魔法使いの嫁〜AnotherStory〜   作:ケニーF

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えーーーーーーーーー大変お待たせしました


第46話『誕生日の嵐』

目覚めて一番にしたことは顔を洗って裏口から外へ出て庭の手入れ、そして朝食用の食器の準備。毎朝のルーティンを誕生日だからと言ってさぼるほど僕は間抜けじゃない。

そしてお次はいつもと変わらない朝ご飯。僕自身あまり主役だなんだとちやほやされるのは苦手だしこのくらいあっさりとしていたほうが楽でいい...

 

ドサッ!

 

さて新聞でも、と玄関を開けたら突然大きな影が入り込んで僕の上に覆いかぶさった。

 

思わずうわッと声を出したが、先生が駆けつけるころにはこの黒い影がニューヨークのジャックが僕宛に送った誕生日プレゼントだということが分かった。

それにしても...このプレゼントの山はミョウチキリンな空飛ぶクラゲから飛び出してきた。

何でもありだな、魔法

中には季節のお菓子とこれはどうにも日本旅行に行ってきたようで京都のお土産が詰まってる(だってKYOUTO MIYABIとか海外受けしそうなローマ字書いてるもん。てか京都の綴り間違ってるぞこのお土産)

古典的なワガシだけでなく抹茶味のバームクーヘンやクッキーなんかもある。最近のジャパニーズは洋菓子をアレンジしたようなお土産もいっぱい作っているのか。

 

「これじゃあただの旅行自慢みたいなものにしか見えないわね」

 

呆れた風に言ってるがそんな先生は緑茶のパックを凝視している。穴が開きそうだ。

ルキアはコンペトウとかいう名前の小さい砂糖菓子を眺めている。これはどうにも星をモチーフにしたようなカラフルな小さな砂糖のお菓子で見た目もかわいらしい。

どうやらこの誕生日祝いは僕ら全員にとって良き贈り物になったようだ。ジャックには世話になりっぱなしだなぁ...

 

お土産をひっかきまわしてあーだこーだ言っているうちにキッチンからはいい香りが漂ってきた。

 

「ケーキはお昼。さらにごちそうは夜!プレゼントはその時にね」

 

そうは言いながらもいつもよりは格段に豪華なお昼だ。

そしてこれまた甘い香りと包み込むような滑らかな味わいのケーキ

魔法使いのごちそうとタイトルをつけて本が書けるな。

オーブンから出てきたケーキだがいつの間にか生クリームのデコレーションがなされている。

イチゴとアンズのジャムがクリームとともに間に挟まっており、上部はまるで王冠のようになって並べられている真っ赤な大きなイチゴ。その間にはぎっしり詰まったブラックベリーとラズベリー。三人で食べるのでそこまで巨大ではないが、これぞまさに誕生日ケーキそのもの!といった感じで今まで食べた中でもトップクラスにおいしいケーキだった。

 

豪華な昼食もひと段落し先生が皿を洗い僕が部屋を片していたそんな時だった

 

コンコンと玄関の扉をノックする音が聞こえ僕は特に何も考えずはいはいと言いながら出てしまった。

まさかそこに自分のいとこであるショウシラカワがしかめっ面をして立っているとは予想だにできなかった。

 

「やっぱりここにいたんだな。秘書に調べさせてここでお前が怪しい連中とつるんでるって聞いて連れ戻しに来た!」

 

どうにも最悪の誕生日になりそうな予感がし始めた... 

 

追って先生も玄関へやってきた

 

「どなたでしょうか?いったい何の御用で?」

 

ショウ兄さんはフンと鼻を鳴らして人差し指を上にたてながら話をしだした。

 

「うちの従弟がね。怪しい魔女だか魔法使いだかを名乗る女の家に入り浸ってるって話を聞いてな。行ってみりゃなるほど怪しい女の家に上がり込んでるのはほんとだったみたいだな。てめぇセトに何吹き込んだかは知らねぇがこいつは連れて帰らせてもらうぜ」

 

そういってかなり強引に僕を引っ張り出そうとする兄さん。

さすがにこいつは無茶苦茶だ

 

「ちょ、ちょっと待ってよ兄さん。そりゃないだろ⁉何も知らないのに突然何さ?人のやることには文句言うなっていつも自分で言ってるじゃないか!」

 

そうだこの人は大概周りのやることには無頓着でだからぼくが家を空けるって言った時も特に詳しくは聞かずに管理を受け持ってくれたんだ。なのにそれが手のひら返したようになぜ今更来たんだ?

 

「それは!赤の他人のしかも普通のことやってるレベルでの話だ。魔法だなんだって怪しいカルトに落ちぶれた自分の身内はまた別問題だ!」

 

ついにはカルトとまで言いおった...

まあ確かに科学主義というか現実主義な兄さんからすればカルトにしか見えないかもしれないな

背後では先生もうなずいて話を聞いている。自分がカルトだって馬鹿にされたことに関しては特に気にしてない様子だ。

 

「カルトじゃない!僕はいたって普通の生活をしてるし魔法だって本物だ!何なら僕だって使えるさ」

 

落ち着いてことを分析できている気になっているがどうにもでてくる言葉は語気が荒く、ただでさえ話しながらどんどん赤くなっている兄さんの顔がゆでだこみたいに真っ赤になっていってしまった。

さすがにまずかった、後悔した矢先

 

「カルトに呑まれた奴はみんなそういうんだよ。ついにはお前自身もできると抜かしてきやがった。できるもんなら見せてみろ!くだらない妄想には付き合えないんだよ。どうだ?」

 

「わかったやればいいんだね、兄さん。見せればおとなしく帰ってくれるんだね?」

 

 

もうやけくそだ。こんなことで魔法を使うのはどうかとも思うが兄さんの財力も考えれば下手な遺恨を残して突き返すのも恐ろしい。

それに自分を馬鹿にされただけならまだいいが先生のことまでここまで言われちゃとりあえずぎゃふんといわせないことには収まらない。

 

すぐダイニングに通して一番簡単にはっきりわかるものを見せることにした。

 

「私手伝う?」

 

「いや、こんなことに隣人たちの力を借りるのもおこがましい話だしこれは俺の問題だから自力でやる。」

ルキアの提案を断り、相変わらずしかめっ面の兄さんの前に座る。

 

「インチキだとか言われるのも癪だし何をどうするか説明するよ。」

 

大急ぎで部屋からとってきた水晶を兄さんに手渡す。

怪訝そうな顔の兄さん。

 

「そいつは間違いなく何の変哲もない水晶だ。粘土細工みたいに手で形を変えるなんてことはできないし、色だって変わらない。よく見てくれ。そうだろ?」

 

「・・・あぁ」

 

「じゃあそいつをそうだな...花の形にでもしよう。嘘じゃない。机の上において。僕も兄さんもそいつには触れない。一瞬で変えてやる。」

 

さらに怪訝そうな顔になった兄さんをよそに水晶へ集中を向ける。思えば最初に魔法を使ったのもこんな石だったな。

 

 

意識を向け魔力を水晶へ注ぎ変えたい姿をイメージする...

 

水晶に淡い輝きが見えた刹那

 

ピキピキパキパキという氷が割れるような音とともに掌に収まるような小さな水晶からまるで本当の植物が発芽するかのように水晶の芽がでた。

昔テレビで早送りの植物の成長を見たがそれをそのまま再現したかのようにその芽はあっという間にアネモネの花を咲かせていた。

土台の水晶は少しだけ小さくなっていし、総量自体も変わってないようだ。前の時のような暴走傾向にないいい証拠だ。わきから見ていた先生もフムフムと頷いている。

 

当然驚いているのは兄さんだ。鳩が豆鉄砲喰らったような顔してる。

 

「な、あ...」

 

「どうだ兄さん?満足かい?」

 

したり顔な僕にどうにも腹の虫がおさまらないのか兄さんはキッとこっちをにらんだ

 

「まだだ!今度は俺の言うものの形にしてみろ!」

 

なるほど確かに条件をこっちが出しちゃいかさまにしか見えないだろうな。

 

「いいけどこいつの質量を上回るようなものは作れないからね、あくまで水晶の形を変えるだけだからね。」

 

「わかったわかった。んじゃあ鷹だ。」

 

「鷹?あの鳥の?」

 

「そうだ!鳥の鷹だ。やって見せろよ!」

 

どうにも兄さんは強気すぎていけない。

返事を返す必要もない。また意識を向けて

 

バサッバサッ

 

あ...あぁ...という少々間の抜けた声を漏らした兄さん

 

まあここまでやればそうもなるか

 

今この卓上には水晶の淡い輝きを放ったミニチュアサイズの鷹が弧を描いて飛んでいる。

 

「し、信じられん...そんなことが」

 

唖然とする兄さん。それじゃあトドメと行くか

 

「そんなに信じられないならご自慢の秘書に聞いてみるのが一番かもね。」

 

「え?」

 

もうこの人今日だけで一生分驚いてるんじゃないかってくらいの何度目かもわからない驚き顔。

 

「外で車待たせてるだろ?一緒に来てるんだろうからその人に聞けばいいんじゃない?ついでに会社の金のピンハネについても聞いてみれば?」

 

「な、何を言ってるんだ?セト」

 

先生はどうやら気付いているようだ。

 

「いやね。変な話なんだよ。僕は別段素性を名乗ってこの辺うろうろしてるわけでもないんだ。兄さんの秘書が調べてたった数か月で情報をつかめるわけがない。」

 

「だがあいつは俺が命じてから一か月もしないで見つけてきた...!そういえばお前が今何してるのかって言いだしたのはあいつだったな。」

 

それもそのはずだ玄関から乗り込んできた兄さんの背後。車の運転席にいた男。ちらっとだがそれでも十分思い出せた。

 

「理由はシンプルさ。僕の行く先に秘書の彼がいたからさ。それもとびっきり真っ黒なオークションにね。いや確かに思い返せばいたよ。でもまさかこっちの顔を覚えていたとはね。」

 

「なに?オークション?」

 

「そ、魔法使いとかが集まってやるオークション。当然一般人には参加どころか会場に入るのも不可能。でも彼はそこにいた。しかもあのオークションはお金もそれなりにかかるはず。いくら社長秘書とは言えそんな大金持ってたのかわからないなぁ~」

 

オークションのことはさらっと流しつつ棒読みな思わせぶり発言

兄さんはすでに魔法のことを信じている。疑いのにおいが薄れ始めてるのがわかる。

この状況でとる行動は...

 

「よし!わかった。俺の負けだ。もう何も言わないし。連れ帰る真似もしない。それよりも急用ができちまったからな!!」

 

そういうと来た時より顔を真っ赤にして兄さんは玄関から飛び出していったしまった。

 

「あなたのお兄さん。ずいぶんせっかちなのね。」

 

「まあ従兄なんで実兄ではないですけどね。面目ないです...」

 

先生までも唖然とさせてこの嵐は過ぎ去っていった

外からなんかもめてる声が聞こえているがそれにかぶせるように車のエンジン音が響き兄さんのにおいは遠ざかっていった。

 

「あれ?なんか置いてあるよ!」

 

さっきまで兄さんが座ってた椅子の上を指すルキア

相変わらず意地っ張りな人だなぁ

数ポンドの紙幣が置いてある。

あの人らしい気もするがなんともまあ...

 

「お兄さんなりのお詫びなのかもしれないわ。ありがたく受け取っときなさい。」

「さ、片づけて片付けて!せっかくの誕生日なんだから気を取り直していくわよ!」

 

なんだか妙に喜びのにおいを振りまいている先生にせかされて僕らは嵐の後を片付けた。

 

でも僕もそんな先生の喜びが嬉しかった。

 




あ、誕生日はもう終わりよ
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