魔法使いの嫁〜AnotherStory〜   作:ケニーF

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原作の公式小説を読むとこの鉄錆という存在がどういうものなのかわかるかと思います。



第45話「鉄錆」

外はすっかり冬らしい寒々しい風が吹いている。

まだ雪は降ってないが木の葉も落ちまさかこんな真夜中のさみしい世界を歩いて来る奴はいないだろう。

 

夜も更けそろそろ小さなお茶会をお開きにしようとしていた僕たちだったが、どうにも眠るのは延期になってしまったようだ。

足元には小さなウサギ。そう、来客だ。こんな時間に来る来客などまず普通の人間じゃない。ウサギが来客を告げるとほぼ同時に玄関の戸をコンとノックする音が聞こえた。

 

先生はすでに来客に見当がついているようで”なぜその人物が今家を訪ねにきたのかわからない”といった様子。

「セトは私の後ろにいなさい。ルキアはちゃんとセトを守ってあげるのよ。」

 

「わか(りました)(ったわ)」

 

同時に返す僕らに注意をむけつつも先生は扉を開き来客と相対した。

先生の背中ごしに見える客は白い和服を纏っていた。

 

「あなたがこんな時間に来るなんて予想もしてなかったわ。いったい何の用?」

 

先生の警戒の匂いは今までで一番強かった。あの闇市のときなんか比べ物にならないくらいに。とびっきりの敵意と警戒心。僕ですら身震いしてしまうほど恐ろしく鋭い匂い...

 

「よせよエルダ。君のかわいい弟子までも震えあがらせているぞ。仮に君たちに危害を加える気があるのなら私がここまでたどり着けないというのは君も知っているだろ?」

 

「私は茨の魔法使い(エインズワース)のような自分を守るすべを持っていない以上警戒はするし、あなたを客として迎え入れる気もないわ。ましてこんな深夜に人のうちに上がり込もうとするようなやつを!正気とは思えないわね、鉄錆」

 

鉄錆と呼ばれた人物はそれもそうだと納得したような表情を浮かべている

確かにそれは悪かっただが今回は本当に悪意はないんだ。

ただ―

 

鉄錆はずっと小脇に抱えていた箱を前に出した。

 

「君が弟子をとったというから祝いがてら、少し見に来ただけだ。それだけだよ」

 

これは先生にはとても意外だったらしくしばらくの硬直の後

 

「いいわ、お茶くらいしかだせないけど、あがって。」

 

そういって振り向いた。

この場合これは僕にお茶を出すようにする合図だ。

僕が紅茶を用意している間、鉄錆と先生は応接室で何か話していた。

話は残念ながらちょうどお茶を出しに部屋に入ったタイミングで終わってしまった。

 

だがこの会話に何かしらの意味があったのはよくわかる。先生の殺気ともとられかねない警戒心はせいぜい夜道を歩いていた時に野犬を気にする程度までは落ち着いていた。

 

「どうぞ...」

 

食器が少し擦れたのかカチャという音が響く。間近で見れば見るほど美しい皮を被っている。その美しさあってこそ彼の和装も映えるものだ。当然その皮が彼自身のものであればの話だが。

 

「うむ...良い香りだが少しばかし私から目を離してくれると助かるな。私は本質を見られているだけで苦痛を感じるたぐいなんだ。すまないね。まさか竜舌蘭の花(アガヴェ・エクネ)というものがこれほどこちら側に近い力を持つものだとは思わなくてな。」

 

「あ、ごめんなさい。」

 

思わず勢いよく目をそらしてしまった。ほんの少しだったが目が合った。とてもじゃないが僕だったらたとえ祝いの品を持っていようがいまいが家には上げないし近寄らせもしないだろう。

彼から感じる悲しみよりもおぞましいほどの錆びた呪いのほうが強い存在だった。あの目から隣人たちを縛り付けかねない錆びた鉄のにおいがする。

 

「で、様子は見れたわね。さあ次はどうするの?」

 

「ふむ、しばらくぶりに他人の家で茶を飲めたし、祝いの品を渡して早めに退散するとしようかな。君の弟子に使ってもらおうとこれをね。」

 

そういって鉄錆は足元に置いていた薄べったい箱を先生へ手渡した。

匂いは大丈夫そうだ、呪いの品だが、危険な匂いや悪意の匂いはしない。ただ独特の獣のような匂いがする。

 

「人狼の毛皮...ね。これが物騒なものじゃないと言い張れるあなたはかなりおかしいって自覚したほうがいいわよ鉄錆。」

 

箱の中から出てきたのは何かの毛皮。先生の話からして動物に変化できる人間である人狼の毛皮だっていうのはわかる。話には聞いていたがこんな不思議な感覚のものなのか。人狼の皮だが、いくつもの動物の匂いがする、そして微かな後悔の匂いも...

 

「まあたしかに......物騒ではあるが、何事も使いようだ。便利だし、決して無駄になるものでもない。それにそんなに不安なら処分なりうっぱらうなり好きにしてもらって構わない。あくまで私個人の気持ちを充実させるためだけにすぎん。」

 

表情はうまく読み取れないが言葉尻にさみしさを感じる。香りとか匂いじゃなくて...ただそう感じる。

 

「それじゃあそろそろ失礼しよう。夜もかなり更けてしまったようだし。邪魔をしてしまったね。」

 

鉄錆はすっと立ち上がりそのままお辞儀をして玄関へと向かった。

 

「あ、ありがとうございます...そのー」

 

なんとか自分の中で話せるタイミングをと思ったのだが鉄錆は片手をあげそれを遮った

 

「あ、いや。いい。別段言わなくても大丈夫だ。君も魔法使いの弟子になってさらに自身の特性が伸びているんだろう?私からなにか感じているんだね。だからと言って無理に言葉を選んだり、飾らなくていい。最初の感謝だけでも私は十分だ。それよりもだ」

 

彼はするっと振り返り僕を見つめ、続けた

 

「他人のために気を使って遠慮したり言葉を選ぶのも思いやりだが、時にその悩んだ時間や気遣いが相手を傷つけたり、自分を追い込むことになることもある。別に私は今のこと気にしてるわけじゃないが、これは先達からのアドバイスだと思ってくれ。」

 

再び鉄錆は僕らに背を向けて帰っていった。

大した見送りもできなかったが...

 

―――

 

奇妙な誕生日前夜だった。

そろそろ起きねば。この時間に日差しが入ってるってことはもういい時間のはずだ。

誕生日にこんなにワクワクするのは何年ぶりだろう。

今日はこの時期にしては少し暖かい風が吹いていた。

 

 

 




なんとかめちゃくちゃお久ですが投稿できました。
誕生日当日は...描かないかもしれませんし書くかもしれません。
まあつまり次回は内容ごと未定ってことです。
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