その少女の第一印象は不気味…
いや、奇妙といえばいいだろうか
自分の内側に感じていた何かより何倍も魅力的で芳醇な香り
絶望を含みながらしかしどこか光を見つけたような瞳
自分にないものとは惹かれる一方で恐れも感じるものだ
彼女はそれをそのまま感じる存在だった
先生に連れられ僕は今エリアス・エインズワースの自宅にいる
オークションの時はあの頭に警戒を抱いたが実際あってみるとどうにもただ不器用なだけにも見える
当然彼が人とは異なるむしろ怪異に近い存在であることは感じ取っているが…
喋る言葉は同じ、紅茶だって飲む
頭が犬か何かの骸骨だがそれ以外はいたって人間だ…
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つい先日、近所の教会の神父が暗い顔してやってきた
なんでも、教会が監視を続けていた
という存在に大きな変化があったようで
本来ならば監視者からの報告があるはずなのに教会には何も連絡はなかった…
不審に思った者たちが神父を通じて先生に依頼してきたってことらしい
先生曰く
宗教団体みたいなもんだが一枚岩ではないらしく
特に渦中の人物エインズワースの監視を行っているサイモンさんは少々恨みを買いやすい所に属しているらしい
今回彼経由での依頼でないのも彼を信用しないものがいるからだろう
とのこと
なんとも無様な話だ
本来ならばこんな事付き合う義理はない
だが…
エインズワースが娶った少女
スレイベガの少女
模倣品の僕は勿論、先生もその存在への興味が止まらなかった
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そうこうしているうちに話は当然少女の話題になっていく
バカ高い金で競り落としてどう使われてるのかと思えば
彼自身どう接すればいいのか完全にはわかってないようだ
一緒に暮らし
魔法を教え…
僕の生活と対して変わらないように見える
エインズワースの言葉に嘘の匂いはないし
恐怖や憎悪の匂いは漂っていない
少なくともエインズワースの隣に小さくなって座ってる赤い髪の少女「羽鳥チセ」は現状苦しい生活をしているわけでは無さそうだ
少々痩せ過ぎている気はするが身体に目立った傷もない
夫婦だと聞いていたがどうにも僕には親子のようなものに見えてしかたないが......
「で?用事ってのは僕の監視かい?大方サイモンの奴が碌な報告をしなかったからってところだろ」
話始めた骸骨頭は話が分かる人物のようだ声は男性に近く少し低い
どう発声しているのかとかあまり考えないほうがよさそうだ
彼の本質は匂いだけでは嗅ぎ分けられなさそうだし
「話が早くて助かるわ。まあ今見てるこの状況を伝えればそれで今日の用事は終わり。といきたいところだけど...」
先生は僕のほうを見て少々の間の悪そうな顔をした
なるほどここからは大人同士のお話というわけか
「チセ、すまないが少しこの青年の相手を...いや別に僕はいてもらっても構わないけど」
僕もそこまで人に迷惑をかけるような人間じゃあない
「あぁいえ構いませんよ。彼女さえよろしければ私としても少しお話してみたいですし」
「私も...大丈夫です」
ふむ...少し我は弱いようだ
まあ確かに自分の学生時代を思えば当然か
日本人であることが疎外感といじめを生み生活環境はいいとは言えなかった
彼女も怪異を常に見続け生活してきたと聞く
そんな中でまともな生活ができるかと言われれば答えはノーだろう
最近知っただけでも彼らは友好的であっても決して安全な存在ではない
僕自身彼らの好意であわやな事になりかけたことがある
羽鳥に案内をされてエインズワース邸の庭に出た近くの森が見え何とも長閑な田舎といった感じ
二人並んで無言でそんな森を見つめながら座っている
気まずい...
画が弱いのは勝手だが無言は居心地が悪い
これは何か話さねばと彼女のほうを向き直ったとき体が少し動いたせいかポケットからコインが飛び出してきた
元来財布嫌いで小銭をポケットに押し込んでいる
よくスられるからやめろと言われてきたがまあこの癖は治らない
慌てて拾おうとしたとき手が触れた
羽鳥もまた私の落としたコインを拾おうとしてくれていたようだ
そうして触れ合った彼女から流れ込んできたのは...
あまりにも残酷な人生
まだ20にもならないというのに人の悪意にさらされ続けた苦しみの一生
断片的なビジョンでしか見えなかったがその苦しみだけは痛みを感じるほどに......
「あッ!」
小さな声で羽鳥は叫んだ
「す、すまない。これは私の性質というかそういうもので...うまく扱えないんだ。決して覗き見てやろうと思っていたわけではないんだ。本当にすまない」
最近はルキアの手を借りてもこのざまだ
母の形見は最近はつけていてもあまり意味をなしていない気がする
そこまで自分の魔力は荒んでしまったのかと落胆の日々に嫌気がさして結局家に置きっぱなしだ
結果はこれ
慌てて言い訳がましくも謝る僕を見てハトリはフフッと笑っていた
「大丈夫ですよ。そんなに謝らなくても。私、私を必要としてくれる存在がいるってことは嬉しいんです。彼のことはまだよくわからないし、生活にだって完全に慣れたわけじゃですけど」
そういって彼女はここにきてからのことを話した
知らないことばかりだったがセスの教えもあり英語だけは何とかなったらしい
来てみれば周りには優しい人が多くそれなりに満喫しているようだ
時折彼女から発せられる”居場所がある”という言葉が妙に頭に残った
だがそれでいて実感させられる
当たり障りない返事をしながら彼女が魔法使いとしてはどこまでも恵まれているんだと思わざる負えない
それは羨望か、妬みかもしれない
だが喋る彼女から感じる魔力やオーラは自分にないもの全てを含んだ完璧なものだった
先生の期待に応えられず
すさんだ場所に遊びに行く僕と
師に求婚されるほど気に入られ、周りからの期待にこたえられる才をもち
スランプに甘んじて何もしていない僕とは全然違う
きっとどんどん離されていく
果たしてそんな僕に先生のもとの居場所などあるのだろうか...
なんかつらくなってきたな