何も進まない。
そろそろチセを出したいよね
わかってる。でも出せないんよこれがね。
夜が明けた
あの後とりあえず皆それぞれ帰路につき現場の後処理は学院が受け持つことになった。
男の死体はあの時慌てて下を覗き込んだ僕ら全員が目撃していた。
翌日家に来たバーダーさんの話では顔こそぐちゃぐちゃになって判別できなかったが、持ち物や指紋などから過去に学院に出入りしていた魔術師であることが分かったらしい。とことん自分たちに落ち度があることを謝罪していた。
他のことはまだ...
「あいつは”私ら”って言ってました。したら彼らは何人かの集団である可能性が高いかと...」
学院や先生にはあの時のことを唇を犯されたこと以外全て話した。
「私たちも全力を挙げて調査をするつもりだ。すまないが待っていてくれ。」
結局有力なことはわからないままバーダーさんは帰っていった。
それと入れ替わりでアドルフさんがやってきたのは少し意外だった。
先生が僕にお茶を出すように言うのを
「手短にすみますので」
と断り、つづけた
「以前からそちらで保護していただいていた幻獣たちなのですが、やっと引き取り手が見つかりまして...あ!そんな怪訝な顔しないでくださいよ。私やレンフレッドとも昔からの知り合いで。世界各地にいくつも土地を持っていて幻獣を保護・研究をしている魔法使いなんですよ。名前はラブ。ラブ博士です。」
学院にそんな魔法使いとのつながりがあるとは意外だった。なんせ人に教える立場である大人たちが反社会勢力に金を借りてるようなところだ。バーダーさんみたいにね。
「それで?どう言う手はずなの?」
先生はその名前を聞いて少し警戒を解いてる。なるほど、名は知れてるってわけだ
「実はもう準備自体はできてまして、明日にでも連れていけるんです。あとはどこまで連れて行っていいのか、そちらで決めてくれれば...」
そうか...長くもないが彼らともお別れか。
「まあ、せかしはしないから...」
「いえ、今日中にご連絡させていただきます。」
こういうのは長引くほど決めづらくなるものだ。実際先生にも負担になってるし早く解決しなきゃならない。アドルフさんもわかってくれたようだ
「わかりました。それでは失礼します。また明日お会いしましょう。」
彼がかえって僕は一人一人に会いに行った。
彼らと話して...
翌日の昼にはアドルフさんたちがやってきて皆を連れて行った。
その中にはラブ博士という人物もいた。魔法にかかわる人にしては珍しく透き通るほどに心の香りが漂う人だった。嘘も偽りもなくただ彼ら動物たちへの愛に満ちそして、ひどい悲しみをまとった...
彼の過去に何があったのか、そんなことは聞けなった。だが彼ならば信用できると瞬時に思える。そんな人だった。
日も暮れ始めたころには先生の家はずいぶんと静かになった。
なんたって僕と先生とルキアとピュティアしかいないのだからね。
「結局その子以外みんな引き取ってもらったのね。」
「えぇ。僕はどうにも生き物を育て暮すことを甘く見ていたようです。彼らにとって合わない環境での生活は結局ストレスになっていた。僕じゃそれはどうしようもできないってわかったんです。彼らと話して。みんなが僕に好意的に接してくれる一方で心の一番の中心では故郷を思ってました。そんな彼らをここに縛るわけにはいきません。そう思ったからこそラブ博士に任せたんです。」
「まあ、それもまた一つの成長ってことにしてあげる。」
ピュティアは生れすぐ怪しい連中に捕まり育てられてたせいで故郷を知らなかった。母すらも...
だから僕は彼女と暮らし続けることにした。どこかで共感めいたものを感じていたのかもしれない。
だが今はそんなことはどうでもいい。
改めて家族の一員になったこの子を歓迎しなくては。
夜の帳が下りる
今日はいつもより長く部屋に灯が灯っていた。
だからこそアレは来たのだろう......
暗闇に錆びた鉄の呪いが木霊する
なんで出せないかだって?
だってこの物語の中での今の日付は
10月24日
そう明日はセト君の誕生日なんだよ