帰ると入り口で仁王立ちして先生が待っていた
どうやら今日の行き先はばれていたようだ
せっかくの休みを魔法使いならば絶対行かないであろう下賤な場所ですごした
それに対する怒りは顔を見ればわかった
「あんなところ...私たち魔法使いが行くところではないわ」
居間での会話第一声はこれだ
まあ当然だ。反論もできない
「はぁ...」
大きなため息だ。呆れ、いや諦めに近い香りだ
「まあ、興味は尽きないか...今回はこれ以上何も言うつもりはないわ。もう少し自分が危険なことに首を突っ込んでるってことを自覚して」
「ごめんなさい」
先生だって好きで叱っているわけでないことくらいわかる。だがはっきり言ってこの説教は僕の身に染みるものにはならないだろう
それだけ今日見たものの衝撃は大きかった
あんなに豊潤で魅力的な香り
まがい物の
あの子
僕より年が下だったように見えたエニルほどではないがそれなりに美人だった
しかしあの死にきった眼に恐ろしさがあった
人間何を見てくればあんな目をするのだろう?
両親の死を受けた僕ですらあんな生きることを諦めたような状態にはならなかった
うわの空
あきれた先生も説教をやめてしまいその日はそのまま夕食で終わり
次の日からはまた修行という名の普段の生活に元通り
まあそんなことでスランプがどうこうできるわけがなかった
少しマシになったかもしれないがニューヨークのオークションの頃のような自信はなくなってしまった
思えばあの妙な男に唇を犯されたのがケチのつき始めだ
あの頃から魔力のバランスがわからなくなり
隣人たちの力の借り方も要領を得なくなってきた
まるで小学生まで満点しかとったことなかったのに中学生になって段々授業についていけなくなって高校生ぐらいには落ちぶれてしまう典型的な苦悩学生のようだ
誰かのせいにしたいが実際あの男のせいとも言い切れない
ただ時期が被っただけ
悪いのは体質にあぐらをかいた自分
失敗はしたことがあるし周りから侮辱されたこともあるが
徐々に腐っていく経験はない
才能があるとは言われなくとも無能ともいわれてこなかった
だからスランプからどうすれば出られるのか知らなかった
そんな折にやってきた話は
件の少女を買った魔法使いエインズワースが少女を自分の弟子としたこと
そしてそういった奇行を監視し報告するはずだったのに何も報告を上げないどころか止めもしなった
サイモンへの不信感による
地元の教会からのエインズワースの調査依頼だった
我ながらひどい