魔法使いの嫁〜AnotherStory〜   作:ケニーF

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意外と長いですね...久々に投稿です


第四十一話「接敵」

ニューヨークの某ホテル

全部一日丸っと借り切って行われるこのオークションは、普通じゃない。

参加者は有名企業の社長補佐から密売の大手まで。キナ臭い連中が多い。

オジョウサマの護衛でもなきゃこんな連中見ることはないだろう。

 

護衛といっても僕と柿崎は遠巻きに眺めているだけ。オークション会場のホール部屋の前で今回出品される品々が並んでいる。我儘お嬢様の”お願い”をかなえるべくここまで来たのだが

 

「な、見ろよあのメガネの男。あいつが渡した名刺。シラカワカンパニーの人間だぜ。」

 

「えっ!?」

 

何気なく柿崎が耳打ちした言葉は驚くべき内容だった。

さっきからずっとあれは何やってる人だあれは犯罪者だって駄弁ってたのだがこれは意外だ...

シラカワカンパニーってのは従兄のショウ兄さんの会社だ。父親から受け継いだ家具貿易会社をわずか一代で世界的な貿易会社にまで育て上げたものなのだが、その裏には魔術とかがあったのか...まあ本人は自覚してなさそうだし、魔術なしでもきっと大きな会社にしただろう。

だが、今はそれよりその男に顔を見られたら今の僕の生活がショウ兄に知られる方が問題だ。だが彼は名刺交換と雑談に夢中でエリザ嬢はもちろん私にはまったく気づいていないようだ。

 

「何かあったのか?顔色悪いけど...」

 

さすがに柿崎も心配してくれた。

 

「あ、あぁ。大丈夫だ。ところでレンフレッドさんは?」

 

気づけばそばにいなくなってる

 

「あ、なんか用があるって。すぐ駆け付けれるところにいるからって言ってたけど少しあの人頼りないかもな。目元怖いけど。」

 

「たしかに...匂いはすごいいい人だけど、あのぶっきらぼうな態度と目つきで損してる。」

 

さて、と腕時計に目をやるとオークションがもうすぐ始まる。エリザお嬢さんにそろそろ帰るよう言わなければな。

 

僕らが駄弁ってる最中お嬢様はずっとアエラとマーシェンさんの監視のもと展示品を見てはしゃいでいた。

柿崎がアエラに目をやる。

さすがに何か月も一緒に生活してるだけあってアイコンタクトだけでやり取りができるらしい。

 

「お嬢様。そろそろ時間ですよ。部屋に戻りましょ!」

 

アエラがそう告げるとエリザは不機嫌そうに

 

「えー!オークションも見たい!!!」

 

と我儘を言い出した。だがすぐに

 

「いいから戻る。口答えなし」

 

押し強いアエラによって引っ張られていくことになった。マーシェンさんは...引っ込み思案なのだろう。

 

さてこのまま部屋へ何事もなく、、、とはいかなかった。

 

ぶつくさ文句を言うエリザとその周りをそれとなく囲む僕らとフリントの部下

(彼らは誰の部下かわかるようにそれぞれ固有のバッチをつけている)。

スッと部下の一人がエリザの脇をすり抜けた。

その瞬間!

 

バタッ!

 

!?

 

エリザが床に倒れてしまった。

混乱する護衛たち。アエラもマーシェンさんも...

 

あたりは騒然とした。

 

だが、僕と柿崎は何が起きたか理解できていた。少し遠巻きであったことと、持ち前の才能のおかげで

 

「セト。”見えた”か?」

 

「あぁ”匂った”よ。」

 

僕ら二人の目線の先には先ほどの近寄った部下の男

 

「お嬢様!お嬢様!」

 

心配そうにエリザを抱えているが、彼からは余裕と嘲りしか匂ってこない。

そもそも距離をとって監視するはずなのに近づいていくことがおかしい。

さらに一瞬の出来事を僕ら二人だけは見ていた。

 

男がエリザの脇を通る瞬間、奴の陰からエリザの首元にほんとに一瞬だけ魔力を帯びた手のようなものが伸びていた。さしずめ魔術の手刀といったところだろうか。

 

気づいたら、制限されていたはずの魔法が使える。僕の影の中に潜ませていたルキアも空気が変わったのを感じているようだ。

ということは魔力を抑制していたものが壊れたのだろうか?

そうだとしたら共犯がいる...

 

「しらじらしい奴だな。だけどどうする?ある意味人質とられてるぜ。」

 

「よし、気づいていない体でひとまず部屋まで連れて行こう。てか早く引き離さないと。」

 

柿崎は僕の提案にこくりと頷き一緒にエリザのもとへ向かっていった。

 

「どうしたんですか?」

 

「あぁ!セト!お嬢さんが突然倒れたの!ね、ね?どうしよ!」

 

アエラがすぐに気づいて声をかけてきた。マーシェンさんは見ているだけでおどおど。だが無理もない。

 

「とりあえず部屋も近いしマーシェンさんとアエラの二人で彼女を部屋へ。」

 

「君、あの時いた奴だね。すまないが彼女たちに手を貸してやってくれ。」

 

そばにいたガタイのいいフリントの部下に声をかける。(彼は僕がフリントに呼びつけられたときにその取り巻きにいた)こいつはとりあえず(フリントへの忠実さでは)信用できる。とりあえず彼女を、怪しい男から引き離すことが重要だ。

それもできるだけ自然に、、、

 

「あ、あぁ。おいすぐ連れてくからあんた代わってくれ。」

 

「は、はい!そ、それじゃあ自分は持ち場に戻ります」

 

そういって部下の男はエリザを受け取って抱きかかえるようにしてアエラ達とともに部屋向かった。

ほかの部下たちもぞろぞろと後を追う。

肝心の奴はその場からすっと離れようとしている。幸い匂いは辿れそうだ。

 

(いや、現場に何人か残って調査したりとかはいいのか?)

 

「柿崎。君は彼らに同行した後すぐにレンフレッドさんと先生たちを呼んできてくれ。早急にだ。私の使い魔もつけさせよう。人探しはばっちりだ」

 

「だがあんたはどうするんだ?」

 

柿崎の疑問は当然だ。

 

「私はあれを追いかける!」

 

「な!馬鹿言うなよ。一人でどうこう出来るわけが....‼」

 

僕の目を見た柿崎の顔色が変わった。

 

「僕は本気だ、なぁに人殺しをしに行くわけじゃない。それに奴は匂いだけ残して逃げてる。終えるのは僕だけだ。」

 

「で、でも」

 

「今は彼女たちの安全の確保が重要だ!それにはお前の目が必要なんだよ。レンフレッドさんと合流したら僕の後を来てくれ。”見える”ような痕跡を置いていく。」

 

「...わかった。でも無茶はするなよ。その影の中の相方さんの話も聞いてやれ」

 

ルキアを指してるようだ。彼女の意見も聞いて動け...か。

僕は無言で頷きそのまま件の男の後を追いかけた...

 




まだまだオークションの夜は終わりません。
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