転生者は平穏を望む   作:白山葵

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第08話~部活動します!~

朝。自室で正座している。

アパートのワンルーム。別に和室だからとか、そういう習慣があるわけじゃない。

訂正。

 

朝、自室で正座させられている。

 

「大変申し訳ありませんでした」

 

ただ、説教を受けていた。

 

「…」

 

幼馴染にゴミを見る目で睨まれる。

 

みほさんそういう顔もできるのですね。

昨日飲酒をさせられた様で、家に着いてからすぐに寝てしまったようだ。

部屋にみほが来た様なのだが、正直眠気MAXだったので前後の事は、殆ど覚えていない。

酔った勢いで、みほをお姫様抱っこした所までは覚えていた。

「都合のいい記憶力…」と、みほにジト目で見られたが、何も言えなかった。サーセン

 

完全に寝入ってしまったので、みほが俺の部屋の鍵を閉めて、持って行って翌日の本日。

鍵の返却と共に昨日の詳細を聞きに、みほが朝一に訪問してきた。

んで開口一番。「そこ。正座」だった。

 

「…で?」

 

「で?って、仰いますと」

 

腕を組み、見下すように問われます。

はい。記憶残っています。それを問われていらっしゃるのでしょうか?

 

「昔あれだけ言ったよね? お酒に弱いんだから気をつけてねって」

 

「はい…。ご助言頂きました…」

 

「昔の事、覚えてるよね? あの時の事言うとお姉ちゃん、未だに顔真っ赤になるよ!?」

 

どうもにも酒に弱い体質の様なのだが、見た目が全く変わらないと言われていた。しかし行動が、変な部分で大胆になるとの事。

自分自身でも嫌なのだが、記憶が全く飛ばないのだ。飛んでいてくれさえすれば、どうとでもごまかせるのに…。

 

昨日の生徒会室の一件はしっかりと記憶に残っている。かなりの量を飲まされたはずなのだが、特に二日酔いにもなっていない。

正直、前世でやけ酒なんて当たり前だったから、味わうと言うか、酒の味自体を正直忘れた。

まぁ、みほが聞いているのは昨日、何があったのか?って事だろう…が、言わぬ。言えぬ。

 

「はぁ…、もういいよ。単刀直入に聞くよ。昨日生徒会の人達と何があったの? 何をやったの!?」

 

「いやぁ、歓迎会を開いてもらってね。あんこう鍋ご馳走になりました」

 

「その時か。まぁあの会長のことだから、何かにお酒混ぜたと思うんだけど…記憶。しっかり残ってるよね?」

 

多分、何も考えずに飲んでしまったのだろうが、火に油を注ぎそうだったから黙っていよう。うん。そうしよう。

酔った状態とはいえ、あの暴走した言動と行動は正直知られたくない。何を言われるか…。

 

「特に何もござ『昨日会長には電話して聞きました。ひどい目にあったと』」

 

「」

 

逃げ道を遮られた。

 

「ここだけの話にしてあげるから。言わないようなら…お母さんとお姉ちゃんにも報告する。特に前回の被害者であるお姉ちゃんの追求は、すごそうだね♪」

 

逃げ道を砲撃された…。はっはー…陥没地帯しか見えないや~。

 

西住親子。

 

あの一件以来、ここ数日で関係が大分復旧できたようだ。まだ蟠りはあるが、お互い電話をできるぐらいまでは回復した。

よしよし。よい傾向だ。今度は俺との関係が破綻しそうだ……。

 

「…怒らない?」

 

「子供ですか!? 内容によります。怒られるだけで済む内に吐きなさい!」

 

諦めた。この目の時のみほは、逆らうだけ無駄だ。コワインダモノ

 

覚えていることを、よせば良かったのに事細か詳細に説明してしまった。

 

 

 

 

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「何をやってるの!? ただのセクハラでしょ! それは!!!」

 

すっげぇ怒られた。当然ですけど…。これ学校行ったらまた怒られるんだろうな…。

 

「もう! まったく!! 信じられない!!」

 

「はぁ…、訴えられたら間違いなく捕まるよ? それ」

 

面目ないと、大洗へ来て、早くも2度目の土下座だった。

 

「せっかく会長に仕返しできると思ったのに…。絶望をプレゼントするつもりが、私がもらっちゃったよ、もう…」

 

みほさんが、最近黒いです。コワイ

 

「あー…、そういえば会長の弱点が、一個わかりました」

 

「…ロクでも無さそうだけど、何?」

 

「会長。首筋が弱点でした」

 

「首筋?? …ん?」

 

「んー…」

 

「……ん!! ///」

 

 

あ。また余計な事言ちゃったみたいだ。みほの顔が真っ赤になっていく。わー耳まで真っ赤だぁ。あははーカワイイー。

 

 

 

バチンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅刻しちゃう!」

 

隆史君を問い詰めていたら、結構時間が経っちゃってた。

通学路を急ぐ。何だろう。なんかうれしかった。

 

…そうだ。中学以来だ。隆史君との登校は。

 

「みほ。痛い」

 

「自業自得です」

 

隆史君の顔にモミジ跡を作り、家を出て見慣れた道を急ぐ。

パン屋を過ぎた先の通りで、なんかフラフラした同じ制服の子がいた。

体調悪そうに見えるけど大丈夫かなぁ。

 

「どうした?」

 

「いや、あれ…あの子。……大丈夫ですか!?」

 

髪の長い小柄な子。どうしたんだろ。

 

「辛い」

 

え?

 

「生きているのが…辛い」

 

遂に座り込んじゃった。どうしよう。

 

「みほ。こいつ、多分眠いだけだ」

 

「え? でも…しっかりしてください」

 

脇に手を入れて起こし上げる。本当に、眠いだけなのかな?

 

ただちょっと気になった。隆史君の言い方が、少しきつい。

そのまま隆史君の顔を見てしまった。多分私は、困った顔をしているだろう。

こういう時、そういう顔をしていると大概助けてくれる。催促しているみたいで気が引ける。

 

「はぁ…」

 

やっぱり。ため息をつきながら、頭をかきながら、しょうがないなって顔をしながら。

でも私は、この顔が好きだ。

ぶっきらぼうに。本当にぶっきらぼうに言った。

 

 

「おい。あんた。おんぶと抱っこどっちがいい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女子高生を背負いながら登校している。

そうそうあるもんじゃないな。うん。

 

「冷泉さんが、連続遅刻記録をストップした…」

 

校門前でなんか、おかっぱ風紀委員が驚愕していた。こいついったい何日遅刻していたんだよ。

人目を引くので、一応校門前で下ろしておいたのが幸いした。背負ったまま登校しようものなら、絶対うるさく言われていただろうな。

遅刻を回避したのになぜか風紀委員は悔しそうだった。

 

「ふん。明日からも遅刻しないでね。」

 

捨てゼリフまで吐いて行ったよ。

 

「すまんな」

 

校舎の前でお礼を言われた。ちょっと意外。

校内へ入ってからは、みほが肩を貸して歩いて来たのだが、少しは自分で歩け。

 

眠いだけだろお前。

 

「いいさ。だけど礼は、みほに言ってやれ。多分俺一人なら、あんたを無視してた」

 

「隆史君!?」

 

「…そうか。西住さん、悪かった。いつか借りは返す」

 

あとは、フラフラ1人で校舎に入っていった。

最後まで、目を殆ど合わせず対応していた俺に、みほからクレーム。

 

「隆史君。あれはさすがに冷たいと思うけど、転校してきたばかりなのに、彼女の事知ってるの?

良く知らない人に、あの態度はあまり良くないと思うけれど…」

 

初対面の人間に対する対応が悪いと、みほが非難する。

しかし俺は彼女の事を知っていた。過去に知っていたとか、話をした事があるとかでは無く。

 

データとして知っていた。

 

ある程度、目立つ人物は頭に入れておこうと思って、学校に転入するにあたり生徒を一通り調べた。

しほさんに頼んだら、次の日には情報が入ってきた。…個人情報保護法どこ行った。西住流がちょっと怖い。

 

その為「五十鈴 華」は、出会う前から知っていた。実家が、華道「五十鈴流」家元。容姿性格大体は、分かっていた。

 

華さんの様な人物は目立つ。本人は気づいていないが、「情報」から見れば非常に目立った。

まさか、みほと友達になっていてくれるなんて思っても見なかったが。…あの2人には本当に感謝している。

 

そして、彼女「冷泉 麻子」も当然知っていた。端的に言えば彼女は「天才」だ。

生活態度、先ほど風紀委員も言っていたが遅刻もそう。そういった情報もあった。

「天才」だからって訳じゃない。まぁ…俺のコンプレックスみたいなものだが、とにかく。

「冷泉 麻子」が悪いわけじゃない。俺が悪いのだろう。誰に言い訳しているんだ俺は。…くそ。気分悪い。

自然に口が開いた。みほには聞こえなかっただろう。

 

 

「…俺は、あいつが嫌いだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ち…近づくな!!!」

 

桃ちゃーん。朝の挨拶がそれじゃ、隆史君が可愛そうだよ。

朝、生徒会室に顔を出した隆史君がいきなり土下座をしてきた。

びっくりしたけど、昨日の今日じゃなぁ。

 

『 西住ちゃんから聞いたんだけど…。隆史ちゃん。酔っても記憶しっかり残るんだって 』

 

会長から聞いた時はびっくりした。夜調べたら、急性アルコール中毒になってもおかしくない量と強いお酒を飲んだみたい。

買って来たの私だから申し訳ないのと一緒に、仕方がないと。昨日の事はお互い忘れようと思っていたのにぃ。

 

「すいませんでした!!!!」

 

何故だろう。西住さんの時の土下座よりは怖くない。なんか必死で、かわいい。

 

「隆史君。もういいよ~。あれはお互い悪かったし…」

 

「あははー。そうだよ隆史ちゃん。もういいよ~。ワタシモワスレルカラ…」

 

「ほら、会長もそう言っているからもう頭上げてよ~」

 

正直まだ顔を直視できない。多分真っ赤になっているんだろーなーと、思うほど顔が熱くなる。

桃ちゃんは、顔見たとたんに取り乱すし。

 

「…ただ一つ。みほから会長達に、絶対に言っておけと言われた事あるんですけど…」

 

「何かなぁ~。き、昨日電話もらった時に軽く怒られたけど…」

 

なんだろ。会長が珍しくどもってる。

 

「全部聞いた。って言えばわかると…。すいません全て吐きました」

 

 

「「「 」」」

 

 

 

 

 

…はっ! 軽くショックで飛んでた。

 

「…隆史ちゃん」

 

「はい」

 

「話題変えようか…」

 

「御意」

 

もうやめよう…考えるの。

 

「そろそろ特別講師の先生がいらっしゃいますよ? 会長」

 

「そだね。そろそろ行こうか~」

 

 

 

 

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---

 

 

 

 

しかしというか、やはりというか。昨日の件で彼の顔がまともに見辛い。

また赤くなっていないだろうか。

朝のゴタゴタと、転校から早2回目の土下座で、隆史君は疲弊し切っていた。

 

ん。そろそろ時間になる。

 

戦車倉庫の前で、みんなでお出迎え。

武部さんは、ソワソワしている。なんか騙したようで心苦しいなぁ…。

 

キーンと大きな音が近づいてくる。

なんか輸送機が飛んでくる。C-2輸送機だったかな? 生徒会の資料であらかた見たので覚えていた。おっきいなぁ。

あまりこういう物に興味はなかったんだけど、そうは言っていられない状態だしね。

 

でも。…まさかソレから戦車が降ってくるとは、思っても見なかった。

 

 

 

ガリガリガリと火花を散らしながら滑ってくる。学園長の車にぶつかり止まった。

 

「学園長の車がぁ」

 

更には学園長の車を踏み潰し、ギャリギャリと旋回してくる。

 

人の財産を踏みつぶすのに、なんの躊躇もないのかなぁ。

後で怒られるの私達なのに…。

 

他の子達も、びっくりしている。大胆にも程があると思うんだけど。

 

「ん? 隆史ちゃん?」

 

会長の声で気がついたけど、隆史君の顔が異常に青ざめていた。

 

若干震えてもいる。何なんだろ一体。「まさか…」とかブツブツつぶやいてる。

戦車のハッチが開き、特別講師の先生が顔を出した。

 

「こんにちは~」

 

「」

 

なんだろ。隆史君の目が死んでいる。

 

そのまま各チームに分かれ整列し、彼女の紹介と挨拶が始まったのだけど…。

生徒会は彼女とみんなの前に出ているのだけど、隆史君の様子が非常におかしい。

 

「騙された…」「でも素敵そうな方ですよね」

 

西住さんの後ろ、武部さんと五十鈴さんの会話聞こえてくる。

 

確かに凛っとしていてカッコイイ。それでも何か軍人さんって感じもあまりしない。

頼れるお姉さんって感じの方だとは思う。

 

ただ西住さんの顔が、露骨に困った顔をしている。知っている方だったのかな?

 

「特別講師の戦車教導隊、蝶野 亜美一尉だ」

 

「よろしくね。戦車道は初めての…」

 

桃ちゃんの紹介と共に、挨拶を始めだした横で隆史君が、小声で言い出した。

 

「…会長。会長!」

「わ!びっくりした。何? 隆史ちゃん」

「俺。早退します」

 

「「え?」」

 

早口で言うだけ言うと、隆史君はその場を走って離れていった。…あれ全力疾走だよね?

さすがにみんなも気づいた様で、小声でヒソヒソ話している。

 

「あれ、尾形君走ってる」「隆史さん?」「どこ行くんだろ…」

 

そんな彼女達の視線で、彼に気がついたのか。

 

「ん? あらあら」

 

挨拶も途中で蝶野教官が、笑顔でスッと右手を上げる。

 

 

 

ダァン!

 

 

 

バタ。

 

 

 

音がしたと思ったら。隆史君が倒れた。

 

…。

 

流れる沈黙。

 

唖然とするみんな。

 

「戦車道は初めての人が多いと聞いてますが、一緒にがんばりましょう」

 

…何事も無かったように、綺麗に挨拶を言い直した。

 

「え?…」

 

「あの…教官?」

 

「ん?何かしら?」

 

「いや…あれ…」

 

さすがに耐えかねたのか、バレー部チームの先頭にいた菊池さんが、隆史君を指をさした。

 

「あぁ! 大丈夫! 暴動鎮圧用のゴム弾だから♪」

 

違うそうじゃない。

 

あ、いつの間にか彼が復活して、ヨロヨロとまた走り出した。

 

ダァン!

 

また撃たれた。

 

「あぁ! 大丈夫! 彼頑丈だから♪」

 

だから違う。そうじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして俺の逃亡は失敗に終わった。   完

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいはい。いい加減おきなさい!」

 

亜美姉ちゃんが、襟首を持ち上げる。痛いんだよ! くそ。

 

「相変わらずですね…。亜美さん」

 

みほがドン引きした顔で、昔馴染みに挨拶をしている。

 

俺はもう関わりたくない。来るのがわかっていたら学校なんぞ来なかったのに。

みほと挨拶をしている間に距離を取り、生徒会役員の場所に戻る。そう。逃げたのである。

 

「隆史君。蝶野教官と知り合いだったの?」

 

「あらま。そうだったの? だったら言ってくれればいいのに」

 

「会長。尾形書記は誰が来るかまでは知らせていな…寄るなぁ!!」

 

桃センパイが説明してくれるも、近づくと相変わらず逃げるよぅ。

会長と柚子先輩は普通なのに、いや…まだちょっと様子がおかしいか。

 

「亜美姉ちゃん…蝶野教官とは昔馴染みです。母が戦車道の教官をしているのは、会長知っていましたよね?」

 

「知ってる知ってる。西住流の師範でもあったよね~」

 

「母の教え子なんですよ彼女。熊本にいる時によく遊びに来てましてね。もちろん、みほとも顔馴染みです」

 

なるほど~と会長達は納得しているが、正直そこはどうでもいい。

あの感じじゃ、俺がここにいる事も知っていたな…。わざわざスナイパーまで用意するなんて…。

 

「でも、だからって逃げ出す事ないんじゃ…」

 

「怖いお姉さんって感じもしないけど、ほら西住ちゃんも…若干顔が引つってるネ」

 

「俺、帰っていっすか。つか、青森辺りに帰っていいですか?」ハーリーハーリー

 

あー…青森のカチューシャとノンナ元気かなぁ…。ダメだ。青森も逃亡地点としては失策だ。

2人に怒られる。熊本は論外だし…横浜辺り…ダージリンに匿ってもらえば…。

 

「隆史ちゃん。マジな顔で、逃亡計画立てないでよ。西住ちゃんどうするの」

 

「大丈夫!! みほならきっと、分かってくれます!!!」

 

「そ…そこまで…」

 

クソ! まずどこかにいる、スナイパーの場所を割り出して死角に行かなければ。

ここから校舎までかなり距離がある。平地を抜け出すのは不可能か?。

 

「隆史ちゃん。殺される訳じゃないんだから、そこまでしなくとも。ほら今日一日だけだから」

 

「会長。昨日の事覚えていますね?」

 

真っ赤になるのを、あえて突っ込まないでおこう。

 

「…正直、暫く忘れられそうにない…」

 

「私もです…。お嫁に行けなくなりそうでした…」

 

「わ…私はもう忘れた!」

 

「あれを俺に教えたのは彼女です」

 

 

「「「 」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正直私は、彼女が苦手だ。

隆史君にくっつきすぎる。今も結構近い。

…逃げ出さないようにとはいえ、腕を組む必要があるのだろうか?

まぁそこに座り込んじゃっているから、捕獲されましたーって感じだけど…。

 

隆史君を弟の様なものと言ってはいる。ただ、可愛がり方と行動が、昔から無茶苦茶だ。

戦車道の講師としては、どうなんだろ? 腕は心配していないんだけど。

だが、何というか感覚的すぎて、教える側として優秀なのだろうか?

 

「…また、くっついてる」

 

「みほさん? どうかしました?」

 

「だ…大丈夫だよ。ありがとう」

 

「きょーかーん。教官は、やっぱりモテるんですかー?」

 

2人に心配をかけてしまった。切り替えよう。うん。

 

「んー…モテると言うより、狙った的を外した事はないわ! 撃破率は120%よ!」

 

オォー!

 

歓声が上がる。けど、亜美さんの彼氏って聞いたことないけど。

 

「ハッ。亜美姉ちゃん、そのまま撃破粉砕するもんだから、何時までも彼氏できないいぃぃぃてててて!!」

 

隆史君余計なこと言わなければいいのに…。

組んでいた腕を別の意味で組み直す。さすが自衛官。素早い。

 

「教官! 本日はどのような練習を行うのでしょうかー?」

 

「そうね。本格戦闘の練習試合。さっそくやってみましょう」

 

「え!? あの、いきなりですか!?」

 

「大丈夫よ!何事も実戦、実戦!戦車何てバーと動かして、ダーっと操作して、ドォーンと撃てばいいんだから!!」

 

「擬音語じゃなく、日本語で…なんでもないっす」

 

あ。学習した。

ギャー

あ。ダメだった。

 

「それじゃ、それぞれのスタート地点に向かってね!」

 

「あ、その前に。首筋が弱い会長♪」

 

「!? …ムグ。なんだろ? 西住ちゃーん」

 

「隆史君はどうするんです? 大会には出られないんじゃぁ? 首筋が弱点の会長?」

 

よしよし。隆史君にもダメージは有るみたいだ。顔が赤くなっている。

 

「た…隆史ちゃんは、主にマネージャーとして、働いて貰う事になるよ。雑務とかね」

 

「そうですか。じゃあ今日は彼は何もしないんですか? 首筋が敏感な会長?」

 

「…ゴメン。西住ちゃん。もうやめて。まいった」

 

会長が両手を上げて降参した。思ったよりダメージはおっきそうだ。ウフフ。

 

「そうねぇ。彼は今回の賞品にでもなってもらおうかしら?」

 

亜美さんが突然とんでもない事をサラッと言いだした。

 

「例えば一つ。何でも正直に答える…とか?」

 

亜美さんが私を横目で見る。ニヤニヤ顔が、なんか嫌だ。

 

「でもさ~。それだと西住ちゃんが一番有利じゃないのかなぁ?」

 

「そうでもないわよ。先程、西住流の説明を皆さんにしました。そうなると多分…」

 

それでか。わざわざみんなの前で、話しかけてきたのは。

 

「協力して私を真っ先に狙ってくる…」

 

「そういうこと。みほちゃん以外は、みんな素人。みほちゃんのチームもね。いるのは経験者のみほちゃんのみ。どうかしら? いい勝負になると思うわよ」

 

言わんとすることはわかる。私がどの役割につくかでもあるけど、それでも集中的に狙われるのは痛い。4対1か。

 

「わかりました。どちらにしろ、各チーム皆さんに戦車を操縦してもらわないといけませんので…。あまり勝負にこだわりたくないのですけど…それに隆史君が賞品で、喜ばないチームもいると思うんですけど?」

 

先程から隆史君が大人しい。あ…ダメだ。完全に諦めてる。目が死んでいる…。

 

「いやいや、だから質問形式。年頃の女の子。猥談でも初恋でも結構食いつくものよ~。あーでも、初恋はみほちゃんは、相手知っていたわね…。それじゃ面白くないわね。例えば~」

 

ぐっ。昔中学の頃、この人にバラして相談してしまったのを思い出した。

「隆史君の初恋相手が私のお母さん何ですが、私はどうしたらいいでしょうか?」と。

今でこそ思えば相談する相手を間違えた。近しい年上の知り合いが、この人しかいなかったってものあるけど…。

 

何を要求されるのかと、青くなった隆史君が小刻みに震えだした。ドナドナ歌いだしたよ…。

安心をさせてあげよう。さすがに見ていられないや。

 

「大丈夫だよ隆史君。私達が勝っても、何も聞かない『例えば、ファーストキスの感想・と・か♪』か…」

 

……

 

「みほさん。今言いかけのたのを、最後までおっしゃって頂けますでしょうか…」ガタガタ

 

「ちなみに私は知っています」

 

……

 

「う…嘘だ! あの事は…ハッ!!!」

 

…馬鹿だなあ、隆史君は。亜美さんがニタァって笑ってるよ?

 

「はい嘘です。隆史く~ん。ご経験がお有りの様で」

 

そっか。経験あるんだ。私はした事ないし、あの様子じゃお姉ちゃんでもない。ましてお母さんは、流石にないだろう。

青森の時かなぁ…。私と彼は別にお付合いしているわけでもない。何だろう? この込上がる怒りは。

 

「西住ちゃん。昨日酔っている時に聞いたんだけど」

 

会長が口を挟む。

 

「彼、異性と付合った事無いそうだよ」

 

えーと。そういう関係がない人とそういう事をしたと。

私の気持ちはある程度わかっていると思っていたんだけどなぁ~。

そうなんだ。ふーん。

 

 

ブチッ

 

 

……

 

 

 

「隆史君」

 

「!!」

 

 

 

 

 

 

「私。すごいやる気出てきちゃった♪」

 

 




はい閲覧ありがとうございました。
やっとこさ2話ラスト付近。

微妙に主人公が起こした行動で、流れが変わってきています。
「西住流」の名前で困惑していたみほは、もういません。

大筋は変更する気はありませんのでそろそろあの方達がでてきます。


ありがとうございました。
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