誕生日の日々や新年のあれこれは全部カット!!
春
冬を越え大地に生命があふれる季節
人もまた同じく新天地へと踏み出すものも多い
そして...彼女もそうなのであろう
僕は誕生日の終わり頃から何も変わらなかった。先生たちとより親交を深めることはできたかもしれない、だが魔法使いとしての成長はあまり良いものでは無かった。
せっかく杖を作ってくれると先生が言ってくれたのに木を選ぶだけで3日、まして望みの形を目指して削るなどやったこともなく結局満足したものになるのに2週間もかかってしまった。
しかもそれでも自分の力には自信が持てず杖を握っても暴走するばかりで今杖は使い魔であるルキアに預けている。
自分に自信がなくなっていき落ち込んでいた僕に先生が数日休みをくれた
「街でも行ってリフレッシュしてきなさい」だそうだ
とはいえいきなり街へ行く用事もないしせっかくの休みをどうするかと悩んでいた時だった
突然スマホに見知らぬアドレスからメールが飛んできた
いや正確にはこのアドレス自体は知っていたがまさかあちらから連絡してくるとは思わなかった。
数か月前のホテルオークション
例の駄々っ子の監視警護がてら展示物を眺めていたらオークションを運営しているという男に声を掛けられ
少しばかし話し込んだのだが、私がやたらと食いついたのを気に入ったのか彼は連絡先を交換しようと持ち掛けてきたのだ。少々怪しい男だったが不思議と損はさせないという言葉に信ぴょう性を感じて応じてしまった。
しばらくは失敗したかと思ったが、とくにダイレクトメールされるわけでもなく連絡先交換したという事実を半ば忘れかけていた。
そんな彼セス・ノエルからのメール文はシンプルだった
「とてもとても珍しいお品が手に入りましたので折角ならとご連絡させていただきました。ご興味があるならば添付ファイルをご覧ください。」
ファイルには日時と場所の連絡が書いてある
「珍しいってなんだろうね?」
後ろからのぞき込んでいたルキアが不思議そうに首をかしげる
「だって魔法使い相手に珍しいっていうのよ。想像もできないわ」
確かにそうだ。僕が先生のもとで魔法を学んでいるのは周知の事実らしくおそらくセスも知っているだろう。それに今まで全く連絡をよこさなかったのに突然...
オークション日時も先生からもらった休みの期間内だ。
「よし。ちょっくら行ってみるか!」
そうして僕はルキアを連れ、まだ寒さの残る春の街へと繰り出した。
たどり着いたオークションでは魔術師ともどきのような半端物がそれなりの数が集まっていた。
呼びつけたくせにセスは会場に案内した後は忙しいからととっとと消えてしまった。
ルキアはいつものように影の中。こんなところで揉め事はごめんだ。
会場に入ってすぐセスがなぜ僕を呼びつけたのか分かった気がした。
とても甘くまろやかな香りが僅かではあるが漂っている
隣人たちや僕らのような人間たちにはとても魅力あふれる...こんな香りは初めてだ
そんなことに思考を巡らせているとオークションが始まった。
出されるものはどこぞの妖精の羽だとか、何とかの鱗だとか、確かに一般に取引されることこそないがありきたりなものばかり、香りの正体とは全く違う
まさかだまされたのではとあきれ気味に眺めていると最後の商品だという声とともにそれが現れた
赤い髪と若葉色の瞳
触れたら折れてしまいそうなほど華奢な体、かぶせられたヴェールからもわかるその不思議で魅力的な魔力の香り
「こちらは今回の競売で出品されたもの中でも希少なものです」
司会の声とともに会場がどよめく
あぁそうかこれがそうなのか...
気づくとルキアが人の姿で僕の脇の席に座って恍惚とした表情で彼女を見つめている
愚かな客たちは歓喜し値段は跳ね上がる
人を道具以下としか見ていない目下衆の目をした客とどこまでも虚ろで心まで空虚なスポットを浴びる少女
だが、気味の悪いそんな空気を一瞬で自分の色でかき消すものが流れ込んできた
会場の空気とはまた別の不気味な存在、人ならざる顔と底知れぬ闇に近い魔力を携えてその男
エリアス・エインズワースは壇上へと昇って行った
噂には聞いていた人嫌いがまさかこんなとことに現れるとは...
裂き喰らう城などと呼ばれる異形の者
彼は司会の注意する言葉など気にしないで一言
「500」
オークションは終わった。少女は影の茨の弟子となった
僕は終始呆然としてただけだった
どこか他人事で終わると思っていたこの出来事が僕の運命の歯車をまた狂わせ始めるのだと気付けることなどできるはずがなかった
ものすごいお久しぶりで申し訳ありません。
リハビリも兼ねた短い内容ですが新たな動きがあったなと認識していただければ幸いです。