グルルルルルルルル、と重低音が辺りに響く。
二次試験の会場に建っている建物の中からこの音は聞こえてくるようだ。
二次試験の開始時刻は正午となっているのでまだ試験は始まっていない。
始まるまでもう少し時間が掛かりそうなので、私はウサちゃんリュックから取り出したように見せかけて、念空間から取り出したお握り(おかか味)を頬張っている。
大きめのリュックを使えば念空間を誤魔化せるからウサちゃんリュックはとても重宝している。
基本的に私は、自分の念能力を他人に教えるつもりは一切ない。
ヒソカには、『攻撃系の念能力ではない』と少し本当で大半が嘘の情報を教えている。もし、他の人に聞かれても同じことを伝えるつもりだ。
万が一、教えるにしても【
少なくとも【
こちらは文字通りの切り札だ。使わないとどうにもならない状況にならない限り温存する予定だ。
それに逃げるだけなら念空間を経由した疑似的な空間転移が可能なので、切り札を切るほど追いつめられることはまずないだろう。
試験会場に備え付けられている時計がちょうど真上を指し示し、正午を迎えた。
結局お握り3個も食べちゃったよ。
他の人達って6時間以上は走り続けていたはずなんだけど、食事とかどうしてるんだろう。
弱火でじっくり焼いたステーキ定食だけじゃ持たないと思う。
どう見ても着の身着のまま参加しましたって感じの人ばかりだから、野草でも食べて耐え凌いだのかもしれない。
そんなどうでもいい疑問について考えていると、会場にある大きな建物の門が左右に開いていく。
中から現れたのはメンチちゃんとブハラである。
メンチちゃんは髪型が特徴的で肌の露出が非常に多い美少女だ。
ブハラはとにかくデカい超巨漢。身長が3、4mはありそうだ。縦だけでなく横にもデカい。
この2人は登場回数も少ないのに何故か読者に強い印象を与えた(主観)
「そんなわけで二次試験は料理よ!! 美食ハンターのあたし達2人を満足させる食事を用意してちょうだい」
「まずはオレの指定する料理をつくってもらい」
「そこで合格した者だけがあたしの指定する料理を作れるってわけよ」
というわけで、ブハラの指定した料理は豚の丸焼き。
二次試験は一度全員失格するという衝撃の展開があったためだいたい覚えている。
ハゲ忍者のせいで確か寿司のことが露見して面倒なことになったので豚を取るついでに魚もゲットしておこう。
私は【円】を森に向けて使い川の位置を割り出す。
そして、周辺に人がいないことを確認してから念空間から魚を捕る用の網を取り出して、靴と靴下を脱いで川に入って魚を取る。念空間内に魚の図鑑があったはずだからあとで確認しておこう。
魚を念空間に入れよう、と思ったが念空間には私以外の生物は基本入れなかったので、
この一連の作業にかかった時間は5分未満である。匠の技が光る。
そして、また【円】を使い、豚を探す。
受験者たちが豚に群がっているのを見つけたが色々と面倒なので、人があまりいないところを探して豚を殴ってゲットだぜ!
その後は、血抜きをして皮を剥いで豚を丸焼きにする。
丸焼きって作り方が分からないけど、前に倣えって感じで周囲の人の真似をして文字通りの丸焼きにした。
中国料理で動物を丸々使った料理が結構あった気がするが、正直覚えていないし役に立ちそうにない。
北京ダックは吊るした状態で熱した油を何回もかけて火を通していたが、あれは詰め物もしていたし丸焼きと呼べるのか怪しいので参考にはならないだろう。
結局、適当に焼いて適当に塩胡椒を掛けただけの丸焼きで合格できた。美食ハンター舐めすぎだろ?
『ゴォォォォーーーン!!』とメンチちゃんが銅羅を叩いて鳴らす。
「豚の丸焼き、料理審査!! 71名が通過!!」
メンチちゃんが通過人数を宣言する。140人くらいいたのに71人になってるんだけど。
デカいだけの豚に負けた残りの70人くらいはクソ雑魚ナメクジかよ……
「あたしはブハラと違ってカラ党よ!! 審査もきびしくいくわよー。二次試験後半、あたしのメニューはスシよ!!」
お題はニギリズシ。
元日本人なので寿司なんて年に10回以上食べていたし、テレビの料理番組で名店のシャリの握り方とか紹介していたのでそれを踏まえて試行錯誤してみようと思う。
あと、ハゲ忍者は拳で黙らせる予定だ。
「具体的なカタチは見たことがないが…文献を読んだことがある。確か…酢と調味料をまぜた飯に新鮮な魚肉を加えて料理、のはずだ」
「魚ァ!? お前ここは森の中だぜ!?」
あれ~おっかしいなぁ~
ハゲ忍者がネタバラシした気がするんだけどクラピカとレオリオが大声で材料を伝えてしまった。
私の矮小な記憶力は、当てにならないことが証明されてしまった……
受験者全員が川に魚を取りに行ってしまったので、私は1人だけ流し台の前に立っている状態だ。
メンチちゃんとブハラの注目が嫌でも集まる。
このままじゃせっかくリードした時間が台無しになってしまうので、注目の集まる中、仕方なくウサちゃんリュックから魚を取り出す。
メンチちゃんとブハラがビックリした顔をしている。
「ちょ、ちょっとアンタその魚ずっとリュックの中に入れていたの!? 流石に腐った料理なんて食べないわよ!?」
「あぁー……うーん…」
当然の反応だけどどうしようか。
何も知らない人から見れば、容器に入れられてすらいない、6時間耐久マラソンをリュックの中で乗り越えてきた魚だ。私なら絶対に食べない。
流石に事情を説明しないで食べてもらうのは無理そうだし、ちょっとだけ説明するかな。
「私の能力です。一応ほんの数十分前まで生きていたので新鮮ですよ」
能力を効くのはマナー違反なのでこれで誤魔化せるはずだ。
せいぜい、リュックの中に異空間を生み出す能力だとでも勘違いしてくれ。
「ふーん……ならいいわ。でも、腐ってたらタダじゃおかないからね?」
能力の詳細を聞きたそうにしてたけど、教えるつもりは毛頭ないのでスルーして料理に取りかかる。
図鑑を取り出して、一番美味しい魚を割り出す。
残りは、今晩の夕食にテンプラにでもしますかね。
蒸らした米で酢飯を作って冷ましておく。
そして、鱗取り器を取り出して鱗を取って、頭を落とし内臓を取り出して捌いていく。
確か包丁を斜めに入れて繊維に沿って切る感じだったはずだ。
一番の難関はシャリだ。
確か口の中で解けるようにふんわりと握るんだったはず。
正直知らないので何個か握って食べてみる。
酢飯の美味さは正直分からんがそれっぽいのが出来たのでワサビを少量付けてネタを乗っける。
それを四貫ほど作ってから皿に盛ってメンチちゃんの元に持っていく。
ネタに味をつけてるタイプの寿司じゃないので、そのまま食べられても困るため小皿に醤油もいれていく。
ちょうど魚を取って帰ってきた人達が何人か出てきたようだ。
「メンチちゃん、できましたー!」
「メンチちゃん? まあいいわ……どれどれ?」
つい頭の中で呼んでいた呼び名が出てしまったけど見逃してもらえた。今後もそう呼んでOK、と受け取ったゾ。
「むむ、悔しいけど美味しい……リュックの中にいた魚のくせに」
「え? メンチ、それ本気?」
「疑うならアンタも食べてみなさいよ」
「え、じゃあいただきまーす」
ブハラも食べるようだ。4貫作っておいてよかった。
「おっホントだ。美味しい」
「でしょ? 不本意だけど仕方がないから合格よ……」
「やったー!! メンチちゃんありがとー」
私が食材を雑に扱ってたように思われたのかメンチちゃんがかなり悔しそうだ。
実際はすぐに締めてから冷蔵してるからかなり最適な保存方法なんだけどなぁ……
それにしても気の強い性格の人の悔しそうな顔を見るとイタズラしたくなって何か良いよね?
「マジか、あのガキもう合格しやがった!?」
「つーか、いつ魚取ってきたんだ?」
魚を取って帰ってきた人から注目が集まる。
作り方は教えねえよ、ハゲに聞け!
私は暇になったので魚のテンプラでも作って食べることにする。
残ってた魚をウサちゃんリュックから取り出してドンドン捌いてから揚げていく。
小魚は捌かずにそのまま揚げる。めちゃくちゃ美味しそうだ。
辺りに『ジュワー』と魚を揚げている音が響く。
酢飯が大量に残ってしまっていたのでそれを茶碗によそって、天つゆを用意して昼食(本日2度目)にする。
ほとんどの受験生が帰ってきて寿司を作っている中で、私は合格者の余裕を見せつける。
「おい、アリス。お前既に合格したって本当か?」
キルアが誰かに私が合格したのを聞いたのか質問してくる。
「そうだけど」
「な、ならどうやって作ったんだ? 俺、料理はさっぱりでさ~」
「う~ん、私は教えても別にいいんだけど……」
試験的には教えても問題ないのか?
私が教えなくてもハゲ忍者が知ってる可能性が高いからいずれバレることだと思うんだが。
「ねぇー、メンチちゃん! お寿司の作り方って教えていいのー?」
「はぁ!? ダメに決まってんでしょ! ていうかアンタだけそんな美味そうな物食べてんじゃないわよ、寄越しなさい!!」
「あー! 私のテンプラがー!!」
また揚げればいいけどいきなり奪うのは酷いと思う。
「くそー、テンプラも地味に美味いわね!! 天つゆも入ってるし、そのリュック一体どうなってんのよ!?」
「教えないよー」
メンチちゃんはまた悔しそうな顔を浮かべて去っていった。いい反応するなぁ
「というわけで試験官命令で、作り方は教えられないみたい」
「そっか、諦めて自分で作ってみるわー」
一般家庭にある物をなんでも取り出せる不思議なウサちゃんリュック。
本当はどこからでも取り出せるけど念能力者ならきっと勘違いしてくれるだろう。
一般人には手品にしか見えないしね。
ご飯も食べ終わってやることがなくなったので、揚げたテンプラを皿に盛ってラップしてから(ウサちゃんリュックに入れるように見せかけて)冷蔵庫に転移させる。
そして、携帯ゲームを取り出してピコピコ遊んでいたら試験は終わりを迎えた。
◆ ◆ ◆
「はい、試験終了~。二次試験合格者は406番1人よ~」
メンチちゃんのやる気のない声が辺りに響く。
今更ながら取るべき選択肢を間違えたことに気付く。
全員失格になったから再試験があったのであって、合格者が出てしまったら再試験は行われないのだ。
バタフライエフェクトとかそれっぽい専門用語を言って調子に乗ってた過去の私を殴りたい。
きっと私の顔は今真っ青だろう。やべーよやべーよ。
どうしようかと迷っているとメンチちゃんが電話をし出した。
どうやら本部の方に合格者が1人だと伝えているようだ。
結局ハゲ忍者は寿司の作り方を大声で受験者にバラしたのでそれの愚痴が多分に含まれていた。
「メ、メンチちゃんどうにかならないの?」
電話が終わったのでとりあえず聞いてみる。
「はぁ!? もう決まったことよ! 誰になんて言われようと変えるつもりはないわ」
私が棄権すればまだ可能性があるのかな?
そんなことを考えていた時、
『ドゴオォンン!!』と何かが破壊される音が聞こえてきた。
「納得いかねえな。とてもハイそうですかと帰る気にはならねぇな」
物に当たった挙句になんかめっちゃキレてるデブが急に喋り出した。マジハンター世界世紀末。
「オレが目指してるのはコックでもグルメでもねェ!! ハンターだ!! しかも
「それは残念だったわね」
「何ィ!?」
「今回のテストでは試験官運がなかったってことよ。また来年頑張ればーーー?」
めっさ煽るメンチちゃん。だけど可愛いから許せるのだ。
「俺はテメぇらとおままごとをしに来たんじゃねえぞ!! ふざけんなぁ!!」
メンチちゃんの可愛さに夢中になっていたせいで頬が緩んでいたのか、マジギレしたデブの視界に入ってしまったようだ。
マジギレデブはメンチちゃんに突撃するついでとばかりに、メンチちゃんの近くにいた私にも攻撃してくる。
この感じはショルダータックルってやつだな。
はぁ……避けてメンチちゃんに押し付けてもいいんだけど、クソ雑魚ナメクジに舐められるのは生理的にキツいので私が処理してあげよう。
私は右肩を前にして突っ込んできたデブを躱して、すれ違いざまに掌底を顎に叩き込んで意識を刈り取りデブの身体を浮かせる。
そして、そのままデップリと膨らんだ腹を蹴りで打ち抜く。
デブは会場の壁を破壊しながら森の外まで吹っ飛んで行った。
辺りがシーンと静けさに包まれる。
「――んっ、うん!! とりあえず合格者はそこの406番だけよ。分かったわね?」
あれ?まさか私がこの状況に止めを刺してしまったか??
早く棄権するって言わないと!
「あ、あのっ!!」
『それにしても二次試験の合格者が1人とはちとキビシすぎやせんか?』
そのとき、拡声器を使ったような声が辺りに響いた。
私は救いの神が来た、とばかりに天を仰いで飛行船に祈りを捧げる。
派手好きなネテロ会長が飛行船から飛び降りてきた。
そのあと、再試験が行われてクモワシとかいう鳥の卵を取りに行った。
合格して暇だった私も勝手に何個か採取して冷蔵庫に入れといた。
結局、合格者は43名らしい。
◆ ◆ ◆
その夜、一次試験官のサトツと二次試験官のメンチとブハラが集い、夕食を取る一室にて。
「ねぇ今年は何人くらい残るかな?」
夕食を取りながらメンチがブハラに問いかける。
「合格者ってこと?」
「そ、一度大半の奴らを落としといて言うのもなんだけどさ。なかなかのツブぞろいだと思うのよね」
「でも、それはこれからの試験内容次第じゃない?」
メンチとブハラは今年のハンター試験受験者達の顔を思い浮かべる。
毎年ハンター試験は過酷で運だけで合格することはまず不可能だ。そのため多方面においての高い実力が必要になる。
「そりゃそうだけどさー、試験してて気づかなかった? けっこういいオーラ出してた奴いたじゃない。サトツさんはどぉ?」
「ふむそうですね。ルーキーがいいですね今年は」
話を振られたサトツは少し考える素振りをしてそう答える。
そうして、皆ぞれぞれに注目しているルーキー達を思い浮かべる。
「あ、やっぱりー!? あたし406番と294番がいいと思うのよねー。406番は幼女だし、294番はハゲだけど」
(2人とも寿司を知ってたからじゃ……)
「私は断然99番ですな。彼はいい」
「アイツきっとワガママでナマイキよ。絶対B型! 一緒に住めないわ! ブハラは?」
(そういう問題じゃ……)
ブハラはメンチのどこかズレた発言に若干呆れながら、自身の気になった受験者を思い浮かべる。
「そうだねー、ルーキーじゃないけど気になったのがやっぱ44番…かな。メンチも気づいてたと思うけど255番の人がキレ出したとき一番殺気放ってたの。実は44番なんだよね」
「もちろん知ってたわよ。抑えきれないって感じの凄い殺気だったわ。でも、ブハラ知ってる? あいつ最初からああだったわよ。あたしらが姿見せた時からずーっと」
「ホントー?」
「そ。そういや、話変わるけど406番の幼女の能力ってなんだと思う?」
「あー、あの生魚や天ぷら粉とか出てくるウサギのリュックかー」
「やっぱり、ウサギのリュックの中が念空間になってるのかしら? 茶碗や皿、携帯ゲーム機も出てきたわよね」
「そういえば、私は飲み物とお握りを出してるところを見ましたよ。それなりの大きさのリュックですが流石にその量の物は入らないでしょうから十中八九念能力でしょうね」
「見た目8歳くらいなのにかなり強いわよね。能力はなんか……可愛いけど」
「念能力者としては44番といい勝負でしょうね。ただ能力が攻撃系のモノではない可能性が高いので、実際に戦えば負けるかもしれませんね」
「あの子凄くちっちゃいから近接戦は不利よね。まあ、あたしに楯突いてきたデブを蹴り飛ばしてたし、素手でも相当やれるみたいよ」
「ふむ、まあどちらにしろ。これから先どうなるのか楽しみですね」
それからもそれぞれどの受験者が面白いかなどを話しながら夕食を食べ進めていった。
◆ ◆ ◆
今は三次試験会場に向かう飛行船の中だ。
飛行船でわざわざやってきたってことは、はじめから二次試験の通過者は10人以上になる予定だったのかもしれない。
多分ネテロ会長がやってきたことだけがイレギュラーなんだろう。
危なくこのドデカい飛行船に1人で搭乗させられるところだった。
ベンチに座り、飛行船の窓から外の景色を眺める。
お腹いっぱいご飯を食べたから少し眠たいが、微妙に興奮していて上手く眠れる気がしないのでクラピカやレオリオとは別れてゴンとキルアとともに夜景を見ている。
「キルアの父さんと母さんは何してる人なの?」
「殺人鬼」
「両方とも?」
「あははははっ、面白いなぁおまえーマジ面でそんなこと聞き返してきたのお前が初めてだぜ」
そんなゴン達の楽し気な会話を聞きながらは私は空気と化す。
完全に飲み会でスマホ弄りしてる可哀想な人だ。
暇つぶしに手のひらの上でオーラを使って文字を書いたりして遊ぶ。
ますます飲み会でスマホを弄ってる人になってしまった。
寂しくなんかないんだゾーホントダゾー
だいたいキルアの両親は暗殺者であって殺人鬼ではない(キレ気味)
そうだ、携帯電話を買おう。
アイラさんにも携帯電話をプレゼントしようかな。
手紙で一方的に生存報告するのもどうかと思っていたし、この際買って送ろう。
そうして、ハンター試験が終わった後の予定を脳内で大雑把に立てる。
「----ス!! アリスってば!!」
「ひゃいっ!? 急に大きな声で呼ばないでよ?」
思考に集中していた私を、ゴンが大声で現実へと引き戻す。
「さっきから話しかけても返事がなかったから……驚かせるつもりはなかったんだよ」
「あー……考え事してたからかも。それで何か用なの?」
さっきまでスマホ弄り幼女をしていたから、内心では話を振ってもらえてワクワクしている。
「アリスの両親は何をしてる人なのかな?って思って」
キルアの『オレの両親殺人鬼』発言並みに厄介な話題だ。
面倒だし、食人鬼とかでいいかな?
「食人鬼だよ」
「「え!?」」
予想してた反応と違う!
キルアあたりは『へぇそうなんだーお互い大変だなー』とか言ってくれるかと思ってたのに……
「まあ……それは嘘として6歳になる前に捨てられたから、今何してるか分かんないかな。もしかしたら、本当に食人鬼をやってるかもね~」
「オレと似たような感じなんだね~。オレは両親に会ったことすらないから」
「へぇ~」
子供3人で集まって話しているはずなのに内容は実にディープだ。
暗殺者の息子と捨て子×2の集い。
私なんて寂しさのあまり念能力で実家を生み出したんだぞコラ。
そんなとき、ふと背後の通路に人の気配が現れた。
ゴンとキルアは振り向いたが、私はちょっと眠いし誰の気配か分かっていたので無視して外の景色を眺め続ける。
「どうかしたかの?」
ネテロ会長はかなりわざとらしい感じで反対側の通路から現れて問いかけてくる。これはウザいなぁ。
「あれ? ネテロさんこっちのほうから誰か近づいてこなかった?」
「いーや」
ゴンは気づかなかったようだけど、キルアはさっきの気配がネテロ会長のものだと気付いているようでかなり苛立たし気だ。
「素早いね、年の割に」
「今のが? ちょこっと歩いただけじゃよ」
そのあと、ネテロ会長と色々話して、ハンターライセンスを景品にしたボール取りゲームをすることになった。
私は眠いからパスだ。幼女はいっぱい寝ないと大きくなれないのだ。
ゴン達とネテロ会長がゲームをする部屋の近くのベンチで、ウサちゃんリュックから枕を取り出して横になって眠る。
目が覚めた。どれくらいの間寝ていたのだろうか。
腕時計を見ると夜中の2時過ぎのようだ。
飛行船はまだ空を飛んでいるようなので、とりあえずゴン達がまだゲームをしているのかどうかを確認しようと思う。
部屋に顔を出してみるとキルアはどっか行ったみたいだけど、ゴンとネテロ会長はいまだにゲームをしているようだ。
私は部屋の隅に腰かけて、ゴンとネテロ会長の戦いを眺める。
「アリス、起きたんだね!!」
ゴンはネテロ会長とゲームをしながら器用に話しかけてくる。
「うん、ほんの数分前に起きたよ! やることがないからゲームまだやってるか確認しに来たの。そういえば、キルアはどこいったの?」
「さっき寝るって言って出ていったよー」
しばらくしてゴンはネテロ会長に右手を使わせることに成功して満足した顔をして眠りについた。
ボール取りゲームだったはずなんだが趣旨が変わってる……
もう既に午前4時過ぎだ。
「お主はどうする? 今からでも参加するかの?」
「いや、やめとくかな。あっ、ゲームじゃない念ありの組手の相手でもしてよ。ライセンスは要らないからさ」
「ほぉ? ライセンスは要らんのか?」
「要らなくはないけど、それより会長さんとの組手の方がいいかな。会長さんくらい強い人と殺し合いじゃない戦闘ができる経験って少ないし」
「ふむ、次の目的地に着くまでの間なら構わんぞ」
天空闘技場は微妙な人しかいなかったからなぁ
その点、ネテロ会長は念能力者で五指に入るレベルの使い手だし、いい経験になるだろう。
幼女とお爺ちゃんの無駄に高度な組手は夜が明けても続いた。
次は三次試験だ。徹夜気味で眠いし、もう塔の上から飛び降りようかな?