んでしまった。彼なりに罪悪感は感じているはずだ。
「それと、薄々感じてはいるだろうが、会場内では魔法や魔術の類が一切使えないようになっている。くれぐれも注意してくれ。では!」
逆に言えば犯行は物理的なものになるということだ。銃か、ナイフか、はたまた毒か、、、幸い魔法が使えないとはいえ鼻は効く。しっかり見張っていればまず危険はないだろう。しいて言うならば参加している客の半分近くがろくでもない嫌な匂いを発しているため。危険人物を絞りにくいって事ぐらいだろう。
解散して自分の持ち場につく、悪夢が始まるようで気分は重苦しかった
なんも進んでねぇ!