てか最近単行本全く追えてない...
第53話『学院』
目が覚めると
知らない天井
そう
僕は逃げた
レンフレッドさんに匿ってもらい魔術師たちの学院とやらにいる
既に数日が立った
先生はここに来たことはないらしいからここでしばらく生活するのは間違ってはいないだろう。
学院の人らで話し合ったらしく僕の処遇はあっという間に決まった
生徒としてではなく
他の魔術師の補佐として研究者の一人のような立場で籍を置くことになった。
そしてその魔術師というのがバーダーさんだ
レンフレッドさんはちゃんと僕をバーダーさんの助手として入れると話を勧めてくれた。
今回僕を攻撃した存在は完全に謎
極力他者との接触は減らしたい
となれば生徒という立場はいささか問題がある
それにバーダーさんは竜舌蘭の花などを専門としている
研究対象として手元に置いておきたい
そんな気持ちもあったのだろう。ほかの三人
つまりマサト・カキザキ、アエラ・ホーキンス、エニル・マーシェンもまた彼の助手という立場で学院に所属している。
生徒の立場なら危険な場所に彼らを連れだせるわけがない。
部屋は余っているがあまり大量に使わせたくない
というお上のご意向の元
僕は柿崎と相部屋になった。
今日はその相部屋一日目だ。レンフレッドさんの研究室のソファーの上の生活も終わり。お礼を言ってからと思ったがどうにも今日は外せない会議があるとかで早朝からいないらしく。部屋でわざわざ僕にコーヒーを持ってきてくれたアリスに礼を言って出発した。
まあそうはいっても少し歩いた先にある部屋に移動するだけなのだが...
「柿崎君とセトは結構仲良しよね」
ルキアは人型で隣を普通に歩いてる
廊下を並んで歩く
思えば学生が経験しそうなことだが自分の記憶をさかのぼっても楽しい学友との
廊下での他愛ない会話ってのはなかった。
「そう見えるか?仲がいいって」
そう思うと突然このくだらない会話が大切に思えてくる
「だってオークションの時から結構お互いのこと信用してる感じでやり取りしてたからさ。」
「そりゃあだってあの場で僕を除いちゃあいつが最年長だったし。頼りになりそうな感じだったんだよ。」
「それは匂いが?」
「いやなんとなく。」
「やっぱりなんとなくでそう思えるなら仲がいいってコトよ。」
「そんなもんかね?」
そうこうしているうちに新しい自室の前にたどり着いた
部屋からはなんかごそごそ音が聞こえてくる
間違いなく柿崎がいる
相変わらず鼻は使い物にならないがさすがに廊下にまで響く音は聞き逃さない
一応戸はたたいたが返事はナシ
ひたすらガサガサ音が聞こえる
これはなんか遠慮する必要がない感じだな...
「いいんじゃない?あけちゃっても」
カチャリと扉を開けはいる
部屋の中は一見すると凄まじく奇妙だけど
まあ想像通りというかお察しの内容だった
部屋の中心を境界線に片方は机とベッドだけの何もないエリア
もう半分はとっ散らかっていて
段ボールと巨大ビニール袋にゴミやら本やらを詰め込みながらあたふたしている男が床に座っている
部屋に入ると同時にその男柿崎はこっちに向いた
「おあッ!もう来たのか!こっちで手いっぱいで見てなかった。」
「全くだ...あとから来た私が言うのもアレだが日ごろから部屋くらい片付けておけよな...」
「うるさいなぁ!俺だって一昨日になって突然あんたがここに来るっていうから大慌てで...」
一昨日からやってまだ片付いてないのか...?
「ま、まあ私の場所がありゃいいや...入っていいんだよな?」
「自分の部屋に入るのに許可とるやつはいないぜ」
カバンを引きずりながら部屋に入ってみる
入り口から向かって正面には机、左右の壁際にはベッドが置かれている
ベッドは新品のシーツが綺麗に張られている。これは僕の引っ越しが決まった後にやってきたのだろう
机はと言えば綺麗に磨かれた木製でわきには引き出し付きの棚が備え付けてある
シンプルだが使い勝手がよさそうだ
カバンから物を出して自分風に改造してやればそれでよしといったところか
「なあ。あんたの荷物そのかばん一つか?旅行じゃないんだぜ」
「このかばんが見かけ通りのサイズなら2泊3日旅行ってところだな。まあ服洗えるんだったらもう少しできるだろうけど」
「へぇ~先生の研究室みたいな感じなんだな!バーダー先生の部屋も見かけの倍以上あるんだよ」
思えばレンフレッドさんの家や先生の家もそうだったな
先生の家は外で見るより一回りは広かった気がする
僕の部屋もこの部屋と同じかそれ以上あった...
あの部屋にはもう戻れない
「セト...大丈夫?」
ルキアが僕の片手に手を当ててる
「あぁ...ちょっと懐かしんだだけだから...」
彼女は机の軽く腰掛けながら僕の荷解きを眺めている
「なあ柿崎。蛇とネコは大丈夫か?」
「え?アレルギーは特にないぜ。大丈夫だ」
「そうか。ならいい」
にゃあ~
「な、なあ。そろそろ聞いていいか?」
片付けもまだ半端なところで柿崎が声をかけてきた
結構恐る恐るって感じだ
「なんだ?」
「そのお嬢さんは誰なんだ?あまりにも自然にいるから聞けなかったんだが...」
その視線の先にいるのはルキア
そういえば魔術師は使い魔といったものはとらないという
知らないのも当然か
「私の相棒。ルキアだ。あぁ安心してくれ。普段は私の影の中で寝るからベッド盗ったりはしない。」
「よろしく~」
ゆらゆらと手を振るルキアに唖然としてる柿崎
「そ、そうなんだ...俺の知ってる妖精ってのはもっとこう羽が生えてるとか小さかったりとか空飛んでたりとか馬だったりとか...ここまで人間そのものってフォルムなんだな」
「まあ彼女がわざわざこの姿にしてるだけだからな。もともとはセントールだからいわゆるケンタウロスなフォルムだぞ」
ふふんとルキアは鼻を鳴らしている
あぁそういえばそうだったな
「一応むやみやたらに彼女連れてどうこうはするつもりはないしコミュニケーションする機会はあんまりないだろうけど、彼女に妖精っていうのはやめてやってくれ。隣人たちはその呼び名を好いちゃいないんだ」
「そうなのか?そいつは悪いことした。ごめんルキアさん」
正直な男だ。バーダーさんやレンフレッドさんとはまた違った人間
「いいのよ。人間はよく間違えるもの。それに私たちはそのくらいじゃどうってことないわ。でもたまにその呼び名にありえないくらい激怒する連中もいるから気をつけなさいよ。じゃあセト私少し休むわよ。」
ルキアはそういって僕の影の中に吸い込まれていった。
「自分が魔術師だって言われていろいろ信じられないものを見てきたが...」
「まだ驚きは多いだろ?いいだろ楽しい世界だ。」
にゃ~
「ところでそのネコちゃんも俺にとっては驚きの一部だな。」
小さめなケージの中にいるピュティアのことだ
「サーポパードって知ってるか?今じゃ世間でも噂すらされなくなった生き物さ」
「確かネコ頭の恐竜みたいな生き物だったような...」
そいつはあくまで伝承の話
この子は原種だ
「意外と違う姿だろ?まあ人は噛まないと思うけど不安ならトランクの中で飼うから安心してくれ」
「いいのいいの気にするなって。別に動物は俺も好きだし。それより荷解きをのんびりやるのはいいが明日からはあんたも先生のお手伝いだからな。準備はしとけよ」
「多分準備できてないのはお前のほうだぞ柿崎。どれ、その片付け手伝ってやろう」
誰かと一緒にする生活
ほんの少しだけ前向きになれた気がする
しかしふつうは引っ越してきた側が手伝ってもらうんだと思うんだけどなぁ...